
僕がはじめてCDで買った
バッハの無伴奏チェロは
カザルスではなく、アンナ―・ビルスマさんが1979年に録音したこれでした。理由は、ビルスマさんがバロックチェロを使っていたので(^^)。このCDを買う少し前、古楽器の生演奏の体験をして、音色が素晴らしくてむっちゃ感動したのです。そんなわけで、「バロック・チェロか、よし聴いたろ!」みたいな気分になったのでした。
このCD、バロック・チェロで演奏したバッハの無伴奏チェロ組曲の録音としてムッチャ有名で、歴史的名盤扱いの1枚です。ちなみにビルスマさん、この13年後の92年にストラディバリを使って無伴奏チェロを再録音しています。
さて、アマゾンのレビューを見るとひとりとして文句を言う人のいないこの歴史的名盤ですが、最初に聴いた時、僕にはかなりきつかったんですよ。もともとチェロやコントラバスって音の中にノイズ成分が多い楽器だし、まして古楽器ならなおさらというのは分かってたんですが、それにしたって楽器の音がやたらノイジー!黒板を爪でひっかいた時の音に似た、弓の具合でヒステリックに「キーッ」って鳴る音がちょくちょくある!楽器のボディの鳴りがあんまりなくって低音がないので、やけに軽く感じる。教会録音の残響がボワンボワンすぎて、聴きにくい。例えば第2番のクーラントみたいに上声部と下声部を高速で弾き分けて2コースに聴かせる曲なんかになると、中低域が残響でボワワワワ~ンみたいになって何弾いてるんだか分からない。要するに、演奏うんぬんの前に、音が駄目なのでした(T_T)。そして、今回久しぶりに聴いてみたところ…残響がやかましすぎるところはやっぱり趣味に合わなかったけど、そんな事より
演奏の軽やかさに驚かされました。カザルスが情念こもった濃厚とんこつコッテリ系だとしたら、こっちはゆず塩あっさり系。まるで蝶が舞うような演奏です。古楽器って扱いが難しいときいた事があるのですが、それをこんな風にいとも簡単に奏でられちゃうのか。難解そうなダブルストップも、いとも簡単にきれいに音を出します、これはすごい。いやあ、昔の僕は何を聴いてたんでしょうね。
カザルスさんのコッテリ無伴奏チェロと、ビルスマさんのあっさり無伴奏チェロ、あまりに違いすぎてどっちが良いとかいえません。楽器がノイジーで低音がないところ以外に、正直いって僕は現代チェロとバロック・チェロの大きな差も感じられないので、「バロックチェロの演奏を聴くなら…」なんて、古楽をよく知ってる人やチェリストだったら意味あるんでしょうが、僕程度の人間にとってはその差別化は無意味。というわけで、ふか~く音楽を聴きたい時はカザルス、ワルツでも楽しむように軽く聴く時はビルスマ、みたいな感じで聴き分けるようにしようかな。あ、そうそう、CDのクレジットに、使用楽器が「Violoncello & Violoncello piccolo」と書いてありまして、なんで楽器を使い分けるんだろうかと思った所…
もともと無伴奏チェロの6番はピッコロ・チェロのために書かれた曲だそうで、古楽器で演奏する場合は、ピッコロ・チェロを使わないと演奏困難なんだそうです。へえ~、ひとつ勉強になった(^^)。
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