
AOR を代表するシンガーソングライターのひとり、
マイケル・フランクスが1975年に発表したセカンド・アルバムです。若いころ、どこが良いのかさっぱり分からないぬるい音楽にしか思えなかったAOR が、齢を重ねてから聴くとなんとも素晴らしく感じたりして。まったく自分の感性にも困ったもんです。後期
ドゥービー・ブラザーズとマイケル・フランクスは、僕にとって「大人になるまで良さが分からなかったAOR」の代表格といってもいいかも。
曲はミドルテンポで落ち着いたものが多く、演奏もハードに攻めるんじゃなくてメゾピで軽めにフュージョン的、ヴォーカルは中性的。夜に落ち着いた場所でリラックスしながら聴く音楽という感じで、
ひたすら気持ちいい。超気持ちいい、ああ気持ちいい。
中でも耳を奪われるのがフェンダー・ローズの心地よさで、これこそAOR という音楽を決定づけている楽器だと僕は思ってるんですが、この気持ち良さはやばい、こんな音、出すだけで気持ち良いじゃん、ずるいぜ。いったい誰が演奏してるんだ、とクレジットを見ると…うわあ、
クルセイダーズのジョー・サンプルじゃねえか!やっぱりずるいぜ。なーんて言いつつ、ジョー・サンプルは、僕はクロスオーバー時代のクルセイダーズの演奏より、ポップスで演奏してるものの方が好きなんです(^^)。他にも、ベースがウィルトン・フェルダー、ギターがラリー・カールトン。曲によってはストリングスも入るんですが、これも前には来ないで後ろの方で微かになってるぐらい。
僕がこのアルバムをはじめて聴いたのは高校生の時。何が駄目だったかというと、このヴォーカルの緩さと、曲がよく分からない所だったんじゃないかと。ヴォーカルはお世辞にもうまいとは言えないんですが、こうやって語るように歌うからこそ、この緩さが出てくるのかも。曲がはっきりしないのは、フュージョンやってる人がリードシート見て軽くセッションしたからじゃないかと。コードと歌メロしか形を認識できるものがなくて、印象的なオブリもカウンターラインも何もないもんで、曲の印象が残らなかったんじゃないかと。でも、この緩い雰囲気を楽しむ音楽なんだと思う事さえできていたら、若い頃でももう少し楽しめたんだろうな…いや、年齢的にも性格的にも、それを受け入れるのは無理だったかな。。
僕、若いころにAOR の名盤に色々と挑戦したんですが、軟弱に思えるものが多くて、AOR のレコードをけっこう売っちゃったんです。中には大人になったら良さが理解できたものもあったんじゃないかなあ。でもこのレコードが残っていたのは、どこかにいいと思う所があったのかも。聴き方によっては茫洋として退屈に感じるかもしれませんが、「これは雰囲気を楽しむ音楽なんだ」と思う事さえできれば、意外とグッとくるかも。ああ、取っといてよかった(^^)。
スポンサーサイト