コルトレーンがプレスティッジから離れた後に出された、プレスティッジ未発表録音集です。録音はふたつのセッションから取られていて、A面はEarl May(b), Art Taylor (dr) とのトリオ、B面はDonald Byrd (tp), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Louis Hayes またはAlbert Heath (dr) という編成。録音は1957年から58年にかけてです。
まずはA面のトリオ演奏「Like Someone in Love」の冒頭のサックス独奏が泣きたくなるほど良い…いやあ、コルトレーンってこんなに歌心ある人だったのか。そういえば『Soultrane』での「I want to talk about you」も、マイルスの『Kind of Blue』での「Blue in green」も、めっちゃくちゃ良い演奏だったなあ。この曲、トリオでも他のふたりが実に控えた演奏をしてるので、まるで最初から最後までコルトレーンの独奏のようにきこえて、すごくいい。。 「I love You」と「Trane’s Slow Blues」は、ニューヨークというよりシカゴのロフトで聴けそうな古き良きハードバップという感じ。50年代アメリカ都市部の黒人文化をそのまま聴いてるみたいで最高でした。それにしてもコルトレーン絶好調、すごい。。
B面はレッド・ガーランドのピアノ入り。「Lush Life」はバラードで、ドナルド・バードのトランペットが入ります。最初のテーマはサックスのみ、次にサックス、ピアノ、ペットというソロオーダー順で、最後に2管のアンサンブルのテーマで閉じるという構造です。雰囲気はいいけど、それぞれのソロが冗長かな…。「I Hear a Rhapsody」は、ピアノ入りワンホーン。どういうわけかこれがシカゴではなくてニューヨークに聴こえるのは、もしかするとバック陣がマイルスのグループだからなのかな…。
このアルバム、コルトレーンがレギュラーグループを持つ前の1枚で、コルトレーンチェンジやモード以前という事もあって、あまり取り上げられませんが、とにかくコルトレーンが絶快調、素晴らしい1枚だと僕は思っています。「Like Someone in Love」や「I Love You」というA面のトリオ演奏を聴くためだけに買ってもお釣りがくるほど。いやあ、ジャズって、自分にピタッと嵌まるものに出会うと、本当にいい音楽ですね。コルトレーンのレコードは全部買ってもいいと思ってしまうほど良かった…って、若いころそう思ってコルトレーンのレコードと見るや片っ端から買ってたんだろうなあ(^^)。