
僕がはじめて
リー・モーガンの演奏を聴いたのは、メッセンジャーズの
『Moanin'』かコルトレーンの
『Blue Train』、次が『サイドワインダー』。どれもいい演奏には違いなかったんですが、いかんせんすべてスタジオ録音だったもんで、どこか抑えている演奏に聴こえたのです。そういう事は得てしてあるもので、マイルス・デイビスだってスタジオ録音ではエレガントな演奏だけど、『Four & More』あたりのライブ盤だと火の出るような演奏。そう考えると、「クリフォード・ブラウンの再来」なんて言われたペッターの演奏はこんなもんじゃない気がして、いつかライブ演奏を聴いてみたいと思ってたんです。そんな20代なかばの頃にCDショップでみつけたのが、名盤と言われているこのライブ盤でした。1970年録音で、もともとは4曲入りでしたが、僕が買ったのは計13曲入りの3枚組ボックス!デラックスな装丁もよかったし、ワクワクして持って帰ったのでした(^^)。メンバーは、Lee Morgan (tp, flg), Bennie Maupin (t.sax, fl, b-cl), Harold Mabern (p), Jymie Merritt (b), Mickey Roker (dr)。
おおー
モードはあるし匂いが新主流派っぽい!新主流派ジャズってフォースビルドやら何やらといった和声面での処理が独特なので、僕の場合はどうしてもピアニストに耳が行っちゃうんですが、70年まで来ると、それが
ハービー・ハンコックや
マッコイ・タイナーの専売特許じゃなくなっていて、みんな普通に使えるようになってるんですね(^^)。というわけで、このアルバムのサウンド面での特徴はピアノのハロルド・メイバーンと感じました。
一方、この3枚組は、僕にはきついところがありました。単純に長いんですよね。。3枚というボリュームだけではなく、1曲の演奏時間が必要以上に長いんです。しかも曲の構造が単純なので飽きる…。モード調の「absolutions」はほぼひとつのスケールで20分以上、「Nommo」は2小節パターンの繰り返しで18分、4小節パターンを繰り返すだけの「Neophilia」も19分。
ついでに、アドリブがスケールをパラパラやってるだけで、これを表現と言われてもなあ、みたいな。60-70年代って、ジャズでもロックでも長いアドリブを演奏表現とする事が多くなりましたけど、それってライブの時間を埋める口実に使ったものが多かった気がします。ロックでも、
レッド・ツェッペリンの長いアドリブとか、クソつまらなくてやめてくれと思ってましたし。。20分って、古典派クラシックで言えば交響曲1曲分じゃないですか。その時間をこんな単純な構造の上で、スケールをパラパラやるアドリブだけで何とかしようという発想に無理があるんじゃないか、みたいな(^^;)。
そんなわけで、僕的においしかったのは、聴いていて退屈しないコード進行を持った曲&アドリブが長すぎずいい組み立てのものでした。この条件に嵌ったのは2曲で、「Peyote」と「Something Like This」でした。でも、わざわざこのアルバムを買って聴くほど凄いというほどのものじゃなかったかな?
というわけで、リー・モーガンの火の出るようなすごいアドリブを聴きたいなら、むしろ初期のスタジオ盤の方が良く、新主流派的なおいしさを聴くなら
『Search for the New Land』の方がぜんぜん完成度が高いぞ、みたいな。ライブ盤だから演奏が爆発してるとも限ったもんじゃないんですね、レコードを買う方もけっこう難しい(^^;)。。