フォーレの室内楽曲、続いては晩年の作品、ピアノ三重奏曲と弦楽四重奏曲の2曲を収録したCDです!
ピアノ三重奏曲は、個人的には傑作の2曲のピアノ五重奏曲にも優るかもしれないと思っている曲!最近このCDをゲットしまして、それで久々のフォーレ室内楽視聴会となったのでした。聴いてるのは僕と猫だけですけどね(^^)。プレイヤーは以下の通りでした。
・ピアノ三重奏曲 ニ短調 op.120
ルノー・カピュソン(vn)、ゴーティエ・カピュソン(vcl)、ニコラ・アンゲリッシュ(p)
・弦楽四重奏曲 ホ短調 op.121
エベーヌ弦楽四重奏団
はじめて聴いた時の第一印象は、まるでバロック音楽のような録音だな、という事でした。教会で録音したかのような長い残響と、どの楽器も高音はあるけど低音が全然ない、特にピアノはけっこう遠く感じるな、みたいな所でそう思ったのかも。その割に弦楽器が遠く感じるかというと、けっこうヒステリックな音をしていたので、マイクは弦に近いのかも。そんな所もバロックっぽく感じました(古楽器はノイズ成分多い楽器が多いからね゚ω゚*)。でも、こういう音でフォーレの室内楽を聴くというのはありなのかも。印象派に半分足を突っ込んだ教会音楽のように聴こえたんです。
でもって、音楽です。ああ、やっぱり
フォーレはもろにロマン派的な頃より、後期ロマン派なみの転調や和声進行を繰り返したような、あるいは印象派に片足を突っ込んだような晩年の曲の方が好きです。じっさい、音楽的にも晩年の方が優れてると思います。このCDで特に感激したのは
、ピアノ三重奏曲。3楽章すべてが見事ですが、個人的に好きなのは第1楽章と2楽章。2楽章と3楽章は入れ替えても成立しそうです。
そもそも
ピアノ三重奏曲って、編成がすでに音楽のあり方を高度なものにしてるじゃないですか。ブラームスのピアノ三重奏曲もそうですが、弦が3本や4本ではなく2本なので対位法的に動くことになるし、それでいてピアノは和音もベースも旋律も演奏できるから、弦カルみたいに制限された中で職人技の作曲をするものと違って、音楽をより自由に描けますし。それを、後期ロマン派と印象派のハイブリッドみたいなサウンドでやられたもので、「うわあ、これは素晴らしい、なんという色彩感と官能性なんだ」とシビれてしまいました。
個人的にはピアノ三重奏曲にノックアウトされましたが、
弦楽四重奏曲も見事でした。短調曲とはいえあまり暗い感じはせず、ふわふわと夢の中を漂うような後期ロマン派か印象派的な響きの曲で、この曲が完成したのはフォーレが死ぬ2か月前。本人だって死期を悟っていたでしょうから、最後に何をかくかと言って、こういう音楽を残すところがフランス的というか、ドイツと違って楽しかった人生を肯定していて、死を永遠に続く天国への入り口ぐらいに思ってるのかも…な~んて思ってしまいました。部分的に調整崩壊すれすれのところまで行った頃のシェーンベルクみたいなギリギリの響きが使われていましたが、桃は腐る前が一番おいしいというヤツじゃないけど、この色彩感覚は鳥肌必至。
いやあ、フォーレも
フランクも、一般的にはあまり聴かれてない晩年が至高だと思えてなりません。今の時代だと、クラシックですら印象的なメロディ優先になってしまっていて、構造や和声の見事さは後回しになってしまうのかも知れませんね。これは時間のある時に、どっぷりとつかって聴きたい素晴らしい音楽。晩年のフォーレって耳が悪くなっていて、高い音は低く聴こえて低い音は高く聴こえたそうなので、もしかするとこのへんの曲は実際の音は出さずに頭の中だけで音を鳴らして書いたのかも知れませんが、それでこの緻密さはすごいです。
スポンサーサイト