
ポスト・モダンの日本人作曲家の中で好きな人のひとりです。響きはモダン、構造は伝統という人。いま日本で芸術音楽の作曲をしようと思ったら、自然にこうなる気がするんですよね(^^)。このCDは、以下の2曲の管弦楽曲が入っていました。
・チェロ協奏曲(1990)
・永遠なる混沌の光の中へ(1990)
このCDに入ってる2曲と、「太陽の臍」「光の環」の4曲で、西村さんのオーケストラ4部作というのだそうです。誰がそう言っているかというと、本人だそうで(゚∀゚*)。
「チェロ協奏曲」は、現代音楽通過後に新しい響きを獲得したロマン派協奏曲のようでした。だから、新しい響きなのに、
コダーイとか
バルトークの時代の音楽を聴いているような気分。そんなわけで、ロマン派の響きではもう退屈で耐えきれない、でもセリー音楽とか前衛方面だとテクスチュアが難しすぎて面白く感じない、という人には絶好の音楽かも。構造としてはチェロとオケが対立したり協調したりする構造ではなくて、調性音楽なメインのチェロに、それ以外の音が色んな響きでつきまとう感じ。だから響きはあくまで印象のブースト効果で、メインのチェロの動きにどれだけドラマを感じられるか、という音楽なんだろうなあと感じました。
「永遠なる混沌の光の中へ」は、響きだけに特化したような作品で、最初の和音からしてめっちゃくちゃ刺激的!それでいて通奏低音が入ってるので調を感じます。音楽の核になってるものはシンプルなんだけど(静かに始まって、徐々にストリンジェンドしてクライマックスに達し、直後に静かな所に戻る、みたいな^^)、それに重なる弦の響きがなんとも独特。1カ所だけ和声がプログレションするところがありましたが、あとはほぼ変化なし、ほとんど音響作曲でした。こういう微細音程の積み重なりみたいな音をどうやってスコア化してるのか、ちょっと見てみたいなあ。
西村朗先生は、和声面のあの響きが特徴の作曲家と感じます。「永遠なる混沌の光の中へ」のサウンドを聴いただけで、「ああ、西村先生だ」ってかんじ(^^)。実際、
西村さんはヘテロフォニーの作曲家なんて言われています。
ヘテロフォニーというのは、サウンドはホモフォニーっぽいんですが、モノフォニーで各奏者が微妙に違う音程を奏でる事で独特の和声感を作り出すもの。お経とかって、同じメロディだけど各自高さがバラバラだったりするじゃないですか、あれです。アジアの音楽のそういう特徴から、和声音楽に取り組んだのかも。そういう視点自体が、なるほどポストモダン的と言えるかも知れません。
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