
ものすごく長いアルバムタイトルですが、要するに
プーランクとミヨーの2台ピアノの作品集です。ピアノ・デュオはラベック姉妹の4手ピアノ演奏、管弦伴奏がつくと
小澤征爾さん指揮のボストン・シンフォニー・オーケストラが登場します。ちなみにラベック姉妹、今はちょっとアレですが、当時は美人ピアノデュオ姉妹として売り出してました。このCDのジャケットとかマジで美人だし。僕は左が好きだし。そうそう、どちらかが
ジョン・マクラフリンと結婚してました、離婚してしまったそうですが(・_・、)。
プーランクとミヨーという作曲家は、どちらもフランス6人組に数えられる作曲家です。でもこれはロシア5人組に対抗してつけられた名前で、音楽性はバラバラ。でも時代が
ドビュッシーや
ラヴェルの登場で、ドイツ音楽の天下だった時代にようやくフランスにも陽の目が当たってきたところだったので、「あのドイツのかた苦しくてものものしい大げさな交響曲じゃなくって、パリの小粋でエスプリでボンジュールな音楽をみんな聴こうぜ」みたいな流れの象徴みたいな扱いだったみたい。でも「火刑台上のジャンヌ・ダルク」なんて作品を書くオネゲルは、この定義にはまったく嵌まる気がしません。その意味で、フランス6人組で一番らしいのは、プーランクじゃないかと。
プーランクの音楽は、こむずかしくない、どこか知的、遊び心がある、洒落てる…第1次世界大戦前の粋なパリって感じです。ピアノ曲や歌曲という小曲が多いものだから、いざプーランクを聴こうと思うと代表作になる交響曲みたいなのがなくって、どれから聴いたらわからん→聴かずじまい、というパターンが多いんじゃないかと。僕が学生の時は、クラシック事典でプーランクの代表曲を調べる→事典も代表曲をしぼりきれてない→仕方ないから良さそうな曲を4~5曲見繕ってメモ→CDショップにひとつもない、という感じでした(・・`)。そんな
僕がプーランクを好きになったきっかけは、このCDの冒頭に収録されている「2台のピアノのための協奏曲 ニ短調」でした。大げさなところがなく、洒落ていて軽妙。でも冒頭は「リストかお前は」というほどの高速フレーズ。そこから弦との掛け合いになったり、シュトラウスみたいになったり、ジャズみたいになったり、どこまで本気か分かりません。ところが、それらを抜けると、冒頭に出てきた主題を使ってとんでもなく美しいシーンに入ります。うわあ、リディアンだ…いや、5音音階か?沖縄音楽のような響きですが、ここが神がかりの美しさ。プーランクの何を聴けばいいのか迷っている方がいらっしゃいましたら、僕的には「2台のピアノのための協奏曲」がおすすめです!ちなみにこのCDの演奏は、録音も含めて絶品です!他の曲でちょっとやらかしてますが、美人だからいいか。
残り3曲のプーランク作品の中では、「4手のためのピアノ・ソナタ」はまあまあ有名かも。って、自分で弾いた事あるからそう思ってるだけかも知れませんが。でも演奏しておいてなんですが、そこまでいい曲とは思ってなかったりして(・ω・`)。ずっと楽譜とにらめっこしてたから、良さが分からなくなっちゃっただけかも。
一方、ミヨーの「スカラムーシュ」も、プーランクと同じように軽妙な音楽です。チャップリンの映画のコミカルなシーンに流れてもおかしくない感じ。そして、プーランクもミヨーも、その軽い肌触りに似合わず、実はポリトーナリティー(複調性)なんていう、ふたつの調整が同時に存在するなんて事をやってたりして、この曲もそうらしい…んですが、僕にはよく分かりませんでした(^^;)。ジャズを聴いてると、ふたつの調じゃなくてそういうムードのサウンドに聴こえちゃうのかなあ。。
クラシックとはいっても、まるでポピュラー音楽のような軽妙な音楽。しかし作画はクラシック、作曲も演奏も使える技法が比較にならないほど高いので、イマジネーションもウィットやアイデアも段違い。そしてプーランク、どの曲も半分は即興で書いたんじゃないかというほどにピアノが躍動してます!僕はたいがい「2台ピアノのための協奏曲」しか聴きませんが、そのためだけでも買う価値のある1枚だと思います!