
19世紀中盤から後半にかけてのヨーロッパ音楽界は後期ロマン派全盛。その中心はドイツ・オーストリアで、フランスはドイツ音楽の物真似の亜流という印象があります。だって、ドイツ文化圏にはワーグナー、
ブラームス、マーラー、
シュトラウスがいるのに、フランスは…グノーにビゼーですか、これは厳しい(^^;)。そんな中、2歳でピアノを弾き3歳で作曲をして「
モーツァルトの再来」と騒がれた天才がいました。サン=サーンスです!このCDに入っている「交響曲第3番 オルガン付」は、「死の舞踏」と並んで、サン=サーンスの代表作と言われている作品です。
「オルガンつき」とはいうものの、この録音の場合、そこまでオルガンが前に出て聴こえません。スコア的にオルガンが思いっきりメインになる所もあるんですが、そこですらけっこう控え目でした。また、第1楽章前半は、マイナーで始まったのに急に遊園地みたいになったり、あっちこっち行ってしまう悪い方に出た時のロマン派音楽という印象を持ってしまいました。しかし、ポコ・アダージョとなった第1楽章後半が素晴らしい!なんという美しさ、こういう情景を描き出す時のフランス音楽はヤバいです、隠し味のようにうしろで鳴っているオルガンに背筋ゾクゾク。この楽章は、同時代のフランクや、その後についに花開く
ドビュッシーの方向性にも影響してるかも。そして、どの楽章も筆致が見事で、これは技術的な作曲プロフェッショナルだと感じました。ただ、交響曲3番に関しては、最近素晴らしすぎるCDを買ってしまったので、今後はそればかり聴く事になりそう。そっちのCDはいつか紹介しますね(^^)。
そして、カップリングに入ってる
メシアン「昇天」は…
バッハや
フォーレという前例とはまったく違うサウンドですが、これはいかにもキリスト教音楽という感じの音楽。宗教曲なのでTPOを考えたのか、まだ自分の技法を確立してない時代の作品なのか、メシアンにしては意外と王道の和音。ちょっと僕には分からないですが、カップリングしたのは何かサン=サーンスの音楽とつながりがあるのかな?天に召されて救われ浄化されるような音楽、これは素晴らしいです。特に第4楽章がいい!
もしサン=サーンスがいなかったら、19世紀後半のフランスって、本当にオペラ・コミックみたいな娯楽的で職業音楽なクラシックしか残らなかったかも。サン=サーンスで生き残ったフランス音楽が、メシアンのような見事な音楽にまで繋がるという所に、歴史というものの重さを感じました。フランス音楽の流れを感じる、いいCDでした。
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