
邦題は「ジス・イズ・アニタ」、白人女性ジャズ・ヴォーカリストの
アニタ・オデイがノーグランからヴァーブに移籍して発表した最初のアルバム、1956年発表です。移籍って言ったって、ノーグランもヴァーヴもノーマン・グランツがオーナーなんだし、ヴァーブを作ったらそっちから出すようになったというだけで、移籍でもないかも知れませんが(^^;)。名盤ガイドには間違いなく載ってる1枚です。
ビッグバンド伴奏も、スモールコンボ伴奏も、ウィズ・ストリングスも入っているので、ひと粒で3度おいしいアルバム (^^)。ついでに、50年代後半のヴァーブ在籍時のアニタ・オデイのアルバムは、アニタ自身が絶好調という事もあってそのほとんどが傑作という素晴らしさ。この1枚も例外じゃないと思います。
なにより、女性的な魅力がすごい。。色気があるのはもちろんですが、それだけだとポルノだって色っぽいですよね。それだけでなく、なんというか…可愛らしさもあるし知性もある、みたいな。50年代までのアメリカって、女優でも歌手でも、才色兼備の女性が評価されていたように感じるんですよね。オードリー・ヘプバーンもイングリッド・バーグマンもそうじゃないですか。マ〇ンナみたいな美人なら馬鹿でもエゴイストでもいいみたいなフィジカルオンリーな評価は…マ〇リン・モンローがいたか(^^;)。まあそれはともかく、そういう身も心も大人な女性が「女性」として魅力的とみなされていた風潮はあったと思うんです。そういう魅力が、ヴァーブ時代のアニタ・オデイからはあふれ出しています。しかも、歌が好調です。
ただ、ヴァーブ移籍後の初期のアルバムの中では、いちばん面白くないかも。僕的には
『Pick Yourself Up with Anita O'Day』や『Anita Sings The Most』の方が全然いいと感じました。歌が抑え気味で2~3枚目ほどの勢いがない事と、2枚目
『The Lady is a Tramp』の「Rock’n Roll Blue」「Love for Sale」や、3枚目の「Sweet Georgia Brown」ほどの決定的な名曲や名演がないんですよね。悪くないアルバムだ思うんですけど4番バッターやエースストライカーがいなくて、もしこれだけ聴いていたら「ああ、こんなもんか」で終わっていたかも。それにしてもヴァーブ時代のアニタ・オデイの初期アルバムに外れなし、黄金時代を持ってるミュージシャンって素晴らしいなあ(^^)。