
協奏曲って、僕の中では、ソリスト6オケ4ぐらいの割合が理想で、さらにカデンツァがたくさんあればあるほどなお良しという事になってます。ピアノ協奏曲の大名曲といわれている
ベートーヴェンの
ピアノ協奏曲第5番「皇帝」は、もろにこの定義に当てはまる曲です。そして、このバランスになると、ピアニストの技量が音楽の良し悪しを大きく左右する事になります。このCDを買ったのはブレンデルが演奏したブラームスのピアノ協奏曲第1番を聴いて素晴らしく感じた事があった事と、ブレンデルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集の録音がこれで3度目なので(!)、よほど自信があるんじゃないかと思えたからでした。そして…いや~これは素晴らしかった!
このCD、まず音が素晴らしいです!オケはすごく立体的、ピアノはパシーンと立った音。ステレオで大きな音で聴くと、「うわあ」って圧倒されます。1997~8年の録音ですが、いい録音の管弦楽曲をいいステレオで聴く時の至福といったらないです(^^)。マジで、これはクラシックのオーディオファンにしか楽しむ事が出来ない至福。ジャズやロックでは不可能です。
そして、この音にだまされます。音がいいから、オケもピアノもめっちゃいい演奏に聞こえます。でもよ~~く聴くと…色々やらかしてるぞ(^^;)。
グールドやケンプの同じ曲の演奏でのトリルや弱音での演奏を聴き比べると…ね。とはいえブレンデルは、この録音の時には67歳ぐらいのはず、それでこの演奏は責められないどころか、驚異です。「これが人生最後のベートーヴェン協奏曲だ」という覚悟すらあったんじゃないかと。
なにはともあれ、まずは「皇帝」。
第5番「皇帝」は、三大ピアノ協奏曲のひとつに挙げられるほどの名曲。この曲、第1楽章の冒頭にいきなりカデンツァが来て、そこから少し落ち着いて桶の提示部が来て、これがクレッシェンドしていって、落ち着いたところでピアノが引き継いで…ああ、ベートーヴェンの手にかかるとソナタの提示部だけでこれだけ見事になるんだから恐るべしです。でも、展開部でブレンデルさんのピアノがちょっとオケの速度についていけてないし、若干ふらつくな(^^;)。そして
第2楽章。このアダージョは有名ですが、ここでのブレンデルの訥々とした演奏は泣ける。。これ、わざとつまずくように弾いてると思うんですが、グッと来てしまいました。 ラトルの指揮。全体的にテンポがかなり速く設定されてて、ベートーヴェンというよりモーツァルトの音楽みたい。でもこれには理由があって、最近の研究だとベートーヴェンの管弦楽曲ってもっと速いテンポだったらしくて、それを反映してるんじゃないかと。巨匠たちが伝統的に振ってきたベートーヴェンって、重厚じゃないですか。もう、そっち路線の録音は山のようにあるし、実際はもっと速かったみたいだから、それになるべく忠実にしたうえで再解釈したらどうなるのかという事を、ラトルは試してるんじゃないかと思いました。伝統的な重厚で胸に沁みるベートーヴェン像が出来上がってしまってる人は拒絶反応してしまうかも知れないけど、僕には新鮮ですごく良かったです。でも昭和生まれな僕は、重厚な方が好きだけどね(゚∀゚*)エヘヘ。
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