クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団による、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」に感動し、それ以来クリュイタンス指揮のラヴェル作品の録音を漁りまくっていた事があります。これもその1枚でした。
■ボレロ まず、クラシックを聴かない人でもみんな知ってる「ダン、ダダダダン」のリズムに乗っておなじメロディが延々と繰り返される「ボレロ」ですが、僕は演奏うんぬんの前に曲が単純すぎて苦手。バレエ音楽なので、バレエとセットで観ないと良さは分からないのかも知れません。
■スペイン狂詩曲 続く
「スペイン狂詩曲」は、ラヴェルが最初からコンサート用に書いた唯一の管弦楽曲。考えてみれば「亡き王女のためのパヴァーヌ」も「マ・メール・ロワ」もピアノ曲からの編曲ですし、「ボレロ」や「ダフニスとクロエ」はバレエ音楽で。ラヴェルがこの曲や「ボレロ」みたいなスペイン音楽系の管弦曲をけっこう書くのは、時代的に三角貿易でスペインや中南米の音楽が持ち込まれた影響かと思ってたんですが、ラヴェルのお母さんがバスク出身で、その影響もあるそうです。
この曲も、第3曲「ハバネラ」でハバネラのリズムを使ってますが、でもそこまでスペインっぽくは感じなくて、20世紀初頭のクラシック的でした。それは第2曲「マラゲーニャ」もそうで、ファンダンゴ調とはいっても、僕にはやっぱりクラシック9割に1割だけ異国情緒が入ってる程度に聴こえます。でも、スペインの作曲家のファリャは、この曲を聴いて「スペイン人が書いた曲よりスペインっぽい」と言ったそうで、そのあたりに当時のスペイン音楽の状況が出ているのかも。この頃のクラシックが扱ったスペイン音楽にしても国民楽派にしても、リズムがそうとか、音階がそうとか、「異国的」といっても本当にちょっとだけなんですよね。以降に登場する
フラメンコや
タンゴは思いっきり独自性の出た音楽と感じますが、この時代のスペインは、アラビア音楽が消えてヨーロッパ音楽の方を見ていたのかも。
■ラ・ヴァルス 最後の「ラ・ヴァルス」はディアギレフのオーダーで書かれたバレエ音楽だったらしいですが、ディアギレフがこの曲を気に入らずに拒否して、けっきょくロシア舞踊団はこの曲を踊らず(・_・、)。ベースは宮廷ワルツっぽいですが、ちょっとドビュッシー的にボワ~ンとした印象主義的なベールがかかっていて、これがお気に召さなかったのかも。水彩画調のワルツみたいな感じで、面白い曲だと思いましたが、たしかに踊りにくそうなので、ロシア・バレエにはなじまないかも(^^;)。
それにしても、クリュイタンスってどういう人なんでしょう、気になります。クリュイタンス指揮のラヴェルのCDシリーズの日本語解説は子供の感想文みたいで、クリュイタンスの事がほとんど分からないんですが、ベルギーの人みたい。なのに、いかにもフランス音楽に特化したような匂いたつ色彩感を持ってます。それって、もしかしたらクリュイタンスじゃなくってパリ音楽院管弦楽団がそうなのかな…。
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