
クラシックの大作曲家にして高名な音楽教師でもあった
シェーンベルクの書いた有名な作曲のための教科書のひとつです。シェーンベルクは他にも「和声法」なんていう本も書いてます。僕はこの本で思いっきり作曲の技術をあげる事が出来たと思っているので、大推薦!ロックでもジャズでもクラシックでも、
この本を読んでいるのといないのでは、作曲が雲泥の差になるはず。ただ、いきなりこの本から始めるのは不可能、その点だけは注意が必要です。
基本的には楽式論の本で、楽式を押さえた上でどうやれば作曲できるかという作曲方法の具体的なアドバイスがされています。こうした枠のなかで、動機の作り方みたいなミニマルな所から、大楽節の作り方、そして大きな形式の作り方まで書いてあります。つまり、
ベートーヴェンとか
ショパンみたいな
クラシックのメインストリームを中心に見た、ジャズやら今のポップス/ロックまでを含めた西洋音楽の機能和声音楽全般の作曲の教科書。シェーンベルクが書いたからといって現代音楽の作曲法じゃないので気をつけろ!!シェーンベルクは12音列技法の創始者のくせに、その教科書は書いてません(゚∀゚)アハハ。教育者としてもすぐれた人だったので、書いて欲しかったなあ…。
譜例もいっぱい出てくるので超ていねいでわかりやすい(^^)。本は3部に分かれていて、第1部はテーマの構造、第2部は小形式、第3部は大形式。和声や、作曲の構造分析(楽式)の本はそれなりにありますが、具体的にどうやって作ればいいかという指導書は、ポップスの音楽初心者向けみたいな本以外には僕はあまり見たことがないので、これはありがたい本でした!
ただし、ちょいと注意が必要でして…たとえば「動機」とか「楽句」とか「大楽節」「楽段」…なんて言葉がどんどん出てきますが、これらの言葉の説明はほとんどありません。つまり、こういう言葉を知っている前提で書かれた本。もし「動機」とか「大楽節」という言葉の意味が分からない人は、この本を読むのはちょっとはやいかも。話によると、モチーフという言葉を楽式の分析に使ったのは、シェーンベルクが最初という話もきいたことがあります(←裏を取ってないので間違ってたらゴメンナサイ。たしか、シェーンベルクの『和声法』の教科書に書いてあった気が…)。
というわけで、
タイトルからすると初心者向けの本のようですが、和声法や楽式論をざっと修めて「じゃあ実際に作曲に進みましょうか!」というところまで来た音大1年生ぐらいの人が読む本だと思います。和声法や構造の勉強が終わった人が対象。基本的にクラシックの作曲を対象にしてますが、ジャズやポップスやロックに使うなら、第2部の「小形式」までで充分 ( ̄ー ̄)v。そしてこの本、絶対に読まないと曲が作れるようにならないというものじゃなくって、さっき書いた和声法と楽式論(こっちはロックやポップスみたいな単純な楽式の場合は読む必要もないかも)ぐらいまで知ってて、もう自分で曲が書けちゃう人は読まなくても大丈夫。でも、作曲してみたもののどうも美しくないとか、いまいちシロウトくさいからベートーヴェンとか過去の大作曲家がどうしていたのかをちゃんと学びたいとか、そういう人にこそビンゴなんじゃないかと。僕個人は、大楽節内のモチーフを、接続物を使ってなめらかに繋ぐとか、そういうテクニックがすごく勉強になりました。あと、最後の方にソナタ・アレグロ形式とか、ソナタ・ロンド形式の説明とその作曲の仕方が出てきますが、これはすごかった。というのは、ロンドの形式をここまで細かく分けて説明してくれた本を僕は他に読んだ事がなかったし、ソナタ・アレグロ形式なんて、この本を読むまでそんな形式の名前があることすら知りませんでしたし。
無意識に自分でやってたことも「ああ、そういう事なのか」と意識できるようになったのも大きかったです。原理が分かるとセンスまかせにならないのでスランプになりにくいんですよね。いちおう作曲の基本勉強は済んだけど、実践でなかなか曲をうまくまとめられなかった若いころの僕を助けてくれた、とてもためになった本でした。
ポップス、ロック、ジャズ。クラシックを問わず、ひと通り和声法も何もやったけど、実際に曲を書くとなるとうまくいかない人に超おすすめです!そうそう、構造が主なテーマなので、和声が分かってない人は先に和声をやらないと、この本にはついていけないかも(^^;)。