キンクスのアルバム、僕はデビュー時のアルバム2枚の後はしばらく聴いていなくて、次に聴いたアルバムは1969年発表のこれでした。邦題は「アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡」。
アーサー王の物語かと思いきや、ここでいうアーサーとはキンクスのリーダーであるジョン・ダルトンの義兄の事で、アーサーさんは労働者階級の人。 面白いのはこの物語で、
イギリスの労働者階級の視点から物語が紡がれていきます。世界を支配したヨーロッパの連合国陣営でも、その国に住む労働者はというと、貧しく生きてたりするんだなあ、みたいな。僕は何度かイギリスに行った事がありますが、原爆を落とされて手ひどい敗戦を味わったアジアの国に住んでいるこの僕が「貧しい国なんだな」と思ったほどの寂れっぷりでした。労働者階級の人が住んでいる地域に入っていったら、労働者の人たちが住んでいそうなアパートがいっぱいあって、工場があって、「ああ、資本主義が進んだ国家では貧富の差がシャレにならないぐらい拡大してしまうんだな」みたいな。でも、あんまり締め付けると暴動が起きるから、暴動が起きない程度の保証だけして、そうすると「死なない程度に生かされている」みたいな貧困層が出来るのかも。そして、20年後にまさか総中産階級と言われた日本まで同じような状況になるとは、若い頃の僕には想像もつきませんでした。
ローリング・ストーンズとキンクスは、イギリスの労働者階級の若者の叫びである点が重要な意味を持ってる気がします。その同胞意識がファンの共感を生んだ、みたいな。日本からこういうメッセージ性のある歌を歌うバンドやフォークシンガーが消えたのは、市民がクソ馬鹿な事と、尖ったことを言うとすぐ叩かれるという社会構造によるんでしょうね。
音楽は…いかにも60年代のイギリスのビートバンドで、演奏が下手さがちょっときつい(^^;)。なるほど、デビューアルバムでギターを弾いていたのがジミーペイジだったという噂は本当かも知れないと思ってしまいました。音楽は、バンドの上にピアノやホーンセクションが後付けでダビングされている作りで、
サージェント・ペパーズ以降のビートルズみたいでした。ビートルズのサージェント・ペパーズやストーンズのサタニックや
スモールフェイセズのオグデンにも共通することですが、この時代のイギリスのビートバンドが作るコンセプト・アルバムって、ひとつひとつの曲や演奏のクオリティが低いな、みたいな(゚ω゚*)。そんなわけで、このアルバムは音楽より物語に注目して聴いた方が楽しめるアルバムかも。
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