
わけがありまして、バレエやダンスの勉強をする事になりました。バレエって、僕は「白鳥の湖」みたいなクラシック・バレエと、ベジャールのモダン・バレエぐらいしか知らないもので、もう少し知らないと、みたいな(^^)。そこで、こんな本を手にしました。著者の三浦雅士さんは、自分で踊った経験はなさそう、でもバレエ関係の本の編集者をやってたそうで、知識はたっぷりみたいです。
本の構成はいたって合理的。バレエのどこに魅力があるのかを最初に書き、次にバレエの歴史。最後に有名なバレリーナの紹介。メインになるのはバレエの歴史で、バロック期→ロマンティック・バレエ→クラシック・バレエ→モダンという順で、それぞれに1章を使ってます。
この本、「バレエ入門」ではないと思います。この本に書かれているバレエ作品をひと通り観た人用の「バレエ論」じゃないかと。それぐらい、著者の主観が強かったです。ひとつの「バレエ論」として読むなら、著者の見解がはっきりしてるし、けっこういい本じゃないかと思いました。
でも、著者の主観というのが、僕にはちょっと鬱陶しかった(^^;)。「それはあなたの見解がそうだというだけですよね」という文章が多すぎ、また論理が破たんしているものが多くて、そういうところは読んでいて苦痛でした。例えば、「舞踏は言葉とともに古いと言っていい。(中略)言葉そのものが舌の舞踊」(18ページ)、「音楽のない舞踊はありません。舞踊は音楽を実行する事なのですから」(19ページ)、「シェーンベルクの音楽はあまりに美しすぎて、このバレエにはそぐわない」(189ページ。ちなみにこのバレエは先に作られた音楽にあてられたもの^^;)。ビックリでしょ?こんな事、平然と言っちゃうんですよ。自分が正しいと思った事は、この人の場合、一般化された見解になっちゃうんです。「舞踊は音楽を実行する事」なんて、バレリーナからさえ賛同をえるのは難しいんじゃないかな。思想誌の編集長なんかもやった人みたいなので、どうしても形而上的な方向に論を展開しがちなのかも知れませんが、いきなり「舞踊は音楽を実行する事」なんて、飛躍もいいところだと思いました。気持ちは分からなくもないですけど、仮に「サッカー入門」という本で、その第1章に「サッカーは人間の実存に肉薄する身体行為」とかいう論を展開したら、「こいつバカなんじゃね」となると思うんですよね。そういう見解を持つ人がいるのは構わないですが、一般論にしないでほしいです。
というわけで、
著者の見解の押しつけに鼻白んでしまいましたが、そこさえ我慢すれば、バレエの歴史や主要作品、有名なバレリーナやコリオグラファーも知る事が出来て良かったです。この本、「バレエの歴史とヨーロッパ思想史」とでも改題した方がいいんじゃないかな(゚ω゚*)。
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