ヒンデミットの作品で紹介してない大事なものがありました!CDの正式なタイトルは、『ヴェデルニコフの芸術―14 ~ヒンデミット』です。
収録は「ルードゥス・トナリス(対位法、調整機能、ピアノ演奏の研究)」で、ヒンデミットのピアノ曲の代表的なもの。タイトルが示しているように、ピアノの練習や研究に書かれています。ピアノで演奏可能なある作曲技法の研究作品って、有名なものだと
バッハの「平均律クラヴィーア」がありますが、近現代では
バルトークの「ミクロコスモス」とこの曲が有名です。この曲、まさにバッハの平均律クラヴィーアの現代版みたいな構成で、前奏曲と後奏曲を挟んで、フーガと間奏曲がそれぞれ12調12曲、全24曲演奏されます。ちょっと前に「ヒンデミットはアーティストというより研究家肌の人だ」みたいに書きましたが、こういう曲を書くなんて、まさにそうですよね。
バルトークの「ミクロコスモス」もそうですが、この手の曲って最初は「あ、なんだこんなもんか」みたいに始まるので舐めてしまいがちですが、あとからあとからすごいのが出てきます。作曲上の技巧だけじゃなくて、独特の響きをする曲も出てきて、
演奏せずに鑑賞しているだけても強烈に引き込まれました。9番目の間奏曲なんて
ビル・エヴァンス以降のモダン・ジャズみたいだし…って、この曲書かれたのって1942年ですよね、すごい…。第10フーガや11フーガあたりまで来ると、調的な重力は感じますが、もうほとんど現代音楽のようで不思議な感覚。ヒンデミットの考える和声法というのがちょっと分かったような気がしした(気がしただけです^^;)。
アナトリー・ヴェデルニコフは、第2次大戦前のロシアのピアニストで、伝説の人です。9歳でリサイタルを開き、12歳で
ディアベッリ変奏曲のリサイタルを弾いたほどだったそうです。でも、ロシア政府のいう事をきかなかったヴェデルニコフは国外でのリサイタルを開く事が出来ず、逸話だけが残っているような状態。そんなわけで、このCDも隠し撮りなのかというほどに音が悪いっす(^^;)。でも、ヴェデルニコフの演奏を聴いてみたかった僕はこのCDに手を出し、やっぱり演奏は見事。たぶんこのCDは「ルードゥス・ㇳナリス」ではなくてヴェデルニコフの演奏が聴けるのが売りで発売されたものでしょうしね。ヴェデルニコフ、情感たっぷりのタイプではなくクールです。かっこいい。
ヒンデミットのルードゥス・ㇳナリスは音大レベルでクラシックのピアノをやった人はみんな知ってる曲と思うんですが、録音が少ないです。そんなわけで、
ヴェデルニコフとルードゥス・ㇳナリスを同時に聴ける貴重なCDじゃないかと!
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