ルトスワフスキのピアノ協奏曲に感動した勢いで、最近買ったCDです。ルトスワフスキの交響曲全集が出てるなんて知らなかった(^^;)。ザックリいうとシンフォニーの1番が新録(と言っても2012年)で、あとは既発のCDから持ってきたセットみたいです。指揮者のエサ=ペッカ・サロネンはルトスワフスキと同じポーランド出身の指揮者で、大事な演奏会のたびにルトスワフスキの曲を取りあげてきたので、ルトスワフスキさんからも可愛がられてたみたいです。
音楽の前に、
日本盤の解説が素晴らしかった!ルトスワフスキの情報って、僕が愛読してる「作曲の20世紀」にも1ページしか書いてないし、ウィキペディアなんて書いてないに等しいぐらいの状態なので、とにかく情報が少ないです。そんな中で、はじめてルトスワフスキのまとまった情報を得る事が出来ました。なるほどなあ。
そして、恥ずかしながら、僕はこのCDに入ってる4曲とも、最初に聴いた時はピンと来ませんでした。最初は寝っころがってぼんやり音だけ聴いてたんですが、よく分からないので解説読んだり、真剣に構造を追いに行ったりしているうちに、だんだん分かった気になってきた感じ。これは、マジメに何回も聴いてるうちにジワジワくる音楽なのかも。
交響曲第1番は、これまでに取りあげた作品の中で一番古いものでした。2次大戦中に書きはじめられた…って、ポーランドの2次大戦って、
映画「戦場のピアニスト」で観たあのナチ占領下の悲惨な状況だよな、な~んて思ったんですが、まさにその通り。
ルトスワフスキもワルシャワ蜂起を実体験していて、ナチに捉えられた後に脱獄、お母さんと8カ月以上も郊外の屋根裏部屋に潜み続けていたそうです。音楽は、なんといったらいいか…いちばん近い言葉を使うなら新古典。第2楽章なんて、構造も様式も
バルトークの弦チェレの第1楽章そっくりですし。でも全体には新古典だけじゃなくて、色んな音楽が混じってる感じで、色んな技法の乱立時代に、どうやって作曲するか格闘していた習作期の作品に聴こえました。
交響曲第2番は、ひとつまえに書いた日記にかいたものと演奏も録音も同じものなので、そちらを見てね(^^)v。4つの交響曲でいうと、これがいちばん無調/前衛に近づいた作品かも。
交響曲第3番は、1974-83年の作品。この時期だと、ちょっと前の日記で書いた「Novelette」が作曲されてます。なるほど、このあたりには
前衛期を過ぎて、ルトスワフスキが若い頃に好きだった音楽と前衛のバランスを取った作風になったように感じました。というのは、細部の技法はモダンなんですが、主題は見えるし、構造も「これはソナタ的だな」みたいに分かるし、モダンでありながらも前衛の頭でっかちにならないで良い音楽を作りに行ったような。30分超で連続して演奏される3楽章形式。
交響曲第4番は
連続して演奏される2楽章(?)形式。3番と4番の間に、「チェイン3」と「ピアノ協奏曲」が書かれてます。この時期になると、
セリーやアレアトリーといった手法はますます後退して、シンフォニー4番に至っては「後期ロマン派の音楽だよ」と言われても信じてしまうほど。曲想は3番と対照的で、ババンと派手な3番にたいして、4番は重くずっしり。溜めに溜めて、後半でグッとくる感じ。この曲、第3番は評価されまくったけど4番の評判は今ひとつだったそうですが、僕は4つの交響曲の中ではこれが一番良かったです。
ルトスワフスキの交響曲4曲をまとめて聴いて、はじめてルトスワフスキさんの作風が実感として理解出来た気がしました。なるほど、
新古典から始まって、セリーとアレアトリーを併用した作曲をして、最後にすべてを統合した、みたいな感じなんですね。そして、1番も4番も、構造もサウンドもバルトークの弦チェレを感じるところがあって、ルトスワフスキのフェイバリットって弦チェレだったんじゃないかと思わされました。
20世紀の作曲って、16世紀から19世紀までと違って、西洋音楽だけでいくつもの作曲技法が混在するので、学習しながら作風を変化さえていって、最後にやっと自分の音楽にたどり着く作曲家が多いと感じます。ルトスワフスキもそういう音楽家だったんじゃないかなあ。仮にルトスワフスキの作風を3つの時期に分けるとすると、僕は最後の折衷的な時代が特に好き。ルトスワフスキの交響曲、あと何回か聴いたらもう少し入ってくる気がするので、いつか感想を書き直すかもしれません(^^)。