
戦後のセリー系の現代音楽の中心人物
ブーレーズの、ピアノ・ソナタ3曲が収録されたCDです。CD
『ブーレーズ自作自演集』のエクラとミュルティプルのところで、ブーレーズの作品にはワーク・イン・プログレスという現在進行形の作品があると書きましたが、ピアノ・ソナタもそのひとつです。このCDがリリースされたのは2005年で、それ以前に出ていたCDに収録されていたピアノ・ソナタよりも曲が膨張しています(^^)。その後ブーレーズさんは死んでしまい(;.;)、これより新しい録音はないと思うので、これがピアノ・ソナタの最終形ということになるでしょうか。…って、3番の楽譜には続きが書きかけてる所があるらしいんですが。
まず、
ソナタの1番と2番は戦後のセリー音楽を代表する名作と言われていまして、1番を複雑にしたような2番は傑作と呼ばれています…が、僕には難しすぎてアナリーゼ不可能(T.T)。フランス音楽を専攻した当時、この曲が僕の前に大きく立ちはだかり、その時の挫折感といったらなかったです。「ああ、俺には現代音楽を扱うだけの才能はないのか」みたいな。現代音楽が大好きだったのに、その最重要作が分析できないという屈辱。でも今思えば…これ、聴いただけで音列やその反行を聴き分けられる人、なかなかいないんじゃないかなあ。ただし、響きはとんでもなく綺麗です。音列の初期設定が練りまくられて見事なんでしょうね。

そして、ソナタの3番。僕、このスコアを持ってるんですが、みじかい5線に音符が書き込まれ、そこからいくつかの矢印が枝分かれして、どちらにも進行できるようになっているという面白い楽譜です。これがいわゆる「管理された偶然性」というやつで、この曲が「管理された偶然性」の演奏初体験だった僕ですが、断片的なそれぞれの演奏が難しい。瞬時にどっちに行った方がいいかを判断するなんて無理、だから僕はどういう順で進むかを決めていました。演奏者や聞き手ではなく、作曲者にとてだけの偶然性なんですね(^^;)。
理論ガチガチのトータルセリー系の音楽は、作曲家はいいだろうけど、最初の音列の原型ですら捉えるのも覚えておくのも至難の業…シェーンベルクみたいにいい感じの音型にしておいてくれる優しさもないので、聴く方も、かなり音楽能力が高くないと、構造を理解するのは困難じゃないかなあ。演奏もめっちゃ難しくて、
これを演奏した後にリストにトライすると弾きやすいと思っちゃうほどです。指さえ届け場ですけどね(^^;)。すごく厳しい表情の音楽で、この空気感は好きなんですが、僕レベルの人間では、サウンドや大まかな展開を漠然と楽しむ以上のところに入りこむのは難しい音楽なのでした。でも音大のソルフェージュや楽曲分析の授業でトップクラスの成績の人にとってはメッチャクチャ面白い音楽なんだろうな…。そうそう、
この超絶的に難しい曲をクールにパキパキ演奏しているパーヴァリ・ユンパネンというピアニストもタダものじゃないです。
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