
1974年、
スティープルチェイスからリリースされたケニー・ドリュー・トリオのアルバムです。名盤ガイドによく出ていて、音楽以外にも録音がいいともよく言われるアルバムです。メンバーは、ペデルセンがベース、アルバート・ヒースがドラムでした。
僕にとっては、そのべた褒めされている音がダメでした。。マルチマイクでベタONなんですね。タイコのキックは「ドッ」と完全にスピーカーに貼りついていて、ハイハットは右に振り切り、シンバルは左から右からワンワン。こんなでっかいドラムいないですよね…。
ピアノは箱鳴りをまったく拾ってないので低音がまるでなくて、弦だけを直接録音したような硬い音。ウッドベースはアンプを通した音で、ラインとアンプをミックスしたような音。これはジャズじゃない、AORかなんかの録音だ…。でも、以降のジャズはこういう音の録音が増えていったし、その嚆矢だったのかな?
でも音楽はけっこう面白かったです。最初は「なんだこりゃ、これがあのケニー・ドリューか?!」と戸惑いましたが、いやいやこれはこれでフュージョン時代にバッパーがどう対応していったかを知る貴重な資料なのかもしれません。あのケニー・ドリューが自分のスタイルを広げに行ってるんだ、みたいな。例えば、
「Dark Beauty」はまるでアリス・コルトレーンのような音楽で、これはしびれました)。
マイルスの「All Blues」なんて、こういうモードをケニー・ドリューが演奏したらエレクトリック以前のハンコックみたいになりそうなもんですが、ぜんぜん違ってモードどうこうじゃなくて弾き倒していた(^^;)。『Pal Joey』の頃はたどたどしかったバラードの演奏も見事になっていて、明らかにピアニストの技術は傷がまったくないレベルに達してました。「Sumer Night」なんて、名演じゃないでしょうか。
ただ、全体としてはエンターテイメントな音楽がメインで、良くも悪くも「食うためにピアノを弾いている」人の音楽だな、という印象でした。こういう風にスタジオでマルチマイクで録音して、
ドラムのタムやシンバルが右いったり左いったり、音像も音場もないようなムチャクチャな室内楽は、室内楽をまったく理解していないオーディオマニアなだけのディレクターかエンジニアの遊びみたいに思えちゃって、基本的にはやっぱり音がシロウトくさくて苦手です。 フュージョン時代に50年代のベテラン・ジャズマンがどう対応していったかを聴くような面白さのアルバムでした。でも、やっぱり僕にとってのケニー・ドリューは
『Undercurrent』かな(^^)。
スポンサーサイト