
子どものころ、楽譜を読むのが苦手でした。ピアノはまあまあだったと思うんですが、とにかく楽譜音痴、初見なんてボロボロでした。子どもなので好きな事はいくらでもやるけど苦手な事はとにかくおっくう、いつまでたってもスコアリーディングは上達しませんでした。そりゃそうだ、練習しないんだから(^^;)。そんなある時、僕に可能性を感じてくれていたピアノ教室の先生が、集団レッスンの時に「○○くんはピアノが上手なのに、楽譜が読めないとプロになれないよ。
楽譜が読めないプロのミュージシャンなんていないのよ」と言われました。これほど説得力のある言葉もありませんでした。人から教えてもらうのが当たり前だった子供の頃の僕が、はじめて自分で何とかしないと思った瞬間だったかも。そこで意を決して、自分の小遣いで買ったのがこの本でした。この本、言葉づかいは優しいし、説明も初心者でも分かるように噛み砕いているんですが、実際には
子ども向けではなく、楽譜が読めない大人が対象の本じゃないかと思います。
この本、スコアリーディングで苦労している人は、一度読んでみる価値があるかも。少なくとも、子どものころの僕には、目からウロコな事がいっぱい書いてありました。
例えば、たぶんスコアリーディングの最初の壁(ギターでいうFコードみたいな感じかな?)、シャープとフラットです。僕だって子どもながらに楽典はやってました。でも、楽典だと「ト長調はファにシャープ、ニ長調はファとドが♯…」みたいに書いてあるじゃないですか。僕はそれを一生けんめい暗記して、でも何度やっても覚えきれず、ピアノの前に座るとアタマ真っ白。要するに、アタマで「C調はFがシャープ…」な~んていう覚え方が悪かったんです。じゃ、どうやれば良かったのか。ここで、「楽譜のしくみ」が登場します。要するに主音からのインターバルが問題なので、主音を変えると、全音と半音が混在している楽譜(またはピアノの鍵盤)上では、インターバルが狂う所があるんですよね。ここで「当たり前だろ」と思って軽く見て、結果いつまでも体に入らなかったのが子どものころの僕で、人の話を聞かないとか軽く見てしまうのは、ものを学ぼうとする人にとって最大の敵です。この本を読んで、「あ、ト長調の導音はF♯なんだから当たり前じゃんか」…そう、音をイメージすればよかっただけだったのです。
どうやって覚えるのか、何を考えればいいのか、こういうものをきちんと指導してくれたのがこの本で、そこがただ単に「シャープはF,C,G,Dという順でつく」みたいに書いてある本との大きな違いでした。言われれば当たり前、だけど言われないで自分ひとりで気づくのはかなり時間がかかる事ってあるんですよね。
他にも、示唆に富んでいる記述がいっぱいありました。「忘れたことよりも、それをもう一回読み直さなかったことのほうが大きな損なのです」とか、「楽譜を読みながらドミソと声に出して歌う」なんていう文章は、まさに自分に言われているよう。どうやって練習すれば覚えられるのか、音が聴こえるようになるのか、こういうのを馬鹿にしてやらなかった僕の胸に刺さりましたねえ。よく区別して覚えるとか、とにかくこの本から学んだことは多かったです。当たり前の事を丁寧に書いてある本なので、先生に叱咤激励される前の僕みたいに、ヒントを貰っても馬耳東風で自己流を通すとか、軽く見て「そんなの知ってる」みたいな言う人だと、ただの子ど向けの本に見えてしまうかも知れませんが…。
というわけで、
いつまでたってもスコアが読めるようになれない大人の人にこそ、この本はうってつけと思います。いつまでもスコアが読めるようになれない方は、むずかしい本を何冊も買いこんだり、逆に「サルでもわかる」みたいな何冊読んでもいつまでも初心者以上のところには行けない本を読むより、こういう立派な音楽教師さんが分かりやすくていねいに書いた本から始めると良いんじゃないかと!