
ある時代、
高橋竹山と双璧の津軽三味線の名人と言ったら、木田林松栄(きだりんしょうえ)だったそうです。で、津軽三味線の右も左も分からない僕は、中古屋で捨て値同然で売られている木田林松栄さんのこんなCDを発見、お宝ものを見つけたとばかりに飛びついたのでした(^^)。そうしたら、
これは三代目の木田林松栄さんだった(^^;)。有名なのは初代なんですよね。
このCD、最初は3人での合奏、次は尺八(山本邦山!)とのデュオ、その次に3代目の独奏が8曲続き、次に歌伴奏が8曲、最後に木田静栄の独奏で締める(なんで最後に違う人?)、という構成でした。面白いのは、解説書に振り付け(振付師は津軽手踊藤田流の家元・藤田澄江)が図解で示されてる事。へえ、津軽の唄って振り付けが入るものもあるのか…でもそりゃそうか、遊芸民のお座敷芸がルーツですもんね。
僕的な注目はやっぱり津軽三味線の独奏。なんでクレジットに津軽叩三味線と「叩」の文字が入ってるのかと思っていたんですが、どうも
「高橋竹山は弾く、木田林松栄は叩く」と言われているんだそうです。なるほど…。3代目が初代と同じような表現を取っているのかどうか僕なんぞには分かりませんが、たしかに
「津軽じょんがら新節」の前奏部などを聴くと、琵琶じゃないかと思うほどにバシバシ叩いていました。 歌ものは、僕は民謡の歌唱法がどうも苦手なもんで、歌唱にはあまり興味を惹かれなかったんですが、詞が面白い!江戸時代からつづく純邦楽の歌ものや語りものは、小唄でも端唄でも、とにかく詞が面白いです(^^)。「津軽じょんがら旧節」には、こんな一節が。
梅にうぐいす仲良いけれど、何故に昼来て夜また帰る
せめて一夜もお泊りなされ これは鶯のことじゃなくて、男女のことを歌ってますよね。しかも、
エロい上に道ならぬ恋じゃないでしょうか。いまの子供向けなJポップや英米ポップで、こういう艶っぽい歌を聴くのは難しいので、やっぱり江戸時代以降の町人文化の歌ものはエロくていいな、みたいな(^^)。それから、大名盤『高橋竹山 津軽三味線』でも聴く事の出来た「弥三郎節」は、こっちのCDの方が長めに歌われていました。実際には、もっともっと長い歌なんでしょうね。
三味線音楽は、器楽は最初はどれも同じと思っていたものが、何回も聴いているうちに違いが分かってくると楽しい、歌ものや語りものは最初は言葉が捉まえきれずによく分からないのが、何度も聴いて詞の内容が分かってくると面白くなってきました。このCDは、歌ものはたぶん抜粋が多いんでしょうが、このへんの気に入った曲を深く掘り下げていくと、三味線音楽を持って楽しめるようになるのかも。嫁いびりの唄があったりして、青森名だけにちょっとおどろおどろしい気もしますけどね(^^;)。