
僕の
ドビュッシーのピアノ曲に対する考えが変わってしまったぐらい衝撃的な演奏でした。久々に聴いた今回も、朝から何周聴いてるか分からないほどのヘビーローテーションです。この曲に限らず、超絶的なテクニックと表現力をもつポーランドのツィマーマンの演奏には、「この曲ってこんなにすごかったのか」と思わされた事がけっこうあるんです。ルトスワフスキの曲なんて、ツィマーマンさんの演奏で目覚めてしまったぐらいですから(^^)。巨匠世代でも、70年代の日本のクラシックブームに乗った人でもないもんで、僕はどうしても
アルゲリッチや
ポリーニの次ぐらいに聴いていましたが、最近では全盛期アルゲリッチと同格、大好きな
グールドより上とすら思ってます。
ドビュッシーのピアノ曲集というと、「映像Ⅰ」「映像Ⅱ」「版画」の方に親しんできたんですが、本当にすごいと思うのはこの
前奏曲集です。作曲やピアノ音楽の歴史的にもそうなんじゃないかなあ。ただ、耳あたりの良さとは裏腹に簡単な曲ではなく、内容も技術も和声もかなり高度で斬新、場合によっては晦渋な所まであったりして。ドビュッシーというと4度や6度の和音が有名ですが、前奏曲集だとそれだけじゃなくて、1巻だと
#2「ヴェール」がかなりの部分が全音音階。
2巻#2「枯葉」は部分的にジャズでいうコンディミ。
#10「カノープ」は部分的に並行和音。
ドビュッシーの作曲技法を学ぶにも素晴らしい教材と思います。
そんなわけで、
「前奏曲集」はそれ以前のドビュッシーのピアノ曲とちょっと違う印象で、色は大事にしないといけないけど実はリストみたいにエスプレッシーヴォに弾いた方がいいのかも。ただし、何曲かは相当に難しいスコアなので、それが出来る技術と表現力があれば、ですけどね(^^;)。そしてそれをやってしまったのがツィマーマンのこの演奏なんじゃないかと。1集「西風の見たもの」「沈める寺」、2集「枯葉」(コンディミが深い!)「妖精は素敵な踊り子」「花火」の演奏は、言葉が出ないほど感動してしまいました。これは
ギーゼキングやアースが演奏してきたドビュッシー前奏曲集とは全く別物、目指してるものが違うのでどっちが上とかじゃないと思いますが、この演奏でこの曲の演奏のされ方が変わっていくんじゃないかというほどに凄かった!これは印象派和声を鳴らしつつリストのように個人の表現に昇華してしまった超弩級名演じゃないでしょうか!
こういう前奏曲集の演奏が好みかどうかとは別に、間違いなくぶっ飛んでしまう神がかりな演奏でした。ただし、ピアニストがこれを聴くのは注意した方がいいかも。ピアノやめたくなるかも知れません(^^)。
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