
去年、ひし美さんの書いた
『セブン セブン セブン 私の恋人ウルトラセブン』を読んだらメッチャクチャ面白かったので、こんな本も読んでしまいました(^^)。ウルトラセブンでアンヌ隊員を演じ、その後はお色気女優へと流され、そして引退していった女優・菱見百合子の女優人生を追った本です。この本を除く菱見さん関連の本は、ウルトラセブンのアンヌ隊員役に注目したものか、写真集のどちらかですが、
この本は女優ひし美ゆり子の活動全般にスポットが当てられていて、いちばん菱見百合子さんの実像に迫った本と感じました。60年代末、
カラーテレビの登場による映画産業の衰退からテレビ全盛期を生きた女優さんの半生記、メチャクチャ面白かったです! この本、映画評論家の樋口さんが菱見さんにインタビューする形で話が進んでいくのですが、たんにひし美さんの出演作を追っていくのではなく、映画産業やテレビ産業、そして時代背景というものと、ひし美さんの女優歴を重ねあわせて書かれている所が実に面白かったです!昔は映画監督も俳優も映画会社に就職し、普通の仕事とは比較にならないほどの高給であったのが、映画衰退とともにしぼんでいきます。
菱見さんは映画会社に所属した最後の撮影所女優世代で、舞台俳優や芸能プロダクション所属からテレビや映画に出演していく今の役者さんとは歩む人生が違いました。1958年には11億人の観客動員をしていた映画が、カラーテレビの普及で70年には2.5億まで激減、スカウトされて東宝に入社した菱見さんもリストラの憂き目にあいます。映画会社は日活がポルノ映画会社に転身、他もエロや暴力を売りにしていく混迷期を迎え、そのなかでフリーになった菱見さんもヌード女優として活路を見出しますが、旦那さんと子供がいる菱見さんは人気が出てきたところですっぱりと女優引退。ところが
80年代になってビデオデッキが普及すると、ウルトラセブンの人気再燃、これでアンヌ隊員役の菱見さん人気が復活…ザックリ書けばこんな流れだったんですが、この過程の描写が見事!!さすがは映画評論家、文章がうまく、あまりに面白くて徹夜して一気に読んでしまいました(^^)。
戦後日本では、60年代と70年代という時代が好きです。その時代に生きた人に言わせると「暗く厳しい時代だった」らしいですが、その時代の日本映画や音楽は、技術がまだ成熟しきっていなかったにせよ、熱さやメッセージの強さが違うと感じます。そんな中で、流されるように女優業という大変な職業に翻弄されたひとりの女性の物語は、その人の仕事を何度も何度も見てきた僕にとっては、まるで自分のある時期を見ているかのようで、面白さと同時に、自分の人生を振り返るような気分でした(^^)。
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