『Explorations』に続き、これも1961年発表のビル・エヴァンス・トリオのレコードで、モダン・ジャズの名盤としても知られてます。このアルバムも、スコット・ラファロ(b) にポール・モチアン(dr) という不動のトリオ。ライブ・アルバムですが、お客さんの拍手の数の少なさが…な~んて思っちゃったりして(^^)。ブルースマンやジャズマンは貧乏の代名詞みたいなもんだから仕方ないっすね。時代的にも、ジャズミュージシャンのレベルアップに反比例するように、アメリカ文化はどんどん大量生産大量消費のチープなものになっていった頃ですしね。。
オールド・ジャズでコール・ポーターの曲「All of You」、ジャズとクラシックを股にかけたガーシュウィンの「My Man's Gone Now」、それに[不思議の国のアリス]、そしてラファロのオリジナル曲。
選曲からして知的です。そしてプレイも、ベースとピアノの即興上でのアンサンブルが見事です。ビル・エヴァンス・トリオのこういうのはインタープレイなんて呼ばれてますが、共演者に反応しているという意味ではそうかも知れないけど、実際には共演者というよりも音楽全体を見てアンサンブルを作ってる、という方が近いんじゃないかと。互いのプレイの丁々発止じゃないんですよね。ですので、インタープレイというのとはちょこっと違う気もするんですが、素晴らしいには違いないので、どっちでもいいか(^^;)。
また、ガーシュウィンの「My Man's Gone Now」あたりを聴くと、ジャズ和声の進化を思い知らされます。このへんのビル・エヴァンス和声が2000年代のモダン・ジャズにまで続いていて、逆にいうと今のオーセンティックなジャズは、このへんのジャズのエピゴーネン以上のものではない感じ。今と大体同じではあるんですけど、当時は模倣ではないので、意識はぜんぜん違うでしょう。やっぱり、ナイトクラブの軽音楽といっても、意識が高い音楽であった事はたしかだったと思います。僕には、
なんとか自分の音楽を作ろうと喘いでいるクラシック方面の作曲家が、生活費を稼ぐためにナイトクラブでジャズを弾いて日銭を稼いでいる、みたいな音楽に聴こえました。それはそれで、お客さんのために作ったエンターテイメント性より、やっている人そのものが聴こえる音楽という意味で、嘘がなくて素晴らしいのかも。
このレコード、残念なのは録音で、僕が持ってるのは国内盤のLPなんですが、ピアノがけっこう遠くて、かなり聴きにくいです。ピアノよりベースのスコット・ラファロの音の方がぜんぜんよく聴こえるぐらい。でも後日談がありまして…人のうちでヨーロッパ盤のLPとUS盤のCDを聴かせてもらった時がありまして、そしたら僕が持っている日本盤LPの方が全然音が良かった(^^;)。これってどういう事なんだろうか。きっと、ジャズマニアの人で「US盤が」とかいって、同じレコードを色々集める人って、そういう所を聴いてるのかな?貧乏人の僕にはとてもできない芸当です。金欲しい。
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