シューベルトのピアノ曲はピアノ教室の練習曲みたいでイマイチ、歌曲も今のポップスみたいに単純で、ちょっともの足りない…そんなふうにして、僕はシューベルトから一時離れてしまったのでした。ところが、歌曲の
詩だけは幻想的で、心に残ってたんですよね。その後、ヘルダーリンあたりのドイツ・ロマン派文学にのめり込んだ時に、シューベルトの音楽って、もしかしてロマン派文学のあの死と幻想の世界を音にしたんじゃないか…と思いはじめたのでした。絶対音楽ではなく標題音楽的なものだったんじゃないか、みたいな。そこで見直したのがピアノ曲でも歌曲でもないシューベルトの音楽で、これもそうした中で手にした1枚でした。
シューベルトは弦楽四重奏曲を15番まで書いています。というわけで、この13~14番はかなり最後の方の作品。ベートーヴェンやモーツァルトやハイドンで、弦カルは晩年になるほど完成度の高い作品になると学習していたのです( ̄ー ̄)。聴いて驚いたのは、意外にも楽式がしっかりしていた事。というのは、僕が聴いてきたシューベルトの器楽曲はムード一発みたいなものが多かったので、
ソナタやロンドといったしっかりした形式がここまではっきり聴こえる曲だったことにビックリ。いくらロマン派とはいえリアルタイムで古典派も体験していた初期の人だし、ドイツ=オーストリアのど真ん中で活動していた人だから、古典派からの影響はやっぱり大きかったのかも。
あと、この弦カル「死と乙女」にしてもピアノ曲「さすらい人」にしても、シューベルトって同じタイトルの歌曲がありますよね。もしかするとシューベルトって、歌曲を書いて生活費を稼ぎながら、そのメロディを使って壮大な芸術作品を作るのが夢だったんじゃなかろうか。ただ、そういう作品を完成させる前に死んでしまった、みたいな。交響曲なんて、代表作が「未完成」ですからね(^^;)。ロマン派にしては匂いたつような色彩感がまだ薄く、かといって弦楽四重奏としてはその前のベートーヴェンやハイドンの緻密な構造には届かない感じ。ロマン派音楽の大輪が大きく花開く前の過渡期的な作品かも。
ハーゲン弦楽四重奏団の演奏ですが、僕はこの弦カルの見事な演奏を
ヤナーチェクの弦楽四重奏曲で聴いた事があったんですが、これはあさっての方向を向いちゃった感じかな?曲自体がけっこうムーディーなものと思うので、4コースの絡みを聴かせる演奏より、和弦を美しくハーモニーさせるようにしたらもっと曲が生きたのかな…な~んてことを想像して聴いてしまいましたが、聴く方は無責任に好き勝手言いたい放題で楽ですよね、決してぬるい演奏じゃないです。14番の最終楽章のストレッタなんて、なかなかすごい演奏…でもやっぱりムーディーに演奏してみて欲しかったかも(^^)。
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