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Category: アート・本・映画 etc. > 本(文芸・科学・哲学)   Tags: ---

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詩集『ヘッセ詩集』 ヘルマン・ヘッセ 高橋健二訳

Hesse sishuu_TakahasiKenji リヒャルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」のCDをいくつか聴いてきましたが、あの歌曲集で使われた詩の4つのうち3つがヘルマン・ヘッセのものなんですよね。ヘッセは1877~1962年まで生きたドイツ生まれのスイスの文筆家で、「荒野の狼」「車輪の下」「シッダールタ」あたりの小説が有名。ロック好きな僕がヘッセの名を最初に知ったのは、映画『イージー・ライダー』の主題歌を歌ったステッペン・ウルフ。このロックバンドの名前の由来がヘッセの『荒野の狼』だったのです。そして、コリン・ウイルソンの書いた名著『アウトサイダー』にヘッセの思想が紹介されていたもので、興味を持ってヘッセの『荒野の狼』を読んだところ、大衝撃。文学なんて学校でやる奇麗ごとの世界だと思っていたものがとんでもない、命がけのムチャクチャ深遠な世界、魂を奮い起こされるとはこのことでした。そしてヘッセの本を片っ端から読んだ事があります。これは新潮文庫から出たヘッセの詩集で、初期から晩年まで隔たりのないようにヘッセの詩を収録してありました。「4つの最後の歌」収録のものでは、「九月」が収録されていました。

 まず、詩の内容。新ロマン主義にくくられるだけあって、19世紀から20世紀に生きた詩人とは思えないほど、キリスト教的な世界観を背景にした幻想性が全面ににじみ出ていると感じました。たとえば、「精神は神のごとく永遠である。われらはその似姿であり道具であって、われらの道はこの精神に向かっている」(沈思 Besinnung)みたいな。これ、ヘッセと知らずに詩だけ読んだら、ヘルダーリンやノヴァーリスあたりの詩と思っちゃうんじゃないかなあ。仏教圏に生きている僕は、間違ってもこういう見方はしませんから、やっぱり西洋のパラダイムの上にある言葉なんだな、みたいな。

 そして、死を意識した詩が多くて、ちょっと後ろ向きというか、暗い感じ。また、かなり頭が良さそうというか、感性だけで書いているのではなく、後ろに思想があるなと感じました。例えば、こんな感じ。「私は花をつみに行こうと思ったが、今はすべての花を咲くにまかせて、家に帰っていく。老いた人として」(最初の花 Die ersten Blumen)。ね、死生観とか人生観とか出まくりじゃないですか。しかもこれは死を意識した人が、命あるものはあるがままにしておきたい、みたいな事を言っているんじゃないかと思うんですが、これが意識的であるように思えてならないんですよね。そもそもヘッセの書く小説って、これは宗教か哲学じゃないかというものが多いので、感性だけの不思議ちゃんな文学者のわけがないですし。

 僕が良い詩と感じたのは6篇で、「眠れぬ夜 Schlaflosigkeit」、「花咲く枝 Der Blutenzweig」、「最初の花 Die ersten Blumen」、「イタリアを望む Blick nach Italien」、「九月 September」、「笛のしらべ Flotenspiel」。以下に、紹介程度に、心を動かされた詩の一部だけ抜粋しておきます。

瞬間のうちに無数の生を幻のように生き、熱に疲れながらいつまでも休もうとしない。 (眠れぬ夜)

私はかつて生きた時の長い列が砕かれもせず永遠の日の中を通るのを見る。 (眠れぬ夜)

人生のあわただしい戯れも 楽しさに満ち、むだではなかった、と告白するまで。 (花咲く枝)

私は花をつみに行こうと思ったが、今はすべての花を咲くにまかせて、家に帰っていく。老いた人として (最初の花)

この世界は私をあんなにもたびたび欺いたが、私はやっぱり世界をいつもいつも愛している。愛と、孤独。愛と、満たされぬあこがれ。それが芸術の母だ。私の一生の秋にもまだ、それらは私の手を引いて導いてくれる。そのあこがれの歌が、湖と山々と、別れを告げる美しい世界に不思議な力で輝きをひろげる。 (イタリアを望む)

この世の秘められた意味が、彼の呼吸の中にあらわれていた。そして心はいそいそと浸りきっていた。そしてすべての時が現在となっていた。 (笛のしらべ)


 こういう詩なので、ロマン派らしく幻想的でステキ…な~んて上っ面だけ読んでると大事な事を読み逃しちゃいそう。ランボーやトラークルみたいなモロに知的だったり硬派だったりではないんですが、読めば読むほどグッとくる。「眠れぬ夜」や「笛のしらべ」なんて、ヘッセが体験したヴィジョンの言語化じゃないのかと思ったほど。これは深いぞ…。
 訳がちょっと噛み砕きすぎだとは感じましたが(僕は堀口大學みたいな噛み砕いた口語調の訳より、小林秀雄みたいなド直球の文語調の訳の方が好きなんです。分かりやすくなんてしなくていい、解釈はこっちでするから噛み砕きすぎないで訳してほしい、みたいな)、でも素晴らしい内容の詩集だと思いました。ヘッセは、小説がさらに凄いので、いつかまた感想を書きたいと思います。でも、残りの人生でレコードを全部聴きかえす事が難しいのと同じで、本を全部読みかえすのは絶対に無理なんだよなあ、どうしよう。


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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
intoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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