
実は多くの人がそうなんじゃないかと思いますが、僕は交響曲より協奏曲の方が好きです。みんなでワシャワシャやるより、主役が真ん中にドカンといてくれた方がわかりやすい(^^;)。このCDは、指揮者やオケやピアニストにはまったく拘らず、「おお、ピアノ協奏曲3曲が全部入ってるのか!」な~んて感じで衝動買いした1枚でした。
バルトークの
ピアノ協奏曲第1番は、1926年作で、3楽章制。1楽章は…
おお~このガシガシとくる感じ、これこそバルトークだ!!時代的なものもあるのか、
錯綜する複雑なリズムがストラヴィンスキーっぽくもあって、ザ・新古典という感じ。調べてみたら、バルトークの新古典期はこの曲からなんだそうです。2楽章はアンダンテの緩徐楽章ですが、なかなか怪しい雰囲気。そこから切れ目なく飛び込む3楽章は、インテンポでガシガシ突き進みました。バルトークって、初期はロマン派っぽいしアメリカに渡った晩年はちょっと日和った感じがするので、僕は新古典期から前衛までの時代が好き。でもこれは、まだ匂いとしてロマン派を引きずってるかな?絶対音楽というより、ちょっと劇音楽っぽかったです。
第2番は1930-31年の作で、これも3楽章制。という事は、弦楽四重奏曲第4番と5番の間に書かれた事になります。バルトークの弦カル6曲は生涯に渡って書かれているので、バルトークの作風の時代考証をするいい物差しになるのです(^^)。そしてコンチェルト2番は、まだ新古典という感じ。というか、これもストラヴィンスキーの作品だと言われたら信じてしまいそう…いや、でもやっぱりバルトークだな(^^)。1楽章、なんかヒンデミットぽいなと思ったら、これ、弦がいないんでないの?
なんという事だ、ピアノコンチェルトで弦がいない1楽章を持った曲ってはじめて聴いた気がします。かなり対位法が多用されて、セクション間のアンサンブルが緻密だったので、
コンチェルトというより室内楽アンサンブルを聴いているような気分でした。2楽章は緩徐楽章なんですが、ピアニッシモで循環するかそけき和弦とフォルテで迫るピアノが交互に出てくる形、これが中間部で盛り上がりながら展開していき…
こういう独創的な形式があるから新古典って素晴らしい。ところで、この循環する弦パートってもしかしてセリー?響きはアイヴスのセントラルパークの夕暮みたいでカッコ良かったです。2番から切れずにつながる3番は、不穏なムードのまま激しくなる…って、あれ?1番とけっこう似た構造してるんだな。。
第3番は、1945年の作品、という事はアメリカ亡命後ですね。45年というとバルトークが死んでしまった年か、もしかしたら遺作なのかも。出だしこそ僕が好きな時代のバルトークなのですが、1楽章の途中からアメリカ音楽っぽい平易で明るい和声に…ああ、やっぱり晩年のバルトークは、音楽を追及したんじゃなくて金を稼ぐために曲を書いてる感じであんまり好きになれないなあ。さすがに近現代の作曲家で5指に入るほどの大作曲家なのでプロフェッショナルな曲なんですが、どうも媚びてる感じがしてね。。
このCDは1990年の録音で、音がすごく良かったです。野太い往年のグラモフォンな感じじゃなくて、透明感ある感じ。かなり複雑なスコアなので、これぐらいスッキリとセパレーションがいい方が、アンサンブルがわかりすくて有り難い(^^)。あんまり評価されてない1枚みたいですが、演奏も素晴らしいし、すごく気に入ってます(^^)。