
20世紀の作曲技法トータル・セリーの中心人物
ブーレーズの自作自演集です。といっても、ブーレーズは大指揮者でもあるので自作自演が珍しい事じゃないのが面白いです。だって、僕が持ってるブレーズのCDって、全部ブレーズ指揮ですもの(^^)。
収録されている曲は、以下の3曲です。
・リチュエルRITUEL 1974-5
・エクラECLAT 1964
・ミュルティプルMULTIPLES 1970
「
リチュエル」は、盟友マデルナの死を偲んで書かれた曲だそうで、ブレーズの作品の中でも比較的有名な曲です。この曲は従来のオーケストラの楽器配置を解体して、色々な楽器の組み合わせからアンサンブルが絡むようにしてあります。ステージではいくつかのアンサンブル群に分けられて、それぞれが離れて座ってます。グループは8つで、①オーボエ×1 ②クラリネット×2 ③フルート×3 ④ヴァイオリン×4 ⑤管楽五重奏 ⑥弦楽六重奏 ⑦木管七重奏 ⑧金管八重奏、です。
これに、各グループひとりずつの打楽器奏者がつきます。音楽は15のセカンスから出来ていて、奇数部分はそれぞれのグループのアンサンブルを統合したコンポジション色の強い部分。これらの相互関係の統制を指揮者が見つめるために、四分音符のポクポク…という打楽器演奏がついているんではないかと。その間に挟まる偶数部分は即興的な側面が強い部分。最初は、オーボエ&打楽器チームから始まり、それを他の管楽器チームが受け…という形で、次第に発展していきます。各セクションの音型は模倣が基調なので比較的わかりやすく、また10分過ぎのセカンスなんてかなりすごいですが、音楽的にはメトロノーム代わりの打楽器がいらないと思ってしまう…ポクポクという木魚のような打楽器が邪魔で、せっかく複雑なリズムを生み出しているのに、この木魚のせいで単純化されて聴こえちゃうのです。でも木魚がなかったら、バラバラに配置された楽器群を指揮者も演奏者も統制できなくてムチャクチャになってしまうんでしょうね(^^;)。
僕の音楽能力ではしんどい所は、デュナーミク的には大きなヤマを作るのではなく、ゆらゆらとあがったり下がったりする状態が25分も続くので、感覚的な起伏を感じる事が出来ず構造ばかりを追っかけさせられてしんどい。。少なくとも、サウンドの快感はかなり薄いです。音は複雑な割に濁らず綺麗なんですけど…。ブレーズって、パーツごとの緻密さは幾何学的にものすごいと思わされるんですが、全体の大きな構成にダイナミックでなくてセコセコしていて、感覚的な快感はノーノの方がだんぜん上…かな?感覚的な悦楽に身を任せるのは難しく、あくまで構造を考えて聴く音楽という感じです。そういうのが好きな人には面白いかも。
「エクラ」と「
ミュルティプル」は、このCDではひと続きで演奏されていますが、元々は違う曲。
ブーレーズの作品は「ワーク・イン・プログレス」という現在進行形でどんどん改変・追加されていく曲がけっこうありまして、この2曲もそれです。もともとはエクラという面白い楽器編成(マンドリンまでいる!)のアンサンブル曲が出来て、これを変奏しながらガシガシ広げていったのがミュルティプルに聴こえます。なるほど、こういう形式だからワーク・イン・プログレスに出来るんですね、ソナタみたいな形式だったら不可能ですし。元のエクラ自体が、けっこう断片的な音の塊がぶつかるみたいな所から始まるので、モアレ状に広がっていく音楽が面白いです。でも結局、ブーレーズが他界した今、この形が最終形なのかな?このCDは最後まで編成がアンサンブルですが、たしか後半のミュルティプルのオーケストラ版もあったはず。
ブレーズの音楽は、部分的な緻密さが、僕程度のソルフェージュ能力と記憶力だと捉えきれず、構造がザックリとしか理解できないので、スコアがないと厳しい…スコアがあっても多分厳しいです。。そんなもんだから、サウンドの方に耳が行きがちなんですが、綺麗な響きをしているもののメシアンのような豊饒さはなくって、なんというか…悪い意味で、フランス音楽とシェーンベルク以降のドイツ音楽のあいのこみたいです。ブレーズの曲は、僕はむずかしいと感じてしまうものが多いです。僕の音楽能力の限界ですね。。
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