
永ちゃん、1978年発表のソロ4枚目のスタジオアルバムです。参加ミュージシャンは木原&相沢の矢沢ファミリーに加え、ベースに後藤次利(ベースが動きまくりでメッチャかっこいい!
この時代の矢沢さんのスタジオレコーディングのキーマンのひとりは、間違いなく後藤次利さんだと思います)、
キーボードに坂本龍一!
ドラムはポンタさんにつのだひろ、パーカッションは斉藤ノブ、ブラスセクションはジェイク・E・コンセプション…日本のスタジオミュージシャンのトップがズラリです。そりゃいい演奏になるわな。。
ソニー時代の矢沢さんの代表作といわれる事もあるこのアルバム、いい曲が集まっているかというと、意外とそんな事なかったです。
素晴らしいのは曲じゃなくてアレンジ。B面1曲目「さめた肌」は、冒頭は無伴奏のギターリフで始まるんですが、リズムが入ってくると、リフの1拍目が休符だったことが分かり、これでリズムがよじれて感じるというからくり。人って最初に出た音を1拍目として数えるじゃないですか。それを利用したトリックですね。
ストリングス・アレンジが巧みなのはA面1曲目「ゴールド・ラッシュ」。ヘビーロックナンバーだったこの曲、後半になってストリングスが重なっていき、リフに対するオブリとなり、次第にリフがバッソ・オスティナートと化して弦が主旋律に入れ変わる…ロックバンドをメインにした楽曲で、よくこんなアレンジを思いついたもんだと思いますが、誰が考えたんでしょうか、すごい。このアレンジが、洋楽では絶対に聴けない素晴らしい音楽を作り出したと思っています。
アレンジのもうひとつの秀逸さは、増やすのではなくて、引き算の美学。良いアレンジは余計なものがひとつもないアレンジなんて言いますが、録音した後に、いらないものを消していく作業もしている形跡があります。例えば、「今日の雨」という曲だと、歌メロに対してオブリを挟むリードギターがかすかに聴こえるんですよね。これって、演奏はしたものの、曲の後半から入ってきた方がドラマチックになるから前半をカットしたんじゃないかと。でも、他のブースに音がもれていて、よく聴くとかすかに聴こえる…みたいな。
そして、やっぱり詩が素晴らしいです。このアルバムの詩でシビレタのは、なんといっても大ヒットした「時間よ止まれ」。作詞は山川啓介さん。このカッコよさは今さら僕が説明するまでもないですね。こんなセリフ、軽い人が言ったら歯が浮きそう。
「時間よ止まれ」なんて言って成立するヴォーカリストって、どれぐらいいるでしょうか。沢田研二に矢沢永吉…あとはちょっと思いつかないなあ。
汗をかいたグラスの冷えたジンより、光る肌の香りが俺を酔わせる
思い出になる恋と西風が笑うけれど、この人に賭ける
3枚目
『ドアを開けろ』から5枚目
『Kiss Me Please』まではどれも矢沢さんの初期代表作といっていい完成度ですが、こと
アレンジに関していうと、このアルバムがいちばん優れているんじゃないかと。
70年代日本の超一流スタジオミュージシャンが結集して作ったアルバムとしても秀逸な1枚と思います!
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