マリア・カラスがジュリアード音楽院で行った講義録です。これは聴く専の人が読むものではなく、アマチュアであるにせよ
自分でオペラをやっている人向けでした。というのも、この本の大半が、オペラの有名な演目のある個所をどのように解釈し、どのように歌うかという事に割かれていたもんで、そう思いました。僕が読む本じゃなかった(^^;)。
でもって、ベル・カントとか呼吸法とか発声法とかディクションとかの指導はしていなくて、それは出来るのが大前提で書かれていました。なるほど、マスタークラスですね。この本、ニコラ・レッシーニョという指揮者とマリア・カラスによる短めのプロローグ、そして本編の講義が73曲分300ページ超!そして短いエピローグという感じです。本編は、この間日記に書いた
ヴェルディの
「リゴレット」や
「アイーダ」とか、他に自分がCDで持ってるオペラの曲のところしか読んでません(^^;)。
というわけで、この本の本来の読み方じゃない事は重々承知してるんですが、僕は最初の序文で大いに勉強させられました。指揮者レッシーニョの言葉では、長年の上演で形成されてきた「こうすると良い」という伝統が、学ばれもせずに壊されるのはどうなんだい?かといって伝統になんでも従えというのも違う。要は、伝統的な歌い方が
求められる理由を学ぼうとも理解しようともしないところがまずいんだ、みたいな。で、この本は、
口伝で伝えられてきたオペラの伝統がはじめて書物としてまとめられたものなんだそうで。
マリア・カラスの序文で、みのがしやすそうだけど重要な事を言ってそうな部分。
「歌えるようにするには、どのように呼吸をしたらよいか等をきちんと学ぶ」、「声はしかるべきポイントに運ばれれば、音量は大きすぎず、同時に響くようになる」。特に個人的にずっしり来たのは、「
ステージに立ち始めると勉強に戻るのが難しくなって、これは深刻な問題。だからといって、謙虚さはこの世界に生きるには美徳とならない」。なるほど、これって出来るようになるまでステージに立つのを拒んでばかりではダメだと言ってますよね。出来ないのにステージに上がる決断をすればいいわけではないでしょうが、出来なくてもステージに上がる決断をする何かを持っておけ、ぐらいに覚えておきたい言葉でした。
本当のマスタークラスのところは1/3も読んでないんですが、なるほどプロの世界はこれだけ細かい所まで考えを張り巡らせて作りあげてるんだな、と感動を覚えました。アマゾンのレビューとかで、どう見ても音楽を学んだことすらなさそうな人が偉そうな上から目線で書き込んでる事がありますが、こういう本を一度でも読んだ事があるなら、絶対にああいうことは書けないんじゃないかと思っちゃったりして(^^)。ピアノだと
ショパンの弟子がこういう本を書いてくれていますが、
オペラをやる人は絶対に読んでおくべき本じゃないかと思いました!
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