
1969年、
アート・アンサンブル・オブ・シカゴがFreedomレーベルに残したセカンドアルバムです。このアルバムもジャケットデザインがいくつかあるんですが、僕が持ってるのは日本盤で演奏写真をレイアウトしたもの。この
ジャケット写真がカッコ良くて大好きなんですが、この写真はアルバムにとってもすごく重要で、音楽の意味を連想させる役割も果たしていると感じたものでした。
1曲目「ツタンカーメン」の冒頭3分は、アフリカ系の打楽器を振りながら、祈りのようなセリフやマントラが繰り返されてました。で、アルバムジャケット通りに、顔にはペイントが施されていて…これって、公民権運動の頃のアフリカン・アメリカンに広がった「アフリカ回帰」みたいなやつですよね?ボクシングの
モハメッド・アリもそんな事を言っていたし、のちに
ボブ・マーレイも似たような事を言ってました。西洋世界で迫害されたアフリカ系の人たちは、その思想のどこかにルーツから考えるという事をするのかも。アフリカ系に限らず、アルゼンチンの人が「移民」という事をとにかく口に出すのも、自分たちのルーツがヨーロッパで、それが今はアルゼンチンに生きているという事の意味から自分を考えるからなのかも知れないな、みたいな事を考えていたら音楽が結構進んじゃった、最初から聴き直そう(^^;)>。
以降、特に展開しないけれど怪しいムード満載の演奏がされます。ムードの部分を除いて演奏の構造だけを言うと、テーマはトゥッティ、あとはベースがドローンを作って上物が自由にアドリブなので、これ自体は音楽をやってる人ならだれでもできると思うんです。でもこれが
カッコよく感じるのは、イントロのあの雰囲気やジャケットに見られるフェイスペインティングなんかと関連付けられて「意味ありげ」に思える所じゃないかと思いました。実際の意味自体は具体的じゃなくて漠然としたものだと思うんですが(音の意味なんて言葉でいえるようなところには実はないと思うのでね^^)、でもオーセンティックなジャズでは絶対にそういう「音が示している意味」なんて所にはいかないので、ここがAEOCの魅力なんじゃないかと。
音楽を聴いて、即物的に良かったとか悪かったで終わらないんです。この魅力って何だろう…みたいな。意味を考えさせられる音楽だなあ、これは何かが自分の中に残るなあ…みたいな。
というわけで、アート・アンサンブル・オブ・シカゴは、このセカンドアルバムで、自分たちが何をやればいいのかが見えてきたのかも。だいたい、ツタンカーメンというタイトル自体、恐ろしく意味深ですよね。演奏はもう一声だし、構造だってもっとよく出来る余地がいっぱいあると思うけど、意味深でいいアルバムでした!なにせ、ジャケットのかっこよさがヤバい(^^)。
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