スティーヴン・キング原作の映画といって思い出す映画のひとつで、1983年の作品です。スティーヴン・キング原作の映画って、他には『シャイニング』や『ペット・セメタリー』あたりも観た記憶がありますが、『デッドゾーン』はスティーヴン・キングではなく、監督のデヴィッド・クローネンバーグに興味を持って観た映画でした。
教師であるジョニーは、交通事故で5年も意識を失い、目覚めた時には婚約者が別の男と結婚していて、自分は体が思うように動かなくなっています。代わりに人に触るとその人の過去や未来が見える超能力を手に入れていました。この千里眼の能力はジョニーにとっては辛い事でもありますが、次第にジョニーはこの能力を持つ自分の使命を感じるようになっていきます。ある日、ジョニーが大統領候補のグレッグと握手した瞬間に、核戦争の未来が見えてしまいます。この男が大統領になったら… あらすじだけ書くと、なんて事はない超常サスペンス映画に思えてしまうんですが、でも
クローネンバーグ監督というのが面白い表現をする人で、80年代にはじめて彼の映画を見たときは、カット割とか色んなところに新しいセンスを感じて、ちょっと衝撃を受けたんです。つまりこの映画、僕はストーリーではなく、映像の見せ方に魅力を感じたんです。絵や構図が奇麗とかそういうのでもなく、なんというか…映画の
ストーリーとは直接関係のないところにフェティッシュなこだわりがあったり、分かる人にだけ分かるような暗喩が仕掛けてあったり、ストーリーを言葉で語らずにカットの繋ぎで見ている側に想像させたり。こういうところが、それまでの大資本映画会社が作ってきた映画とは違って、映画マニアが大資本を得て作った映画というか、音楽でいうニューウェーブに似て、良し悪しはともかくとしてそれまでになかった表現やセンスを感じました。
80年代にはそういう監督が何人かいて、『ブルーベルベット』で見たデヴィッド・リンチ監督や『エレメント・オブ・クライム』で見たラース・フォン・トリアー監督あたりも、クローネンバーグと同じように、
やたらと頭の良い映画マニアがそのまま映画監督になったような、カルトなムードを持った監督たちでした。「これは70年代までの映画とは違うぞ」みたいな。
僕的なクローネンバーグ最高傑作は『戦慄の絆』で、『デッドゾーン』はそこまでは届かなかったけど、それでも独特な映画センスを感じる映画でした。いまの若い人が、ビッグネームになる前のクローネンバーグやリンチやトリアーが作ったこういうカルト気味な映画を観たら、どう感じるんでしょう…って、スティーヴン・キングの話をするつもりが、クローネンバーグの話ばかりになってしまいました(^^)。でも
この映画の魅力は、間違いなくクローネンバーグにあると僕は思っています。書いている暇があるか分からないけど、いつかこれまでに見たクローネンバーグ映画の特集もやってみたいなあ。
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