
以前、藤井一興さんのピアノによるCD
『武満徹ピアノ作品集』の感想を書いた事があります。武満さんのピアノ曲は素晴らしい作品が多いので、曲だけで名演になってしまう事が多くて、いい録音が結構あります。そんな中、藤井さんの演奏は、きれいな音をした録音を含めて、研ぎ澄まされた居合抜きのような演奏で、僕はメッチャクチャ好きなのです。そして最近、こんなCDを見つけました。あら?藤井さんの武満ピアノ作品集、ジャケットが変わったのかな?まえのCDは82年録音、こっちは
90年録音(「雨の樹素描Ⅱ」だけ95年録音)…別の録音だああ!!貧乏な僕は曲のダブりはなるべく避けるようにしてるんですが、こっちには前に発表されたCD に入ってない
「リタニ」「閉じた眼Ⅱ」「雨の樹素描Ⅱ」「夢見る雨」が入ってるぞ。。あ、でも「2つのレント」は入ってないのか。う~んどうしよう…買っちゃいました(^^;)。妻には言えないな。。
息を潜めて聴いてしまいました、素晴らしい!フォンテックから出ている藤井さんの武満ピアノ作品集って、2枚とも実は録音が素晴らしくて、それで演奏も3割増しで聴こえるのかも。武満さんのピアノ曲って、ちょっと難しいリズムなので初見は苦労するんですが、一度体に入れると超絶的なスピードを要求されるところはないので、けっこう演奏出来ちゃうんです。そんな武満さんのピアノ曲ですが、藤井さんの演奏って、アーティキュレーション以上に音色な気がしてしまいます。もちろん藤井さんのタッチが素晴らしいですが、音の美しさには録音もある気がしました。最初のCDの方がホールの響きが多くてこちらは少ないですが、音のコンセプトは同じ。この「あったかいんじゃなくて透明感がある」「太いんじゃなくて高音が綺麗に抜ける」みたいなところが、武満さんのピアノ曲に絶妙にマッチしてる気がします。
そして、もし2つのCDのうちどちらだけを聴くなら…曲数はこっちがお得。「2つのレント」以外は、1枚目に入っていて2枚目に入ってない曲はないです。では録音&演奏は?聴き比べて初めて分かるぐらいの感じでしたが、「閉じた眼」あたりで比較すると、前のCDの方が演奏にキレがあるかな?どちらも素晴らしいんですが、前のCDの方は「うわ、これはすごい…」と、ゾッとする感じがありました。もちろん、こっちも素晴らしかったんですよ!
前に紹介したCDから「2つのレント」がカットされていますが、もしかするとそのあたりに再録した理由があるのかも。
「2つのレント」って、楽譜の断片しか残ってないはずなのです。そしてそれを改作したのが「リタニ」。このCDには「2つのレント」に代えて「リタニ」が入ってるので、まあそのあたりに何か事情があったのかな、と。僕は武満さんの音楽を聴いていると、雨の石庭をずっと眺めているような気分になってきて、死んだ後もこの景色は残るんだろうな、みたいなことを考えたりするんですが、その体験って、実は藤井さんが演奏する武満作品が元祖だったのかも。う~ん素晴らしい、やっぱり藤井さんの武満曲の演奏は、僕にとっては鳥肌ものです。
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