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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『Art Ensemble of Chicago / A Jackson in Your House』

Art Ensemble of Chicago_Jackson in Your House 1969年、アート・アンサンブル・オブ・シカゴのデビューアルバムです!ロスコ―・ミッチェルのグループにジョセフ・ジャーマンが合流してバンド名を改めたんだと思いますが、ジョセフ・ジャーマンを入れたのは大正解だったんじゃないかな(^^)。

 音楽そのものの工夫より、全体がかなり演劇的に作られてる、というのが何よりの印象。途中でみんなが叫んだりするんですが、こういうのってオーセンティックなジャズではTPOとしてまずないし、演劇的じゃないですか。また、B面は詩の朗読が中心にあって(「広島が…」みたいな詩でした)、その上に単純なフラグメントが用意してあって、それを演奏したりフリーになったり、みたいな。音楽も、アメリカのブラスバンドみたいな明るい音楽が奏でられたりもするんですが、これも音そのものの感触じゃなくて、ブラスバンドみたいな音楽をシーンとして使ってそこに意味を持たせてある、みたいな感じ。だから全体として演劇的に感じたわけです。これがちょっと胡散臭くも感じるんですが、何回か聴いてるとハマる(^^)。本人たちが意識してるわけではないのかも知れませんが、ここにアメリカの公民権運動前後のアフリカン・アメリカンの方々の思想の共通性みたいなものを感じるんです。これって、ボクシングのアリや、ソウル・ミュージックあたりを聴いても同じ匂いを感じるんです。そこが面白かったです。
 でも、まだそんなにうまくない(^^;)。。もうちょっと後になるとなかなかすごい事になるアート・アンサンブル・オブ、シカゴなので、ジャズやロックだと活動しながら上手くなっていくってのはあるんだなあと思いました。クラシックだと、うまくないとそもそもデビューすら出来ないですからね。

 このレコード、もともとはフランスのActuel というフリージャズ系のレーベルのカタログの2番として出ていたんだと思いますが、僕が持ってるのは日本のPヴァインがリリースした300枚限定のLP。このジャケットがまるでインカ帝国か何かの怪しいイコンみたいなものを使っていてやばカッコいい!手に入れるのは難しいかも知れませんが、あのBYG/Actuel の安っぽいジャケットをかうなら、Pヴァインの限定レコードの入手を検討してもいいんじゃないかと(^^)。


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『Roscoe Mitchell Sextet / Sound』

Roscoe Mitchell Sextet Sound 1966年、シカゴのリード楽器奏者ロスコ―・ミッチェルが発表したアルバムで、これがアート・アンサンブル・オブ・シカゴの前身になったみたいです。メンバーには、レスター・ボウイ(tp)、マラカイ・フェイバース(b) なども参加しており、ジョセフ・ジャーマンやドン・モイエこそいないものの、たしかにアート・アンサンブル・オブ・シカゴのメンバー3人が既に揃ってました。

 これはアート・アンサンブル・オブ・シカゴというよりも、AACMの音楽に近いと思いました。これまでにAACM系の音楽で感想文を書いたレコードというとアンソニー・ブラクストンのBYG盤がありますが、あんな感じ。作曲部分は基本的に管楽器セクションの作曲に限定されていて、そこでの作曲はアンサンブルというよりもトゥッティ。フリーになるとフリー。こういうシーンをいくつかつなげてひとつの音楽にする、みたいな。で、プレイヤーが微妙にうまくないのがまたAACMっぽく感じたりして(^^;)。

 というわけで、60年代のシカゴ・フリーの熱気や妖しさや埃っぽさがビンビン伝わってきて、なかなか良かったです。シカゴの都会ではあるけどやさぐれている感じが音に出てる気がするんです、日本でいうと川崎とか呉みたいな。。でも音楽としてはセッションの域を越えてなくて、まだ革命前夜みたい。A.A.C.M の参加ミュージシャンがこういうセッションをくりかえしながら、ブラクストンのグループやAEOCみたいなグループが徐々に出来上がっていったんでしょうね。


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『B.A.ツィンマーマン:歌劇 《軍人たち》 コンタルスキー指揮、シュトゥットガルト州立管弦楽団』

Zimmermann Die soldaten ツィンマーマンさんのオペラの中で多分いちばん有名なもので、「第2次世界大戦後に書かれた最大のオペラ」なんて言われる事もあります。。「ある若き詩人のためのレクイエム」同様、これまたオケが巨大、大劇場じゃないと楽器がオケピットにおさまりきらないそうです。このCDの録音時は、オケの一部を劇場のリハーサルホールに入れて、第二指揮者を用意したそうです。

 この曲、ツィンマーマンさんの代表曲のひとつだし、「時間の球状形態」とか「引用」とかいろいろ言われていたので、僕はついつい音楽に注目しちゃいました。でも僕の場合、あくまでオペラの話の流れを中心に観賞した方が、圧倒的に面白かったです。よく考えたら当然ですよね、オペラなんだから。

 装身具商ヴェーゼナー家の美しい娘マリーが、婚約者同然の青年シュトルツィクスと、彼女に恋慕する男爵デポルトの間でゆれうごく。父親に「士官と関係を持った女は悪い評判がつく」と諭されるマリーだが、男爵の猛烈アピールと奸計の前に心が動き、デポルト男爵を選ぶ。ところがデポルトは、ほどなくして彼女を捨てる。次にマリーはマリ大尉に愛され、付きあうようになる。マリ大尉は誠実で二人は愛し合うが、身分違いの恋愛を憂いた大尉の母親に別れさせられる。マリーはいつしか「軍人相手の淫売」と罵られるようになる。一方、マリーをたぶらかしたあげくに捨てたデポルト男爵は、ある食事会でマリーをののしる話をする。それを聴いたシュトルツィクス青年は、毒を持って男爵を殺す。町に軍靴の音が響く。老ヴェーゼナーが物思いにふけって歩いていると、女の乞食が彼にすがる。彼は女乞食を振り払うが、振り払った女がマリーである事に気づかない。マリーは地面に泣き崩れる。

 ね?メッチャクチャ面白いでしょ?でも、音楽はクラシック・コンサートでは人気のない現代音楽系で、オケが巨大なので小さな劇場での上演は無理となると、日本で見る事は今後も出来ないんじゃないかなあ…。
 そして音楽。響きはいかにも前衛系の現代音楽で、刺激的です。ある意味で、騒音音楽的と言ってもいいかも。第4幕の冒頭の金管楽器のスタッカートの連続あたりは、リゲティの音楽のようにも感じました。ジャズのコラージュもあります。バッハのメロディの引用もあるらしいですが、僕は気づかなかった(^^;)。でも、音楽の横をつなぐ糸が見つけづらくて、音の塊が断片的に配置されて繋がってるように聴こえてしまいました。だから、話の筋を中心に聴くと、話が糸の役割を果たしてくれて、いい感じ聴こえるんでしょうね。

 というわけで、ツィンマーマンの音楽に求めすぎず、むずかしく考えすぎず、戦後最大のオペラとして普通に見たらすごく面白い作品なのかもと思いました。このCD、僕は日本語の帯のついたものを買いましたが、中身は輸入盤に日本語の解説と訳を挟んだものでした。この解説の冊子がちょっとした本より分厚くて、どこかで借りてきてコピーしようなんて無理、買った方がはやいです(^^)。日本での公演がほぼ不可能と思われる作品なので、日本語訳のついたこのCDの日本仕様盤を、ぜひ!


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『B.A.ツィンマーマン:ある若き詩人のためのレクイエム ベルティー指揮、ケルン響』

Zimmermann_Requiem Für Einen Jungen Dichter ひとつ前の日記に、「前にツィンマーマンさんの曲は聴いてみたことがあるけどよく分からなかった」なんて書きましたが、それはこの作品の事でした。「Requiem Für Einen Jungen Dichter」(ある若き詩人のためのレクイエム)は、ツィンマーマンさんが拳銃自殺する前年の1969年に作曲されています。たぶん遺作じゃないでしょうか。200人超えの巨大編成というだけでなく、その編成の内容がオーケストラに合唱にナレーション多数、それに電子楽器にテープ&巨大スピーカーにジャズバンド。当時僕は音大でピアノ科から作曲科に転科していまして、作曲科の人はみんなこの曲を知ってました(僕は知らなかった^^;)。でも先生も生徒も賛否両論はっきり分かれてたんですよね。何の先入観も予備知識もないままこの曲をCDで聴いた若いときの僕といえば…分からなかった(^^;)。当時の作曲の最前線の課題のひとつだった電子音楽にナレーションがいっぱい重なり、ビートルズやヒットラーの演説が流れ…要はコラージュ、作曲じゃなくって美術だなと思ったんです。コラージュというと聞こえはいいけど要はつぎはぎやパクリで、他の人のレコードや演説の録音を持ってきて切り貼りするなら、別に作曲家じゃなくったって、その辺にいる芸術家気取りのお兄ちゃんだってできるよな…みたいな。以来20年以上段ボール箱の奥底に眠っていたこのCDですが、なんとなくネットを眺めていたら…うおおお、2015年に日本初演されたのか?!ブログやホームページでコンサートの感想を書いている人多数、しかもみんな絶賛じゃないですか!ついでに主催のサントリー芸術財団のページを発見、この曲の背景やら何やらをはじめて知りました。

 音楽部分はとっても単純です。ベースは「グオーン」となり続けているテープ(電子楽器?)のクラスターと、レクイエムの混声合唱、そしてナレーション。ここにヒトラーの演説やなにやらが被さり、また基本のクラスター&合唱&ナレーションに戻って…の繰り返しです。このクラスター音がいかにも70年代前後の現代音楽っぽい音で、メッチャ刺激的でカッコいいです。でも、ある程度いいスピーカー&大きい音量で聴かないと、単にエアコンの換気扇のグオーって音に聴こえちゃうので注意(^^)。薄く電子オルガンが鳴ってるんですが、これがちゃんと聴き取れるぐらいの音量まで上げた方がいいかも。
 そして、上にかぶさってくるナレーションの数が、減ったり増えたりするんですが、多くなると4つも5つも聴こえて、何を言ってるのか聴き取り不能。しかも、センターで喋ってるナレーションはドイツ語なので、僕にはそもそも聴き取り不可能。そしてこのナレーションを重視して音楽が変化しないまま長く続くので、当時の僕は飽きちゃったんでしょうね。実際の狙いは、いくつかは聴こえるけどいくつかは断片しか聴こえなくて、それらを同時に聴いてどういう意味を見出すか…みたいな感じなのでしょう。

 ナレーションや演説の大まかな内容や、作品の背景が見えてくると、シアターピースに思えてきました。最初から作曲と思わず作品と思って聴いたら、感想はまた違っていたんじゃないかと。聴こえてくる言葉はレクイエムの典礼文、ヒットラーなどの独裁者の演説、それとは反対に戦争を嘆くマヤコフスキーの詩、そしてビートルズやフリージャズです。現代が重視されていて、ドイツ基本法や毛沢東の言葉まで飛び出してきて、戦争が終わったあとはビートルズみたいな文化が外から被さってきます。20世紀の色々な立場のヨーロッパ人が最初は何を理想としていて、それがどういう人々の思想(言葉)を生み出し、そしてどうなっていったか…これを叙事的に扱い、レクイエムとしているのだと思いました。いわゆる音楽ではなく、言葉で紡ぐ作品なんですね。

 この作品でいう詩人にはモデルがいると憶測されてるらしいですが、彼らの最後はすべて自殺。作曲家本人も作曲直後に自殺なので、もしかしてツィンマーマンは詩人と自分を重ねあわせていたんじゃないかと。でもそれだけでなく、このレクイエムの対象って現代人すべてなのかも。20代前半で聴いた時は超駄作、40代後半で聴いたら大傑作。いい加減と思われるかもしれませんが、どちらも立派な根拠がある感想だなという気がします。その境目にあるのは、これをいわゆる音楽として聴くか、言語を頼りにした舞台作品のようなものとして体験するか、ここにある気がします。

 最後に、このCDに関しまして。1986年録音で、レーベルのwergo はドイツのレーベルで、このCDが出た当時のドイツは、まだ東西に分かれていました。指揮はガリー・ベルティーニ(イスラエルの指揮者ですが、ここにも意味がある気が…)。オケはケルン放送管弦楽団、ジャズバンドはマンフレッド・ショーフ・クインテット(おお!)。このCDは、長期誠司さん監修の名著「作曲の20世紀」でも推薦CDとなっているほどに昔から名作と言われてるもので(昔はこれしかなかった?僕が音大の先生から薦められたのもこれでした)、100ページ超のブックレットもついています。これがすごくて、タイムシートの横に音楽の進行やセリフなんかも書いてあります…が、英語以外のセリフは僕には読めず_| ̄|○ウウ。この20世紀の超大作の日本語訳、どこか出してくれないかなあ…無理でしょうね。言葉だけでなく、こういう巨大編成の音楽は生で聴いたら迫力がぜんぜん違うだろうし、日本で次回公演される日を待つしかない…って、たぶん僕が生きてるうちはないだろうなあ。2015年の公演、東京に行ってでも見たかった。。

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『B.A.ツィンマーマン:協奏曲集 ギーレン指揮、バーデン=バーデン南西ドイツ交響楽団』

Zimmermann_Concert_Gielen.jpg 戦後の現代音楽作曲家のベルント・アロイス・ツィンマーマンさんの音楽は、折衷的と言われています。たしかにこのCDでは、響きはとっても現代音楽的だけど新古典な様式も従来のドミソ和声も用いてました。そういういい所どりの姿勢が、前衛全盛だった60年代ドイツでは軟弱にうつってしまったのか、ドイツ作曲界で傍流に追いやられました。そして本人、それを気に病んで自殺。ああ…。
 僕もツィンマーマンさんの曲は何度か聴いてたんですが、どうもよく分からなくって、これは解説をしてもらうかスコアを見るかでもしないと何とも言えないなと思ってました。でも、ドイツの受け売りの傾向が強かった日本では、日本盤は出る機会が極端に少ない状況。ところが2001年ごろ、タワーレコードに行くと…おおお~ツィンマーマンさんの日本盤が出てる、しかも解説が長木誠司さんだ!というわけで飛びついたのがこのCDでした。このCDに入ってる協奏曲は4曲で、チェロのものが2曲、あとはオーボエものとトランペットです。

・チェロと小オーケストラのためのカンタータ「カント・ディ・スペランツァ(希望の歌)」
・チェロとオーケストラのための協奏曲(パ・ド・トロワの形態による)
・オーボエと小オーケストラのための協奏曲
・ハ調トランペットとオーケストラのための協奏曲「誰も知らないわが悩み」

 チェロはハインリヒ・シフ(めっちゃ有名な人です^^)、オーボエはハインツ・ホリガー(現代曲を演奏するオーボエでいちばん有名な人です^^)、トランペットはホーカン・ハーデンベルガ―(知りませんでしたがメッチャうまくてビビりました)。ツィンマーマンさんの代表曲のひとつにチェロ・ソナタがありますが、協奏曲もチェロものを作っているし、チェロに思いれがあるのかも。

 そして、音楽です。響きはどの曲も基本的に前衛、構造は保守という感じでした。「チェロと小オーケストラのためのカンタータ」なんて、思いっきりABA3部形式ですしね。そしてもうひとつの特徴は、いくつかの音楽様式が混在するシーンがそれなりにある事です。「チェロとオーケストラのための協奏曲」なんて、チェロ協奏曲のくせにジャズ・ピアノが入ってきますし(^^;)。あ、この曲は、日本語解説つきのCDを買って、本当に良かったと思いました。というのは、この曲、元はバレエ音楽のために書いたスケッチを元にしてるんだそうです。いや~そういうのは解説抜きじゃわからない、もし解説を読んでなかったら「なんでチェロ組曲なのにこんななんだ?やっぱりツィンマーマンさんの音楽はデタラメだな」と思っていた事でしょう(^^;)アブナイアブナイ。そして、「オーボエと小オーケストラのための協奏曲」、いやあこれはすごい、僕程度の人間では安易にいいとか悪いとかいえないですが、すごい事やってるというのだけは分かります。

 印象だけでいえば、チェロ協奏曲2曲はイマイチ、オーボエ協奏曲の1~2楽章は引き込まれるほどの完成度、トランペット協奏曲はジャズになる部分以外はグッド。つまり、僕個人の好みは、前衛と新古典の折衷になる所は大歓迎のハラショーですが、ジャズやラテンや他の音楽をコラージュするような部分は疑問という感じなのかな?。そして、印象だけでなくて構造面ももう少し深く…という事になると、正直言って僕程度のアナリーゼ能力しかない人間には理解できない事が多くて、いい悪いなんてとても判断できないところが多かったです。
 このCDの中の曲でツィンマーマンさんがやった事って、もしシェーンベルク登場からトータルセリー全盛までの間にされていたら、高く評価されていた気がします。「オーボエ協奏曲」の第2楽章なんて、旋律は音列技法が支配的ですが、和声や様式やオーケストレーションはバルトークあたりの新古典。セリーの世界は原理主義者が多くて、誰かがやらなくちゃいけないこういう事にあまり手がつけられなかったんでしょうが、それをやって作曲界から排除されるんですから、ツィンマーマンは運がなかったというか、時期が悪かったとしか言いようがありません。…な~んて、僕もこのCDを聴くまではツィンマーマンさんの曲はあんまり好きじゃなかったんですけどね(^^;)。


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『アニマルズ / 孤独の叫び』

Animals_Inside LookingOut 英コロムビアに2枚だけアルバムを残して、アニマルズは英デッカに移ります。そしてデッカ時代からが、僕が大好きなアニマルズのスタート!アニマルズはデッカ時代に『Animalisms』『Animalization』というアルバムを2枚残していますが、たぶんUK盤とかUS盤とかの事情で収録曲が一部ダブってるんです。この『孤独の叫び』というアルバムは日本のテイチクが独自に編集したアルバムで、デッカ時代のアニマルズの録音をコンプリート!いやあ、なんていい仕事をするんだ、日本のテイチク素晴らしい!

 若い頃の僕がこのCDに手を出した理由は、グランド・ファンク・レイルロードがアニマルズの「Inside-Looking Out」(孤独の叫び)をカバーしていたから。ヴァン・ヘイレンがキンクスの「You Really Gotta Me」をカバーするようなもので、「え?こんなハードな曲をビートルズ時代のバンドが書いてたの?」みたいに思って興味を惹かれたのでした。ヴァン・ヘイレンの時は、キンクスに手を伸ばしたら予想の斜め上をいってキンクスの方がカッコよく感じたんですが、さすがにグランドファンクの演奏は強力だったので、「朝日のあたる家」みたいなショボイ音で演奏していたアニマルズの方がいいなんて事はないだろうと思ったんです。ところがアニマルズの方が抜群によかった!エリック・バードンのヴォーカルが良いというならまだしも、アレンジが完璧、さらにアニマルズの弱点だと思っていたギターまでグランドファンクよりカッコよかった!いやあ、ギターもバンドも表現力がコロムビア時代とは段違いでした。

 ギターの何が良くなったかというと、極端な言い方をするとコロムビア時代はコード押さえてジャカジャカばかりだったのが、デッカ時代は安易にストロークしてしまわずにヴォーカルに対するオブリを挟んでくるところ。そして、ギターがソロ・アドリブになるとリズムが実にアウトしていて、これが絶妙の表現になっていて最高にカッコいい。こういう表現って、クラシックやジャズだと難しくて、ブルースやブルース系のロックならではのものだと思います。で、ギターが変わるとバンドのアンサンブル自体が変わって、これでアニマルズの音楽が一気に進化したんじゃないかと。

 初期のビートルズとかストーンズとかベンチャーズみたいな、低音がまるでなくって音の減衰がやたらと速い、ペチペチ音がする初期のエレキギターの音ってあるじゃないですか。あれってどうやって演奏しても音がショボいもんで恰好よくならないと思いませんか?でも、あの音でカッコいいソロを取ってしまった奇跡の演奏がいくつかあって、チェス・レコードにある本物の黒人ブルースマンの演奏を除くと、アニマルズの「孤独の叫び」と、日本のジャックスの「マリアンヌ」は凄かったんです。
 「孤独の叫び」以外にも好きな曲(というより演奏)が結構あって、サビがカッコいい「炎の恋」、執拗に繰り返されるリフが黒くてヤバい「チーティング」や「モウディー」、ニーナ・シモンとはまた違った暗さがいい「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」など、最高です。でもアニマルズなので、明るい曲ですらほの暗いですけどね。。

 というわけで、初期アニマルズはこの英デッカ時代がブッチギリのかっこよさ。僕的には、初期アニマルズはこれさえあればあとはいらない1枚です。そしてここでアニマルズはいったん解散。翌年からメンバーを一新してエリック・バードン&ジ・アニマルズとして再生するのですが、そこからのアニマルズはビートバンドだったなんて思えないぐらいにカッコいいです。その時期のアルバムに関しては、またの機会にでも!


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『The Animals with Sonny Boy Williamson』

Animals with Sonny Boy Williamson アメリカ黒人音楽のカバーばかりやっていたイギリスのアニマルズが、本物の黒人ブルースマンのサニー・ボーイ・ウイリアムソンと共演したライブアルバムです。ところで1963年録音って、アニマルズのレコードデビュー前じゃないか!なるほど、デビュー前から評価も実力もあったバンドだったんだな。。こういうイギリスのR&Bバンドと黒人ブルースマンの共演って馬鹿に出来なくて、僕はフリートウッド・マックやローリング・ストーンズが本物の黒人ブルースマンと共演したレコードを聴いた事があるんですが、どれもなかなか良かったんですよ。なんでこれがレコードデビューするとショボい歌謡曲みたいになっちゃうんだろうかと思ったぐらいです。

 さて、アニマルズとソニーボーイの共演と言っても、すべてが共演してるわけじゃなくって、アニマルズがメイン。アニマルズだけの演奏が半分ぐらい、ソニーボーイのどソロが数曲、残りが共演してる状態でした。でもって…ソニー・ボーイがひとりでやってるやつが一番良かった(^^;)。歌もハーモニカも表現力がぜんぜん違う、やっぱりアコースティックって音色やデュナーミクのグラデーションが凄い。さらにサニーボーイのブルースハープはリズム面での表現もすごくて、これでは勝負にならないっす。
 アニマルズも悪くはなくて、それどころか初期のスタジオ録音よりだんぜん演奏が良かったです。聴いていて思ったのは、アニマルズは黒人音楽をやるにはギターが弱いのが辛いのかも。バンドは悪くなくていいヴォーカリストも持ってるのに、ギターの差がフリートウッドマックやヤードバーズやチッキンシャックに勝てない所なんだな…。でもって、この時代のイギリスのバンドでは「黒くてすげえヴォーカルだ!」と言われるエリック・バードン。それは事実だと僕も思うんですが、ソニーボーイが歌うと力量差は歴然。ソニーボーイのヴォーカルをすごいと思った事はなかったんですが、こうやって並べて聴いてしまうと表現力が段違いなんですね。ブルースって形式は鬼のように単純だけど、その分だけ表現に重点が置かれた音楽なんですよね。という訳で、アニマルズに関してはソニーボーイがブルースハープなりヴォーカルで参加してくれてる演奏の方がよかったです。アニマルズだけだと並に聴こえてしまうところで、ソニーボーイが「プオオオオオオ~~~ン!」ってハープを数小節吹くだけで「うおお~カッコいい!!」ってなるんですよ…って、やっぱりソニーボーイが凄いんだな。。

 色々書きましたが、英コロムビア時代のアニマルズのレコードではこれが一番良かったです。黒人のバンドブルースはハーモニカ奏者が重要と思ってる僕ですが、白人ブルースではギタリストが重要だと痛感したレコードでもありました。ちなみに、『アニマルズはギターが弱い』という僕の感想は、次のデッカ時代で克服されるどころか、感動してしまうほどになったのでした。そうそう、このアルバムを買うならボーナストラック満載で収録時間が倍ぐらいになってるCDがオススメです(^^)。


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『The Animals / Animal Tracks』

Animals Animal Tracks 英コロムビア時代のアニマルズが出したセカンドアルバム、1966年発表です。ジャケットが思いっきり『Five Live Yardbirds』風ですが、どっちが先だったんだろう。僕が持ってるのは例によって日本盤のボーナス5曲入り全19曲のCDで、日本タイトルは『アニマルズ No.2』。日本盤ボーナス入りを2枚買えば、コロムビア時代のアニマルズのスタジオ録音がコンプリート出来ると聞いて買ったのでした…完全にレコード会社の手の上で転がされてるな(^^)。

 なんといっても僕が衝撃を受けたアニマルズは、エリック・バードン&ジ・アニマルズにバンド名を変更してからのサイケデリック期なので、あれを知った後にこの初期アニマルズを聴くと、まだ習作期と感じます。それぐらいサイケ期が自分にとって衝撃だったんでしょう。でも、サイケ時代を忘れて聴くと、ゴーゴークラブのハコバンという感じで、これはこれで独特の味わいがあるな、みたいな。カバー曲が圧倒的に多いですが、考えてみればストーンズビートルズのデビュー盤もそうだったし、当時のイギリスのこういうバンドは、オリジナル曲を書く所まで来てなくて、ラジオやレコードで聴くアメリカ音楽のカバーをしてクラブで演奏する、という状況だったのかも。また、初期のアニマルズの音楽がゴーゴークラブっぽく感じるのは、実際にそういう所で演奏していたんであって、音楽だけをじっくり聴かせる場所でやってなかったという事もあるのかも。

 これも買う時には注意が必要で、同じタイトルなのにボーナスが入ってない国内盤があるので、買うなら19曲入りがオススメです!そして、調べていた気づいたんですが…EMIコロムビア時代のアニマルズの録音をすべて収録した『The Complete Animals』を見ると、合計で41曲入り。一方で全曲が聴けるはずの日本盤ボーナス入りを2枚買いそろえると合計40曲…1曲足りねえじゃねえか。Completeの方に入ってる「New Year Radio Spot」というやつが、タイトルからして曲じゃないという事なのかな?ラジオCMが入ってるとか?う~ん気になる。。
 

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『The Animals』

Animals.jpg ビートルズローリング・ストーンズを生み出した60年代ブリティッシュ・ビートの中でも「黒い」と言われた、エリック・バードン擁するアニマルズ、これは英コロムビアからリリースされたデビューアルバムで、1964年発表。僕が持ってるのは日本盤のCDで、ボーナス・トラックが7曲入った21曲入り。日本タイトルは『朝日のあたる家』でした。

 とはいっても、僕が最初にアニマルズに嵌まったのは『Winds of Change』あたりのサイケデリックなアルバムで、今でもアニマルズの絶頂期はサイケ時代だと思ってますが、一般的には「朝日のあたる家」や「ブーン・ブーン」をやっていた初期が有名なんじゃないかと。でも、僕が初期のアルバムに手を出したのはかなり後になってからでした。黒いと言ってもブルース方面じゃなくてR&Bっぽいな、みたいな印象だったから避けてたんです。で、ようやく手にしたこのアルバムを聴くと…R&Bとマージービートの間ぐらいで、大体イメージ通りで、想像と違ったのは、電子オルガンが大フューチャーだった事。電子オルガン大フューチャーのマージービートなんて記憶になかったので、このサウンドが初期アニマルズの特徴として印象に残りましたね。ただ、この電子オルガンの音がチープで痛かった(^^;)。電子オルガンの音を使って黒いビートミュージックをやると、ゴーゴークラブのセッションに聴こえてきちゃうんだな、みたいな。。もしハモンドB3とかフェンダーローズあたりを演奏してたら、もっとカッコよく感じたんだろうなあ。やっぱり、道具をケチっちゃダメですね(^^;)。

 カバーされてる曲は、R&B時代のジョン・リー・フッカージミー・リード、レイ・チャールズ、チャック・ベリー…なるほど、やっぱりR&B系の黒さです。マージービートというとまずはビートルズが思い浮かびますが、もしビートルズがいなかったとすると、ローリングストーンズ、ヤードバーズ、アニマルズ…かなり黒いシーンだな(^^)。「当時のイギリスの軽音楽のシーンはしょぼくて、みんなアメリカの音楽を聴いていた」とジョン・レノンが語ってましたが、その中で労働者階級の貧乏な若い人たちがこぞって黒人音楽に惹かれたのには、何か意味がありそうです。

 アニマルズは短い期間にレコード会社を3社渡り歩くんですが、英コロムビアからリリースされたスタジオ盤アルバムは2枚。このコロムビア時代のアルバム2枚は日本盤のボーナス曲入りで買う事をオススメします。というのは、昔って、アルバムにはシングル曲は入れないのが普通だったし、またUS盤とかUK盤とかで内容が違ったりするじゃないですか。でも21曲入りの日本編集盤は、オリジナルアルバム収録の曲をきちんと入れた上に、シングル曲などもいれて、2枚買えばコロムビア時代のアニマルズのスタジオ録音がすべて聴ける優れものなのです(^^)。気をつけないといけないのは、同じタイトルの日本盤でも21曲入りじゃないものがある事。また、オリジナル・アルバム準拠にこだわらないなら、『The Complete Animals』という2枚組が、コロムビア時代のアニマルズのスタジオ録音をすべて収録していて(でも本当は「Complete」ではないという噂も^^;)、しかもジャケットがカッコいいのでお勧めです。


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『バリ万華鏡 声・儀礼・竹の音楽』

BariMangekyou Koe Girei Take no Ongaku ジャワ島に色んな音楽がある以上、バリ島にもケチャやガムラン以外に色んな伝統音楽があるんだろうな…みたいに思っていたところで、こんなCDが目に留まりました。そりゃ買うでしょう(^^)。これは、バリ島にある色んな音楽を集めたCDです。キングのこのシリーズにしては珍しく、現地録音でした(^^)。

 1曲目チャプクン」は、バリ島のすぐ近くにあるロンボク島から持ち込まれた、祝い事の際に演じられるという合唱音楽でした。声で演奏するガムランというか、ケチャとガムランの合いの子というか、そんな感じの音楽。昔の日本の結婚式で、おっさんたちがみんなで佐渡おけさを歌う、みたいな感じなのかな(^^)?

 2曲目ガンバン」はガムランの演奏形態のひとつだそうです。5曲目のサロン」もガムラン系。ところで、どちらも楽器の名前でもあると思うんですが、音楽の名前でもあるのかなあ。ライナーを読んでも、そのへんがはっきりしませんでした。

 3曲目「ゲンゴン」と4曲目「ウングン」は、音楽の名称なのかよく分かりませんでした。どちらも口琴の名前ではあって、多人数でやるから、カエルがゲコゲコ言ってるみたい。バックの演奏は、日本のちんどん屋そっくりでした。チャンチキと笛と大太鼓ですからね(^^)。

 6曲目「キドゥン」は女性合唱でした。ライナーによると、バリ島では器楽と声楽がはっきり分かれていて、器楽はガムラン、声楽はトゥンバンと呼ばれるそうです。あれ?という事は、2曲目と5曲目のガンバンとサロンは、ガムランの中の下位分野という事なのかな?キドゥンは、トゥンバンの中のスカル・マディヨに属する宗教歌だそうです。おお、バリの音楽ではじめてつまらないものに出会った!…宗教歌は芸能じゃないから、面白さなんて追求してないんでしょうね。

Bali_Arja.jpg 7曲目はアルジャ(Arja)」という恋愛歌芝居だそうで、庶民の娯楽として人気があるんだそうです。音楽は沖縄民謡とガムランが混ざったみたいな感じで、チンドン伴奏で「島唄」を笛が演奏、それがアッチェルしたりリットしたり、みたいな。いちばん激しくなった所はアフロキューバンなみの熱さで、それが終わるといきなり展開部に!さすがはバリの芸能、高度だわ。。このアルジャという芝居、アドリブ要素が強くて、途中で役者が本気になって他の役者に殴りかかったり、芝居が終わると客同士がいつの間にか恋人になってたりするんだそうです。いや~、面白そうだな(^^)。

 8~9曲目は、比較的新しい若者の生み出した大衆音楽なのかな?8曲目はジョゲット・ブンブン、これが強烈!ものすごいスピード感、ガムラン界のスラッシュ・メタルだ!ジョゲットは一種の模擬恋愛の舞踊なんだそうですが、バリ西部では金属打楽器を使わずに竹の打楽器だけを使って、ジョゲット・ブンブンになったそうで。「ブンブン」と呼ぶ理由がなんとなく分かるほどのうねり具合、これはやばい。。いきなり全員でフォルテになったり、いきなりピアノになったり、徐々にではなくいきなりテンポが速くなったりと、一体どうやればこんな一糸乱れぬアンサンブルが可能なのかと度肝を抜かれました。ケチャもガムランもそうですが、バリ島の合奏の統率力は、考えられないほどのレベルの高さです。
 9曲目のジェゴックもすごかった!これは何と呼んだらいいのか…民族ミニマル・ミュージックという感じ。ジョゲット・ブンブンと同じように、竹製打楽器の大合奏なんですが、違うリズムがいくつも重なってひとつのうねりになる構造はケチャに似てます。でも、もっと野蛮でロックな感じ。

 バリやインドネシアの音楽って、ロックやクラブミュージックもすごいんですよね。このCDはあくまで民族音楽やバリ産音楽に限定されていましたが、さすがは世界有数の芸能都市、ものすごかったです。西洋音楽とはまったく別ルートの音楽にこれだけレベルが高いものがあるという事を知らない人は、ぜひ!


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『Bali | Music for the Shadow Play』

Bali Music for the Shadow Play キングレコードの世界民族音楽大集成シリーズの中のひとつ『ジャワの民俗音楽』で、インドネシアの影絵芝居(ワヤンの音楽に魅せられた僕でしたが、そのCDでのワヤンの音楽は残念ながら6分ほどの抜粋。すごく劇的な構成だったのに、これだと交響曲でいえば第1楽章だけ聴いてる感じなんだろうなあと、影絵芝居の音楽をもっとちゃんと聴いてみたくなりました。ところがそんなCDはなかなかなく…と思ったら、ありました!!ジャワじゃなくてお隣のバリでしたが、バリだったらジャワよりさらに劇的にするだろうからむしろ良いかも…と即購入!

 CD『ジャワの民俗音楽』で聴いたワヤンは、ライブで、曲が連続していて、しかもけっこう劇的に変化したのですが、このCDはひとつの曲に対してひとつのトラックという形での収録で、ショートピース集という感じでした。例えば、2曲目は「オープニングの歌のバックグランドに使われる有名なピース」、4曲目は「人形が歩くシーンのための音楽」みたいな。つまり、実際の影絵だと、こういう形で演奏するわけでなく、この前で歌が入り、物語の朗読が入り、影絵が動き、そのうしろでこれらの曲が繰り返されながらガムラン音楽のように波状に何度も押し寄せてきて…みたいな感じなんじゃないかなあ。
Bali_KageeSibai.jpg 楽器は、インドネシアらしく金属や竹の音階打楽器の合奏なのですが、音域の高い楽器だけで演奏していて、クラシックで言えばオーケストラじゃなく室内楽的、ジャズで言えばビッグバンドじゃなくてスモールコンボ的でした。ダイナミックさが薄れたように聴こえる半面、ものすごく上品。むしろ、こっちの方がジャワなんじゃないかと錯覚してしまうほどでした。う~ん、これはこれで幻想的でいいなあ。。

 そして、僕のつたない英語力でライナーを読む限り、影絵芝居は夜通し行われるそうで、つまりCD1枚フル収録のこのCDですらあくまで1部分なのかも。ただこのCD、ライブ録音には聴こえなくて、トラックも分かれているので、もしかすると影絵芝居で使われる曲のモチーフを、それぞれ録音したというものなのかも知れません。ただ、寺院のセレモニーの時は日中に客を入れないで行われる事もあるらしいし、そのへんの詳細は不明でした。そして、やっぱりバリ島のワヤンも、ジャワ島のワヤンと同じように、インドのマハーバーラタやラーマーヤナがストーリーの基本素材らしいです。

 このCDのオリジナル版のリリースは1970年。音がすごくいいので、最近の録音と思っていたのでビックリ。そして、インドネシアの影絵芝居だけを収録したレコードはこれが最初だったそうです。歴史的な1枚だったのか、気分で買っただけでしたが運命の出会いだったかも。芸能の島バリやジャワって、ガムランやケチャ以外にも本当に色んな芸能がありますね。ワールドミュージックを聴きはじめると、ジャズとかロックとかクラシックとかで、似たような音楽を何十曲何百曲と聴きつづけていた時の自分がもったいなく思えてきます。こんなに色んな音楽が、しかも素晴らしい音楽があるんだから、もっと世界を広くとらえないと…みたいな。これも、神と一緒に生きている島国の空気感が伝わってくるような、素晴らしいCDでした!


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『ジャワの民俗音楽 (世界民族音楽大集成15)』

Jawa no Minzokuongaku15 CD『ジャワ スンダの巨匠S.ナノ』で、「チュルンプンガン」とか「クトゥック・ティル」なんていう舞踊音楽や音楽があるのを知って、しかもそれがメッチャ面白いもんだから、ガムラン以外のジャワの音楽もいろいろ聞いてみたいと手を出したCDです。このCDはそういう僕の需要にもってこいの内容で、ジャワってこんなに色んな音楽があるのかと驚きました!先に言うと、このCDは超おススメ!

 ライナーによると、バリ島が村単位で文化を持っているのに対して、ジャワ島は重層化した文化が並行して存在している土地なんだそうです。元にあったのは東南アジア共通の文化で、その上に仏教やヒンズー教というインド文化が重なり、さらにイスラム教が重なり、16世紀には西洋文化が重なって、さらにマジャパヒト王朝の封建制国家が長く続いたもんで(13~15世紀にかけての約200年)、それらが更新されずに階層状態になって併存してるんだそうです。そして、このCDを聴くと、本当に色んな音楽が混じったり共存したりしてるんだなと実感しました。

 僕的な分け方で大きく分けると、完全にジャワ化した音楽と、他の文化との衝突で生まれた音楽のふたつに分かれると思いました。前者はM1~5、後者はM6-9という感じ。面白かった音楽だけ備忘録として書いておくと…

 1曲目の大道音楽家の音楽がメッチャ面白かった!ジャワでは大道音楽家は「チョケアン」とか「バラガン」と呼ばれるらしいんですが、歌の掛け合いが入った小編成ガムランみたいな音楽でした。まったりして心地よく聴いていたところで途中でリズムがいきなり変わったりして、そういう所もジャワのガムランに似てました。途中でバイクがとおりすぎる音が入ってたのも東南アジアっぽくて良かったです(^^)。

Jawa_Kageesibai.jpg 2曲目は影絵芝居の音楽。インドネシアで影絵芝居は「ワヤン」とか「ワヤン・クリット」と呼ばれてるそうで、内容はラーマーヤナとかマハーバーラタみたいに、インドの叙事詩がもとになってるものが多いそうです。このCDに入ってた音楽は、組ゴングや音階打楽器を使って音楽がアッチェルしたりリットしたりするので、ガムラン的な面もあるんですが、どこか中国音楽のようにも感じたのが面白かったです。ストーリーは歌で語られていましたが、言葉が分からんし、途中でフェードアウトしやがった(;_;)。これはメッチャ面白そうと感じ、後にインドネシアの影絵芝居の音楽だけを扱ったCDを買ったんですが、それは次にでも紹介しますね(^^)/。

 3曲目は仮面舞踊の音楽。それにしても、本当に芸能が多いですね。仮面舞踊「トペン」は影絵芝居(ワヤン)に並ぶジャワを代表する芸能だそうで、中でもチルボンのトペンは有名なんだそうです。音楽面での影絵芝居との最大の違いは、歌詞が入らない事。声は入ってますが、「ワ~」みたいに、掛け声やコーラスのような感じ。音楽もけっこうシンプルで循環してマッタリな感じ…と思ったらさすがインドネシア、ここ一番ではやっぱりアッチェルして大盛り上がり。こう来ると分かっていたのにこれが気持ちいい(^^)。単純な恩恵を繰り返し、それが高揚していくという形式なので、トランスを目的とした音楽のように聴こえるんですが、それだけに音楽だけでなく仮面舞踊の方も見てみたかったです。

 4曲目はガムランですが、ここに入ってるガムランはあまり大編成ではないものでした。しかし、循環する音楽がテンポを自在に変えていく様は何度聴いてもいい (^^)。こういう音楽って、インドネシアの音楽以外にあるのかなあ。

 6曲目はクロンチョン・トゥグ」という音楽で、オランダによる植民地時代に入ってきた西洋音楽がジャワ化して大衆音楽になったものだそうです。ギターやウクレレを使って優雅に歌うので、音楽そのものはハワイアンっぽくて個人的にはあんまり面白くなかったですが、こういう歴史を肌で感じられる所が民俗音楽の面白さ(^^)。

 7曲目はレヨ」という道行芸能で、日本でいう獅子舞みたいなものだそうです。実際に、獅子舞のようなものと、馬を表現しているもので道を練り歩くんだそう。さっきはヨーロッパかと思ったら今度はタイとインドネシアが混じったような音楽。タイっぽいというのはチャルメラのような音型意識キックボクシングを思わせるからなんですが、この楽器はスラン・プレットというらしいです。

 8曲目は剣舞についている打楽器演奏。音楽そのものはそこまで面白いものじゃなかったんですが、マジで芸能が多い島なんですね。

 9曲目はイスラムの宗教歌。話では、イスラムがインドネシアにまでたどり着いているというのは聴くんですが、白いあの衣装を着ているわけでもないのでピンとこなかった僕でしたが、なるほど宗教歌ですらインドネシア音楽と混じって独自のものになるのか。印象だけでいうと、イスラムというより仏教音楽に近い響きで、映画『心中天の網島』の中で武満徹さんが書いた曲に似ていました。ついでに、ちょっとした発見があって、あの映画音楽の一部が、明らかにジャワの音楽を参照したものであることが判明。最後の首吊りのシーンの音楽とか、最初の方に出てきたゴングの音とか、「あ、ジャワの音楽が元ネタか」と思いました。なんかスッキリ、長年の疑問が解決した気分です(^^)。

 ジャワはバリに並ぶ芸能の島で、これほど芸能が多い土地は世界に他にないなんて言いますが、本当にそうなんじゃないかと思いました。そして、影絵芝居ワヤンと仮面舞踊トペンは、実物を見てみたいと思ってしまいました。それにしてもこのCDはすごい、ガムラン以外のジャワの音楽がこんなにいっぱい入ってるCDははじめて、しかも内容が素晴らしい!これは超おススメです(^^)。


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『ジャワ スンダの巨匠S.ナノ』

Jawa SundanoKyoshou S Nano インドネシアの音楽で、ガムランでもケチャでもない音楽を聴いたのは、僕はこのCDが初めてでした!このCDに入っていたのは、「チュルンプンガン」と、「クトゥック・ティル」または「ジャイポンガン」という、西ジャワに住むスンダ人の庶民に親しまれてきた芸能の音楽でした。

 1~5曲目に入っていたチュルンプンガン」は合奏音楽。このCDでは歌入りで、アンサンブルはカチャピ(CDのジャケットに写ってる箏状の楽器)、ルバブクンダン(太鼓)、ゴオン(ゴング)の4者でした。特に高揚する事もなく、独特のマッタリ感をもってたゆたうような音楽。歌と伴奏には聴こえず、歌も含めてすべての楽器が対等に聴こえました。ジャワの音楽の例に漏れず、「これって楽器同士で音階やピッチは合ってるのか?」という不思議な感覚。ナノ・Sというマルチプレイヤーさんが参加してるんですが、その人が書いた曲が2曲入っていて、それは伝統曲よりも音の衝突が少なくて、西洋音楽に影響されてしまった東南アジアや東アジアの音楽に重なって聴こえてしまいました。…伝統的なジャワ音楽のヤバさに嵌まってるな、俺(゚∀゚*)。

 6~8曲目は「クトゥック・ティル」または「ジャイポンガン」という舞踊に使われる音楽でした。クトゥック・ティル」は民族舞踊で、昔は女性の歌手や踊り子相手に、男性が即興で踊って楽しむものだったそうです。この伝統を引き継いで1970年代の終わりに生まれたのが、「ジャイポンガン」という舞踊だそうです。ただ、CDだと舞踊は見えず音楽だけ。そして音楽だけ聴くと、「チュルンプンガン」との差は分かりませんでした。しかし、これも独特な音楽だな、聴いていて引き込まれてしまいます。。

 ジャワの音楽らしい独特のマッタリ感のなか、音階というか音程のずれが古典音楽にもアヴァンギャルドにも聴こえてしまうという、なんとも新鮮な音楽でした。こんな不思議な音楽は、インドネシア以外じゃちょっと聴けないんじゃないかと。「どれもこれも似たようなもののキンタロー飴な普通のロックやポップスやクラシックやジャズには飽き飽きしてるぜ!」という人に大推薦です!民族音楽はこれだから面白い。。


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『古都・風雅頌 中部ジャワのルバブと歌』

KotoFuugaryou_ChuubuJawa no Rubabu to uta インドネシアの音楽と言えば、バリ島の音楽ばかり聴いていた若い頃の僕でしたが、気持ち良すぎるチルボンのガムランを聴いてから、ジャワ島の音楽にも魅了されてしまいました。バリ島のケチャやガムランがパワーみなぎる音楽なら、ジャワのガムランは幻想的で夢の中にいるよう。隣の島で音楽の形式はそっくりなのに、音楽の印象がまったく逆。僕がジャワときくとカレーだけでなく音楽にも手を出すようになったのは当然の流れだったといえましょう(^^)。

 うわあ、これもムチャクチャ気持ちいい、そして幻想的!うたた寝をして、今が現実なのか夢なのかが曖昧な状態にいるような気分。CDのタイトルにもなっているルバブとは、ジャケットに写っている胡弓のような形をした擦弦楽器で、音色も胡弓に似ています。ルーツがアラビア音楽のラバーブにあるそうなので、ジャワ島がイスラム教に染められた時に、一緒に入ってきたんでしょうね。このCDに入っていた音楽はルバブが中心にいるのですが、「俺が主役だ!」という演奏でなくて、どこに向かうでもなくフワフワただよってる感じ。

 ルバブの演奏自体はガムランとの共通項は感じなかったんですが、常にうしろにガムランで使われるグンデル(金属製の音階打楽器)やガンバン(竹製の音階打楽器)がキンコンカンコンとゆるーく鳴り響きつづけてるので、全体の雰囲気がチルボンのガムランそっくりでした。というか、ライナーによるとこれもガムランみたいです。中部ジャワのガムランは、儀式や祭りでは20~30人の大編成で演奏するらしいんですが、もう少しかるく楽しもうとするときは少人数で演奏するんだそうです。こうした少人数編成のアンサンブルをガドンと言うそうで、このCDはこの編成。

 僕の耳に不思議に感じたのは、ルバブとうしろで鳴っている音階打楽器群で調があってないように聴こえる所がある事でした。調なのかピッチなのか分からないんですが、ずれて聴こえるんです。でも、絶対音感的に言うと、インドネシアの音楽は1オクターブを12分割したとは思えない微妙な音程が色々入っているし、僕の耳が西洋音楽に飼い慣らされてしまってるという事なんでしょうね(^^;)。合ってないとは感じてしまうんですけど、じゃあ「悪い」と感じるかというと、そんな事は全然なくって、これが気持ちいい。。平均律や倍音堆積で求めた音階だけが音楽の絶対法則ではまったくないという証拠みたいなもんですね、インドネシアの音楽は(^^)。中部ジャワのガムランで使う音階はペロッグとスレンドロに分かれるそうですが、このCDに入ってる曲は、1曲目がペロッグ音階リモ調、2曲目がスレンドロ音階ソンゴ調、3曲目がペロッグ音階バラン調だそうです。

 なんと気持ちいいんだ、この音楽を流してるだけで部屋の中が楽園になっていきます。究極のレイドバック・ミュージック、これは超おすすめ、聴いているだけで南国の楽園ムードに満たされてしまう音楽って、魔術に近いなあと思って、すっかり仕事をやる気がなくなってしまった僕なのでした(^^;)。


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『Art Pepper Quartet / Modern Art』

Art Pepper Quartet Modern Art これは1956~57年録音ですが、56年録音も入ってるので今回の56年のアート・ペッパーをまとめて聴くぞ大会の中に入れてしまおう、そうしよう。メンバーは『The Art Pepper Quartet』とドラムだけ変わっていて、Art Pepper (asax)、Russ Freeman (p)、Ben Tucker (b)、Chuck Flores (d)。

 あれ?こんなにいいレコードだったっけ?これはいいぞ…『The Art Pepper Quartet』がけっこう普通だったのに比べて、アルバム全体にレイドバックした心地よさが漂っていて最高に気持ち良かったです!2曲目「Bewitched」なんて絶品の心地よさでした(^^)。
 でも癒し系なだけでなく、なかなか考えて作られたアルバムだとも思いました。まず、8曲中4曲がアート・ペッパー作曲となかなか気合いが入ってるます。そしてアルバムの構成に工夫があって、最初と最後にブルース曲を置いていて、これでアルバムの印象がかなりブルージーになったんじゃないかと。例えば、1曲目「Blues in」とラスト曲「Blues out」はベースとのデュオで、ベースはあくまで四分音符でコードのバスを提示する程度で、ほとんどペッパーさんのブルージーなアドリブを堪能するだけにしてあります。そしてこのプレイがめっちゃいい!!アート・ペッパーは白人だけど、スタン・ケントン楽団にいたからこういう黒いアプローチも出来るんだなあ。そして「Cool Bunny」はアップテンポの曲で、しかしやかましくならずに品よく決めます。いやあ、これはいい。。

 アート・ペッパーの名盤と言ったらマイルス・デイヴィスのリズムセクションと共演した『Art Pepper Meets the Rhythm Section』をあげる人が多い気がしますが、あれはウエストコースト・ジャズのリラックスしたシャレオツな感じがなくって、悪くはないけどウエストコースト・ジャズらしくないです。そんなわけで、僕の中でのアート・ペッパー最高傑作はこれ!このレコード、マイナーレーベルから出たもんだから昔は入手が難しかったらしいですが、今ではウエストコースト・ジャズの大名盤として容易に入手できます…いい時代になりましたねえ(^^)。


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『The Art Pepper Quartet』

Art Pepper Quartet これもアート・ペッパーの1956年録音です。ようやく自分のリーダーグループ、ワンホーンカルテットだ!失敗を乗り越え、色んな下積みをして認められて一本立ちという、人生の正しい道を進んでる典型と言えそう…って、この後もアート・ペッパーは麻薬中毒で刑務所や病院に何度も入るんですよね。。まあそれも昔のジャズマンなら普通にあった事で、人間らしいですよね(^^)。最近は細かい事で世間がうるさすぎる…。メンバーは、Art Pepper (asax)、Russ Freeman (p)、Ben Tucker (b)、Gary Frommer (d)。

 若い頃に聴いた時にはあまりに普通すぎて、良さが分からないレコードでした。特に目立ったアレンジを施してるわけでも、「うおお、すげえ!」って演奏が聴けるわけでも、レイドバックしまくった気持ちいい演奏なわけでも、楽しい気分になるエンターテイメントでもないんです。でもいま聴くとなんかいい…独特の涼しさがあって、それが良いと感じてるみたい。演奏が落ち着いていて、アドリブでツーファイブの速いフレーズを叩きこむときでも熱くなるんじゃなくて音色を大事にして演奏していて、そういう所が大人に感じるんです。この演奏をした時のアート・ペッパーはまだ若いはずなんだけど老練してるというか。バンドもチェット・ベイカーとの共演の時みたいな即席のジャムセッションという感じじゃなくて、けっこういい感じ。なるほど、アート・ペッパーの名盤のひとつに数えられるのも分かるなあ。

 けっこう渋い音楽なので、ジャズファンじゃない人が聴くと面白くないだろうし、ジャズファンでも若いと「たいくつだな」と思っちゃうかも。でも、ウエストコーストジャズのクールさを良いと感じられるぐらいの年齢になって聴くと、これがなかなかよかった(^^)。大人になると、このぐらいのクールさが心地よくなったりするんですね(^^)。


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『Chet Baker & Art Pepper / Playboys』

Chet Baker ArtPepper_Playboys これも1956年録音のアート・ペッパー参加セッションです。ウエストコースト・ジャズきってのイケメンのチェット・ベイカーとアート・ペッパーの共演盤という事で、タイトルが「プレイボーイズ」…ど直球だな(^^;)。売るためには何でもありなセンスがアメリカだなあ。ところでこのレコード、3管なんですがテナーサックスのフィル・ウルソはプレイボーイじゃないのか、それはそれでかわいそうだ。メンバーは、Chet Baker (tp)、Art Pepper (asax)、Phil Urso (tsax) の3管に、リズムセクションはCarl Perkins (p)、Curtis Counce (b)、Larance Marable (dr)。

 ヘッドやトゥッティ部分こそ書かれてますが、あとは全部オープンパート、セッション的なアルバムでした。ところで、管アレンジって、同じ3コースでもイーストコーストとウエストコーストで匂いが違うと感じるのは僕だけでしょうか。もちろんそう思わない曲もあるんですが、「Resonant Emotions」あたりはウエストコーストだなって感じます。分析すればウエストコーストらしさを出してるノートとか、なんかあるんでしょうね。テナーサックスの動きがそうなのかな?

 明るい曲想の曲を、跳ねるように楽しげに演奏するものが続きますが、目が笑ってないというか、どこか棒読みのセリフのような、ショーとしてやってる感じがしました。まあ、「チェット・ベイカーとアート・ペッパーの共演だ!」なんて感じで、いかにも音楽とは関係ない所で作られた企画っぽいですしね、セッションでサクッと普通にやったら大体これぐらいの所に落ち着きそう、みたいな音でした(^^;)。当時のレコード会社が考えていたジャズって、「楽しくリラックスした時間をあなたに!」ぐらいのものだったんだろうなあ。こういう安易な事やってるから、ウエストコースト・ジャズは廃れていったわけですね。。


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『The Marty Paich Quartet featuring Art Pepper』

The Marty Paich Quartet featuring Art Pepper 1956年録音のアート・ペッパーのレコードを色々聴いてみよう、そうしよう。そんなわけでまずはこれ、マーティ・ペイチのバンドにアート・ペッパーが参加した有名な1枚で、ここからアート・ペッパーの快進撃が始まりました!メンバーは、Marty Paich (p)、Art Pepper (alto sax)、Buddy Clark –(b)、Frank Capp (dr) です。

 マーティ・ペイチはピアニストで作曲家でアレンジャー。僕は特に作曲家アレンジャーとしてのマーティ・ペイチが大好きで、これはそういうところの魅力が思いっきり出たアルバムと感じます。逆にいうとピアニストとしての評価はそんなに高くなくて、ディレクターもそう思ったのか、このレコード、アート・ペッパーのサックスの音が巨大で、ペイチさんのピアノはよく聴こえない(^^;)。そんな次第で、マーティ・ペイチのピアノではなくアレンジの素晴らしさを堪能できる曲がいくつかあって、たとえば1曲目「What’s Right for You」。サックスとベースのデュオだけで始まり、Bメロでようやくピアノとドラムが入ってきます。そしてAに戻るとまたデュオ、しかしここはフェイクが許されていて、ABABの次にC…これぞアレンジに優れる白人優位のウエストコースト・ジャズの本領発揮!そして、フロントを務めるアート・ペッパーのメロうかつ見事なソロもいい!
 2曲目の「あなたと夜と音楽と」も、気の利いたイントロ部が追加されていてカッコいい!やっぱりホモフォニーで作ってある曲って、作曲はメロディと和声の骨格という大ざっぱなフォルムの良し悪し以上のものは表現できなくて、そこから先はアレンジによるところが圧倒的に大きいですよね。ジャズというとアドリブと思われがちですが、アレンジでいい仕事してるジャズってやっぱり素晴らしいと思います。でもこの曲を聴くに、やっぱりペイチさんはアドリブがうまくないな(^^;)。。

 すべてがアレンジに凝っているわけじゃないんですが、他の曲はバンドがうまくサンサンブルしていて、またウエストコースト・ジャズ特有の知的でありつつもリラックスした雰囲気が最高。そして、ペイチさんのリーダーグループではありますが、本当にアート・ペッパーがど真ん中で大活躍なので、アート・ペッパーのリーダー作と言っても過言ではないぐらいです。
 アート・ペッパーはスタン・ケントン楽団出身で、うまいだけでなくえらくイケメンだった事もあったからか、52年にはリーダーアルバムをいくつか吹き込んでたんですが、麻薬でワッパかけられてシーンから消えちゃいました。そんな絶望の中、出所したペッパーに手を差し伸べたのがマーティ・ペイチだった事になります。のちにアート・ペッパーはペイチさんに恩返しをするんですが、そういう所も素晴らしい。ペイチさんのアレンジやアンサンブルの良さもあって、僕は56~57年のアート・ペッパーの録音の中ではこのレコードがかなり好き。『Modern Art』の次に好きかな?大推薦です!


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書籍『1984年のUWF』 柳澤健

1984nen no UWF 面白すぎてメシも食わずに一気に読んでしまいました。柳澤健さんというルポライターさんの本は、昔「1976年のアントニオ猪木」も読んだ事がありまして、それも最高に面白かったですが、こっちも負けないほど素晴らしかった(^^)。一世を風靡したプロレス団体UWFの実際を、かなり公平な目で書いたルポルタージュ本です。猪木からUWFの流れのプロレスの大ファンだった僕は、この本で書かれている試合や出来事をみんなリアルタイムで知っているので、読んでいて「そういう裏があったのか」「なるほど」と、舞台裏や種明かしを知る感じで、メッチャ楽しかった!
 
 今の時代、プロレスを八百長と思ってない人なんていないでしょうが、昔だってそうだったと思います。でも、僕が子どものころのある期間だけは、リアルかフェイクか混然とした時代があったのでした。それは、猪木さんが異種格闘技戦をやった頃から、佐山さんや前田さんや藤原さんがいたUWFの頃まで。「ガリガリで動きの遅い馬場がチャンピオンの全日はさすがに八百長だろ。でも、動きは速くて技も多彩な新日はリアルなんじゃないか?」僕が小学生の頃、友だち間の認識はこんな感じ。とはいえ、新日本だって完全に信じてたわけじゃなくて、リアルかフェイクか疑心暗鬼。プロレスは強い方が勝つルールでしたし、またその強さにしびれていたので、その強さが本物であってほしかった、それがリアルであって欲しいと望む心理だったのかも。純真だった子供の僕たちは、優雅な全日のプロレスを芝居と割り切って楽しむ心のゆとりがなかったんですね(^^;)。そして、「ガチであって欲しい」を裏づけしてくれる救いが、異種格闘技戦の猪木だったり、ロープから跳ね返って来ないUWFでした。実際、その戦いの中にはリアルファイトが少し混じっていたので、嘘と本当を混ぜられて、子どもが判断不能になったのも仕方ない。そこにロマンがありましたね~。

 この本は、事実をルポするスタイルなので、信じたい人にはつらい内容もちょっとだけあるかも。でも、何でもかんでも全否定ではなく、何がフェイクで、なにが本物だったのかが分かるし、あくまで公平な書き方なので、僕には最高に面白かったです。僕がプロレスを観なくなってからもう25年近くたっていますが、猪木の異種格闘技戦あたりからUWFまでのプロレスは本当に面白かった!今となってはどれがリアルでどれがフェイクかなんてどうでも良くなっていて、あれだけ熱狂させてくれたことに感謝。そして、実際に何があったかをスッキリ整理してくれたこの本にも大感謝です。UWF関係の舞台裏をつづった本はゴマンと出ていますが、1冊だけ読むならこれが一番面白くて分かりやすい!時系列で書いてくれてるので浅いファンの人でも安心して読めそう。猪木、UWF、総合格闘技のどれかひとつでもハマった事がある人なら、間違いなく楽しめる本じゃないかと!


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書籍『真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男』 田崎健太

SinsetuSayamasatoru_TigerMask to Yobareta otoko ダイナマイト・キッドを語って、この人を語らないわけにはいきません。日本に限らず世界的に見ても前代未聞の異次元のプロレスラーにして日本初の総合格闘技の創設者、佐山聡さんです!ある世代の男子で長嶋茂雄に熱狂した事のない人がいないのと同じように、僕と同じ世代の男子で佐山さんに熱狂しなかった人なんていなかったんじゃないかなあ。それぐらいのスーパースターでした。

 この本、ノンフィクションとしてムッチャクチャ素晴らしいです。プロレスの本って、面白おかしく虚実入り混ゼて適当に書くというのがスタンダードだったりするじゃないですか。でもこの本は2年以上もかけて関係者に取材を行って(57人に取材、参考文献は80冊ぐらい…実にちゃんとしてる^^)、話が食い違っている所はそこを指摘するなどして筆者の主観を避けた、実に見事なルポでした!プロレスのきちんとしたノンフィクションって『1976年のアントニオ猪木』あたりが最初なんでしょうが、こういうちゃんとした取材をして出来たプロレス本って、子どもの頃に見ていたギミックだらけのプロレスの舞台裏や事実を知る事が出来て、すごく面白いのです。

 とくに興味を惹かれた部分は、佐山さんの幼少時からプロレス入りまでと、プロレスをやめてからのシューティング以降の事が書かれているところでした。なるほど、僕にとってはテレビやビデオで見る事が出来たタイガーマスクやUWF時代が佐山さんのイメージですが、佐山さんにとってはその時代が逆に例外なんですね。山口で育った学生時代の佐山さんは、正義感の強い殺し屋みたい(^^;)。朝鮮人学校の生徒が幅を利かせて友達たちが毎日恐喝されている状態で、「そいつらの顔の特徴教えてくれ」と佐山さんが言ったら、翌日から朝鮮人学校の生徒が道を開けるようになったんだそうで。佐山さん、何をやったんだ(^^;)。

TigerMask_sobat.jpg 子どもの頃から佐山さんの夢は一貫していて強くなる事で、プロレス雑誌を買いあさり、猪木さんにあこがれていたそうです。だから柔道部に入ってもレスリング部に入っても、ぜんぶプロレスを想定。プロレスに入った後も、猪木さんに「いずれ新日本プロレスは格闘技を戦うことになる。その格闘技レスラーの第1号がお前だ」と言われ、ずっとそれを想定して練習していたり。これは新日でのプロデビュー→UWF→シューティングと一貫してるんですね、なるほど。
 やらせではなく実践を志向したシューティング以降の章は、リアルファイトの恐ろしさやトレーニングの過酷さが伝わってくるものが多くて、ぞっとしました。試合で死ぬ選手、目に指を突っ込まれて失明する選手、また佐山さんのしごきで「ああ、俺はこのまま死ぬのかな」と意識を失っていく選手。あまりに殺伐としていて、一歩間違えれば死ぬこともあるこういう世界には、アウトローな感覚の人以外は入っちゃいけないと感じました。

 そして、佐山さんと猪木さんの似てるところが切なかったです。佐山さんも猪木さんも、ある専門分野のスペシャリストの頂点にいた人で、壮大な夢を持っていて情熱が凄いんだけど、ある意味で世間知らずだし金に無頓着。技術屋だけでいられたら良かったのかも知れませんけど、それじゃ技術屋は商人に使われるだけで、それはそれで悲劇で「格闘技」なんて出来ないんでしょう。考えが理解されず、自分が作った団体から追い出されるところもそっくり。佐山さんが修斗を追われたとは知りませんでしたが、身銭を切って1億円も借金しながら団体や選手を守ろうとしたのに、それが下の人間には伝わらないんだなあ。人に施すときは見返りはないものと思えなんて言いますが、これは会社なんかでも思うところはあるんじゃないでしょうか。愛情をかけてかばった後輩や社員から牙をむかれる、とかね。上の立場の視点から物を眺められない人って多いですから、愛情を相手に実感させるというのも大切な技術なんだろうな、な~んて読んでいて思いました。

 この本を読む前の佐山さんのイメージは「空前絶後、異次元の技を次々に繰り出した天才」というものでしたが、この本を読んだあとは「日本で初めて総合格闘技の技術体系を整備して、グレーシー柔術のようにリアルファイトで勝てる集団を作り出した人」というイメージに変わりました。日本の総合格闘技の原点は猪木道場にあったんだなあ…な~んて改めて痛感しました。いやあ、この本は面白かった!


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書籍『ピュア・ダイナマイト ダイナマイト・キッド自伝』

Pure Dynamite_DynamiteKid 昨2018年に他界してしまったプロレスラー・ダイナマイト・キッドの自伝です。僕はタイガーマスクと戦っていた時のキッドのプロレスが大好きでしたが、どういう人だったのかぜんぜん知りませんでした。この本では、キッドが歯に衣着せることなく赤裸々に語っていて、メッチャクチャ面白かった!とにかく口が悪い(^^)。。

 この本、キッド自身が、子どものころからプロレスで体が壊れて一生車椅子から立てなくなった時までを、時系列にバンバン喋っています。大きく分けると、格闘一家に生まれた幼少時からボクシングやセメント系レスリングをしたデビュー前まで。デビューから新日本プロレス時代まで。全日本移籍時代。WWFを主戦場にした時代。以降、体がボロボロになって引退し、その後どうなったか。
 話に軸がないので、「あの時、ハリー・レイスのパンツをウンコまみれにしてやった」とか、「テリー・ファンクが、荷物が何も入ってない鞄をさも重そうに引きずって、それを手伝おうとしたCAが力任せにその鞄を引っ張って吹っ飛んだ」とか、そんな事まで書いてあります(^^)。そしてそれが面白い!でもそれを面白いと思えるのは、僕がダイナマイト・キッドに子どものころ熱狂したからで、キッドを好きだからなんだろうなあ。嫌いだったら、こんなあぶないヤツはごめんだね。。

 そして、まったく忖度なくガンガン書いているのがいい!普通だったら「これを言ったらまずいかな」と、気をつかって口を閉ざしそうな事までガンガン書いてます。例えば、「全日本は三沢光晴という若手レスラーにタイガーマスクのギミックを使わせて、佐山が新日本にもたらしたのと同じ大ブームを期待した。だが三沢タイガーと佐山タイガーをどう比較しようにも、それはできない事だ」(P.130)とか、みんな思ってても言わない事を、当事者のキッド自身がずけずけ言ってます(^^;)。あ、あと、こんな書き込みも。「猪木がお辞儀をしたと思ったらそのマフィアの男が猪木の顔に平手打ちをかました。それも他の日本人レスラーが大勢いる前で」(P.97)…いやあ、これは口が裂けても言っちゃいけないアンタッチャブルな話題じゃないのか。。

DynamiteKid.jpg キッドから見た色んなレスラーの評価も興味深かったです。僕みたいなアマチュアが見ても「これはレベルが違うわ」と分かるほどのあのキレとレスリング・テクニックどおりに、キッド自身は、幼いころからボクシングもレスリングも習って育ったそうです。特に、キッドのレスリングの才能はビリー・チェンバーというシューターから早くから見出されて、学生の頃からシュート・レスリングをみっちりたたき込まれたそうです。ちなみに、僕はキッドをビリー・ライレー・ジム出身かと思ってたんですが、ライレー・ジムは本当にハードで2~3回しか行かなかった…キッドですらハードだったのか。それぐらい本物なキッドなので、褒めるも貶すもあけすけで怖いもの知らず。ホーガンの評価なんて、「レスラーとして見た場合、彼にはまったく能力がなく」(P.146) なんて言っちゃってます。キッドみたいなガチな人から見たら、ああいう技のないアメリカンレスラーがそう見えてもおかしくないんでしょうが、こういう言葉に説得力があるのも、キッドのものすごいレスリングを見せつけられてきたからなんでしょう。

 ホーガンや某レスラーたちの評価が低いのは納得でしたが、ハリー・レイスやバッドニュース・アレンの評価が高いのは意外。アレンなんて「俺がプロレスの世界で最も激しいレスラーだとみなす4,5人のうちのひとり」(P.105) というほどの高評価。へえ、アレンは肉体は凄いけど技のないレスラーと思ってたけど、実際のところは違うんですね。総じてキッドの評価が高いのは、イギリスのビリー・ライレー・ジムの選手と、日本のレスラー、逆にダメだと思ってるのがWWFみたいでした。日本では、セメントが出来る本当のレスラーは新日のガチ勢で、全日はそういう技術は全然ないけど全力でしていたので好ましく思ってるみたいでした。体が壊れる身体ダメージの蓄積で一番大きかったのが佐山との戦いで、でも佐山との戦いがいちばん素晴らしい試合だったとも語ってます。たしかに、あんな凄いプロレスは後にも先にも見た事ない。。このへんは、ファンが感じる印象と同じなんですね。

 キッドの実像がビンビン伝わってきたのも面白かったです。幼少時も、プロレスラーになってからも、とんでもない悪ガキで喧嘩屋。マクドナルドでジプシー・ジョーの背中に放火して楽しんだり、背中を強く叩いたファンを壁に投げ飛ばして蹴りを入れて逮捕されたり、気に食わない奴を控室でもリングでも本当に潰してしまったり。逆に、恨みを買って、バックヤードでルージョーズにナックルダスターを使って襲われて歯を4本折られたり。キッドの場合はすぐにパット・パターソンや他のレスラーが駆けつけてセーフだったらしいですが、こういう時に救出が間に合わず死んだのがブロディなんでしょう。こういう危険領域を超えて鼻で笑ってるあぶない感じ、アル・カポネとかのギャングの幼少期とぜんぜん変わらないというか、もう普通の人とは人種が違うんだろうなあ。

 そして…車椅子生活が続き、最後に他界してしまったキッドですが、キッドや佐山さんがいなかったら、僕の幼少時は何倍もつまらないものだったと思います。それぐらい、興奮させてくれるものを子どものころに見せてくれました。いまさらですが、ダイナマイト・キッド、天国でやすらかにすごしてくれ、そしてありがとう!これは本物のアウトローが書いたメッチャ面白い本でした。キッドのプロレスに感動した事のある方は、ぜひ!


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書籍『マリア・カラス オペラの歌い方 ジュリアード音楽院マスタークラス講義』 ジョン・アートイン著

MariaCallas_Opera no utaikata マリア・カラスがジュリアード音楽院で行った講義録です。これは聴く専の人が読むものではなく、アマチュアであるにせよ自分でオペラをやっている人向けでした。というのも、この本の大半が、オペラの有名な演目のある個所をどのように解釈し、どのように歌うかという事に割かれていたもんで、そう思いました。僕が読む本じゃなかった(^^;)。

 でもって、ベル・カントとか呼吸法とか発声法とかディクションとかの指導はしていなくて、それは出来るのが大前提で書かれていました。なるほど、マスタークラスですね。この本、ニコラ・レッシーニョという指揮者とマリア・カラスによる短めのプロローグ、そして本編の講義が73曲分300ページ超!そして短いエピローグという感じです。本編は、この間日記に書いたヴェルディ「リゴレット」「アイーダ」とか、他に自分がCDで持ってるオペラの曲のところしか読んでません(^^;)。

 というわけで、この本の本来の読み方じゃない事は重々承知してるんですが、僕は最初の序文で大いに勉強させられました。指揮者レッシーニョの言葉では、長年の上演で形成されてきた「こうすると良い」という伝統が、学ばれもせずに壊されるのはどうなんだい?かといって伝統になんでも従えというのも違う。要は、伝統的な歌い方が求められる理由を学ぼうとも理解しようともしないところがまずいんだ、みたいな。で、この本は、口伝で伝えられてきたオペラの伝統がはじめて書物としてまとめられたものなんだそうで。
 マリア・カラスの序文で、みのがしやすそうだけど重要な事を言ってそうな部分。「歌えるようにするには、どのように呼吸をしたらよいか等をきちんと学ぶ」、「声はしかるべきポイントに運ばれれば、音量は大きすぎず、同時に響くようになる」。特に個人的にずっしり来たのは、「ステージに立ち始めると勉強に戻るのが難しくなって、これは深刻な問題。だからといって、謙虚さはこの世界に生きるには美徳とならない」。なるほど、これって出来るようになるまでステージに立つのを拒んでばかりではダメだと言ってますよね。出来ないのにステージに上がる決断をすればいいわけではないでしょうが、出来なくてもステージに上がる決断をする何かを持っておけ、ぐらいに覚えておきたい言葉でした。

 本当のマスタークラスのところは1/3も読んでないんですが、なるほどプロの世界はこれだけ細かい所まで考えを張り巡らせて作りあげてるんだな、と感動を覚えました。アマゾンのレビューとかで、どう見ても音楽を学んだことすらなさそうな人が偉そうな上から目線で書き込んでる事がありますが、こういう本を一度でも読んだ事があるなら、絶対にああいうことは書けないんじゃないかと思っちゃったりして(^^)。ピアノだとショパンの弟子がこういう本を書いてくれていますが、オペラをやる人は絶対に読んでおくべき本じゃないかと思いました!


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『ヴェルディ:歌劇《ファルスタッフ》 アバド指揮、ベルリンフィル』

Verdi_Falstaff_BerlinPhil.jpg ヴェルディ最後のオペラです。初演は1893年…って、80歳でこのオペラを書いたのか、すごいなあ…。内容は喜劇で、ファルスタッフというのは主人公のひげおやじの名前です。

 あらすじは…
 ひげづらで楽天家の中年騎士ファルスタッフは、フォード夫人とペイジ夫人のふたりにラブレターを出します。文面はまったく同じで、どちらかがひっかかったらいいやというほどのいい加減さ。これを知った両夫人を含む女性たちは、ファルスタッフを痛い目にあわせてやろうと画策します。一方、自分の夫人にラブレターが届いた事を知ったフォード氏は、心中穏やかでなくなります。そんなフォードは娘を医者と結婚させようとしていて、ほかに恋人がいる娘は悲嘆にくれる状態。婦人たちの画策でどぶに放り込まれるわ、さんざんな目にあうファルスタッフですが、最後にだまされていたのは…

 僕がこのオペラに手を出した理由は、あるクラシック評論家が「イタリアオペラはモンテヴェルディ『ポッペーアの戴冠』に始まってヴェルディ『ファルスタッフ』に行きつく」なんて書いていたからだったんですが、僕には音楽的にも物語の内容的にも、そんなたいそうなものには思えませんでした。音楽なんて、前奏曲もないままいきなり始まるほど重要視されてない感じだし。古い映画やオペラを楽しむ時って、前奏曲を聴いている間にこちらの体勢をととのえるもんで、いきなり始まったからちょっと焦った(^^+)。。というわけで、そんな身構えるものじゃない、二転三転していくお気楽極楽な喜劇と思って楽しむオペラと思います。この物語、シェークスピアの「ウインザーの陽気な女房たち」という話を元にしているそうですが、シェークスピアをぜんぜん読んだ事のない僕は最後まで落ちも知らないまま楽しむ事が出来ました。落ちは「おおっ!そう来たか」って感じで見事!


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『ヴェルディ:歌劇《アイーダ》全曲 レヴァイン指揮、メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団』

Verdi_Aida_Levine.jpg スエズ運河を作った時に出来たカイロ歌劇場のこけら落としの演目としてヴェルディに作曲依頼が来たのがこのオペラの始まり。というわけで、エジプトを舞台にした壮大なオペラです!…って、内容はやっぱり椿姫リゴレットと似て、少女漫画風なんですけどね(^^)。ストーリーはこんな感じです。

 古代エジプトはエチオピアと戦争してました。エチオピアの王女アイーダはエジプトの捕虜となっていましたが、うまく身分を隠してエジプト王女アムネリスの召使いになってます。そんなアイーダは、エジプトの将軍ラダメスと恋仲。一方でアムネリスは将軍に恋慕。
 エチオピア討伐に成功した将軍は国王に褒美としてアムネリスを与えられますが、アイーダを好きな将軍は困ってしまいます。ついでに、この戦の捕虜の中にエチオピア国王にしてアイーダのとうちゃんが混じってます。とうちゃんはラダメスをそそのかしてエジプトを滅ぼそうと提案、そこにアムネリスが来て、将軍はとうちゃんとアイーダを逃がしてやります。
 これに怒ったエジプト国王は将軍ラダメスを地下に幽閉。しかしその地下にはアイーダが忍び込んでいて、将軍ラダメスとアイーダは抱き合って、ふたりで死を共にする。

 音楽ですが、エジプトが舞台ではありますが、プッチーニの「蝶々夫人」みたいに異国情緒たっぷりに仕上げてあるわけじゃないです。有名な「凱旋行進曲」がいい例で、エジプト音楽なんてまったくといっていいほど取りいれてない(^^)。いつか、エキゾティカという音楽を紹介した事がありましたが、西洋世界って自分たちが中心であって、他の世界の理解というのも、異文化を理解しようとするんじゃなくって、あくまで自分たちで思い描いたイメージで済ませるんですよね。現代のグローバリゼーションの考え方に「自分たちを中心に世界をグローブする(掴む)」という考えがあると思うんですが、そういう自己本位な考え方は十字軍遠征の時から何にも変わってないです。

 そしてこのオペラ…ああ、また主人公が愛のために死んだ(T_T)。このメロドラマなパターンが、19世紀イタリアのオペラのパターン、舞台がエジプトだろうが現代だろうが関係ないです。日本の昔の少女漫画の多くは、ぜったいに19世紀オペラを題材にしてるな。そして…ワンパターンだと分かってるのに泣ける。。どうせ映画やテレビドラマを見るなら、オペラは話が映画やテレビ以上に面白いし、音楽は完全に上を行ってるので、たまにはオペラを見るのもいいんじゃないかと(^^)。


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『ヴェルディ:歌劇《リゴレット》全曲 マリア・カラス(sop)、セラフィン指揮、ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団』

Verdi_Rigoletto_MariaCallas.jpg ヴェルディ&マリア・カラスの組み合わせでは、こういうものにも手を出した事があります。椿姫ほどではないにせよ、これも超有名なヴェルディのオペラ「リゴレット」、話としては椿姫よりこっちの方が面白かった!

 あらすじは…
 リゴレットは、領主であるマントヴァ公爵に気に入られている道化役者です。ところがマントヴァ公爵が好色で、すぐ女に手をつけるクズ野郎。娘を公爵にもてあそばれた伯爵を怒らせたり、色々と恨まれます。この色ボケ公爵が教会で見初めた娘というのがリゴレットの娘ジルダ(マリア・カラス)で、ジルダも公爵に惚れます。公爵から愛の告白をされたジルダはのぼせ上りますが、ところがクズ公爵はさらに他の娘にまで横恋慕。その現場を見たジルダはショックに打ちひしがれます。あちらこちらから恨まれまくりのクズ公爵はリゴレットの雇った殺し屋に命を狙われますが、公爵を助けてくれとボケ公爵の新しい情婦に頼まれたジルダは男装し、公爵の身代わりになって殺される決意をします。公爵を殺したはずのリゴレットは、死んだ死体が自分の娘である事に気づいてフィナーレ。ああ、椿姫に続いてまたしてもマリア・カラスは死んでしまった(T_T)。

 マリア・カラスより先に、マントヴァ公爵役のジュゼッペ・ディ・ステファノというテノールが凄くて、これにやられました!冒頭から派手で凄いんですが、有名な「女心の歌」(「か~ぜ~の~な~かの~は~ね~の~よ~おに~」というアレです)も見事。そして、主役リゴレットを務めるティㇳ・ゴッピのバリトンはさらに見事!役的に色んな表情が求められたと思うんですが、この使い分けが素晴らしかったです。このCD、ゴッピの名唱を聴くだけでも価値がありました。そして、マリア・カラスは歌がうまいかどうか以前に美声。ルックス含め、たしかに無垢な悲劇のヒロインにピッタリ。いや~イタリア・オペラは個人技が凄いです、さすがはオペラやカンツォーネが盛んな歌の国だなあ。録音は1955年で、あまりいい音じゃないです。オケなんてピットに入ったまま吊りマイクだけで録音したみたいにモケモケ。そもそも、ステレオじゃなくてモノラルですし。でも、主要歌手の声はしっかり聴こえて、カラスやゴッビという名歌手の歌は十分に堪能できました(^^)。

 リゴレットは椿姫の2年前の1851年に作られたオペラで、これでヴェルディは「イタリアのヴェルディ」から「世界のヴェルディ」に飛躍したそうです。さすがイタリア・オペラ、エンターテイメント性が高くて、悲劇なのに見た後に満足感が残る感じ。音楽も台本も難しすぎず高尚すぎず、肩ひじ張らずに楽しむ事が出来ました(^^)。


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『ヴェルディ:歌劇《椿姫》全曲 マリア・カラス(sop)、ギオーネ指揮、サン・カルロス歌劇場楽団』

VelDI_Tsubakihime_MariaCallas.jpg 19世紀フランスのオペラ作曲家の代表格がビゼーなら、19世紀イタリアのオペラ作曲家の代表はヴェルディではないでしょうか?!オペラ「椿姫」はヴェルディの代表作のひとつで、劇中で歌われる「美に飾られた楽しい杯で」は、聴けばみんな知ってる曲じゃないかと。他にも有名曲が盛りだくさんで、バッハやベートーヴェンのあとに聴くと完全に娯楽、テレビドラマを見ているぐらいの気楽さで楽しい(^^)。そうそう、ソプラノを歌ってるマリア・カラスは…僕が説明するまでもないですね、マイケル・ジャクソンビートルズとは比べ物にならない実力を持ったアイドル、世紀のプリマドンナです!文化中心地がアメリカに移ってしまう前までの西洋世界って、作家でも音楽家でもきちんと実力ある人が人気があったのがすばらしいです。このCDでの歌唱もすごい!

 「椿姫」のストーリーは単純明快、誰が見ても楽しいと思います。パリ社交界で人気の美人ヴィオレッタが、純朴な青年から「こんな生活から足を洗おう」と求婚され、その愛を受け入れます。でも青年の父は、ヴィオレッタに「息子があなたにうつつを抜かして財産を注ぎ込んでいるから別れてくれ」と頼みます。それは誤解だと説明するヴィオレッタですが、青年のために別れを決意します。出て行ったヴィオレッタを恨んだ青年が、賭けの場で偶然ヴィオレッタに出会い、怒りをぶちまけます。かわいそうな椿姫(・_・、)。しかし、青年はのちに真実を知り、ヴィオレッタのもとに駆けつけます。しかし…

 ストーリーはベタ中のベタ、僕はこれとそっくりな少女漫画を3つぐらい知ってますが、分かっていても面白い(^^)。19世紀のイタリアとフランスは音楽不毛の時代かもしれませんが、大衆オペラが面白かったんですね、きっと。そりゃ芝居に楽しかったり美しかったり感動的な音楽がついていたら、面白さも倍増して当然じゃないかと。これがのちに映画にとってかわられ、次にテレビになる、みたいな。

 マリア・カラスの椿姫の録音はいろいろあって、50年代のものだけでいくつもあります。その中でギオーネ指揮のこの58年録音は比較的新しい録音で、マリア・カラス全盛期。歌がメッチャいいです。でも新しいといっても58年ですから、音はチャップリンの映画に流れてるような古い管弦の音なんですけどね(^^;)。でも僕、こういう古い管弦の録音の音って、独特の魅力があってけっこう好きです。管弦のあの古い音が苦手な人にはオススメしませんが、そうでなければ、椿姫とマリア・カラス全盛期の超絶的な歌唱を同時に楽しめるのでおすすめです!


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『矢沢永吉 / KAVACH』

YazawaEikichi_Kavach.jpg 1980年、矢沢永吉さんがCBSソニーからワーナーパイオニアに移籍した最初のアルバムです。とはいえ、バンドメンバーは木原&相沢のNOBODYチームにマーチャンさん、サポートはキーボードがサトジュンさん、ベースが後藤次利さん、サックスがジェイクさんと、ソニー時代の矢沢ファミリーとまったく同じチームです。

 このアルバム、アイドル歌謡なみにヴォーカルが大きくて、ここまでやっちゃうとタレントのアルバムみたいで嫌だな…。ミキサーはCBS時代と同じ吉野金次さんなので、音の質は似てるんですけどね。。そして、曲もアレンジも演奏もソニー時代と同じ感じなので、そろそろ飽きてきてしまいました(^^;)。日本人初の武道館ワンマンコンサートや後楽園スタジアムコンサートという社会現象レベルのイベントを成功させた後だからか、祭りの後の静けさのような印象を受けてしまった、というのもあったかも。

 ただ、ぞっとするほど素晴らしい曲とアレンジが2曲。「夕立ち」と「So Long」です。「夕立ち」は、楽式が単純なリート形式でなく、それでドラマチックになっている所が見事。イントロの後にAを2回繰り返し、サビに入らずにイントロに戻り、次のAはギターソロ。そして初めてくるサビが劇的で、ピアノとシンセストリングスで切なく盛り上がり、その響きが消え去る前にAに戻します。いやあ、この劇的な感じは、大人になったいま聴いてもしびれました。。
 そして、アルバムラストの「So Long」は、恐らく矢沢さんの書いた最も美しいバラード。ちょっと専門的な事を書くと、トニックの代理♯Ⅳm7-5を変形した♯Ⅳdimに行ってすぐ戻すんですが、差はトニックの長三度がステイするか半音落ちるか。この聴感上の印象が、この曲の大サビ前までのすべてを支配しているといっても過言ではないです。こういう声部の線のプログレッションへの挑戦は4年後に発表する『E'』というアルバムで結実するジャズコード・プログレッションの最初の成果だったんじゃないかと。同じ事がこの曲の大サビの劇的なコード進行にも言えて、それって知っているかいないか、そして半音進行のよじれと引き戻しをどこに作れるかというロック/ポップスから半歩踏み込んだ編曲ですが、ここに踏み込めるポップスやロックの人って、当時の日本だとジャズ系以外では少なかった気がします。これ、当時に矢沢さんに出来た技とはとうてい思えないので、ピアノ&シンセの佐藤準さんのファインプレーだったんじゃないかと。

 矢沢さんがワーナーに移った理由はたぶんアメリカ進出で、それは翌年のスタジオアルバム『YAZAWA』から。それだけにこのアルバムはソニー時代の余韻というか、まだ初期矢沢スタイルというか、そんな印象。それでも、まだ70年代の日本のロック/ポップス系のレベルにとどまっていた矢沢さんや日本のスタジオミュージシャンが、次のステップに進む予兆が「夕立ち」と「So Long」の2曲にあらわれていると感じました。そんなわけで、僕的には、この2曲を聴くためのアルバム。この2曲だけでも、このアルバムは聴く価値があると思いました(^^)。それにしても、このジャケットはカッコいいな‥。


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『矢沢永吉 / ゴールドラッシュ』

YazawaEikichi_GoldRush.jpg 永ちゃん、1978年発表のソロ4枚目のスタジオアルバムです。参加ミュージシャンは木原&相沢の矢沢ファミリーに加え、ベースに後藤次利(ベースが動きまくりでメッチャかっこいい!この時代の矢沢さんのスタジオレコーディングのキーマンのひとりは、間違いなく後藤次利さんだと思います)、キーボードに坂本龍一ドラムはポンタさんにつのだひろ、パーカッションは斉藤ノブ、ブラスセクションはジェイク・E・コンセプション…日本のスタジオミュージシャンのトップがズラリです。そりゃいい演奏になるわな。。

 ソニー時代の矢沢さんの代表作といわれる事もあるこのアルバム、いい曲が集まっているかというと、意外とそんな事なかったです。素晴らしいのは曲じゃなくてアレンジ。B面1曲目「さめた肌」は、冒頭は無伴奏のギターリフで始まるんですが、リズムが入ってくると、リフの1拍目が休符だったことが分かり、これでリズムがよじれて感じるというからくり。人って最初に出た音を1拍目として数えるじゃないですか。それを利用したトリックですね。
 ストリングス・アレンジが巧みなのはA面1曲目「ゴールド・ラッシュ」。ヘビーロックナンバーだったこの曲、後半になってストリングスが重なっていき、リフに対するオブリとなり、次第にリフがバッソ・オスティナートと化して弦が主旋律に入れ変わる…ロックバンドをメインにした楽曲で、よくこんなアレンジを思いついたもんだと思いますが、誰が考えたんでしょうか、すごい。このアレンジが、洋楽では絶対に聴けない素晴らしい音楽を作り出したと思っています。
 アレンジのもうひとつの秀逸さは、増やすのではなくて、引き算の美学。良いアレンジは余計なものがひとつもないアレンジなんて言いますが、録音した後に、いらないものを消していく作業もしている形跡があります。例えば、「今日の雨」という曲だと、歌メロに対してオブリを挟むリードギターがかすかに聴こえるんですよね。これって、演奏はしたものの、曲の後半から入ってきた方がドラマチックになるから前半をカットしたんじゃないかと。でも、他のブースに音がもれていて、よく聴くとかすかに聴こえる…みたいな。

 そして、やっぱり詩が素晴らしいです。このアルバムの詩でシビレタのは、なんといっても大ヒットした「時間よ止まれ」。作詞は山川啓介さん。このカッコよさは今さら僕が説明するまでもないですね。こんなセリフ、軽い人が言ったら歯が浮きそう。「時間よ止まれ」なんて言って成立するヴォーカリストって、どれぐらいいるでしょうか。沢田研二に矢沢永吉…あとはちょっと思いつかないなあ。

 汗をかいたグラスの冷えたジンより、光る肌の香りが俺を酔わせる
 思い出になる恋と西風が笑うけれど、この人に賭ける

 3枚目『ドアを開けろ』から5枚目『Kiss Me Please』まではどれも矢沢さんの初期代表作といっていい完成度ですが、ことアレンジに関していうと、このアルバムがいちばん優れているんじゃないかと。70年代日本の超一流スタジオミュージシャンが結集して作ったアルバムとしても秀逸な1枚と思います!


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『矢沢永吉 / ドアを開けろ』

YazawaEikichi_Doa wo Akero 1977年発表の矢沢永吉サードアルバム、ここから数年の矢沢さんのアルバムのクオリティは半端ではなく、ソロ・ミュージシャン矢沢永吉の伝説の始まり!
 まずは、メインとなるプレイヤーが固まります。のちにNOBODYを結成する木原敏雄&相沢行夫というふたりのギタリスト、これが素晴らしい!うまい下手ではなく、リハを納得いくまで続けてものにしないと、ジャズでもタンゴでもロックでも、バンドってだめですよね。それがきちんとしたのが何より大きかったんじゃないかと。
 そして残りは当時の日本の一流スタジオミュージシャンがずらり。ベースの後藤次利とキーボードの今井裕はサディスティックスからの参加。スタジオミュージシャンのトップクラスとして、サックスのジェイク・E・コンセプション、パーカッションの斉藤ノブさん、みたいな。これでセカンドアルバムまでは借り物感が拭えなかったバンドの音が一気に躍動!それにしても、後藤次利さんのエレベは絶品だな。。この頃になると、日本のポップ/ロックのシーンもジャズベー全盛になって、ちょっと前の「ボンボン」じゃなく、「ブーン!」になったんですね(^^)。

 バンドが安定した上に、ロックナンバーもミディアムもバラードもいい曲ぞろい。「世話がやけるぜ」「燃えるサンセット」「バーボン人生」「チャイナタウン」が1枚のアルバムに入っているというのは反則でしょう(^^)。年100本のライブをやってるのに、いつ曲を書いてたんだろう、永ちゃんは…。
 そして、何曲かに入っているホーンセクションやストリングセクションのアレンジが見事!大名曲「チャイナタウン」のストリングスアレンジは絶品です。そうそう、この77年アレンジの「チャイナタウン」は、昭和歌謡が好きな方だったら絶対に聴くべき大名曲。コーラス形式ですが、ストリングスアレンジの見事さで、全体が序破急と盛り上がっていく構成に変わっている魔術。マイルス・デイビスのトランペット・ソロの組み立てと同じ事が起きています。これは弦アレンジャーの大勝利なんじゃないかと。同じ事が、「燃えるサンセット」にも言えます。

そうそう、「チャイナタウン」は、詞がまた素晴らしいんです(山川啓介作詞)。この曲、シングルでは「時間よ止まれ」のB面に入っていて、子どもの頃はB面を何度も何度も繰り返し聴いてました。

空のポケットに夢ばかり詰め込んで生きていたふたりさ
ポニーテールはもう切っただろう
幸せならいいけれど、もう一度お前に会いたい

 ロスのミュージシャンと一緒にやるようになるまでの永ちゃんのサウンドのフォーマットは、このアルバムで完成したと感じます。このアルバムと『ゴールドラッシュ』、『キス・ミー・プリーズ』の3枚は、どれも神がかりの完成度。矢沢さんってパブリックイメージがヤンキーなもんで過小評価されがちですが、僕的には矢沢永吉、山下達郎荒井由実はショボかったそれまでの和洋折衷音楽を進化させた超重要アーティストと思ってます。70年代の日本歌謡ロックの大名盤だと思います!


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『矢沢永吉 / A DAY』

YazawaEikichi_Aday.jpg 矢沢永吉さんのセカンドアルバム、1976年発表です!このアルバムから日本人プレイヤー演奏の日本録音になります。録音スタジオは六本木ソニースタジオと音響ハウス…おおー昔は「六ソ」とか「信ソ(信濃町ソニー)」なんていって、はなたれミュージシャンだった僕にはあこがれでした。10年ぐらい前、仕事でソニーの録音スタジオに行ったら「乃木ソ(乃木坂ソニー)」なんてスタジオになっていて、ムッチャ綺麗でビックリしました。地下3階4階に、スタジオがものすごくいっぱいあるんですよ!あれは感動したなあ。そして音響ハウス!これは銀座の近くにあったスタジオ(今もあるのかな?)で、ビルに録音スタジオがいっぱい入ってたんです。そのスタジオでピアノを弾く仕事をした時、休憩時間に共用ロビーでタバコ吸ってたら、ポンタさんと井上鑑さんが通ってビックリ。はじめて日本の産業音楽界に踏み込んだような気がして、「ポップスの仕事するなら、やっぱり東京に来ないとダメだな」なんて思ったものでした(^^)。

 このアルバムから、4リズムにホーンセクション、曲によってストリングスのダビングという、CBSソニー時代の矢沢さんの音楽スタイルが出来上がります。でもまだメンバーが借り物で、演奏がやっつけ仕事的。やっぱり、スタジオ・ミュージシャンがチャッチャと済ませる演奏は既製品めいて駄目ですね(^^;)。アレンジの完成度にもばらつきがあり、方向も統一しきれてない感じ。でも、アレンジや演奏の完成度が高い曲もあり。その典型が「昼下がり」。曲自体はいいと思わないんですが編曲が素晴らしい。イントロのコードプログレッションを書くと、C#△9→B♭△9→A△9、そこからGm7→B♭で、曲頭がA7のドミナント、3小節目にようやくトニックのDmに繋がります。このソングライティング、ロックンロールバンドのベーシストのレベルじゃないでしょう。

 他にいいと思ったのは、「最後の約束」と「A DAY」。この2曲は、普通に素晴らしい!ロック・ナンバーでは「気ままなロックンローラー」も「真っ赤なフィアット」もベースがヤバい…と思ったら、後藤次利さんでした。うまいわけだわ(^^)。

 曲はいいのにアレンジが残念なのが、「トラベリン・バス」や「親友」。なんだよこのショボいホーンセクションにストリングスは。当時の日本のポップス界のホーン&ストリングスアレンジのレベルの低さは目もあてられません(^^;)。僕はロックバンドにホーンセクションは邪魔という考えの人間なのですが(BS&Tだけは別)、その理由はこういうダサいのをあまりに多く聴いてきたからかも。

 そして、先の見えない厳しい時代に迷う多くの若者を救ってきた、70年代の矢沢さんの素晴らしすぎる歌詞の数々!一度ドロップアウトした人にとっては、この言葉がどれだけ立ち上がる勇気になったでしょうか。

俺にも本当は分かってた 来ないお前を恨みはしない (「最後の約束」)

町に残した女を思って 黙りこくるあいつのそばでカードで遊ぶ寂しい笑顔
たまらないぜ、あのトラベリン・バスに揺られていくのは (「トラベリン・バス」)

二人ならばきっとうまくゆくさ (「A DAY」)

 演奏やアレンジに完成度のばらつきがあり、方向性も定まりきっていない嫌いはあるものの、すでにCBSソニー時代の矢沢さんの音楽が固まりつつある1枚。う~ん、このアルバムはもう手放そうと思ったけど、久々に聴いたら色んなものが詰まっていてよかったなあ。そして翌年、矢沢さんはキャロルに続いてまたしても社会現象を起こすのでした。


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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
intoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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