若い頃は、ツェラン独特のレトリックやメタファーに痺れていた僕ですが、正直言って何を言っているのかはよく分かっていなかった気がします。でも、ツェランがナチス政権下のドイツに生きたユダヤ系ルーマニア人で、両親が強制収容所に送られたまま消息不明になった事を知ったうえで読むと、いったいこの詩が何のメタファーなのかが分かる気がしました。そのうえで、良いと思った詩をあげると、初期詩篇では「アルテミスの矢」「翼の音」。詩集『閾から閾へ Von Schwelle zu Schwelle』からは「ここ」「沈黙からの証しだて」。散文では「山中の対話」が、心に来るものがありました。ちょっと抜粋すると…