
CD
『ジャワ スンダの巨匠S.ナノ』で、「チュルンプンガン」とか「クトゥック・ティル」なんていう舞踊音楽や音楽があるのを知って、しかもそれがメッチャ面白いもんだから、
ガムラン以外の
ジャワの音楽もいろいろ聞いてみたいと手を出したCDです。このCDはそういう僕の需要にもってこいの内容で、
ジャワってこんなに色んな音楽があるのかと驚きました!先に言うと、このCDは超おススメ!
ライナーによると、
バリ島が村単位で文化を持っているのに対して、ジャワ島は重層化した文化が並行して存在している土地なんだそうです。元にあったのは東南アジア共通の文化で、その上に仏教やヒンズー教というインド文化が重なり、さらにイスラム教が重なり、16世紀には西洋文化が重なって、さらにマジャパヒト王朝の封建制国家が長く続いたもんで(13~15世紀にかけての約200年)、それらが更新されずに階層状態になって併存してるんだそうです。そして、このCDを聴くと、本当に色んな音楽が混じったり共存したりしてるんだなと実感しました。
僕的な分け方で大きく分けると、完全にジャワ化した音楽と、他の文化との衝突で生まれた音楽のふたつに分かれると思いました。前者はM1~5、後者はM6-9という感じ。面白かった音楽だけ備忘録として書いておくと…
1曲目の
大道音楽家の音楽がメッチャ面白かった!ジャワでは大道音楽家は「チョケアン」とか「バラガン」と呼ばれるらしいんですが、歌の掛け合いが入った小編成ガムランみたいな音楽でした。まったりして心地よく聴いていたところで途中でリズムがいきなり変わったりして、そういう所も
ジャワのガムランに似てました。途中でバイクがとおりすぎる音が入ってたのも東南アジアっぽくて良かったです(^^)。

2曲目は影絵芝居の音楽。
インドネシアで影絵芝居は「ワヤン」とか「ワヤン・クリット」と呼ばれてるそうで、内容はラーマーヤナとかマハーバーラタみたいに、インドの叙事詩がもとになってるものが多いそうです。このCDに入ってた音楽は、組ゴングや音階打楽器を使って音楽がアッチェルしたりリットしたりするので、ガムラン的な面もあるんですが、どこか中国音楽のようにも感じたのが面白かったです。ストーリーは歌で語られていましたが、言葉が分からんし、途中でフェードアウトしやがった(;_;)。これはメッチャ面白そうと感じ、後にインドネシアの影絵芝居の音楽だけを扱ったCDを買ったんですが、それは次にでも紹介しますね(^^)/。
3曲目は仮面舞踊の音楽。それにしても、本当に芸能が多いですね。
仮面舞踊「トペン」は影絵芝居(ワヤン)に並ぶジャワを代表する芸能だそうで、
中でもチルボンのトペンは有名なんだそうです。音楽面での影絵芝居との最大の違いは、歌詞が入らない事。声は入ってますが、「ワ~」みたいに、掛け声やコーラスのような感じ。音楽もけっこうシンプルで循環してマッタリな感じ…と思ったらさすがインドネシア、ここ一番ではやっぱりアッチェルして大盛り上がり。こう来ると分かっていたのにこれが気持ちいい(^^)。単純な恩恵を繰り返し、それが高揚していくという形式なので、トランスを目的とした音楽のように聴こえるんですが、それだけに音楽だけでなく仮面舞踊の方も見てみたかったです。
4曲目は
ガムランですが、ここに入ってるガムランはあまり大編成ではないものでした。しかし、循環する音楽がテンポを自在に変えていく様は何度聴いてもいい (^^)。こういう音楽って、インドネシアの音楽以外にあるのかなあ。
6曲目は
「クロンチョン・トゥグ」という音楽で、オランダによる植民地時代に入ってきた西洋音楽がジャワ化して大衆音楽になったものだそうです。ギターやウクレレを使って優雅に歌うので、音楽そのものはハワイアンっぽくて個人的にはあんまり面白くなかったですが、こういう歴史を肌で感じられる所が民俗音楽の面白さ(^^)。
7曲目は
「レヨ」という道行芸能で、日本でいう獅子舞みたいなものだそうです。実際に、獅子舞のようなものと、馬を表現しているもので道を練り歩くんだそう。さっきはヨーロッパかと思ったら今度はタイとインドネシアが混じったような音楽。タイっぽいというのはチャルメラのような音型意識キックボクシングを思わせるからなんですが、この楽器は
スラン・プレットというらしいです。
8曲目は剣舞についている打楽器演奏。音楽そのものはそこまで面白いものじゃなかったんですが、マジで芸能が多い島なんですね。
9曲目はイスラムの宗教歌。話では、イスラムがインドネシアにまでたどり着いているというのは聴くんですが、白いあの衣装を着ているわけでもないのでピンとこなかった僕でしたが、なるほど宗教歌ですらインドネシア音楽と混じって独自のものになるのか。印象だけでいうと、イスラムというより仏教音楽に近い響きで、映画『心中天の網島』の中で武満徹さんが書いた曲に似ていました。ついでに、ちょっとした発見があって、あの映画音楽の一部が、明らかにジャワの音楽を参照したものであることが判明。最後の首吊りのシーンの音楽とか、最初の方に出てきたゴングの音とか、「あ、ジャワの音楽が元ネタか」と思いました。なんかスッキリ、長年の疑問が解決した気分です(^^)。
ジャワはバリに並ぶ芸能の島で、これほど芸能が多い土地は世界に他にないなんて言いますが、本当にそうなんじゃないかと思いました。そして、影絵芝居ワヤンと仮面舞踊トペンは、実物を見てみたいと思ってしまいました。それにしてもこのCDはすごい、
ガムラン以外のジャワの音楽がこんなにいっぱい入ってるCDははじめて、しかも内容が素晴らしい!これは超おススメです(^^)。