武満徹さんの管弦楽曲を集めたCDで、注目はなんといっても
ダブルオーケストラのための「ジェモー」。他の録音も少なく(もしかするとこのCDしかない?)、武満さんが書き上げるまでに15年かかった大作。15年かかって1曲か…
ブラームスの交響曲第1番みたいだ(^^)。
「ジェモー」の創作に時間がかかったのは、途中で委嘱者が降板したり、第1楽章の演奏会がキャンセルされたかららしいです。演奏や録音の機会が少ないのは、2つのオーケストラを必要とする点が大きかったのかも知れませんね。他にも、もともとは独奏者としてホリガーのオーボエとグロボカールのトロンボーンを想定していて…要するに、規模も話も大きすぎてとん挫したという事ですね(^^;)。ちなみに初演は東フィルと新日フィルのダブルオーケストラ、ソリストはグレッツナーとグロボカールだったそうです。
音楽は、72年着手のわりに前衛っぽくなく、フワフワ宙をただようような武満サウンドがブワ~ンと鳴ってる感じ。
ダブルオーケストラという事なので、オケがもっと対立していくのかと思ったんですが、意外とそうでもなかったです。ただ、和弦は少なくて、個々の楽器群がそれぞれのフレーズを演奏し、それが絡み合っていく感じ。そういうサウンドのオケでそれをやるのって、作曲も演奏も相当に大変だったんじゃないかなあ。独奏楽器も、いわゆるクラシックの協奏曲みたいにガシガシ演奏するかというとそうでもなくて、ぼっとして聴いてると「あれ、独奏パートあった?」と思うほど。というわけで、細かく見ると対立的かも知れないけど、全体としては「雨の樹素描」みたいな色彩の音楽に感じました。そういうドラマが4楽章最後に唯一出てくるフォルテシシモのレ♭にブワ~ってまとまっていく所は、機能和声音楽的ですらありました。
こういった
色彩の音楽という傾向は、85年と94年に書かれた他の2曲も同じ。
このCD、ありがたい事にモチーフになった和声の音符を武満さん本人が開示してくれてますが(これだけでも買った甲斐あった!若い頃は「おお!」と思ったもんです)、説明が丁寧なので、楽譜が読めない人でも「ああなるほど、こういう事を考えて作曲したのか」と分かるんじゃないかと。
このCD、録音が恐ろしくいい!巨大オケだというのに、まるで室内楽のようにバランスがいい!残念な録音だった「武満徹室内楽全集」を作ったスタッフは見習ってほしい、これがキングとDENONの差ですね(^^)。ただ、
80年代以降の武満さんの作風って、僕的には思いついた音の色がすべてという感じで、あんまり好きじゃないかも。色はいいけど、横に繋がっていくものがとぼしくて、15分も20分も集中して聴いてられない自分がいるのです(^^;)。印象派の
ドビュッシーや
ラヴェルも、武満サウンドの最初のアイデアになった
メシアンも、ドミナントを使わずとも時間軸の流れがもとしっかりしていたと思うんですよね…。
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