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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『フォーレ:ピアノ五重奏曲 第1番、第2番 ジャン・ユボー(p)、ヴィア・ノバ四重奏団』

Faure_Piano5jyuusoukyoku1-2_Hubeau.jpg フォーレの書いたピアノ五重奏曲をコンプリートしたCDです!これが、フランス音楽というよりもドイツの世紀末音楽のような退廃的でぼんやりした情熱にあふれているような音楽で、とてつもなく好きなんです。

 ピアノ五重奏曲第1番op.89 は、1891年に書き始めていったん完成させ、イザイのカルテットが演奏してその完成度に興奮したものの、フォーレがこれを気に入らずにお蔵入りにして、再度着手したのは12年後の1903年だったんだそうです。で、完成は1906年。苦心した作品だったんですね。でも僕は、速書きの人より、徹底して完成度にこだわる人の曲の方が圧倒的に好き。ブラームスのシンフォニー1番なんて、悶絶必至じゃないですか。この曲も、細部まで丁寧に仕上げたのが一聴して分かります。こんなに調がたゆたう音楽、感覚だけで書けるはずがないと思いますし。3楽章とも素晴らしいんですが、個人的に好きなのはモルト・モデラートの1楽章と、アダージョの2楽章。1楽章は面白い計画を含むソナタ形式っぽいんですが、再現部が短調から長調になってたりして。いや、そんな事より、連続した部分転調が独特の色彩感を生んでいる所に僕は感動してるんだな、きっと。それは第2楽章も同じです。3楽章は楽式が面白くて、ちょっと変わったロンドと言えばいいのか、とにかく変奏パートからの展開が激烈に面白いですが、最後が大団円なのがちょっとひいた(^^;)。それにしてもこれは素晴らしい曲、聴いている時間は、ずっと音楽の悦楽に飲み込まれていました。すばらしい…。

 ピアノ五重奏曲第2番op.115 は、4楽章形式。そしてこの4曲がまったく違うキャラクターを持っていて、しかもすべてが魅力的なのが凄かったです。楽式でいうと、1楽章がソナタ、2楽章スケルツォ、3楽章はロンド、4楽章は複合ロンド…かな?自信ないのであんまり信用しないで下さい(^^;)。。でも、口でこう言っても、ベートーヴェンのピアノソナタみたいに分かりやすく楽式をバクッと把握できるような代物ではなくて、和声展開や再現分に至るからくりなど実に緻密で、かといって頭でっかちにならずにものすごく色彩に溢れていて感覚だけで聴いていても持って行かれてしまう音楽でした。1楽章はそのたゆたう色彩に魅了されるばかり。2番はスケルツォだけあってものすごいテクニカル、ちょっとこれはマッタリで深い音楽を得意とするフォーレとは思えないカッコよさ!3楽章は緩徐楽章で、美しいんだけどどこか人口の楽園的というか、旋律を引き渡していくさまはカノン的でもあり、かといって部分転調の連続は後期ロマン派のような眩惑的な響きでもあり、その退廃的なところが素晴らしい…。アレグロ・モルトの4楽章はABCを変奏したり凝縮したり互いに乗り入れたりしながら進行していく変形ロンドいった感じ。曲想は力強く、やはりマイナーとメジャーの交換が激しく簡単にその色彩を言えない感じ。やっぱりフォーレのピアノ五重奏曲はこの世紀末的な色彩と、構造の緻密さが素晴らしいと僕は感じるみたい。本当に素晴らしいんですよ!

 僕が「退廃的だな」と感じるのは、ヴィア・ノバ四重奏団の演奏にもあるのかも。古いストリング・カルテットって、ヴァイオリンがどちらもヴィオラのような音を出して、ヒステリックでなくまったりとあったかい音を出す時があるじゃないですか。このカルテットはそう言う音を出すので、聴いていて第1次大戦以前のヨーロッパにタイムスリップした感覚になるんです、これがほの暗い不健康な快楽みたいな感じがして、すごく好きなのです。映画でいえば、リリアーナ・カヴァーニの『愛の嵐』の後半みたいな。馬鹿テクでガシガシ押すんじゃなくて、音色を重要視して、全体でフワーッとつつんでくるような演奏で、すごく好きです(^^)。

 というわけで、「素晴らしい」の連発になってしまいましたが、本当に曲も見事、演奏も大の好みというお気に入りのCDです。フォーレをシシリエンヌとレクイエムだけの作曲家なんて思ったら大間違い、ピアノ四重奏も五重奏も音楽の悦楽に満ちあふれた大傑作だと思います。このCD、ちょっと手に入れにくいかも知れないけど、見かける機会があったらぜひ手にして欲しい大推薦盤です!


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『Benjamin Duboc, Itar Oki / Nobusiko』

ItaruOki Benjamin Duboc_Nobusiko 2010年にフランスのImprovising Beings というレーベルからリリースされた、トランぺッター沖至さんとコントラバスのBenjamin Duboc(発音は「ドゥボ」で良いのかな?)のデュオです。このCD、ケースを開くと漢字で「野武士考」って書いてるんですよ(^^)。なるほど、そういう意味か…。

 音楽は全般にわたって即興演奏でした。でもって、これはコンバスのベンジャミンさんが明らかにうまくて感激!ジャズだけやっていた人ではないな。。視野が広くて、アルコを弾かせれば特殊奏法もメロディも見事。現代曲もクラシックも通過してきたんだと思います。そしてピチカートを演奏すれば、ジャズ的なビートが素晴らしくて、付け焼刃じゃなくてフォービートを見事に掴まえてる感じ。僕はジャズのバンドに参加して生活させてもらった事があるんですが、最後までジャズのあのビート感が出せませんでした。何年やってもクラシックのレガート感が抜けなくて「なんちゃって」なんですよ、悲しかった。。あれだけはひたすらやって体に叩き込まないと出せないものだと思うんですよね。ポリリズムの強烈なアフリカのシンガーがどうやったってレガートを美しく歌えないとか、3拍子の音楽が多い韓国の伝統音楽の歌手が4ビートを歌えないとか、そういうのに似てるかも。
 楽器って、ある音楽ジャンルのスペシャリストになるほかに、スペシャリストではなくてその楽器自体を極めるというスタイルもあります。こうやらないと音楽をアウフヘーベンできないから、すごい人はいずれこの道を行くことになるわけですが、コントラバスの場合はたぶん、バッハとかのカノン、現代音楽の特殊奏法、ジャズをはじめとした西洋ポピュラー音楽での機能和声上でのアドリブ、タンゴなどコントラバスを使う主要な音楽のビートの練習…みたいに、コントラバスを一巡する事をやるんじゃないかと。バリー・ガイとか齋藤徹さんまでは届かないまでも、ベンジャミンさんもそういう人となんじゃないかと思いました。

 沖さんも、カッコよかったです。フラジオでもなんでも駆使して演奏するんですが、こういうのは即興じゃないとなかなかできない表現かも知れません。でも、自分から投げ込むシーンが少なくて、コンバスに反応する受けのシーンが多いかな?でももう、この時の沖さんって70歳近かっただろうから、ペットなんていう難しい楽器をこれだけ演奏できるというだけでもすごいのかも。

 このCDもインディーズレーベルの作品ですが、No Business Records の『Kami Fusen』と同じで、インディーズ特有のダメさを感じてしまいました。音が録りっぱなしで、楽器のおいしいところを録音できてないです。CDにする前にEQぐらいすればいいのに。残響もまったくな感じられなくて、リヴァーブをかけたくないという気持ちも分かるけど、せっかくいい演奏してるのに楽器が響きません。役にたたないこだわりなんて捨てて、少しで良いからリヴァーブぐらいかければいいのにと思ってしまうなあ。こういう無頓着さはジャケットにあらわれている通りです(^^;)。これ、いいエンジニアに任せたら、何倍もいい音楽に聴こえた気がします。
 かなり面白い即興演奏だったので、頭の中で音質を向上させて聴くか、実際に自分でEQやリヴァーブをかけて聴くと「おお!」ってなるんじゃないかと(^^)。


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『沖至、井野信義、崔善培 Itaru Oki, Nobuyoshi Ino, Choi Sun Bae / KAMI FUSEN』

ItaruOki_KamiFusen.jpg 10年か20年ぐらい前にリトアニアに出来た「No Business Records」というレーベルから出たフリージャズのCDです。21世紀のフリージャズ界隈ではまあまあ有名なレーベルで、日本のフリージャズも積極的に紹介しています…No Business というわりに、昔の有名なプレイヤーしか出さないんですけどね(^^;)。。録音は1996年で、発表は2017年。トリオの連名になってますが、実際には沖至さんが久々に日本に帰ってきたときに組まれたツアーだったみたいです。崔善培(チェ・ソンベー)さんだけは知りませんでしたが、韓国のトランぺッターとの事でした。

 ベースが高速のピチカートやアルコでリズムやバスやオスティナートを作り、トランペットは作られたテーマを2管アンサンブル、ブローイングコーラスに入ったらそれぞれのぺッターがインプロヴィゼーション。というわけで、ゴリゴリなフリージャズとか、イギリスのフリーインプロヴィゼーションと違って、オーネット・コールマンぐらいのフリーさの音楽に感じました。自由度が高く、ツーファイブに縛られないバップともいえそう。実際、「I remember Clifford」や「Tea for two」といったジャズ・チューンも演奏してました。

 良かったのは、沖さん作曲の「Ikiru」。中国音楽のようにゆったりしたマイナーペンタで、ジャズにはないメンタリティを感じました。韓国人が参加して、フランスに渡った日本人がいて…というわけで、欧米のミュージシャンでは作れない音楽だと思いました。
 それから、井野信義さんのピチカートがすごい!フレットレスのコントラバスなのにピッチはいいし、リズムもデュナーミクの安定度も抜群、しかもむっちゃ速い!!はっきりいって、ロン・カーター当たりより数段上のプレイヤーと感じてしまいました。そういえば、高柳昌行さんのグループでの演奏もすさまじかったなあ。。

 残念だったのは、トランペットのおふたりのコンディションがイマイチに感じられたこと。ジャズ系のトランペットって、ブッカー・リトルフレディ・ハバードやクリフォード・ブラウンみたいに、ピッチやデュナーミクを安定させて思い切りよくパーンと演奏しないと、フラフラしちゃうじゃないですか。そんな感じなんですよね。特にふたりでアンサンブルするところのピッチは合わないし、アドリブもけっこうフラフラで…みたいな (^^;)。

 ツアーに合わせた即席のグループで出来る限界がこれぐらいなのかも知れません。それだけに、もっとリハや追い込みをやったら、何倍もよく出来そうな音楽と感じました。そして、録音も良くないです。残念に思うのは、ミックスなりマスタリングなりすれば何倍もよく出来そうなのに、それもしないんですよね。ジャケットデザインも同じことが言えて…インディーズレーベルのダメなところって、ハートはいいけど技術がアマチュアな所と感じます。
 ジャズを含めた即興系の音楽を聴いてたまに感じる事ですが、音楽にしても演奏にしても録音にしても、音楽ってもっと手間をかけて作り上げないと、手を抜いた部分が全部音に出てしまうんだよな、みたいな。「ジャズだから」「即興だから」は音の言い訳にならないんじゃないかなあ、みたいな。東アジアならではの音楽とか、井野さんの凄いプレイとか、いいところがいっぱいあるだけに、この音楽の完成形を聴いてみたいと思いましたが、もう沖さんは…合掌。

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『インスピレーション&パワー14』

Inspiration and power 14 1973年、東京アート・シアター(昔の新宿ピット・インの上層階?それともアート・シアター・ギルドの上映館?)で14日間にわたって開催された日本フリー・ジャズ・フェスティバルのドキュメント、アルバム2枚組です。イベントの主催者は副島輝人さんで、アルバムに収録されたのは8グループで、各10分ほどの演奏が収録されていました。収録グループは、宮間利之とニュー・ハード・オーケストラ、吉沢元治、沖至クインテット、ナウ・ミュージック・アンサンブル、富樫雅彦+佐藤允彦高柳昌行ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ、がらん堂、山下洋輔トリオ

 このレコードで最初の驚きは、音がムチャクチャいい!!73年の日本のフリージャズでここまで音が良いレコードは珍しいです。70年代日本のフリージャズのレコードって、モービル録音どころかポータブルでの録音がほとんどだったと思うんですが、これは素晴らしいです。ニューハードの演奏なんて見事なアンサンブルでとてもモダンな音を出してるんですが、こういうのって響き自体に感動する側面も強いと思うので、録音の良さってすごく大事だと思います。

 そして、音楽や演奏が素晴らしいものが多くて驚きました。ジャズに限らず映画や文学もそうですが、80年代以降って専門馬鹿が多いというか、それしか知らない人が作り手になっているものが多いと感じます。だから、狭い世界しか知らず、そこからはみ出たものを理解できないで排除したり、そもそも外を知らないので狭い世界以上のものを表現するなんて無理になってしまったと感じます。ところが、60~70年代の日本のジャズマンって、世間が広い人が多いと感じます。宮間利之さんにしても高柳さんにしても吉沢さんにしても、話を音楽に限ったとしても、明らかにクラシックをはじめ他の音楽にも触れてきた人が作った音楽だなと感じます。だからニッチなものにならず、普遍的なものを作れるんじゃないかと。
以下、僕が心を動かされた音楽だけを抜粋してご紹介!

宮間利之とニュー・ハード・オーケストラ:これがアルバム冒頭なんですが、ものすごいモダン・サウンドのビッグバンドで驚きました!ギル・エバンスジョージ・ラッセル級と言っていいほどの斬新なサウンド、なんとポルタメントをアンサンブルに組み込むという新しさもありながら、わずかに日本的なものも感じたりして、すばらしかったです。このアルバム、他は高柳昌行さんや山下洋輔さんといった日本のフリージャズのビッグネームがずらりと並んでるんですが、ニューハードが入っていた事で僕は購入をためらっていたんです。ところが、ふたを開けてみたらこれが一番すごかった。

吉沢元治:コントラバスの独奏、これはジャズだけやっていた人の音楽でも演奏でもなかったです。クラシック的な意味ではなく、表現とかやろうとしている事という意味で素晴らしかったです。クラシックを踏まえてニュージャズ方面に活路を見出した人のアルコって、強烈な説得力があって心を持っていかれちゃいます。。

沖至クインテット:CDにクレジットが書いてなかったものでメンバーが分からないんですが、沖さんはエレクトリック・トランペットを吹いていました。これはバップの延長線上に展開した正統派フリージャズといった感じで熱い!メッチャカッコよかった。。

山下洋輔トリオ:このグループの演奏はあんまり音楽的な構成や表現を考えているようには思えなくて、昔は嫌いでした。指を速く動かす事しか考えてないように思えたんですよね。でも久々に聴いたら、たしかにそれはそうなんですが、でも技術はピカ一、カッコよかった!

 若い頃このCDを購入しようと思ったのは、高柳昌行さん、富樫さん、佐藤允彦さんの参加でした。ところがふたを開けてみると、違うグループの演奏ばかりに感激させられちゃったんだから、分からないものです。自分が知らないものに触れたり、自分が知らないものの良さを理解しようとする姿勢って大事なのかも。このCDがなかったら、僕は宮間利之ニューハードや沖至さんを良いと思う事もないまま終わっていたかも。日本のフリージャズが一番熱かった70年代の雰囲気を見事に伝える名盤だと思います。


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『沖至トリオ / 殺人教室』

OkiItaru_SatujinKyousitu.jpg トランぺッター沖至(おきいたる)さんのリーダー作、1970年発表です。メンバーは沖至(tp他)、翠川敬基(cb他)、田中保積(dr他)で、全4曲。へえ、翠川さんってチェロじゃなくてコントラバスを演奏していたんですね。このレコードはジャズ評論家の副島輝人さん主宰のMobys というレーベルからのリリースで、僕が持っているのは再発されたCD。冒頭にパチパチ音がしていたので、多分LPから起こしたんじゃないかと。

 トリオと言っても、皆がゴングやらピアノやらグロッケンやらを演奏します。それぞれがトランペット、ベース、ドラムを演奏している曲はややフリー寄りのジャズ・トリオっぽいです。一方、皆が色んな楽器を演奏すると、アート・アンサンブル・オブ・シカゴとか、古い恐怖映画のサントラみたいでした。で、多楽器演奏がアルバムの最初と最後にあって、真ん中がトリオでのストレートな演奏。これはいいプログラミングだなあ。
 ジャズ・トリオの演奏の方は熱いし、恐怖映画のサントラっぽい方は雰囲気があって刺激的。すごくよかったです。それにしても沖さんって、もともとはバッパーだったんじゃないかという演奏でした。のちにフランソワ・テュスクのグループで演奏したりもするし、そっち系の演奏もきっとうまいんでしょうね。

 このアルバムは70年発表。沖さんは大卒、翠川さんなんて大学在学中…といっても、安保闘争がいちばん激しかった時期だと思うので、大学の授業なんてまともにやってなかったのかも知れませんが。「殺人教室」というタイトルにこのジャケットデザイン、そしてフリージャズ。音楽アルバムというより、安全保障条約をめぐる60~70年に、若者の中でも頭を持っている大学生たちがどう肌で感じていたのか、それが音になった創作物と感じました。これはいい、推薦です!


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トランぺッター沖至、逝去

ItaruOki_Photo.jpg  2020年8月25日、フリージャズ系の名トランぺッター沖至さんがフランスで亡くなられたそうです。享年79歳、これは新しい音楽を選んで生きてきたミュージシャンとしては長生きだったのかも。

 僕が沖至さんをはじめて聴いたのは、渡仏前の1970年に発表したリーダーアルバム『殺人教室』。当時の僕は音大に通いながらジャズのアルバイトをしていて、ピアノ科から作曲科に転科したての頃でした。だから当時は「勢いは凄いけどデザインがちょっとな…」なんて思ったんですが、ところが最近聴き直したらメッチャカッコよかったです。それは、73年に行われた日本のフリージャズのフェスティバルの実況盤『インスピレーション&パワー14』も同じ。
 そういった沖さんの渡仏前のレコードを聴き直すきっかけになったのが、1996年の音源『KAMI FUSEN』でした。録音は96年でしたが聴いたのは去年かおととしとつい最近で、渡仏後の沖さんの演奏を意識的に聴いたのはこれが初で、いい音楽だったんです…本当に感動したのは井野信義さんの演奏だったんですが。それから、渡仏後の沖さんの演奏もいくつか聴くようになりました。だから、沖さんの音楽や演奏を良いと感じるようになったのは本当にここ最近のことで、そんな時に届いた訃報は悲しかったです。

 日本のフリージャズが一番熱かった70年代前半に現役だったミュージシャンが、次々に世を去っていきます。生き残っているのは、豊住芳三郎さん、山崎弘さん、山下洋輔さん、佐藤允彦さんぐらいでしょうか。大阪の大学を出た後にミュージシャンになり、30歳を過ぎてから渡仏してジャズを続け、そのまま一生を過ごすという保険のきかないダイナミックな生き方は、70年代を生きた世代だから出来た生き方なのかも。音楽だけでなく、生き様まで格好いい人でした。ご冥福をお祈りします。


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『Youssou N’Dour / The Guide (Wommat)』

Youssou NDour _The Guide サリフ・ケイタと同じ西アフリカのワールド・ポップのミュージシャン、ユッスー・ンドゥールが94年に発表した7枚目のアルバムです。たしか、グラミー賞にノミネートされていた記憶があります。このアルバムかどうか知りませんが、ユッスーさんは実際にグラミー賞を受賞していました。ちなみにユッスー・ンドゥールは、セネガルのミュージシャンです。

 西アフリカの打楽器を使いつつも、基本は西洋音楽。サリフ・ケイタもそうでしたが、フランスやイギリスの植民地支配が長く強かった西アフリカだと、文化が西洋と融合しやすいのかも。近くても完全敵対のイスラム圏は西洋拒否ですし、逆に中央アフリカや東アフリカになると西洋色は薄いですものね。
 そんな中、いちばんアフリカを感じたのは、詞でした。よく聴くと英語と民族言語(?)のチャンポンで歌われてるんですが、詞の内容がアフリカの文化を感じさせるものが多かったです。

「雨が降る村に行く、生きている樹があるところに行く」(微笑みも失せて)
「バンバ様、皆はあなたの声を聞いたでしょうか」(マーム・バンバ)
何かあれば昔は村の広場に集まって解決するまで意見を交わし合っていた、今の時代とは違い過ぎる、君の先祖の名を教えてくれ」(時)

 詞で歌われている色々な事も西アフリカ的だし、また歌自体が教訓的であるところも、なるほどグリオの活躍する西アフリカらしいな、と。個人の感情を歌う抒情詩ではなく、ある考えを人に訴えるものが多かったです。セネガルもグリオの活躍する地域なので、歌音楽はそういう役割のものと思われているのかも。あとはセネガルの伝統だけでなく、アフリカに呼びかけていたボブ・マーリーの影響もあったのかも知れません。セネガルだけでなく、ブルキナファソやギニア等々のアフリカの国の独立年を伝える曲なんかもありましたし。どこか、アフリカ向けというより、欧米向けに作ってるんじゃないかと思うものもありました…英語だからそりゃそうか。

 というわけで、西洋とアフリカが混じったワールド・ポップという感じでした。でも、自分の趣味だけで言うと、もう少しアフリカ色が強くあって欲しかったかも。西洋に寄せすぎるんですよね。。


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『タムタム・アラベスク セネガル貝殻島の綾打太鼓 Senegal: Tom-Tom Arabesque』

TomTom Arabesque セネガルの民族音楽のCDですが、グリオとは無関係の村のお祭りでの集団打楽器演奏みたいな感じでした。遠くでガヤガヤと騒ぐ声や、まわりで手拍子を打つ音とかが聴こえて、なかなか楽しげ。まじで大騒ぎって感じ、いいなあ(^^)。

 このCD、セネガルにあるファディウト島というところのセレール族の若者たちによる演奏という事ですが、グーグルで調べてもファディウト島はこのCDでしかヒットしない(^^;)。というわけで、情報がCDのライナーしかないのですが、その解説がまるでおとぎ話のよう。大西洋側につきだした岬にある首都ダカールから海岸線沿い(この海岸線、「プティット・コート」というそうです)に南に行ったところに、ジョアルという町があるそうです。ここに住む人はもともと漁民で、貝をよく食べていたんだそうです。その貝殻を海に捨て続けた結果、貝で出来た島が出来た…マジかよ、まるで童話だ!でも、そんな島なんて、海の上にちょこっと顔を出してるだけに思うじゃないですか。ところがそんなもんじゃなく、貝の上にバオバブの木が育ち、ついには家まで建てられるようになったんだそうです。で、このCDの内側には大陸から島まで続く長い木の橋や、島の上の学校みたいな所の写真まで写っていてビックリ。う~んこれって何百年も貝を捨て続けたって事ですよね、すげえ。。でもググるとこの貝殻島の情報はこのCDしかヒットしないので、僕はいまだにこの島の存在をムー大陸ぐらいの感覚で信じていませんが、録音が残ってるぐらいだからマジなんだろうなあ。。

Ganbia senegal Map 音楽は、コートジボワールをはじめとした西アフリカのポリリズミックな皮もの打楽器のポリリズムな音楽と同じです。CDの解説によると、レスリングのうしろのガヤとして演奏しているものや、舞踊音楽として成立してるみたいです。西アフリカの打楽器合奏でつまらないものに出会った事がありませんが、これもよかった!!西アフリカのポリリズムがすごいと思うのは、日本でも打楽器音楽は祭りでも能でもいくらでもあるけど、だいたい常に同じリズムをとるのに、アフリカは多人数で叩くとみんなリズムの形を変えてポリリズムになるんですね。このリズムに関する考え方や感覚が実に凄いと思ってしまいます。アフリカすげえ。

 セネガルははやい段階からヨーロッパに開かれていたので、首都ダカールは「アフリカのパリ」といわれるほどに近代的発展を遂げているそうです。一方でサハラの地もあれば、フタ・ジェロン山脈沿いもあればバオバブの木が生い茂る森もあるという事で、色んな側面のある国土なんだそうです。なるほど、それでグリオみたいな音楽もあれば、いかにもブラック・アフリカなこうした打楽器音楽もあったりするのかも。それにしてもいい音楽でした、生き生きとしていて、聴いてるだけで元気が出ました(^^)。


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『グリオの王 スンジュール・シソコ Senegal: Songs of the Griots[Ⅱ]』

Gurio no ou Sunjul Cissoko ガンビアのグリオを語っておいて、ガンビアをぐるっと囲んでいる国セネガルのグリオに触れないわけにはいきません(^^)。というわけで、これは大西洋に面した西アフリカの国セネガルに住むグリオのスンジュール・シソコさんのコラ弾き語りです。あ、弾き語りしているものが半分ですが、ヴォーカルが違う人のものも半分入ってました。

 音だけの印象を言うと、ものっすごい癒し系!「ああああ~~気持ちいいい~~~」って感じで、全身の力が抜けて、日ごろのストレスが羽根をつけてどこかに飛んで行ってしまいました(^^)。コラというアフリカの竪琴がむっちゃくちゃウツクシイ音を出す事と、長7度の音はやっぱり神がかりに美しいという事なのかも。詩を聴かずに音だけ聴くだけでも、もう十分素晴らしい音楽だと思ってしまいました。このCDに日本語対訳がついてなくて簡単な意訳しか書いてなかったから、音楽を聴くしかなかったという事情もあるんですけどね(^^;)。。

 そして、癒し系でありながら演奏がむっちゃくちゃ高度!!クラシックやフラメンコのギターが、ひとりでバスと和声と戦慄を同時に演奏しちゃったりするじゃないですか。あれをコラでやってる感じです。グリオの活動地域ってアル・アンダルース文化と隣接してるし、これだけ奏法が似てるとスペイン音楽と歴史的に関係があったんじゃないかと思ってしまいます撥弦楽器の演奏だけでなく、このCDの女性の歌手の歌い方も発声方法もな、フラメンコと同じと言ってもいいほどクリソツですし。フラメンコが情熱的な民族感情を前面に出してきたのに対して、マリやセネガルのグリオが自然と平和みたいなアフリカ的な思想を背景に持っていた、みたいなさはあるのかも知れませんが。

 僕が聴いたグリオの音楽では、このCDの印象はとにかく強烈。本家のマリのグリオも素晴らしかったけど、録音の良さやプレイのうまさなんかも込みでいうと、このCDは別格。日頃のストレスなんて10分聴いてるだけで全部吹っ飛んでしまうほどの超癒し系、毎日ストレスを抱えて歩いている日本人に必要な音楽ってこういう立ったりするのかも。超おススメ!


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『ガンビア マンディンカ族のコラ Gambia: Mandinka Kora』

Gambie Mandinka Kora マリだけでなく、ガンビアもグリオが活躍する国。ガンビアは西アフリカの西で大西洋に面した小さな国で、周りをぐるっとセネガルに囲まれてます。これは、フランスの民族音楽レーベルOCORA が出した、ガンビアの音楽のCDです。タイトルに「コラ」と入ってますが、コラはグリオが使っているハープ状のアフリカ民族楽器のことです。

 おお~これは素晴らしい、超レイドバック系の音楽でした!マジで演奏もうまければ歌もいい、さすが世襲の職業演奏家はレベルが違うなあ(^^)。このレコードで歌っていたのはジャリ・ニャマ・スソという人でしたが、「ジャリ」ってグリオの事なので、グリオのニャマ・スソさんという事なのかな?この人の演奏するコラの音がとてつもなく美しくて、またひたすらレイドバックしたあったかい音で、ものすごい癒されました。西洋音楽に耳を慣らされてしまった僕的には、ちょっと高い6度のチューニングがなんとも心地いい。。コラって4種類の7音音階スケールに合わせたチューニングが出来るそうですが、このCDでは2種類の調弦でした。ひとつはトモラボというスケールで、メジャースケールっぽいもの(2度と6度がちょっと高め、3度と7度がちょっと低め)。もうひとつはサウタというスケールで、基本はイオニアンなんだけど高い方に行くと#11thが入ってくる、みたいな。
Ganbia senegal Map こういう音の心地よさを聴いてしまうと、自分たちが西洋の軽音楽で長調や短調ばかり使ったり、アメリカン・ソングフォームしか使わなかったりするのは、それがベストだからじゃなくて、それしか知らないからなんじゃないかと思ってしまいました(^^)。

 西アフリカの音楽はグリオだけではないですが、専業音楽家のグリオが奏でる音楽はやっぱり素晴らしいです。グリオって、もともとはマリ王国に保護された歴史や物語やニュースを伝承する吟遊詩人のようなもの。当時のマリ王国にいた人をマンディングと言って、このマリ系の言語をマンデ諸語といって、この言語を使う人は今でもマリ、ガンビア、セネガル、コートジボワールあたりに住んでるそうです。というわけで、グリオもマリだけでなくこれらの地域に生き残っている、みたいな。こんなに気持ち良くて、しかもテクニックもすばらしい音楽なんて本当に貴重なので、西洋音楽に滅ぼされないで、この西アフリカ独自の音楽を失わないで歌い継いでほしいなあ。日本のネイティブな音楽なんて、もう絶滅寸前ですもんね。ライ・クーダーやエリック・クラプトンを「レイドバックしたいい音楽だ」と思う方なら、これを聴いたら「うわあ、こんなに気持ちいい音楽があったのか?!」ときっとなるはず。超おススメの1枚です(^^)。

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『Astrud Gilberto / Beach Samba』

Astrud Gilberto_Beach Samba ブラジルの女性シンガーのアストラッド・ジルベルトが1967年に発表した5枚目のアルバムです。マジでアストラッドさんのアルバムと見れば何でもかんでも買ってたんだなあ。。

 気持ちよくて、リラックスしていて、楽しくて、大好きなアルバムです。僕的にはアストラッドさんのアルバムでいちばん好きなのはこれ。といっても、世界ヒットアルバム『Gets/Gilberto』から『Beach Samba』までのアルバムは、多少の好みの差はあれど、みんな好きなんですけどね(^^)。
 少しだけブラジル色をまぶしたポップスといった体のアルバムで、それってアストラッド・ジルベルトの姿勢と一致しているんだろうな、と思ったりして。「少しだけブラジル色」というのは、サンバやボッサ特有のクラ-ヴェのリズムを使う曲がそれなりにあって、管弦のアレンジの仕方が当時のジョビンやジョアン・ジルベルトのアルバムのそれに似ているから、そう感じるのかも。「ポップスのアルバム」というのは、選曲にもあらわれてます。ブラジル系でルイス・ボンファやマルコス・ヴァリの曲、ジャズ系では「My Foolish Heart」、ほかには映画の主題歌やなんとラヴィン・スプーンフルの曲なんかも。こういうアルバム構成の仕方はポップスそのものだと思うんですよね。昔は、ポップスってこういう構成をしていましたよね。アメリカだとカーペンターズが、フランスだとイブ・モンタンやフランス・ギャルが、日本でもキャンディーズがアルバムでもコンサートでもそんな感じでしたし。
 でもそれが日本のアイドル歌謡のようにならないのは、アレンジャーやプレイヤーが素晴らしいのだと思いました。だって、アレンジャーはドン・セベスキーにエウミール・デオタードだし、プレイヤーはロン・カーターやヒューバート・ロウズですから。ある時代の日本の歌謡曲の作家みたいに、ビートルズ系の音楽しか作れない人たちではなくて、ジャズもサンバもマンボもポップスも書けて演奏できる人たちが作っていたから、ポップスのアルバムといってもこれだけ幅の広い音楽が出来るんですね。

 作り手がプロフェッショナルである事は、このポップスが大人向けの音楽に仕上がっている事につながっている原因のひとつと感じました。だって、詞だけを考えても、「Misty Roses」や「My Foolish Heart」みたいな詞が子供向けじゃない事は間違いないじゃないですか。フィフティーズやロックといったアメリカのポップスが席巻する前は、ポップスも大人の音楽だったんですよね。だから僕が大人になった今でも、まったく自然に楽しむ事が出来ちゃう。音楽も言葉も、聴いているだけで人生を前向きに思えるようになってくるような、いいアルバムでした!


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『Astrud Gilberto / Look to the Rainbow』

Astrud Gilberto_Look to the Rainbow 1966年発表、なんとギル・エヴァンスをアレンジャーに迎えて制作されたアルバムです。ボサノヴァのアイドル系歌手にモダン・ジャズの中でもかなり硬派な事をやっちゃうギル・エヴァンスをぶつけて大丈夫なのか、しかも1曲目が音くさいバーデン・パウエルのビリンバウだぞ…な~んて今なら思ったかも知れませんが、若い頃の僕はクレジットすらろくに見ず、アストラッドさんの屈託のない笑顔があふれだしているLPの大きなジャケットだけでコロッといって買ってしまったのでした(^^;)。。

 凝りまくり、また斬新さにもあふれているアレンジが見事すぎます。ウルトラセブンに例えれば実相寺昭雄作品のような斬新なアーティスト性の強いアレンジで、こんなのボサノヴァのアルバムで聴いたことがないです。でもこれはニュージャズに踏み込んでいった時代のモダンジャズの美感であって、ボサノヴァやブラジルやアストラッド・ジルベルトというものが持っている美感とマッチしているかというと微妙かな(^^;)?
 でも僕はギル・エヴァンスの『Out of the Cool』にめり込んだことがあるもんで、アストラッド・ジルベルトとは切り離し、ギル・エヴァンスのアレンジの見事さを聴くアルバムとしてこのアルバムを聴いていました。

 というわけで、清廉潔白としたアストラッド・ジルベルトを聴きたい人にはミスマッチなアルバムかも。でも音楽の完成度が低いかというと、恐らく彼女のアルバムの最高峰じゃないでしょうか。僕的には、これはアストラッドではなくギル・エヴァンスのアルバムという事になっています(^^)。。


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『Astrud Gilberto / The Shadows of Your Smile』

Astrud Gilberto_Shadows of Your Smile デビュー・アルバム『The Astrud Gilberto Album』と同じ1965年にリリースされたアストラッド・ジルベルトのセカンド・アルバムです。ファーストがほぼジョビン作品集だったのに対して、このセカンドはボッサ、スタンダード、映画音楽を取り上げてバランスよく並べていました。

 なんというスター街道を歩んでいるんでしょうか、ピッチは悪い、声量はない、歌だって上手くないのに、天下のヴァーヴからデビューし、2作目のこのアルバムではドン・セベスキーやジョアン・ドナートがアレンジに参加、管弦入りのフルコースのバックをつけてました(^^)。時流に乗るとはこのこと、人間数少ないチャンスをものにできるかどうかが勝負ですね(^^)。
 ただ、1作目に比べるとオケがあまりにデラックスすぎて、歌が完全に負けてるように感じました。「Fly me to the moon」みたいな可愛らしい曲はまだいいんですが、「いそしぎ」みたいに重いし音程を取るのが難しそうな曲になると、ヴォーカルが「素朴でいい」ではなく、押されてしまって「これは技量不足だな」と感じてしまう、みたいな(^^;)。技術でなくて人柄や味で勝負の人だと思うので、伴奏の編成は小さければ小さいほどいいのかも、な~んて思ったりもしましたが、どうなんでしょうね。

 とはいえ、アストラッド・ジルベルトのアルバムは、彼女の素朴で人柄のにじみ出た声を聞いていられるだけですべてはオールライトなので、これも良し(^^)。30年ぶりぐらいに聴いたアルバムでしたが、幸福感に溢れたいいアルバムでした。歌ってそういうものであってほしいなあ。。


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『Astrud Gilberto / The Astrud Gilberto Album』

Astrud Gilberto_ Album 大名盤『Gets/Gilberto』でヴォーカルを務めて大評判となったボサノヴァの女性ヴォーカリスト、アストラッド・ジルベルトの初アルバム、1965年発表です。レーベルがヴァーヴなので、『Gets/Gilberto』での評判で急遽作り上げたアルバムなのかも。このアルバムはほぼアントニオ・カルロス・ジョビン作品集…なんで旦那さんのジョアン・ジルベルトの曲集にしないんだ(^^;)。。ジョビン本人がギターを弾いていたりします。

 アストラッドは、恐らくジョアンのレコーディングについてきてディレクターに「素朴で可愛らしい声をしてるから1曲歌ってみてよ」…ぐらいのノリでデビューしたんじゃないかと僕は踏んでます(^^;)。だって、音程は怪しいし、ヴォーカルに関する技巧なんてヴィブラートですら使えない、どう考えたってアマチュア…なのに、なんでこんなに良いと感じるんでしょう。人柄を感じるというか、飾らない感じがたまらないのかも知れません。そう考えると、歌もののボサノヴァって、技巧的な音楽じゃなくて、どこまでも詩とか曲とか雰囲気の音楽なのかも。
 このアルバムでジーンときた曲は、ヴォーカルもののボッサではこれ以上の曲はないんじゃないかという「Meditation」、ウェイン・ショーターのアルバムで知った「Dindi」、このへんは何度繰り返し聞いただろうかというほどに好きです。

 編成はスモール・コンボ、曲によって小さめの編成の管弦が入るというボサノヴァのヴォーカル物の典型。聴いているだけでイパネマ海岸で太陽に照らされて青い色の清涼飲料水を飲んでいるような気分になれる楽園アルバム。アストラッド、僕は大好きで中古屋でアルバムを見つけるたびに買っていたら、気がつくと何枚もアルバムを持っている状態になっていたのですが、外れがないんですよね。いやあ、夏は怪談とラテン音楽に限るなあ(^^)。。


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『シャルパンティエ:歌劇《オルフェウスの冥府下り》H.488 ウィリアム・クリスティ指揮、レザール・フロリサン』

Charpentier_Orpheusu no meifukudari_Christie ウィリアム・クリスティ指揮、レザール・フロリサンによるシャルパンティエの楽曲をもうひとつ。オペラ「オルフェウスの冥府下り」です。「オルフェウスの冥府下り」は有名なギリシャ神話で、奥さんを冥府から連れて帰るけど、途中で振り返ってはいけないというあれです。でもシャルパンティエのこれは、連れて帰る事を許されるところで終わってます。オルフェウスを題材としたオペラは、僕はモンテヴェルディのものを聴いた事があります。あれも素晴らしかったなあ。

 モンテヴェルディもそうですが、バロックのオペラって、僕がオペラという言葉から想像する音とはかなり違うんですよね。ほら、オケピットにでっかいオーケストラが入って、ヴェルディワーグナーみたいなのをドカンとやるイメージがあるじゃないですか。でもバロックのオペラは室内楽団の5重奏ぐらいのサイズで、聴きようによっては歌曲の長いやつ、ぐらいの印象だったりします。このCDでも、チェンバロとバス・ヴィオールとフルートとヴァイオリンの音の混ざり方があまりに美しい。そして、ソプラノのモニク・ザネッティがヤバいぐらいに美しい、なんだこの見事なファルセットでのヴィブラートは、神か。。録音が恐ろしく良いという事もありますが、これは鳥肌ものでした。

 バロック時代は、ロマン派以降と違ってエスプレッシーヴォなほど良いというわけではなくて、調和とか美しさとかへの美感がまだ強く残っていたんだろうなあ。清廉とした演奏と音楽でした。フランス・バロックのシャルパンティエ、僕が持ってるCDは今回感想を書いたこの3枚だけなんですが、いずれも素晴らしすぎる内容。すべて推薦です!!


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『シャルパンティエ:真夜中のミサ曲 ウィリアム・クリスティ指揮、レザール・フロリサン古楽オーケストラ&合唱団』

Charpentier_Mayonaka no Misa_Christie シャルパンティエの書いた3つのミサ曲のうちのひとつ「真夜中のミサ曲」が入ったCDです。他に、「主の御降誕のカンティクム H416」も収録されていました。ちなみに、「真夜中のミサ曲」はクリスマスの深夜に演奏されるもので、フランス・バロックのミサ曲で最も親しまれているものなんだそうです。へえ~、またひとつ勉強になった(^^)。。

 まず、1曲目に入っていた「主の御降誕のカンティクム」…いやあ、始まって1分で虜になってしまいました、なんだこの静謐で落ち着いた感じは!西洋の宗教曲のゾッとくるような美しさというのとちょっと違くて、美しいんだけどどこかあったかい、みたいな。この曲はキリスト生誕を唄ったオラトリオで、エヴァンゲリストみたいなレチタティーヴォの語り手がいて、その後で男女混声合唱が入って、室内楽伴奏つき、みたいな。歌なしの第3曲「Nuit」の弦の美しさがヤバい…いや、この曲だけでなくみんないい曲でした。室内楽がバロック時代らしくてリコーダーの音なんかも聴こえて、これがあったかいのかも。

 「真夜中のミサ曲」は、構造が面白かった!このCDだとトラックが15に分かれているんですが、ミサ曲の通常文が歌われるところと、世俗音楽のノエル(クリスマス・キャロル)が混ぜられてました。へえ、こんなミサ曲があるのか。。ところがこれが聖俗グッチャグチャに聴こえるかというと、ものすごく整って聴こえました。すごい…。世俗曲と言っても、合唱音楽ってすごく美しかったりしますもんね、いつかトラップ・ファミリーのクリスマス音楽集を聴いた事がありますが、それですら美しいと思ってしまいましたし。そして…いやあ、やっぱり美しい。。

 録音はかなりナチュラルで、響きはそこそこに抑えてあってあったかい感じ。合唱は柔らかくて調和優先という感じ、ヒリアードみたいに技巧的ではなかったです。エヴァンゲリスト(?)は文句なしにいい!いやあ、これは買ってよかった、「シャルパンティエの『真夜中のミサ曲』ぐらいはちゃんとCDのいい音で、訳を読みながらリッチに聴きたいなあ」なんて思って買ったんですが、これを聴かずに死ぬところだったよ。。これは推薦です!


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『シャルパンティエ:死者のためのミサ曲集 デヴォー指揮、ウエストヴラムス・ヴォカール・アンサンブル、ムジカ・ポリフォニカ』

Charpentier_Sisha notame noMesses_Devos 17世紀フランス・バロックの作曲家マルカントワーヌ・シャルパンティエの書いたミサ曲集です。シャルパンティエという名の作曲家は何人かいますが、僕はこのマルカントワーヌさんの音楽しか聴いた記憶がありません。そしてマルカントワーヌ・シャルパンティエさんはフランスとはいってもローマでカリッシミに音楽を学んだそうで、かなりイタリア音楽色が強いんだそうです。ルネサンス音楽やバロックって、作曲技法に「イタリアの〇度」みたいな名前がついちゃうぐらいに地域色がはっきりしてますが、古楽からバロックあたりはかじった程度にしか聴いてない僕にはその差がよく分からず(^^;)。だいたい、ルネサンスからバロック期の音楽って、僕は語れるほど聴いていないので、フランスの色ってぜんぜん分からないのです(^^;)。イタリアは装飾が見事、ドイツは地域で違うけど教会寄りになると重厚、フランスは…優美というか、貴族色がちょっと強い、ぐらい?
 そんなニワカな僕ですが、この演奏は聴いた瞬間に「ああ、これはいい…」としびれてしまいました。細かいことは抜きにして、音がとんでもなく美しいのです。いやあ、バロックの宗教曲ってすばらしい。。

 このCDはシャルパンティエが書いた3曲のミサ曲のうち2曲が入っていて、ひとつはオルガンを通奏低音に使った「四声と通奏低音のための死者のためのミサ曲」、もうひとつは「四声と器楽合奏のための死者のためのミサ曲」。どちらも素晴らしかったですが、まずはオルガン伴奏に男女混声合唱のミサ曲、これにしびれないわけがない!オルガンはけたたましく鳴るのではなく、合唱より小さいぐらい。コテコテの日本人な僕は、こういう控え目な方が琴線に触れるんですね、きっと(^^)。。
 そして本当にヤバかったのは「四声と器楽合奏のための使者のためのミサ曲」。なんてこった、この古楽器群の音色の美しさはなんだ?!さらに、カノン状に絡だりホモフォニーに展開したりする声部と楽器の音の混ざり方の美しさがヤバい。

 ルネサンス音楽後半、バロック、古典派という時代の西洋音楽って、古い音楽でも古い感じがしないです。各時代が違う様式を極めていて、すべてが完成形、みたいな。シャルパンティエさんなんて、バロックの中で決して有名な作曲家とは思わないんですが、これほどの完成度のレクイエムを書いちゃうんだから、党Jの作曲家のクオリティたるや恐るべし。これは素晴らしい音楽でした!
 

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書籍『音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門』 ペドロ・デ・アルカンタラ

Ongakuka no tameno Alexander Technique 楽器がなかなかうまくならない人必読、これは救いの1冊になるかも?!あの有名なアレクサンダー・テクニークを楽器演奏者むけに分かりやすく書いた本です。ただし、「わかりやすく」といったって400ページ超の本格的な本ですし、身体性を伴うものですので読解力や物を把握する能力がけっこう要求されると思いますが、難しい言葉は出てこないので、気合いがあれば読めます!

 F.M.アレクサンダーという舞台俳優が作ったアレクサンダー・テクニークは、演奏家にとっては、正しい運動の仕方に関する技術という所じゃないかと思います。僕はAテクニークの講師からレッスンを受けた事はないのですが、この本を読んだ僕の解釈としては、こんな感じのソマティクスじゃないかと思いました。

 まず、運動の基本は、運動以前の運動指令などを含む自己の使い方にあって、特にプライマリー・コントロールが重要。プライマリー・コントロールを中心として運動を起こすのがもっとも理想的な運動となるが、エンド・ゲイニング(結果を気にする事)によって体の使い方や運動にミスユースが起きる。これがいつまでたっても運動がうまくいかない原因。これを修正するには、ミーンズ・ウェアバイ(最良の方法を発見して用いる事)をしなければならないが、その為にはまずは誤って身についてしまった運動や体の使い方をインヒビション(抑制)しなければならない。その上で、まずはプライマリー・コントロールの仕方を身につけ、次に個々の運動の正しい方法へのアプローチをしていく。これは僕の要約なので、誤解している所があるかも知れませんので、興味を持った方がいたら、ご自身でこの本を読んでみてくださいね(^^)。

 ところでプライマリー・コントロールとは何かというと、頭・首・肩あたりの中枢神経系が集まっているあたりによる姿勢や運動のコントロールすることだそうです。この本の説明では、運動には①中枢で重心の移動を起こす全体的な運動パターン(トータル・パターン)と、②その体勢を具体的な運動にする部分パターン(反射)の2つがあるんだそうです。というわけで、運動はトータル・パターンが先行しているもので、これをコントロールするのがプライマリー・コントロール…と僕は解釈しましたが、読解力に自信がないので、興味があったら直接読んでみてください(^^)。

 まあこんな感じで、第1部はAテクニークによる運動の基本原則の説明、第2部は抑制や呼吸や腕の使い方などのレッスン、第3部はAテクニークの演奏への応用、という形で書かれていました。

 でもこういうものって、ヨガなんかもそうですが、時として怪しいスピリチャル方面に行ってしまうというか、エセ科学的な方向に行ってしまいがちになるじゃないですか。証明するのが難しい所を扱うから、そうなるのかも知れません。この本、本当に素晴らしいと思ってるんですが、運動指令に関するところは経験主義というか推測に基づいてしまってるというか、けっこう危ういなと思いました。運動指令の解剖学的な裏付けは、僕が読んだ音楽系の本だと『音楽の原理』にかなり詳しい図解が出ていたので、そっちも併せて読んだ方がいいかも。

 アレクサンダー・テクニーク、僕が音大生だった頃には既に名を知られていました。僕は実際のレッスンに接した事はありませんでしたが、「あれはいい」なんて話をチラホラ耳にしてました。これは良書!楽器の練習を5年も10年もちゃんと続けているのに、上達が出来ない人には救いの一冊になるかもしれません。超オススメです!!


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書籍『うまく歌える「からだ」のつかいかた ソマティクスから導いた新声楽教本』 川合弘子

UmakuUtaeruKarada no Tsukaikata ヴォーカリストさんにアドバイスをするために発声法関係の本をたくさん読みふけった事があります。クラシックでもジャズでも、どの本もだいたい同じような事が書かれていたのですが、この本はまったく違ったアプローチで書かれていました。古典的なアプローチじゃなくて、コーチングやアレクサンダー・テクニークのような比較的新しいソマティクスの知識を含めたアプローチから書かれた声楽教本だったのです。これが素晴らしかった!条件つきかも知れませんが、これはまじめに声楽を学んできた人には救いの一冊になるのかも知れないと思いました。

 レビューの前に、さっき「条件つき」と書いた理由を先に述べておきます。この本、声楽の指導をある程度受けてきた人向けに書かれているので、初心者や我流でやってきた人には向いてないと思います。例えば、「お尻を締めて歌えと言われる事の理由は…」「軟口蓋を上に引っ張るという言われる理由は…」みたいな説明がよく出てくるのですが、そもそもそういう指導を受けた経験のない人には、これらの説明は早すぎるかも。というわけで、この本は「きちんと声楽を学んだ経験のある人向け」になると思います。その前提で…

 この本を要約すると、ソマティクスという分野から発声を見つめ直して、これまでに指導されてきた発声指導の根拠を科学的に把握する、みたいな感じでした…僕の理解が正しければの話ですが(^^;)>。ソマティクスとは、自分の体を自分でどう感じるかという学問分野だそうで、有名なアレクサンダー・テクニークなんかもこの中に入るみたいです。で、声楽教師の指導や上手い人の真似をするというより、その方法論は学ぶけど結果として出てくるものは自分の身体次第なので自分の体に訊いて、自分の正しいやり方でやる、みたいな。ここは自己流でいいというのと意味が違う事は注意しとかないと変な方向にいっちゃいそうですが、そこを踏まえればとても素晴らしそう。

 第1章では、この理屈をまず説明して、次に声楽でよく指導されるけど、それってどういうことなのかを勘違いしないように説明(例えば、「喉を使わないで歌う」とか「声をあてる」とか「声を集める」などの指導が、いったい何を目指したものなのかを説明する感じ)されていました。

 第2章は、そうした発声の時に使う筋肉を、かなりリアルな解剖図を使って説明し(今回、いっぱい声楽関係の本を読みましたが、リアルな解剖図を使ってあったのはこの本が唯一でした)、その筋肉の正確な位置やそのコントロールの仕方を知るようにできていました。いやあ、この第2章は素晴らしい。
 どう素晴らしいかというと…例えば、歌と言えば何はともあれ腹式呼吸、横隔膜のコントロールですが、この正確な解剖図を僕は見たことがありませんでした。簡易的なものはいっぱい見てきましたけど。で、正確な解剖図を見ると…えええ=、こんなに大きく広い範囲にあるの?!なるほど、「横隔膜をコントロールする」と言ったって、その正確な位置を知らないと話にならないし、またその場所を自分で意識できていないとコントロールするも何もないだろ、とたしかに思えます。もうこの時点で、この本は買いです。

 第3章は、ソマティクスに基づいていると思われる身体メソッドの紹介。紹介されていたのは、アレクサンダー・テクニーク、コナブルのボディ・マッピング、フェルデンクライス・メソッド、ロルフィング、野口整体などでした。いずれも概要の紹介で、「これは良さそうだな」と思ったら、それぞれの専門書を読むなり、ワークショップに参加するなりする感じかでしょうか。自分にとって良かったものだけを備忘録として書き残しておくと…
 「アレクサンダー・テクニーク」は、この本に書かれている事をザックリいえば、しない事を学ぶ、みたいな。ある運動をする時に勝手に余計な事をしてしまってる事があって、それが運動を妨げているので、しない事を学ぶ。練習するほどできなくなっていくことがあるのはそのためだ、みたいな感じ。アレクサンダー・テクニークって「しない」それだけではあんまり意味がなくて、プライマリー・コントロールを身につけるという事なんだと思いますが、それは書いてありませんでした。アレクサンダー・テクニークに関しては、そのへんをもう少しちゃんと書いた本を読んだ事があるので、いずれまた感想を書ければと思います。
 「コナブルのボディ・マッピング」。人間は自分の身体の位置を意外と誤解してる、みたいな事かな?たとえば、肘が思うように動かない人が、実際のひじ関節とは5cmずれたところを動かそうとしていた、みたいな。

 4章と5章は、トレーニング法やエクササイズの紹介。ここは「こういうのもあるよ」みたいな説明で、ルーティンワークを組んでくれているわけではないので、取り入れるかどうかは自分で判断して、自分でルーティンワークを作っていく感じかな?

 というわけで、僕的には1~3章は必読、特に2章は素晴らしかったです。歌をやるなら、いずれは絶対に買わないとダメな本じゃないでしょうか。図書館で借りて済ませようなんて、これだけたくさんある筋肉を覚えるなんて無理、つねに横に置いておいて、ことあるごとにちゃんと見て、自分の身体を意識して…みたいにやる事で、音大や教師からの指導で行き詰った人の問題を解決する、みたいな本じゃないかと。良い本でした!


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Finale で「五線を隠す」が選択できなくなった!その対処法

 僕は楽譜作成にフィナーレを使っています。楽譜って、ずっと休んでいるパートは非表示にして、紙を節約&楽譜を見やすくするじゃないですか。歌とピアノの曲なら、イントロの歌がいないところは歌の五線を非表示にする、みたいな。僕はこれを活用しまくってます。ところが…
 ある日、非表示にしたはずの五線が表示されていました。あら、何か操作ミスをしたかと思って非表示にしようとすると…なんと、「五線を隠す」の項目自体がなくなってる!ソフトが壊れたのかと思って悪戦苦闘すること数時間、どうもある楽譜でだけ「五線を隠す」の項目が消えているので、ソフト自体がエラーしているわけではなさそう。というわけで、消えた「五線を隠す」の復活方法を!

1. 「ファイル」メニュー →「ライブラリを開く」を選択
2. 「楽譜スタイル」を読み込み


 以上でした!たぶん、「楽譜スタイル」のところに使用可能なスタイルを削除する項目があるので、何かの拍子で誤って「五線を隠す」のスタイルを削除しちゃったんでしょうね(^^;)。というわけで、「五線を隠す」以外のスタイルでも、もし選択できなくなってしまったらこの方法で復活できそう。お困りの方はお試しください!


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『Buddy Guy & Junior Wells / Alone and Acoustic』

Buddy Guy Junior Wells_Alone and Acoustic  ジュニア・ウェルズとバディ・ガイの共演した『Universal Rock』『Hoodooman Blues』がカッコよかった事がずっと心に残ってました。で、30歳を過ぎた頃に、中古でこんなCDを見つけたのでした。ジャケットがあまりにダサいので、買うかどうかかなり迷ったんですけどね(^^;)。それでも購入を決めた理由は、バディ・ガイがアコースティック・ギターを弾いていたことと、バンドではなくギターとハーモニカのデュオだった事でした。今でこそシカゴのバンドブルースを良いと思うようになりましたが、昔はバンドブルースってドラムがいらないと思ってたし、ブルースのギターはエレキよりアコースティックの方がぜんぜんいいと思ってたんです。バディ・ガイのアコースティック・ギターがエレキとは比べ物にならないうまさである事は、マディ・ウォーターズ『Folk Singer』で知ってましたしね(^^)。

 いや~これはムッチャクチャいい、バディ・ガイの12弦ギターや6弦ギターの演奏は強烈なうまさ、ジュニア・ウェルズのハープも実に見事!それにしてもバディ・ガイはやっぱりアコギ弾かせるとめっちゃいいです。ジョン・リー・フッカーの「Sally Mae」や、ブルースの大スタンダード「Catfish Blues」あたりも演奏してますが、抑揚をつけたギターの素晴らしさと言ったらもう…。

 ただ、ふたりともおじいさんに近づいたからか、ヴォーカルが弱くなってました。ジュニア・ウェルズのヴォーカルは、歌いまわしはさすがにうまかったですが、声量が昔みたいに出ない感じ。むしろもっと歳を取ってスリーピー・ジョン・エステスぐらい掠れてきたら逆に枯れてカッコよかったのかも。あ、でもそれは『Hoodoo Man Blues』の頃と比べたらという意味で、普通にうまかったですけどね。

 このCD、もともとはフランスで『Going Back』というタイトルで発売されていたものを、アメリカのアリゲーター・レコードがボーナストラックを追加してリイシューしたものらしいです。ライトニン・ホプキンスのアラジン・セッションとかもそうですが、ブルースのレコードのリイシューって、ジャケットがダサいのが多いんですよね(^^;)。でも中身は本物、ジュニア・ウェルズやアコギ弾いた時のバディ・ガイを好きな人はもちろん、アコースティックブルースが好きな人には間違いなくおすすめです!!


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『Junior Wells' Chicago Blues Band with Buddy Guy / Hoodoo Man Blues』

JuniorWells_HoodoomanBlues.jpg 若い頃、中古屋でいちばんよく見かけたジュニア・ウェルズのアルバムがこれでした。1965年にデルマークから発表されたアルバムで、ギターにあのジミヘンがあこがれたというバディ・ガイが参加!

 ジュニア・ウェルズもバディ・ガイもそうですが、ブルースというだけでなく、けっこうロックで、不良っぽさを感じるんですよね。ロックンロールが一世を風靡した後の1965年という事もあるのか、1曲目なんてロック&ブルースとでも言いたくなるような音楽ですし、実際に「ハウンド・ドッグ」とかやってますしね(^^)。これがまた黒い!それがシカゴブルースというもんでしょうが、マディ・ウォーターズがおっさんっぽいのに対して、ジュニア・ウェルズは町の危険地帯でうんこ座りして麻薬を売ってる若いやつ、みたいな。

 不良っぽくやさぐれて歌うジュニア・ウェルズのヴォーカルがカッコよく、それにバディ・ガイのエレキギターがキュインキュインと絡みまくって、間奏でいよいよジュニア・ウェルズのハーモニカが「プオオオオオオ~~~ン!!!」と鳴り響いた時には、カッコよすぎて悶絶ものでした!いやーこの頃のシカゴ・ブルースって、黒人チャートの中では明らかに不良担当みたいで、すごく好きです。だって、コーラスグループが「君の愛が~」とか、ソウル系の人が「神様が私たちを」なんて歌ってるところで、シカゴブルースは「疫病神がよお」とか「奪い返せ!」とか歌ってるんですよ!こんなの不良な若いやつらはブルース聴いちゃうって。。ローリング・ストーンズアニマルズみたいなイギリスの貧乏な不良の若いやつらがブルースに夢中になったのも分かろうというもんです。この頃のシカゴのブルースマンって、腕に入れ墨が入ってて、麻薬の売人とかヒモとかをやってる奴らばっかりだろ、みたいな(^^;)。

 これだけやさぐれて、しかもやたら攻撃的な感じの音楽って、たまらないです。60年代のシカゴやニューヨークのゲットーにいる黒人ご用達みたいな音楽、強烈にかっこよかったっす!!でもだからといって歌やハーモニカが下手かというとそんなことぜんぜんなくて、ハーモニカなんてビッグ・ウォルターやリトル・ウォルターやジェームス・コットンに引けを取らないぐらいうまい!いやーシビレタ。。


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『Junior Wells / Universal Rock』

JuniorWells_UniversalRock.jpg シカゴ・ブルースの名ハーピストと言ったら、サニーボーイ2世、ジェームズ・コットン、ビッグ・ウォルターあたりがすぐ浮かびますが、ジュニア・ウェルズもいいんですよね、不良っぽくて(^^)。これはジュニア・ウェルズが57年から63年までに録音を残したProfile、Chief, USA という3つのレーベルに残した全録音を集めた超優秀なアルバム!手を変え品を変えて同じ録音を売ろうとする誠実さのかけらもない大手レコード会社は、小さなレーベルがやるこういういい仕事を見習ってほしいもんです(^^)。

 このアルバムでジュニア・ウェルズはあまりハープを吹いていなくて、もっぱらシンガーです。音楽はシカゴ・スタイルのバンド・ブルースは1/3ぐらいで、あとはけっこうR&Bに近い内容でした。オルガンやサックスが入る曲もありますし、50年代のシカゴ・ブルースからモダン化が進んで、それでいてけっこうルーズでやさぐれていて、バンド全体に妙な不良っぽさを感じました。

 そんな中、ハーモニカを堪能できるのは、たとえばM4のインスト曲「Cha Cha Cha in Blue」。チャチャチャのリズムを取り込んでいる時点で、もう普通のブルースじゃないですが、ハープの音を少し聴いただけで、「ああ、これはメッチャいいハープ奏者だわ」と思ってしまいました。音が違うんです、「プウォ~~~~~ッ!!!」と来る音を聴いただけでのけぞってしまいました、カッコいいいいいい(^^)。

 ブルースを離れてR&BやR&Rに近いのにカッコよく感じたのが、M5「Little By Little」。ライナーによると、これはR&Bチャートで全国的ヒットとなったそうですが、それもうなずけるなあ。

 そして、バンドにいいギタリストが多いのも特徴かも。スローブルース「Calling All Blues」ではギターとハープがめっちゃいいですが、このギターはアール・フッカーなんだそうです。他にも、バディ・ガイが参加した曲など、バディ・ガイは「チョイ~ン」みたいな単旋律のチョーキングが異様に特徴あるので、「あ、この曲かな」みたいに想像がつくのが面白い(^^)。

 どこか不良っぽくて、50年代のシカゴ・ブルースより一歩先に行きかけていて、楽しく聴けたアルバムでした。聴いてるだけで、60年代のシカゴのレンガ造りの黒人居住区のアパートに住んでいる気になってくるんですよね。ひとつだけ願望を言えば、こんなにハープがうまいんだから、もっとハープを吹いて欲しかった(^^)。。


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『九代目竹本綱太夫 / 人間国宝 義太夫 竹本綱太夫』

TakemotoTunadayuu9_ningenkokuhou gidayuu 義太夫節の人間国宝、八代目竹本綱太夫につづいて、九代目です!三味線伴奏の語り物が浄瑠璃、それを人形芝居に用いると人形浄瑠璃、そして人形浄瑠璃を代表する座と言えば文楽ですが、九世竹本綱太夫は人形浄瑠璃文楽の太夫として人間国宝に認定されたんだそうで。
 このCDは、三味線の鶴澤浩二郎とのコンビによる素浄瑠璃。「木下蔭狭間合戦」(きのしたかげはざまがっせん)という太閤記物の演目の九段目(五段ものに換算すると四段目の切りに相当)「壬生村の段」(みぶむらのだん)が収録されていました。この演目は廃曲同然の状態だったものを、2005年に九代目が2公演でだけ素浄瑠璃で演じたことで伝承される事になったんだそうで。それがこの録音だそうです。

 ストーリーはこんな感じ。壬生村の治左衛門は、泥棒をした息子・友市のために苦労を重ねて暮らしています。借金返済のために娘を遊郭に売ろうとしたところで、11年ぶりに友市が帰ってきて、金を払って妹を救います。なんで友市がそんな大金を持っているかというと、友市こそ天下の大泥棒・石川五右衛門だったのでした。驚いた治左衛門は五右衛門を諌めようとしますが、もみ合ううちに誤って娘を殺してしまいます。そして、自分の出生の秘密を知った五右衛門は…

 謡い出しが、ホーミーのように低音を口の中で共鳴させる歌い方で驚きました!こういうのって浪曲の広沢虎造がやっているのを聴いたことがありましたが、義太夫節でも使うんですね。それにしても、今回聴いてみた義太夫節の太夫の謡いまわしは三者三様、伝統芸能なのである型を忠実に踏襲するのかと思ってましたが、プレイヤーの個性がけっこう前面に出るんですね。
 ただ、三味線は音がちょっと乾いていて、僕的にはイマイチだったかな?これは鶴澤浩二郎さんがどうこうではなくて、太棹でも細棹でも三味線はこういう音になりがちで、音色がどうやっても琵琶には勝てないんだな、みたいに思っちゃいます。琵琶は江戸幕府が盲人のために演者の制限を加えたから、町人には演奏が許されなかった、みたいな事情があるのかも。それとも、小さな座の中で人を集めてやるので、楽器の完成度よりも携帯性が優先されたとか、あるのかも。

 浄瑠璃や小唄端唄といった日本の「伝統芸能」って、古くさく堅苦しく退屈な気がして、食わず嫌いで最初は敬遠していました。でも、いざ聴き始めるとめっちゃくちゃ面白い。だってもともと大衆の娯楽、一大エンターテイメントですから!この演目だって、あらすじを見るだけでもめっちゃくちゃ面白くありませんか?しかも、これに音楽がついて、太夫の語りが見事で、実際に聞くとあっという間に引き込まれました。語りなんて、音楽的な節がついている所と、落語のようにひとり何役も演じるセリフ語りのところなどのメリハリが素晴らしかったです。ここ一番で三味線が「ハッ!」な~んて掛け声をかけたりしてね(^^)。
 いや~浄瑠璃はたま~に思い出したように昔買ったCDを引っ張り出して聴くと、面白すぎて何枚も続けて聴いちゃいます。実に中毒性の高いジャンルだ (^^)。。


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『八代目竹本綱太夫 / 人間国宝 義太夫 竹本綱太夫』

TakemotoTunadayuu8_ningenkokuhou gidayuu ひとつ前の日記で感想を書いた義太夫節の豊竹山城少掾の門弟となったのち、最終的には八代目を襲名するまでになった竹本綱太夫(たけもとつなだゆう)の録音です。八代も人間国宝だそうです。
 演目は「一谷嫩軍記」(いちのたにふたばぐんき)という五段ものの中の三段目「脇ケ浜宝引の段」(わきがはまほうびきのだん)の中の一部。三味線は十世竹澤彌七(たけざわやしち)でした。なんでも、八代目竹本綱太夫さんと十世竹澤彌七さんは名コンビとして知られていたんだそうです。

 「一谷嫩軍記」は、平家物語によく出てくる熊谷次郎直実と平敦盛、そして岡部六弥太と平忠度のふたつの物語を題材にした演目。ああ~熊谷次郎直実と敦盛の話は、薩摩琵琶の演目で聴いたことがあるからちょっと知ってます。敦盛は平家の幼帝で、これを源氏の武将である熊谷が討つんですが、熊谷が心ある武将で、必死に逃れる子供の敦盛を哀れと感じるんですが、しかし最後は涙ながらにその首を切るんですよね…。で、この「脇ケ浜宝引の段」は敦盛逃亡中の話で、敦盛の母をかばおうとした百姓たちがあやまって追っ手を殺してしまい、だれが弁解に行くかをくじで決めるという、みたいなシーンでした。

 おお、これは師匠の豊竹山城少掾とは全然違う、まるで落語みたいな語り方だ!豊竹山城少掾の「蘆屋道満大内鑑」は常に語りに節がついていて、語りとはいえもうこれは立派な歌じゃないかと思ったほどでしたが、八代目竹本綱太夫の「一谷嫩軍記」は完全に落語調。節回しだけでなく、「敦盛ちゃん」と言ったりして(^^)。これは演目自体がそうなのか、それとも太夫の個性なのか…。
 三味線も太夫の語り口に合わせているのか、粋でいなせでテクニカルなんてものの正反対で、かすれた音で無骨に「ズドン!」みたいに演奏してました。いや~これも演目に合わせているのか、それとも十世竹澤彌七さんがそういうプレイヤーなのか、浄瑠璃に疎い僕には分かりませんでしたが、それにしても音楽って個性が出るもんだなあと思いました。

 考えてみれば浄瑠璃は、素浄瑠璃だろうが歌舞伎や人形浄瑠璃で使われようが、見世物小屋に人を集めて楽しませる大衆演芸だった事には変わらないので、こういう面白おかしい演目や太夫がいたって不思議じゃないですよね。少なくとも元々は伝統を守る事が目的じゃなくて、人を楽しませて大当たりを出すのを目指してたんだろうし。それにしても、題材は平家物語でもかなりの悲しい物語を扱ってるのに、こんな落語に近い形でやっちゃうなんて、ちょっと驚かされました。でもこれは勢いだけで押す林家こん平の落語に通じるものを感じて、僕にはちょっと合わなかったかも(^^;)。。


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『豊竹山城少掾 / 義太夫名演集』

ToyotakeYamasironoShoujou_GidayuuMeienshuu.jpg 義太夫節の伝説的な太夫・豊竹山城少掾(とよたけやましろのしょうじょう)のCD『人間国宝 義太夫 豊竹山城少掾』に入っていた「蘆屋道満大内鑑」(あしやどうまんおおうちかがみ)の4段目「葛の葉子別れの段」を聴いて、すっかりハマってしまい、中古屋でこの5枚組CDを見つけた時は、安くないのに誘惑に勝てずに買ってしまいました。でもめっちゃくちゃ面白かった、買ってよかった!
 収録されていた演目は、以下の通りでした。

 ・菅原伝授手習鑑|道明寺の段
 ・伽羅先代萩|御殿の段
 ・芦屋道満大内鑑|葛の葉子別れの段
 ・平家女護島|鬼界が島の段
 ・一谷嫩軍記|林住家の段 流しの枝

 うち、「芦屋道満大内鑑|葛の葉子別れの段」が『人間国宝 義太夫 豊竹山城少掾』と完全にダブりなので、1枚物の方は手放しました(^^;)。というわけで、他の曲の感想を。

■菅原伝授手習鑑|道明寺の段

 三味線は四世鶴澤清六、1947年録音。作者は竹田出雲(初代)・並木千柳・三好松洛ら。「道明寺の段」は二段目の切。「菅原伝授手習鑑」は浄瑠璃に疎い僕ですら知っているので、もしかしたら浄瑠璃でいちばん有名な演目じゃないかなあ。

 あらすじはこんな感じ。菅原道真と皇族の苅屋姫が密会していたが、それが菅原道真の左遷の原因になり、姫は実家に戻される。菅原道真は姫に別れを告げる事を許されるが、政敵が暗殺を謀り、姫の姉の元夫とその父が刺客として迫る。計画を聞いてしまった姫の姉は二人に殺される。それを知った姫の母は復讐を果たして出家する。菅原道真は木像の替え玉を使って危機を逃れる。姫の母が尼になった館がのちに道成寺となり、道真を救った木像は宝とされる。夜明けに道真が出立するが、姫と会う事を避け、別れ歌を一首残す。道真は姫の泣き顔をひと目だけ見て旅立つ。

 いや~面白い!江戸時代最高のエンターテイメントの最高傑作だけあるなあ。時代劇、渡り鳥系のドラマ、男はつらいよ…こういう日本のドラマのルーツがみんなここにあるように感じます(^^)。それにしても、四世鶴澤清六の三味線と豊竹山城少掾は、それぞれのパフォーマンスも素晴らしいし、コンビネーションも見事です(^^)。

■伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)|御殿の段

 これも三味は四世鶴澤清六、1947年録音。「伽羅先代萩」は1785年に初演された全9段の時代物で、「御殿の段」はその6段目。そうそう、浄瑠璃の「時代物」というのは武士や朝廷の話で、「世話物」は町人の話みたい。

 お家乗っ取りに巻き込まれた幼い男の子を乳母が守る。食事も毒味をさせるが、いつも犬が先に食べるので「犬になりたい」という男子の言葉を聞いてあわれに思うほど。お家乗っ取りに加担した女が男子に毒入りの菓子を与えるが、それを乳母の実の子が奪って口に入れてしまい…

 最初の三味線のイントロとそれに続くホーミーのような唸り声から始まる謡いの部分が素晴らしかったです!いや~これはいいわ、昔の芸能は芸も能もあったんだなあ。。ただ、語り部分は子供のセリフ部分で声を裏返して語るんですが、そこがちょっと笑ってしまった(^^;)。。これ、映像と一緒に観てみたらけっこう感情移入できるかもしれないけど、終戦直後の47年じゃ映像なんてとうてい残ってないですね…。

■平家女護島(へいけにょごのしま)|鬼界が島の段

 三味は四世鶴澤清六、1949年録音。初演は1719年に大坂の竹本座にて。作者は近松門左衛門、全5段の時代物で、「鬼界が島」は2段目の切。そうそう、「切(きり)」というのは、物語のクライマックスの事です。ちなみに、導入部分は「口」、真ん中は「中」というみたい。

 平家全盛の時代に、平家討伐の謀議(鹿ケ谷の陰謀)を企てたとして、俊寛僧都、判官の康頼、小将の成経の3人が島流しになる。平清盛は俊寛の妻あづまやに横恋慕する。俊寛はあづまやが殺されたと聞いて嘆く。成経は島で女と結ばれる。そこで3人に恩赦が出るが、通行手形には3人とあるので、使者から「女は島から出せない」と言われる。妻を殺された俊寛は都に帰っても喜びがないと言って、代わりに女を都に連れて行ってやれというが、使者それを許さない。そこで俊寛は使者切り殺し、「自分は使者を殺した罪で島に残るから、女を乗せてくれ」と頼み、島にひとり残る。

 最初が無伴奏で、唸るような声から始まるんですが、これがカッコよかった!今って、男が女性化しているというか、声の高い男が多いじゃないですか。あれって相手に威圧感を与えないようそうなるらしいですが、強さや男らしさや迫力を出すなら絶対に低音の方がカッコいいですよね。これは他に比べてSP盤の走行ノイズがうるさかったですが、それを差し引いて余りある名演じゃないかと!なんといっても話が面白かいですし。そうそう、このCDについていた解説を読む限り、これは素浄瑠璃ではなくて人形浄瑠璃(文楽座)でのパフォーマンスみたいです。

■一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)|林住家の段(流しの枝)

 これだけ三味線が違って初代鶴澤藤蔵、1952年録音。初演は1751年に大坂の豊竹座にて、全5段の時代物で、「林住家の段」は2段目の切で、薩摩守忠度(さつまのかみただのり)の話でした。薩摩守忠度は平忠度のことで、歌人としても有名で、千載和歌集にも1首が載っているそうです。

 忠度が林という老婆の家に一夜の宿を乞うが、この老婆は忠度の恋人・菊の前の乳母だった。そこに菊の前がやってきてふたりは対面。菊の前はどこまでもついていくと懇願するが、源平合戦で命を落とす覚悟をしている忠度はこれを聞き入れない。そこに岡部六弥太(岡部忠澄:源義朝配下の武人で、平家物語の中で平忠度を討った人として語られている)が訪れ、敵対関係にあるので「読み人知らず」ではあるが、源義朝が忠度の歌を千載和歌集に選んだことを伝える。義朝の漢気に感銘を受けた忠度はその場で縄にかかろうとするが、岡部は「今日の役目はお前を捉える事ではない」と伝え、戦場での再会を約束する。

 この話は、平忠度の歌がなぜ千載和歌集で「詠み人知らず」として載ったのかを説明しているんでしょうね。ちなみに、平忠度は文武に優れ、漢気もある人間だったため、一ノ谷の戦いで岡部忠澄に討たれた後、敵からも惜しまれたんだそうです。
 源平合戦や幕末の日本の政治史って、命がけで男を通す人がいるんですよね。安〇晋〇とかいう戦後最低の総〇大臣みたいに、卑怯なことをやりまくっておきながら責任をみんな人に押しつけ、嘘ばかりついて逃げまくる卑怯者とぜんぜん違う。源義朝も平忠度も岡部忠澄も男らしくてカッコいい、人の上に立つ人はこうあって欲しいなあ。
 そうそう、このCDの解説は義朝を義経と誤記していて、それだと敵味方の関係がまったくわけわからなくなるので注意です(^^;)。あと、この演目だけ、拍子木の「チョン、チョン、チョンチョン…」という音から、演者紹介も入っていて、臨場感があって良かったです(^^)。

* * * * * *
 いや~浄瑠璃はまずドラマチックな話が面白いし、それが素晴らしい三味線と歌いまわしで語られるので最高です。落語、浪曲、浄瑠璃は日本産エンターテイメントの最高峰だと思うなあ、今のバラエティ番組やお笑いより数段面白い、これを毎日きいて人生を終えても悔いなしと思えてしまうほどに面白い!
 ところで、この5枚組CDに入ってる録音って、1947年から52年の録音でしたが、50年まではGHQが日本に駐留して日本がアメリカに支配されていた頃ですよね。そんな時代に浄瑠璃をパフォーマンスしたのって、何とか日本人に息抜きを、って思ったんじゃないかなあ。そう考えると、ちょっと泣けてきます。これは超おすすめ、ぜったいにプレミア化してしまうので、聴きたい方はもし安く売っているようならはやめにゲットしておいた方がいいかも。


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『豊竹山城少掾 / 人間国宝 義太夫 豊竹山城少掾』

ToyotakeYamasironoShoujou_Ningenkokuhou gidayuu 太夫が詞章を語り、三味線が伴奏をつけるものを浄瑠璃と言います。浄瑠璃は、そのまま演じれば素浄瑠璃といわれ、人形劇と一緒になれば人形浄瑠璃、さらに歌舞伎に使われたり日本舞踊の伴奏にされたりと、江戸時代の商人階級の音楽文化のど真ん中にあるもの。義太夫節は、素浄瑠璃の他に人形浄瑠璃として生き残ってきたものです。豊竹山城少掾(とよたけやましろのしょうじょう)は、浄瑠璃の流派のひとつである義太夫節の伝説的な太夫です。

 このCD、パチパチ鳴っていて、SP盤からの盤起こし。録音はなんと大正6年だそうです。でもチリパチで聴きとりづらいかというと全然そんなことなく、太夫の声も三味の音もすごく良い!すごくいい録音と思いました。
 収録は、初代竹田出雲が書いた「蘆屋道満大内鑑」(あしやどうまんおおうちかがみ)という全5段の演目の中の4段目「葛の葉子別れの段」、トータル51分ほどでした。享保19年(1734年)に、大坂竹本座二世竹本義太夫らで初演されて大当たりとなったそうです。いよっ!

 「蘆屋道満大内鑑」のストーリーは、ざっくりいうと人間と白狐が契る話。4段目は子供まで設けた白狐が、化けた女の本物が来たことで夫に正体を知られて去る所が描かれていました。いやあ、こんなの面白いに決まってるじゃん、あっという間に夢中になりました。これ、最初から聴いてみたいなあ。

 太夫の語りも良かったし、三味線の鶴澤清六(つるざわせいろく)も良かったし、両方の相性も良かったです。語り物って、三味線と語りがユニゾンっぽくなる所があったり、合いの手を入れるところがあったり、つかず離れずで絶妙に絡むんですが、これがカッコイイんですよね。。
 また、僕は浄瑠璃の語りがめっちゃくちゃ好きです。純邦楽って語り物と謡い物のふたつに分かれて、物語を語る浄瑠璃は語り物に分類されますが、でも詩や物語の朗読とは全然ちがって、節はついてるし、音程は上下するし、もうこれは歌だろ、って思っちゃうんです。語りの音楽性でいえば、詩吟みたいにあじけなく語る筑前琵琶や薩摩琵琶より、浄瑠璃の太夫の方が絶対に語りはいい!!しかも、このCDの豊竹山城少掾は、近代の義太夫節最高の太夫というだけあって、セリフが良く分からない所でも節回しがすごくて、聴いていて引き込まれてしまいました。すばらしい!

 江戸時代の町人文化って、こんな面白いものがあってうらやましいです。歌舞伎や浄瑠璃の他にも、浮世絵や相撲もあるし、釣りやって色町があって落語があって、ムッチャクチャ面白かったんじゃないかと思ってしまいます。大盛況だと座の劇場に一生懸命並んで入って聴くわけですよね。で、続きをまた楽しみにして、また通って…みたいな情景を思い浮かべるだけで、50年代のアメリカ並みに楽しい世界だったんじゃないかと思っちゃうなあ。
 浄瑠璃の義太夫節は、物語を語るだけでなく、ひとりで何役もやる芸があって、それを語り淘汰の中間ぐらいの節回しという芸をつけていて、三味線が絡んでと、芸も能もある見事な芸能ではないかと思いました。今の舞台や映画やテレビドラマと違ってマジで芸や能を感じます。しかもめっちゃくちゃ面白い!純邦楽って古くて難そうに感じますが、江戸の町人文化に属する浄瑠璃や小唄端唄は実際には娯楽芸能、メッチャ面白いです!!


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『Lee Konitz / Motion』

LeeKonitz_Motion.jpg トリスターノ楽派のサックス奏者リー・コニッツのリリースしたアルバムで、いちばん有名なものではないでしょうか?!1961年8月29日録音、ヴァーブからリリースされたジャズの名盤です。メンバーは、Lee Konitz (a.sax), Sonny Dallas (b), Elvin Jones (dr)。ピアノレスのワンホーントリオでもあるし、リー・コニッツのアドリブを聴くならこれがベスト!

 僕は、なかば伝説化されたサックス奏者としてリー・コニッツの名前を知りまして、このアルバムを手にした時はワクワクして家に持ち帰りました。でもいざ聴いてみると、「あれ、こんなものなのかな…」と思ったんですよね。ピアノレスという事もあって、音がスカスカ。そしてウエストコーストのサックス奏者のようなクールなサブトーンで、決してブローしたりしない控えめな音。ロックや現代音楽に慣れた耳からすれば、寂しく感じても仕方ない音だったのです。このレコードを買った時はまだ高校1年生、今から考えるとまだ雰囲気だけで音楽を聴いていたんだろうから、こういうミュージシャンのためのミュージシャンみたいな音楽の良さが分からなかったとしても不思議じゃなかったのかも。

 ところが、もう少ししてからジャズの演奏の勉強を始めると、このアルバムに魅惑され始めました。このレコーディング・セッションはスタンダードばかりを演奏した明かなジャムで、アレンジは用意されてません。しかもピアノレスなので、コード進行もメロディも音楽も全部リー・コニッツにかかってます。このコニッツの演奏は、ハードバップ時代のサックス奏者のアドリブというより、チャーリー・パーカーとかウエストコースト・ジャズのプレイヤーに近く感じました。旋律でアドリブしても、ピアノやギターがいなくても和声進行を感じるソロなんですね。あとから知ったんですが、コニッツさんがウエストコーストのサウンドに似てるんじゃなくて、アート・ペッパーポール・デスモンドといったウエストコーストの名サクソフォニストがみんなしてリー・コニッツに憧れてコピーしまくったのが真相みたいです。でもパーカー級のチェンジをする人なので、ちゃんと真似できる人がそうそう登場するはずもなく、フォロワーの人はもう少しいい加減で、こうしてハードバップ系のアドリブが主流になっていった…みたいな。

 というわけで、大ざっぱに雰囲気だけを楽しもうとするとクールジャズみたいに感じましたが、自分がサックスを演奏している気分になって聴くとクールなんてもんじゃない、これはメッチャクチャ熱いアドリブの模範演奏集じゃないかと。
 そうそう、このアルバムに限って言えば、ボーナストラックがテイク違いではなく他の曲なので、ボーナス曲入りのCDのほうがおすすめです。さらに、CD3枚組の超デラックス盤というのもあって、これは「Imagination」「Just Friends」「Alone Together」「I'm Gettin' Setimental Over You」などなど、本編に入ってないスタンダード曲がギッシリ。ジャズのサックスのアドリブの教科書として家宝にしてもいいレベルかも…これ、欲しかったんですけど、もうアルバムを買っていたから買わなかったんですよね。今では超プレミアだし、このアルバムは買い直しておけば良かったなあ。。


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『Lee Konitz / The Lee Konitz Duets』

Lee Konitz_Duets 1967年録音、伝説的なアルト・サックス奏者のリー・コニッツが、色んなジャズ・ミュージシャンとデュオ演奏したアルバムです。共演者はエルヴィン・ジョーンズジム・ホール、エディ・ゴメス、ジョー・ヘンダーソンなどなど。

 音楽は、ディキシーランド・ジャズのような古き良きジャズからフリー・インプロヴィゼーションまで多彩。その中で共通しているのはみんな即興である事でした。ただですね…これを「すごいインプロヴィゼーションだ」みたいに崇め奉って神格化して扱うのは、ちょっと違う気がしました。即興であれば、そして即興への対応力があればいいというものじゃないと思うんですよね、音楽ってフレージングやメロディだけじゃないから。どんな音楽も始まりと終わりがあるので、時間上の推移をどう表現するかも重要だと思うんです、そうしないと飽きちゃうし。序破急でも起承転結でも何でもいいですが、このレコードで聴く事の出来る音楽は、どれもあるアイデアに沿って即興しているだけで、時間軸上のドラマやデザインにまったく無頓着なんですよね。

 若い頃、こういう音楽の難解さに「なにかある」と思っていた時もありました。でもある時から、何かを狙ってこうしているわけではなくて、単純に配慮がないから難しくなってしまってるだけなんだと確信するようになりました。考えてみたら、僕がリー・コニッツの作品で心の底から素晴らしいと思ったものって、弦のアレンジが入った『An Image』だけなのかも。あれは、与えられたドラマチックな構造が先にあるので、コニッツがその上でパラパラとアドリブしてるだけでもドラマが成り立つんですよね。他のいいと思った作品も、アレンジャーやリーダーが他にいたりしますし。。
 つまり、コニッツという人は、あるプログレッションに対してどうインプロヴィゼーションするかという音楽の一部分だけを見ていた人なのではないか…と疑い始めてしまったのが、このアルバムなのでした (^^;)。。つまり、ミュージシャンというよりも、西洋音楽のサックスのアドリブ演奏に特化した職人なんですね、きっと。


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『Lee Konitz meets Jimmy Giuffre』

Lee Konitz meets Jimmy Giuffre クラリネット奏者ジミー・ジュフリーの音楽に狂って、レコード屋で彼のアルバムを見つけるたびに片っ端から買っていた頃があります。そうやって手に入れた盤のひとつがこれ、トリスターノ派の伝説のアルト・サックス奏者リー・コニッツとジュフリーの共演アルバム、1959年録音です。ビル・エヴァンスが参加していたのも聴きたい衝動を抑えきれなくなった理由のひとつでした。メンバーは、Lee Konitz (a.sax), Jimmy Giuffre (b.sax, arr), Hal McKusick (a.sax), Ted Brown (t.sax), Warne Marsh (t.sax), Bill Evans (p), Buddy Clark (b), Ronnie Free (dr)。

 内容は、リー・コニッツとジミー・ジュフリーの木管楽器対決ではなく、ジミー・ジュフリーの木管アレンジのうえでリー・コニッツが見事なアドリブを決めるという内容のものが多かったです。
 このレコードでのジュフリーの木管アレンジはポリフォニーではなく、アドリブ楽器が旋律、木管アンサンブルが和声というホモフォニーの色が強かったです。これは分かりやすいエンターテイメント系ジャズを狙ったのかな?ジミー・ジュフリーってものすごく高度で芸術性の高いものも作るけど、分かりやすい古き良きジャズみたいなものもやる時もあるんですよね。これは後者でした。

 僕はアート性の強い内容の強い事をやる時のジミー・ジュフリーに期待していたもんだから、ジャズ・エンターテイメント色の強い本作はちょっとだけ残念。思いっきり近代クラシックの素養もある二人が揃ったレコードだったので、ジャズとクラシックの硬派なところをくっつけた音楽に挑んでみて欲しかったな…。でも、これはこれでホッコリした古き良きジャズで気持ち良かったです。リー・コニッツのアドリブはあいかわらず職人技でしたし(^^)。


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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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