CD『ウシュクダラ トルコの吟遊詩人』と同じように、このCDもトルコの伝統的な歌曲のうち、テュルキ(turku)と呼ばれる民俗音楽系の民謡を収録したものでした。これも素晴らしい音楽でしたが、個人的には『ウシュクダラ トルコの吟遊詩人』の方がより感動した…かな?でもこっちのCDは、解説がめっちゃ詳しくてすごかった!ライナーは、小柴はるみさん。小柴さんって、小泉文夫さんとはどういう関係なんでしょうか。生徒と先生?
でもって、音楽のざっくりした印象だけを聴いているより、この解説を読みながら聞くのでは音楽の理解度が全然違って感じたので、備忘録も兼ねてそのへんも書いてみようかと(^^)。
■テュルキの音楽の形式 トルコの伝統的な歌曲は、
テュルキ(turku)と呼ばれる民謡と
シャルク(Sarki)と呼ばれる芸術音楽系歌曲に分かれる事は前に書きましたが、さらに
テュルキはウズン・ハワUzun Hava とクルク・ハワKirik Hava に分けて考えることが出来て、両者の一番の違いは長さ。
長い歌
ウズン・ハワは自由リズムで、こぶしやゆりといった装飾をきかせてメリスマチックに歌うそうです。ウズン・ハワ様式の歌は地域によって色々な呼び方がされますが、中央アナトリア(トルコの内陸部)にある
ボズラックはその代表例。フレーズの最初で高い声を張り上げて歌詞を一気に歌って、そのあとは意味のないシラブルや感嘆詞で一気に下ってくる…ああ~フラメンコにもこういう歌い方のものがあるなあ。あと、ウズン・ハワは定型で11か8音節のものが多いそうな。
短い歌
クルク・ハワは、ウズン・ハワとは対照的にシラビックで、短いフレーズが何回も繰り返されます。今の西洋のロックやポップスやジャズと違って拍子が多彩で、5,7,8,9,10拍子なんていうのも普通にあります。そういう付加リズムは2の単位と3の単位の組み合わせで出来ていて(例えば2+2+2+3の9拍子など)、付加された拍子の部分でちょっと躓くような感じになり、その為に
アクサックaksak と呼ばれるそうです。こうしたリズムはバルカン半島一体にもありますが、特にトルコでアクサックという場合は9拍子の事だそうです。もちろんこの拍子は踊りのステップと関係がある、みたいな。
■トルコ音楽の楽器 トルコでは
デフというタンパリン系の楽器以外は、男性楽器なんだそうです。で、テュルキで使われる楽器は、サズ、カバック・ケマネ(ひょうたんに棹をつけた弓奏楽器)、オーボエ属のズルナ、ケメンチェ(このCDには未収録)、両面太鼓のダウル。
なお、
サズにはふたつの調弦があって、ソレラが「ボズック調弦Bozuk」、ミレラが「バーラマ調弦」または「吟遊詩人の調弦」と呼ばれるそうです。いずれも、真ん中の弦が他の2弦より低くされているそうです…マジか、それは演奏しにくそうだ(^^;)。
■CDの感想! このCDは、前半にイスタンブールの演奏家によるやや都会的な歌、後半に黒海沿岸の歌や舞踊音楽が入っていました。
イスタンブールの歌は、ウズン・ハワが多かったです。ボズラックも含まれていましたが、これは西アジアのフラメンコとでもいう感じでした(^^)。本当に、最初に高い声を張り上げて、あとはメリスマで下降してくるんだなあ。テュルキとはいえ、日本人の僕からすればやっぱりアラビア音楽の影響を強く感じました。伴奏はサズのみ、カバック・ケマネのみ、合奏など。しかし、演奏にしても楽器の音にしても歌にしても、表現力が素晴らしすぎる。安易に電気化して平たい音と演奏になってしまっている今の英米型産業音楽がいかに貧しい音楽であるかを痛感させられますね。。そうそう、1曲だけズルナとデフによるデュオのインスト曲がありましたが、これもカッコよかった!!!
黒海沿岸の歌と舞踊音楽。この地域の音楽はケメンチェが主要楽器になっていました。あとはズルナとデフを使う時もありましたが、ここはイスタンブールと共通していて、こういう音楽になると僕にはイスタンブールと黒海沿岸の音楽の差は判別つかず。あと、舞踊性が強くて、クルク・ハワが多いのかな?しかし、この複雑なリズムをこの速度で演奏するのはすごい。
ずっと思っている事ですが、西アジアこそ音楽最強だと思ってしまいます。僕は大戦後の日本に生まれたもので、どうしても日本お流行歌と西洋の大衆音楽を中心に音楽を聴いてきて、西アジアの音楽にたどり着いたのはずいぶん後になってからでしたが、トルコはもちろん、
イラクも
イランも
アゼルバイジャンも
エジプトも、楽曲もプレイもレベルが段違いだと思ってしまいます。
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