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Category: アート・本・映画 etc. > 本(文芸・科学・哲学)   Tags: ---

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小説『武器よさらば』 ヘミングウェイ著、大久保康雄訳

Hemingway_BukiyoSaraba.jpg ヘミングウェイで一番内容が良いと思ったのが短編集なら、いちばん面白かったのはこの本でした。これはヘミングウェイの代表作のひとつです。時は第1次世界大戦、場所はイタリア。主人公はイタリア軍に入ったアメリカ人で、入院先で看護婦キャサリンと恋に落ちます。しかし…

 まず、第1次世界大戦時の空気感や光景をビシビシ感じた文章力が素晴らしかった!1次大戦以降の戦争は、それ以前と違って市民も犠牲になる地獄…なんて聞いた事がありますが、それでも2次大戦のヨーロッパ戦線や太平洋戦争と比べると、どこかのどか。イタリア軍は戦争よりも昼飯の心配をしてるし、脱け出して女を口説きに行ってるし(^^;)。主人公は将校ですが、入院先で看護婦と出来て子供まで作っちゃうし、兵士たちも自分たちが死ぬなんて夢にも思ってなくて優雅なものです。この空気感はたぶんリアルなんでしょうね。アラン・ドロン主演映画『若者のすべて』や、スペクタクル映画『アラビアのロレンス』もこんな雰囲気でしたし。ところが、イタリア軍が撤退して敗走戦をする所から様相が一変。疑心暗鬼になったイタリア軍憲兵は、敗走する将校を捉えて銃殺。奥の部屋に連れて行かれる将校のすべてが殺されていく中、主人公は一瞬の隙を突いて川に飛び込み、窒息死寸前まで川から頭をあげず急流に流され、九死に一生を得ます。
 以降の描写がすごい。汽車の荷台にずぶ濡れのまま潜んで逃げ、何とかキャサリンのいる街までたどり着いてホテルに二人暮らし…かと思いきや、懇意にしていたホテルのボーイから憲兵が迫ってくる情報を得て、真夜中にふたりで手漕ぎボートで逃げ出し、手を血だらけにしてオールをこぎ、生きるか死ぬかの逃避行でスイスに亡命します。しかし亡命先のスイスもドイツ占領下。その中でなんとか嘘と見せ金で言いくるめ、ふたりで山奥の宿に身を潜めます。季節は冬、ようやく難を逃れたふたりは戦争が終わるまでここで愛の生活。戦争を忘れた、夢のような日々が始まります。しかし、キャサリンの出産が迫り、その時を迎えると…

 前半はゆったりしているので、ちょっとだるかったです。でも、イタリア軍敗走以降は迫真の描写で、物語の展開もリアルですごかった。ヘミングウェイは兵士としての戦争参加(スペイン内戦)も、従軍記者としての1次大戦経験もした人なので、描写がこれだけリアルなんでしょう。実際、「こんなの実際に見た人じゃないと知らない描写だろう」という部分がけっこうあって、埃の匂いまでしてきそうなほどリアル。というわけで、面白い面白くないだけで言うと、「前半は多少かったるくても我慢。後半はものすごく面白い!」というのが僕の感想。

 でも、面白いかどうかだけで、文学の名作にはならないですよね。この小説の何が文学として素晴らしいのか。チープな表現になってしまいますが、「生きるとは何か」がテーマだからだと思いました。面白いかどうかなんて、小説を読んでいる時は読む推進力として必要だけど、読み終わってしまえばどうでもいい事。本当に重要なのはテーマであって、もしテーマが「あんまんと饅頭のどちらがうまいか」だったら、あとに何も残らないわけです。じゃあ何がテーマだったら、読んでいる万人にとって重要なんでしょう。普遍的なテーマを扱っているかどうか、だと思うんです。これはロスト・ジェネレーションの代表的な作品というだけあって、ものすごく虚無的。この虚無が、ろくに行動もそれほどせずウジウジひとりで感傷に浸っているのではなく、戦場に本当に行き、実際に銃を取って戦い、生きるためにあらゆる手を尽くし、心から女性を愛し…と、全力で生きてきて、結果として空しさを拾っています。この虚無感を通して「生きるって…」と考えさせられた、そんな感じでした。じゃ、その答えは?僕の場合、そういった事に納得のいく答えを示してくれた小説は読んだ経験がないです。あ、サルトルの『嘔吐』やニーチェの『ツァラトゥストラかく語りき』やバタイユを小説というなら、ちょっと別ですけどね。その先に進むには、小説や哲学や音楽だけでも、科学だけでも駄目で、小説や哲学や音楽が訴えているものを科学的に理解する事でようやく結論が見える、という感じなのかな?

 そんな具合で、小説というのは、娯楽以上のものをそこに求めてしまうと飽き足らなくなってくる形態のものだと思うんですが(結論を書く場合、たぶんそれを小説として発表しようとしないだろうし、そもそもそういうものを小説とは呼ばない)、でも人間として自分の人生に真剣に取り組むときには絶好の入り口になってくれるものなのかも。
 一般的にヘミングウェイの代表作といったら『老人と海』と『誰がために鐘は鳴る』だと思うんですが、僕的にはロスト・ジェネレーションの核心を突いた『武器よさらば』と短編集の中のいくつか(「兵士の故郷」「挫けぬ男」あたり)こそが、ヘミングウェイ最高傑作だと思っています。今の大学生って、真面目に勉強はするけど、ジャズもクラシックも聴かない、小説も読まないと聞いた事がありますが、アイドル追っかけたりアニメ観たりするひまがあったらこういうのを読んだ方がいいよ(^^)。暗く真面目に悩んでいた僕の場合、高校や大学の頃に読んだ小説や観た映画、聴いた音楽が、自分の人生を生きるヒントをいっぱい与えてくれた素晴らしい経験だったと今にして思います。ああ、若いうちにこういう小説を読んでおいて本当に良かったよ、ヘミングウェイ万歳!


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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
intoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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