太夫が詞章を語り、三味線が伴奏をつけるものを浄瑠璃と言います。浄瑠璃は、そのまま演じれば
素浄瑠璃といわれ、人形劇と一緒になれば
人形浄瑠璃、さらに歌舞伎に使われたり日本舞踊の伴奏にされたりと、江戸時代の商人階級の音楽文化のど真ん中にあるもの。
義太夫節は、素浄瑠璃の他に人形浄瑠璃として生き残ってきたものです。
豊竹山城少掾(とよたけやましろのしょうじょう)は、浄瑠璃の流派のひとつである義太夫節の伝説的な太夫です。
このCD、パチパチ鳴っていて、SP盤からの盤起こし。
録音はなんと大正6年だそうです。でもチリパチで聴きとりづらいかというと全然そんなことなく、太夫の声も三味の音もすごく良い!すごくいい録音と思いました。
収録は、初代竹田出雲が書いた「蘆屋道満大内鑑」(あしやどうまんおおうちかがみ)という全5段の演目の中の4段目「葛の葉子別れの段」、トータル51分ほどでした。享保19年(1734年)に、大坂竹本座二世竹本義太夫らで初演されて大当たりとなったそうです。いよっ!
「蘆屋道満大内鑑」のストーリーは、ざっくりいうと人間と白狐が契る話。4段目は子供まで設けた白狐が、化けた女の本物が来たことで夫に正体を知られて去る所が描かれていました。いやあ、こんなの面白いに決まってるじゃん、あっという間に夢中になりました。これ、最初から聴いてみたいなあ。
太夫の語りも良かったし、三味線の鶴澤清六(つるざわせいろく)も良かったし、両方の相性も良かったです。語り物って、三味線と語りがユニゾンっぽくなる所があったり、合いの手を入れるところがあったり、つかず離れずで絶妙に絡むんですが、これがカッコイイんですよね。。
また、僕は浄瑠璃の語りがめっちゃくちゃ好きです。
純邦楽って語り物と謡い物のふたつに分かれて、物語を語る浄瑠璃は語り物に分類されますが、でも詩や物語の朗読とは全然ちがって、節はついてるし、音程は上下するし、もうこれは歌だろ、って思っちゃうんです。語りの音楽性でいえば、詩吟みたいにあじけなく語る筑前琵琶や薩摩琵琶より、浄瑠璃の太夫の方が絶対に語りはいい!!しかも、このCDの豊竹山城少掾は、近代の義太夫節最高の太夫というだけあって、セリフが良く分からない所でも節回しがすごくて、聴いていて引き込まれてしまいました。すばらしい!
江戸時代の町人文化って、こんな面白いものがあってうらやましいです。歌舞伎や浄瑠璃の他にも、浮世絵や相撲もあるし、釣りやって色町があって落語があって、ムッチャクチャ面白かったんじゃないかと思ってしまいます。大盛況だと座の劇場に一生懸命並んで入って聴くわけですよね。で、続きをまた楽しみにして、また通って…みたいな情景を思い浮かべるだけで、50年代のアメリカ並みに楽しい世界だったんじゃないかと思っちゃうなあ。
浄瑠璃の義太夫節は、物語を語るだけでなく、ひとりで何役もやる芸があって、それを語り淘汰の中間ぐらいの節回しという芸をつけていて、三味線が絡んでと、芸も能もある見事な芸能ではないかと思いました。今の舞台や映画やテレビドラマと違ってマジで芸や能を感じます。しかもめっちゃくちゃ面白い!純邦楽って古くて難そうに感じますが、江戸の町人文化に属する浄瑠璃や小唄端唄は実際には娯楽芸能、メッチャ面白いです!!
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