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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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2020年 今年聴いたアルバム 独断と偏見のベスト43 +α!(後編)

 2020年度のベスト・アルバム、後半戦です!振り返ってみると、ブログを始めた当初より民族音楽やクラシックをたくさん聴くようになってます。理由はふたつあって、ひとつは、このブログがたくさん持っているレコードや本の整理のために書き始めた備忘録のため、最初はロックやポップスから始めたものが、面倒くさくなってきて、順不同で整理するようになったから(^^;)。もうひとつの理由は、コロナで仕事のテレワーク化がさらに進んで、ながら聴きの難しいシンフォニーやコンチェルトを聴く暇が出来るようになった…いい事か悪い事か分からないですね(^^;)。
 民族音楽を聴いて、昔とは聴き方が変わってきていると感じます。昔は自分が知らない文化にある音楽だから、楽器にしても音楽の構造にしても自分が知らないモノが多くて、いってみれば目新しい音の斬新さに興奮している感じ。ひと回りしてないから、地球全体の音楽区分という自分なりのマッピングが出来てなかった事もあるでしょう。それが、いろんな音楽を聴いたり演奏したり書いたり、音楽以外にもいろんな本を読んだり映画を観たりして、地域文化や美感の根底にあるものを聴きはじめている自分に気づいたりして。音楽だって、極端に言えば昔は効果音を聴いて喜んでいた程度のものだったものが、今では普通にアナリーゼして聴いていたり。けっきょくアマチュア向けな産業音楽に収監されてしまったタイプのプログレやジャズより何倍も面白いです。
 前置きが長くなってしまいました。後半戦いってみよう!

第20位~11位
RStrauss_4tunoSaigonoUta_JessyeNorman.jpg第20位:『R.シュトラウス:歌曲集《4つの最後の歌》 ほか ジェシー・ノーマン (soprano)、マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団』
R.シュトラウスには好きな曲がそれなりにあるんですが、特に好きなのは「変容」と「4つの最後の歌」。後者は、ピアノ版よりもオケ版が好きで、なかでもこのジェシ・ノーマン歌のものに心が震えました。。そうそう、この曲はヘッセの詩がまたいいんですよ。。

第19位:『Cristina y Hugo / Padre Inca』
アルゼンチンと言えばタンゴ、でも実はフォルクローレもなかなかすごい。クリスティーナとウーゴはアルゼンチン版演歌ぐらいにしか思ってなかったんですが、いざ聴いてみたら歌もギターも素晴らしすぎてのけぞった

KasaiKimiko_Just Friends第18位:『笠井紀美子 / Just Friends』
笠井紀美子はアルバムを出すごとに駄目になってしまいましたが、このデビュー作は魂の入ったすばらしい歌、感動した…。ルパン三世の劇伴作曲家になる前の大野雄二のジャズピアノも素晴らしい

第17位:『イスラエルの音楽 Israël: Traditions Liturgiques Des Communautés Juives 1 / Les Jours Du Kippur』
すべてがユダヤのスリホトの祈り。これほど自分が知らない世界の文化を感じるものも珍しい、聴いていて本当に祈りの壁の前に立っている気分になってしまった…音楽ってすごい

KomitasVardapet_Voic of第16位:『Komitas Vardapet / The Voice of Komitas Vardapet』
これはアルメニアの音楽というより、アルメニアの思想じゃないか…と思わされた、歴史的録音。なんと伝説のコミタス・ヴァルダペットの肉声が入っているんだからビックリ

第15位:『トルクメニスタン:バフシの音楽 Turkmenistan: La musique des bakhshy』
子どもの頃にピアノ教室に通った行きがかり上でピアノ演奏をするようになりましたが、そうでなかったらリュート属の楽器を選んでいたでしょう。ギターから始めたに違いありませんが、そうしたらトルコやイランのセタールやサズの演奏に出会った時点でそっちに走ったんだろうな…な~んて思うぐらいにこのCDでのトルクメンの弦楽器演奏はすごかった

Albania Lapardha no Polyphony第14位:『エンデル・エ・ブレグティト ENDERR E BREGDETIT-O / アルバニア~ラパルダのポリフォニー ALBANIE Polyphonies de Lapardha』
今年は民族音楽のCDをたくさん聴いたけど、特にバルカン半島からトルコを通過してコーカサス地方あたりまでの音楽をいっぱい聴いた気がします。このへんの音楽のレベルの高さはヤバいもんで、聴き始めたら止まらない(^^)。合唱で凄かったもののひとつがアルバニアのポリフォニー合唱。このCDも凄すぎて強烈でしたが、もうひとつ凄いものもあって…それは後ほど(^^)。

Henry Clay Work‎_Who Shall Rule This American Nation第13位:『Henry Clay Work‎: Who Shall Rule This American Nation? / Joan Morris (mezzo soprano), Clifford Jackson (baritone), William Bolcom (piano)』
「大きな古時計」や「Come Home, Father」の作曲者の作品集はあったかくてレイドバックしていて心が本当にホッコリしました。ピアノのウィリアム・ボルコムとメゾソプラノのジョアン・モリスは夫婦で、ガーシュウィン作品集がこれまた素晴らしいので、いずれ書きたいと思います…持ってるCDの全レビュー、死ぬまでに終わる気がしねえ

Bach HarpsichordConcertos_Egarr_Ancient第12位:『J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲全集 エガー(harpsichord)、エンシェント室内管弦楽団』
バッハが書いた協奏曲はアレンジものが多いですが、オリジナルではチェンバロ協奏曲がヤバいぐらいに素晴らしい…そう思わされたのがこのCD。チェンバロとオケの音の混ざり方の美したといったらもう…

第11位:『Georgie: Chants de travail』
グルジアやバルト三国は合唱音楽のレベルが主婦合唱団ですらすさまじくハイレベルでヤバすぎますが、これはすごかった。日本のビクターからリリースされていたグルジアの合唱のCDを聴いて「噂ほどでもないな」な~んて思っていた自分が馬鹿だった

本、漫画、ゲーム etc.
性格上、難しかったりシリアスだったりするものの方が好きなんですが、人間は息抜きも大事だようねそうだよね。というわけで、硬派な哲学書や詩集や純文学ではなく、もっと軽い「遊び」に近い状態で読んだ本やゲームで、今年触れたもので心に残っているものを。
『野村克也 野球論集成』野村克也
プロ野球のレジェンドであるノムさんが死んじゃったのも今年だったんですよね、ノムさん安らかに…。これを読んで野球の見え方が変わりました。素人が見ても「馬鹿じゃなかろかルンバ」と思わずにはいられない野球をしてソフバンに8連敗した巨人の監督コーチ陣は読んだ方がいいぜ
『バルサスの要塞』スティーブ・ジャクソン
自分の選択でストーリーが変わるゲームブック。話も面白いが挿絵がまた見事!
『バイオハザード2』
プレステで遊んだホラーアクションアドベンチャーゲーム。昔の彼女とビビりながらやったあの頃が懐かしい
『1・2の三四郎』『柔道部物語』小林まこと
小学生の頃に爆笑したギャグマンガのバイブルが三四郎、その完成形が柔道部物語。名作すぎていまだにたまに引っ張り出して読んで笑っておるのじゃ

第10位~4位
第10位:『フォーレ:ピアノ五重奏曲 第1番、第2番 ジャン・ユボー(p)、ヴィア・ノバ四重奏団』
音大で専攻していたのでフランス近現代の音楽は楽譜もCDもいっぱいありすぎ、これを整理したかった(^^;)。聴き直して驚いたのが、フランス音楽ってドビュッシー直前もまた素晴らしかったという事。フォーレではピアノ三重奏曲やピアノ五重奏曲といったアンサンブル物が絶品でした

Wagner_Tristan_Bohm_Bayreuther.png第9位:『ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》全曲 ベーム指揮、バイロイト祝祭劇場管弦楽団・合唱団』
ワーグナーと言えば楽劇ですが、ぜんぶ聴くのにとんでもなく時間がかかる指輪よりも、「トリスタンとイゾルデ」の方が僕は好き。古典派からロマン派へと繋がったクラシック音楽のクライマックスのような大名作、しかも録音が良くてびっくり。ショルティ&ウィーンフィルの演奏も凄かったけど、70歳を越えていたベーム渾身の指揮は鬼気迫る名演、音楽家として生きるならこういう感動を生み出してこそなんだな…すごかった!!

TakemituToru_TakahasiAki plays第8位:『武満徹:高橋アキ plays 武満徹』
武満徹のピアノ曲は、ギター曲に並んで名曲ぞろいですが、これはすごすぎる精度の演奏で背筋が凍った…武満曲らしくない解釈かも知れないけど戦慄するほどの衝撃を覚えたのは事実

第7位:『Lee Konitz with Strings / An Image』
今年はリー・コニッツさんも亡くなったんですよね(・_・、)。トリスターノ派の重鎮であるリー・コニッツのアルバムで断トツで素晴らしかったのがこれ。というか、このアルバムで僕が感動したのは、コニッツさんではなく、アレンジを担当したビル・ラッソ。半音階あたりに突入し始めたあたりの近代音楽の室内楽というレベルのアレンジや作曲をやってるんですよ、好きとか嫌い以前に、単純にレベルが高いです。ジャズというエンターテイメント音楽からこういうのが出てきた40~50年代って、アメリカ音楽にとって素晴らしい時代だったと思います。今のジャズなんてほとんどポップスですもんね。。これ、2020年に聴いたレコードのジャズ1位でもあります。

Densetu no Tategoto_Myanmaa no ongaku第6位:『伝説の竪琴 ミャンマーの音楽』
今年のベスト・レコードの中で癒し系音楽のトップ。アジアの田園地帯の音楽って、レイドバック系の音楽が多いけど、その心地よさ満載

第5位:『古代ギリシャの音楽 Musique De La Grece Antique / グレゴリオ・パニアグヮ指揮、アトリウム・ムジケー古楽合唱団』
ウソみたいな話ですが、古代ローマ時代の音楽です…2000年以上前の音楽を聴けるって、すごすぎる。それだけじゃなくて音楽自体もアルカイックな素晴らしい響きで悶絶もの

Debussy_Preludes_Zimerman.jpg第4位:『ドビュッシー:前奏曲集 第1巻・第2巻 クリスティアン・ツィマーマン(p)』
ドビュッシーのピアノ曲は自分なりのイメージが出来上がってたんですが、そんなドビュッシー観が根底からぶっ壊された凄すぎる演奏。はやいうちにクラシック・ピアノを諦めて本当に良かった、どんなに頑張ってもこんな奴には絶対勝てないって。。

本、音楽書籍
 結婚する時に「この収入じゃ結婚やめるか音楽やめるかの2択しかない」と音楽の道からリタイアした僕でしたが、有難い事に今でもたまに音楽の仕事をいただける事があったりして(^^)アリガトウゴザイマス。音楽で稼がなくてはいけなかった頃と違って、やりたくない仕事を断れるもんで、演奏の腕はそうとう落ちたけど、作編曲は今の方が良いんじゃないかとすら思ったり思わなかったり。でもって、せっかくだから自分の持っている知識や技術だけでパパッと作らず、今まで自分が使ってこなかった作曲技法やら何やらに挑みたいと思って、昔読んだ音楽書をほじくり返してみると…ああ、こんな素晴らしい教えに触れていたはずなのに、いつの間にか自分の中から消えているもんだなあと驚くばかりでした(^^;)。というわけで、音楽書籍をはじめ、今年読んだちょっと硬派めの本の中で心に残っているものを。

Hesse sishuu_TakahasiKenji『ヘッセ詩集』
新ロマン派にしてアウトサイダーなヘッセの詩集を読み返したのは、R.シュトラウス「4つの最後の歌」を聴き直して感動したから。思想を背景としているようなこの手の詩は大人になってから読んだ方がりかいできると痛感させられた絶対いい、しかもちょっと生きる指針にまでなった(マジです)

『旋律学』エルンスト・トッホ
昔学んだ本だけど、読み返すといつの間にやら忘れていた事多数。和声ではなく旋律をどう作曲するかに悩んでいる人は、ジャンル問わず必読

『作曲の手引』ヒンデミット
半音階にまで拡張した機能和声の拡張も忘れている事多数、さらに当時は理解も出来ていなかっただろうこともいっぱいあった(^^;)>。長調や短調の先の作曲を目指す人必読ですが、今となっては入手困難かも

第3位~1位
Central Asia master of the Dotar第3位:『Central Asia | The master of the Dotar』
ロックやジャズのギターもいいけど、西アジアの撥弦楽器の音楽を聴いたら、狭い音楽だけを聴いていた自分を悔い改めること必至。それぐらい超絶の馬鹿テク&表現で、ちびりそうでした。でもイランはもっと凄いんだよな、もう8年もブログをやってるのにイランのダストガーに触れてないぞ(^^;)。いつか書こうと思います。。

Shoenberg_Gurre no uta_Abbado_WienerPhil第2位:『シェーンベルク:グレの歌 アバド指揮、ウィーンフィル、ウィーン国立歌劇場合唱団』
シェーンベルクって無調音楽や12音音楽で有名ですが、実はロマン派音楽最高峰の作曲家でもあると思っています。そう言いたくなる根拠が『グレの歌』です。この曲はブレーズ&BBC響のものも推薦ですが、聴いている時に感動して体が震えて来てしまったアバド&ウィーンフィルのこれをまずは推薦したい

Mysterious Albania第1位:『Mysterious Albania』
今年の1位はこれ、タイトルがあながち嘘とは思えないほど神秘的なハーモニーとポリフォニー、アルバニアの合唱音楽です!もう1枚年間ベストにあげた方のアルバニアの合唱も凄かったので、このへんの合唱はどれも超ハイレベルなんでしょう。ブルガリアン・ヴォイスも凄いしなあ。はじめて聴いた時も「なんだこれは」と圧倒されましたが、久々に聴いた今年も「うわあああ…」と圧倒されてしまいました。

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 今年もお世話になりました。コロナの第3波が来て、日本のみならず世界も大変なことになってます。問題なくワクチン接種できるようになるまであともう少しみたいなので、あともうひと踏ん張り。大事な人にうつさないよう、みなさん年末年始は家でゆっくり過ごしましょう…音楽好きだと、それがたやすく出来るところがいいですね(^^)。。それでは皆さん、よいお年を!!
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2020年 今年聴いたアルバム 独断と偏見のベスト43 +α!(前編)

 2020年はなんといってもコロナ。辛い思いをした方も、外出できずストレスのたまった方もいらっしゃるかと。しかしそんな時こそ室内で楽しめる音楽!演奏しても作曲しても楽しい、いい演奏や録音の名盤にしびれても最高!というわけで、年末に第3波が来てしまいましたが、正月旅行や初詣はやめ、家で音楽でも聴いてゆっくりしよう、そうしよう。
 というわけで、今年聴いた年間ベストです。年々アルバムを聴く枚数が増え、数年前の4倍近い量を聴いているもんで、ベスト10に収まりませんでした(^^;)>。素晴らしい音楽だったのにベストから外すなんてもったいないので、ベスト10にこだわらず「これはとくに良かった!」と思ったものは全部あげて行こうかと。いっぱいあるので、今回は43位から21位までと、音楽以外で良かったものを紹介!!

第43位~31位
Muddy Waters Folk Singer43位:『Muddy Waters / Folk Singer』
マディ・ウォーターズと言えばバンド・ブルースですが、本当に良いのはアコギ。バディ・ガイのアコギもいい!
42位:『テレマン:室内楽曲集 コープマン(チェンバロ、指揮) アムステルダム・バロック管弦楽団員』
ドイツ・バロックは荘厳な大バッハだけにあらず、軽妙なテレマンもいいなあ。
41位:『Harold Melvin & The Blue Notes / To Be True』
ジャケットはダサいが内容は感涙もの、フィリー・ソウルの大名盤(私的にです^^)!
40位:『Eagles / One Of These Nights』
録音が凄すぎ、楽曲も見事!『Hotel California』以上というすごさのAORです!
Jazz Crusaders_Freedom Sound39位:『The Jazz Crusaders / Freedom Sound』
モダン・ジャズがアドリブ一辺倒でなくこれぐらいアンサンブルに気を遣っていたら…と思わずにはいられない
38位:『ヒンデミット:室内音楽選集 1番、4番、5番 アバド指揮ベルリンフィル』
機能和声の先、セリー前の半音階作曲の見事さよ。なぜこれがあんまり聴かれないのか不思議
37位:『Djivan Gasparyan / I Will Not Be Sad in This World』
アルメニア音楽のもの悲しさは、かの地の悲劇の歴史をそのまま反映してるんじゃなかろうか
36位:『Junior Wells' Chicago Blues Band with Buddy Guy / Hoodoo Man Blues』
やさぐれたチンピラなブルースがカッコ悪いわけがない
josquin desprez _stabat mater_La chapelle royale35位:『ジョスカン・デ・プレ:スターバト・マーテル ~モテット集 ヘレヴェッヘ、シャペル・ロワイヤル』
選んだ日が違えばこれが年間ベスト1だったとしてもまったく不思議でない静謐な美しさ
34位:『ユダヤの宗教音楽』
ユダヤの巡礼音楽や詠唱を聴いて心が動かない人なんているだろうか(いや、いない)
33位:『Joni Mitchell / Clouds』
戦後の英米フォークでこれだけ繊細に組み上げられたものを他に知らない
TakahasiChikuzan_TsugaruJamisen.jpg32位:『高橋竹山 / 津軽三味線』
純邦楽って様式化して迫力がなくなるものが多いですが、叩くように弾くモダン津軽三味線の大御所はすごかった!
31位:『ナイルの調べ エジプトの古典音楽』
ウードも良かったですが、個人的にはカーヌーンの演奏と音にやられた

映画、TV etc.
なにせ仕事しながら音楽を聴き、仕事が終わったらレビュー…みたいなスタイルなので、映画やTVはあまり観ることが出来てません。そんな中で観た映像作品は、どれも若い頃に夢中になったものばかりでした。これは、順位はつけません。
MadMax.jpg『マッドマックス』『マッドマックス2』
いずれもジョージ・ミラー監督、メル・ギブソン主演のバイオレンス映画。これに燃えない男なんていないだろ…
『オーメン』
エクソシストやローズマリーの赤ちゃんではまだぬるいオーメンとサスペリアこそオカルト映画の2大傑作だ
『スーパーマン』『スーパーマン2冒険篇』
小学生の頃、このふたつで洋画に目覚め、アメリカの摩天楼にあこがれた
『ドリフ大爆笑』『8時だョ!全員集合』ザ・ドリフターズ
小学生の頃に爆笑させてもらったのが全員集合、中高の頃がドリフ大爆笑でした。志村けんの冥福を祈る

第30位~21位
HerbieHancock_Speak Like a Child第30位:『Herbie Hancock / Speak Like a Child』
叙情的なハンコックという珍しい作品ながらスコアも演奏も切な美しすぎてヤバい
第29位:『シャルパンティエ:真夜中のミサ曲 ウィリアム・クリスティ指揮、レザール・フロリサン古楽オーケストラ』
クリスマスの夜の教会で実際に歌われるミサ曲。フランスのバロックもやはり見事…
第28位:『スティーヴン・フォスター歌曲集 Songs By Stephen Foster』
「金髪のジェニー」のレイドバック感がたまらない
第27位:『Beverly Kenney ‎/ Snuggled On Your Shoulder』
アルバム数枚出して世を去った女性ジャズ・ヴォーカリストは、デビュー前のデモテープが一番素晴らしいという事実
Faure_Piano3jyuusoukyoku_GenQ_EbenuQ.jpg第26位:『フォーレ:ピアノ三重奏曲、弦楽四重奏曲 エベーヌ弦楽四重奏団 etc.』
仕事で書いたポップな曲も多いフォーレだが、ガチで来るとフランス音楽史を変えるほどの傑作連発
第25位:『豊竹山城少掾 / 人間国宝 義太夫 豊竹山城少掾』
義太夫節の人間国宝というと堅苦しそうだが、最高に面白いエンターテイメントだぞこれは
第24位:『カスピ海の旋律 アゼルバイジャンの音楽』
トルコ周辺の細竿撥弦楽器のカッコよさは異常、アゼルバイジャンも凄かった
Lutoslawski_PianoConcert_Zimerman.jpg第23位:『ルトスワフスキ:《ピアノ協奏曲》《チェイン3》《ノヴァレッチ》 ツィマーマン(p)、ルトスワフツキ指揮、BBC響』
前衛と調音楽の中間あたりという、思いっきり僕の趣味な音楽。しかもツィマーマンのピアノがうますぎ
第22位:『King Sunny Adé / Classics Volume 6: Merciful God & Baba Moke Pe O』
アフリカ音楽が西洋ポピュラーの音楽や楽器を導入して作り上げたアフリカン・ポップの好例
第21位:『ウシュクダラ トルコの吟遊詩人』
個人的に一番トルコを感じるのはサズの演奏。その凄さを思い知ったCDのひとつ

 いやあ、どれも見事な音楽なり創作物ですが、これでまだ21位以下だとは信じられないです。僕は笑ったり泣いたり感動したりしてないと生きていられない人間なんじゃないかと自分のことを思ってるんですが、コロナ禍のなか、こんなにたくさん心躍る体験をさせてもらってきたんですね、なんと有難い事か。。というわけで、20位から1位までは、また明日!!

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『絲綢之路Ⅲ ~中国少数民族の音楽』

Sirukuroad3_ChugokuSHousuuminnzoku.jpg キングレコードの中国音楽シリーズ『絲綢之路』の第3弾です。このCDだけ1~2集と違って1981年、83年、85年と録音日がバラバラですが、すべて日本のキングスタジオ録音。中国の少数民族音楽の音楽でした。中国の少数民族と言っても知られているだけで50を超えるので全部は無理、このCDはシルクロード沿いに住む6民族の音楽という事でした。6つとは、キルギス族、ウイグル族、モンゴル族、朝鮮族、苗族、チベット族の6つ。

 キルギス族の音楽は、撥弦楽器クムーズの独奏が3曲。フォークギターっぽい演奏方法で、あんまり難しそうじゃなかったり、アッチェルして行ったりするところは、騎馬族の音楽かな、と思いました。遊牧民がテントの中でこういう音楽を楽しんでると思うと、ちょっとホッコリ(^^)。

 ウイグル族の音楽は、レワーブ独奏が3曲。マカームやダストガーが大好きな僕にとって、それにちかい(というか、もしかしてそのもの?)これはやっぱりカッコよかった!演奏だけでなく、楽器の音自体がもう洗練されてると感じました。

 モンゴル族の音楽は、馬頭琴の演奏が2曲でした。独奏って書いてありましたけど、拍子木みたいな音が入ってるのは足で何か踏んでいるとか、そういう事なのかな?このCDに入っていた馬頭琴の演奏は、馬で草原を疾走している!って感じの曲と、「バヤリン」という雄大な感じがするモンゴル族の伝統曲。これはセレクトが見事、どちらも素晴らしい曲と演奏に感じました(^^)。

 朝鮮族の音楽は4曲。ヘーグムという擦弦楽器の演奏に、片面太鼓みたいな音のシンプルな伴奏がついたものでした。朝鮮族の音楽は…演歌っぽいというか、すごく湿っぽかった(^^;)。昭和初期の日本の音楽にも共通して聴こえましたが、なるほどあの頃は日本が朝鮮半島に行っていた頃ですし、お互いに影響を与え合っていたのかも。

 苗族(ミャオ族)は4曲。苗族ってどの辺にいるんだ、ライナーに説明がないからぜんぜんわからん…ネットで調べたところ、タイビルマラオスベトナムにもいる民族という事なので、比較的南寄りのところに広範囲に住んでいるのかな?この音楽は笙によるもので、ひとり多重奏、カッコいい!!いつか、トーンカム・タイカーが演奏したタイのモーラムのCDの感想を書いたことがありましたが、あそこまで超絶技巧ではなくて、民謡という感じではありましたが、これはほっこりした田舎の音楽という感じで、すごくよかったです(^^)。

 チベット族の音楽は、歌舞劇の音楽で、その序奏であるウンパドンというものが入っていました。合わせシンバルとバレるドラムが同時に鳴っていて、それにセリフとも唄ともつかないものが絡む感じ。これ、なんか大きい龍の人形を操りながらやってそう(勝手な僕のイメージです^^;)。

 この『絲綢之路』シリーズ、音楽や演奏は素晴らしいんですが、編集方針があいまいなうえに解説が雑で残念ですが、その中ではこの第3集がいちばん編集方針が分かりやすくて楽しめました。なるほど、中国の少数民族の音楽を把握するなら、たしかにこうやって編集してくれると凄くわかりやすいし、それぞれの違いと共通項も把握しやすかったです。中国音楽に詳しい人ならそれぞれの音楽を掘っていくんでしょうが、僕みたいな初心者にはこの方が分かりやすくてありがたかい1枚でした!


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『絲綢之路Ⅱ ~漢族とウイグル族の音楽』

Sirukuroad2_Kanzoku to Uiguru キングレコードの中国音楽シリーズ『絲綢之路』第2弾は、第1弾と同日のスタジオ録音で、中国音楽舞踊代表団による演奏でした。そのメンバーの中の楽器奏者2人は、第1集と重複してました(二胡&高胡:陳耀星チェン・ヤオ・キン、琵琶:方錦龍ファン・ジン・ロン)…なるほど。他には、騎馬民族の撥弦楽器を演奏するマフメット・トゥルミュシュ、ウイグル系の撥弦楽器を演奏するミジット・イブライム、歌手2人が入っていました。でも、演奏は歌の伴奏を除けばみんな独奏でした。

 キルギス系の撥弦楽器クムーズの独奏は2曲。これはけっこうギターと似たような奏法で、ストロークをジャカジャカやりながら、高音部の音を動かしてメロディを奏でる、みたいな。騎馬民族の音楽だからか、洗練されてない感じでしたが、逆にそこが「キルギスの音楽ってこんな感じなんだなあ」みたいに思えて悪くなかったです(^^)。

 ウイグル系の撥弦楽器レワーブの独奏は3曲。おお、急に技巧も表現力も増してカッコ良くなった!さすがウイグル(^^)。これは完全にマカームでした。中国国内でもウイグル自治区はこういう音楽なのかな?

 民謡が4曲。ウイグル自治区のもの、モンゴル民謡オルティン・ドー、タタール族(ウイグル自治区に住んでいるらしい)の民謡、山西の民謡の4つでした。後者2つはもろに中国音楽という感じでした…ジャッキー・チェンの映画とかで聴ける奴って意味ですけど(^^;)。

 残りはほぼ器楽独奏ですが、これは演奏者が同じこともあって第1集と似ていたので感想は割愛。

 このCD、第1集に続いて解説が残念でした。「これはカシュガルの民謡」とか言われたって、カシュガルがどこなのか知っている日本人がどれだけいるでしょうか。初心者用みたいなオムニバスのくせに、そこは説明しないというのはちょっとな…。地理や民族音楽通の人ならわかるのかも知れませんが、詳しくないアホな僕にとっての民族音楽のCDは、解説が価値の半分ぐらいを占めているので、解説の不親切さが辛かったです(^^;)。


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『絲綢之路I ~漢民族の音楽』

Sirukuroad1_Kanminzoku.jpg 中国音楽のCDです。1985年、日本でのスタジオ録音でした。この頃に「シルクロード音楽の旅」という中国演奏家の来日公演があり、それに合わせた録音だったみたいです。収録されているのは、二胡(アルフー)または高胡(カオフー:二胡よりも調弦が4度高く、広東音楽では二胡よりも主流)が10曲、笛子(デイズ:中国の横笛)が2曲、箏(ジエン)が2曲、中国琵琶(ピパ)が1曲でした。

 どの楽器も演奏が半端じゃなくうまい!さすが中国、演奏家は徹底的に鍛え上げられていて、レベルの高さがヤバい。特に、中国琵琶を演奏した方錦龍(ファン・ジン・ロン)という人のトレモロがヤバい。。僕は中国琵琶ではどの人の演奏を聴いても、トレモロの美しさにビビらされてしまうのです。クラシック・ギターの「アルハンブラの想い出」のトレモロなんてもんじゃないんですよ、ものすごく速くて、粒がそろっていて、それなのにアタックで音をつぶしてしまわずに音がメチャクチャきれい。音だけで判断すると3音でワンセットになっているので、指で演奏してるんじゃないのかなあ。。なんでこんなにすごい琵琶が1曲だけの収録なのか残念。

 ただ、このCD、解説が少ないです。演奏されている曲は伝統曲だけでなく、プレイヤーの自作曲も入っていて、楽器や曲の説明は一応あるんですが、漢人音楽というものがどういう歴史を持っていて、どういう音楽なのかの説明はまったくなし。というわけで、中国音楽をよく分かっている人ならいいんでしょうが、そこがよくわかっていない僕にはちょっと辛いCDでした。演奏はすごいんですけどね。。


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『許可 / 悲歌~二胡無伴奏作品集』

ShuiKuu_Hika.jpg 中国の宮廷音楽は雅楽が有名ですが、雅楽が残っているのは韓国と日本で、共産主義国家になった中国に雅楽はもう残ってないらしいです。というわけで、今も残っている中国の漢人音楽というと、二胡(アルフー)または高胡(カオフー)曲、笛子(デイズ:中国の横笛)、箏(ジエン)、中国琵琶、ヤンチンあたりの演奏という事になるのかな?これは、許可(Xu Ke シュイ・クゥ)さんによる、二胡独奏集です。録音は1995年の三鷹…なるほど、日本制作CDなんですね。許可という方、中国音楽に疎い僕ですらよく名前を聞く人なので、もしかすると日本在住の中華系の人をメインターゲットにしたCDなのかな?

 華彦釣(阿炳)(ホア・イェンジュン、アービン1893-1950)劉天華(リュウ・ティエンホウ1895-1932)というふたりの作曲家の作品を取り上げていました。おお、劉天華さんは名前だけは聞いたことがあるぞ!二胡の独奏曲の作曲をした人では、劉天華は最重要人物なんだそうで。阿炳さんの曲では、「二泉映月」という曲だけは知ってました。これ、いい曲ですよねぇ(*´ー`*)。

 シェイ・クゥさんの演奏、きっとすごいうまさなんだと思います。僕、日本人の二胡奏者の演奏を聴いたことが何度かありますが、たいていピッチがかなり悪く、音色もたいがいはかすれて汚い…などなど、クラシックのヴァイオリンやチェロといった擦弦楽器のマエストロの演奏に聴き慣らされた現代人の耳には聴けたもんじゃなかったのです(^^;)。でも二胡って見るからにシンプルな作りだしフレットレスだし、聴く側が思っているより相当に難しい楽器な気がするんですよね。それがこんなに普通に鳴ってしまうのは、きっとすごいことなんだと思います。
 でも、僕自身は中国のこういう民間音楽には、いいところとダメなところのふたつを感じてしまうんです。いいところは、大河的なゆったりした感じ。きわどい音も全く使わず安定していて、お茶飲んで「ふう…」と落ち着く感じがいいです(^^)。
 苦手なところは…単純すぎて退屈に感じてしまう事が多かったりして(^^)。だって多くの曲が、1/長2/長3/完全5/長6、みたいな長音階系のペンタトニックの単旋律なんですよ。これだと演奏がうまくたって刺激がなさ過ぎてね。。漢人音楽は、民間音楽だけじゃなくて中華オーケストラも同じ傾向で、とにかく曲が安定して音もひたすらきれいなところを目指すPTA的なムードが、現代の毒に汚れた僕にはぬるく感じてしまうんですね、きっと(^^;)。南アジアや東アジアの音楽にあるような、響き線を使っての音の複雑化とか、強烈なリズムとか、倍音率から外れてくる音の組み込みとか、そういうものが欲しい。人間、美しさと同時にヤバいものもないと。清濁併せ呑む器量が必要…とか、聴きながら変な妄想をしてしまいました(^^;)。
 
 でも、ストレス満載な現代社会に疲れて、ゆったりとした気分に浸りたいときに聴いたら、このCDはいいかも…いや、推薦しきれない理由がひとつあります。このCD、いかにもわざとらしいデジタル・リヴァーブがかかっていて、そこがどうにも興ざめでした。特に深い考えもなくただつけただけ、みたいな。音像を作るわけでも、アコースティックを作って楽器のおいしい音を作りだすわけでもなく、マジでただリヴァーブかけただけ、みたいな感じなのです。せっかく二胡の独奏をちゃんと聴くんだったら、こういうライトなワールドミュージック・エンターテイメントCDじゃなくて、現地録音のフィールドレコーディングものか、ちゃんとしたホールで録音したものを聴いた方がいいかも…ごめんなさい、生意気言ってしまいました(^^;)。


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映画『スーパーマンⅢ 電子の要塞』 クリストファー・リーヴ主演

superman3.jpg 1作目と2作目が素晴らしい映画版スーパーマンですが、この3作目の評判はイマイチ(^^;)。でも僕は子のどものころにこの映画を映画館で観て、すごく面白く感じました。でも一緒に見に行った親父が「スーパーマンじゃなくて黒人が主役みたいで、いまいちだったな」と言ったのです。「へえ、僕には面白かったけど、親父はそう思わなかったんだ」と思った事を覚えてます。
 とかいって、映画の1作目と2作目はビデオで何度も何度も見たんですが、この3作目は子どものころに観て以降、テレビでやっていたのをちょっと見かけたぐらいしか見てないです(^^;)。つまらなかったわけじゃないし、ネットテレビででもやってくれたら、もう一度見たいと思ってるんですけどね。

 そんな薄い印象の中で強烈に覚えているのは、人間がコンピューターの要塞に捉えられて、ロボットに代わってしまうその特撮の凄さ。何と説明したらよいか…ウルトラセブンの変身シーンみたいに、機械が人間に絡みついて徐々にロボットになっていくんですが、これがメッチャ怖かった。同時に、特撮の完成度の素晴らしさに魅了されたシーンでした。映像面でのこの映画の一番の見どころは、間違いなくここではないかと。
 もうひとつ覚えているのは、スーパーマンが分裂してしまって、正義のスーパーマンvs悪のスーパーマンになる所。これは忘れてたんですが、ある時、スパイダーマンの映画の宣伝を見て「あ、これってスーパーマンⅢと同じじゃん」と思い出したのでした。スパイダーマンって、育ての親の老夫婦といい、とにかくスーパーマンをモチーフに作ったところが多いですよね。

 世間的には評価の低い作品ですが、僕はとても楽しく観た映画でした。でも子供の時の感想ですから、いま見たらどう思うんでしょうね。「がんばれベアーズ」の2作目も、子どものときは面白かったけど、大人になって観たらガッカリだったしな…。本当に最悪なのはスーパーマンⅣで、テレビ放送でちょこっと見たんですが、あまりにひどくて途中で観るのをやめてしまった…あれは僕の中で無かったことになってます(゚∀゚*)。


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映画『スーパーマンⅡ 冒険篇』 クリストファー・リーヴ主演

Superman2.jpg 1981年作、クリストファー・リーブ主演のスーパーマン第2作。これも最高に面白かった!!この映画も人生で何十回も見たほどのフェイバリット。内容は、スーパーマンと同じ惑星クリプトンから来た3人の悪党との対決。子どもの頃に驚いたのは、映画1作目の冒頭シーンで、この第2作の3人の悪党への伏線が張られてるのです。1作目を観た時は、あのシーンは何だったんだろうと子ども心に思ってたんですが、なんと2作目に繋がるとは…。

 1作目の方がストーリー的に凝っていてドラマチックだったのに対して、2作目はヒーロー活躍の勧善懲悪。でも、その分だけ娯楽性が高くなっていると感じました。単純に、「水の上を歩く」とか「ナイアガラの滝に落ちた子どもを空中キャッチして助ける」とか、そういう特撮シーンだけでもメッチャ楽しい!この特撮が素晴らしく、ウルトラマンのようなチープさが微塵もなくて、このイリュージョンに感動していました。特撮の面白さって、絵画や彫刻の面白さと同じで、マチエール(素材の材質感)とイリュージョン。誰だってスーパーマンが本当に飛んでるとも、撃った銃の弾を取っちゃうとも思ってないわけで、それをどういうイリュージョンとして魅せるか、というところが楽しいのです。CGだとイリュージョンがなくてつまらないですが、この映画の特撮にはイリュージョンがあるのです(^^)。

superman2 vs zod ストーリーも最高に楽しい!しかも、何度も見て驚いたのは、無駄なシーンがひとつもない事でした。この映画の構造はシンプルで、緊張と弛緩。スーパーマンが負けて窮地に追い込まれ、最後に大逆転、これだけなんですが、分かりやすいだけに大逆転した時の爽快感が半端ない (^^)。この映画の場合、スーパーマンに強敵を出すだけでなく、スーパーマン自体を弱くするんですが、この緊張と弛緩は細部でも表現されてます。僕がこの映画で一番好きなシーンって、ダイナーでの喧嘩シーンなんですが、このシーンって、なくてもストーリーには影響ないです。この映画の中でスーパーマンは一度超能力を失い、町の不良にすら喧嘩で負けてしまいます。それだけのシーンかと思いきや、復活したスーパーマンは同じ不良を片手でコテンパン、爽快です(^^)。これ、スーパーマンの能力を相対化して見せているのと、本筋とは違うショートエピソードを入れるというヒッチコック以来伝統の映画的手法ですが、これがものすごくいいスパイスになってます。

 スーパーマンの映画1作目と2作目は極上の娯楽映画。観た後の爽快感がハンパないです。観終わった後にこんなに気分が良くなる映画って、なかなかないんじゃないかと。想い出補正を含め、「生きてるって本当に楽しいな、人間に生まれて本当に幸せだったな」と思わされる幸福感を感じた、最高の映画でした(´v`)。あ、そうそう、「ディレクターズ・カット」は、落ちまで変わってしまう最悪の一品らしいので、オリジナルを観ましょう!


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映画『スーパーマン』 クリストファー・リーヴ主演

superman.jpg 1978年制作のアメリカ映画、子どものころに観て大感激しました!アメリカのコミックだったスーパーマンは、何度もテレビドラマ化されたり映画になったりしてますが、僕にとってのスーパーマンは、クリストファー・リーヴ主演のこの映画シリーズ!4作目まで作られましたが、特に1作目と2作目は何十回も観たお気に入り映画です。音楽も好きで、「愛のテーマ」が素晴らしすぎ。

 スーパーマンは、宇宙から来た超人の物語です。映画1作目では、スーパーマンが惑星クリプトンから来ることになった経緯と、地球に来てから成人し、そしてスーパーマンのライバルとなる犯罪の天才レックス・ルーサーとの戦いまでが描かれます。漫画原作で超能力者の話だから、日本でいえばドラえもんみたいな子供映画になっても良さそうなものなのに、大人の鑑賞に堪える作品になってる所に、戦後のアメリカの文化は今も大人主体なのに日本の文化は幼稚になったんだと感じます。

 特に感動したのは、70年代のアメリカの風景です。この映画、スーパーマン学生時代のシーンではアメリカの農場の風景が映し出され、大人になって新聞記者になった後のシーンでは大都市ニューヨークが映し出されます。対照的ふたつの風景ですが、これってどちらもアメリカの代表的なふたつの風景じゃないでしょうか。田舎は一面黄金に輝く田園風景、一方のニューヨークは世界最大のメトロポリス。どちらもとんでもないスケールで、景観に圧倒されました。子どもの頃に感じた「アメリカすげえ…」というあの感動は、言葉では言い表せません。合衆国に生まれて見たかったと思ったのは、あとにも先にもこの映画だけかも。60年代でも80年代でもダメ、50年代と70年代が素晴らしいと感じるのです。

superman_kent farm こうした景観が素晴らしく見えたのは、映画そのものがムチャクチャ面白かったからだと思います。育ての親の老夫婦との出会いと別れは感涙もの。悪の天才レックス・ルーサーはコミカルでありつつ知的、彼との勝負はハラハラドキドキ。そして自在に空を飛び透視も出来るスーパーマンの超能力の特撮表現が見事!このスーパーマン、ランボーのような「悲壮感ただようヒーロー」ではなく、やさしく明るいヒーローで、見ていて不快に感じる事がなく、ひたすら気分が良くなるヒーローなのでした。

 大ヒットを飛ばして一世を風靡した映画スーパーマン、脇役にマーロン・ブランドにジーン・ハックマンって、ぜいたく過ぎ(^^)。僕はこの映画が大好きで、人生でもう何十回も観てますが、いまだに見飽きないです。アメリカのエンターテイメント映画の中でトップクラスの作品だと僕は今も思ってます!!


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『Clifford Brown And Max Roach ‎/ More Study In Brown』

Clifford Brown and Max Roach more ‎Study In Brown タイトルは『Study in Brown』の続編っぽいですが、実際にはEmArcy に録音が残っていたブラウン=ローチの未発表音源集。日本編集で、1954年から56年までの6つのセッションからの抜粋8曲、既発アルバム収録曲の別テイクまで強引に入れてあったりして(^^;)。でもこのアルバムを買わざるを得なくなったのは、なんと5重奏の中にソニー・ロリンズが入っている曲が3曲もあったから。それだけのことで買っちゃうんだから、若い頃の僕は相当にクリフォード・ブラウンの演奏に魅了されていたんだなあ。。

 クリフォード・ブラウンの演奏はあいかわらず絶好調。というか、僕はブラウニーの凡庸な演奏を聴いたことがない…。まあここまでは期待通りだったんですが、ロリンズがいい!不思議なもんで、ソニー・ロリンズって、リーダー作ではゆったり大らかに…といえば聞こえはいいけど、けっこう当たり障りのない演奏をするじゃないですか。ところが誰かのバンドに入ると突然素晴らしいです。ガレスピーのバンドに入った時もキレッキレでしたしね。単純に吹きまくるし、斬新な挑戦も決めてきます。ブラウニーの直前のフレーズをそのまま吹いて始めたりと、おちゃめな一面もあったりしてね(^^)。

 そして、アルバム『ブラウン=ローチ・インコーポレイテッド』収録の「ミルダマ」の別テイクが凄かったです。、ほとんどブラウニーとローチの即興デュオなんですが、火の出るようなトランペットに押しつぶすようなドラミング!!このテイクは編集なしらしいですが、多少の傷なんて勢いの前にはノー問題なんだなあ。。

 他のアルバムには入っていないナンバー「ジーズ・フーリッシュ・シングス」は、リッチー・パウエルのピアノが美しい。。本当に美しかったです。リッチー・パウエルとクリフォード・ブラウンって、自動車事故で一緒に死んじゃったんですよね(・_・、)。

 な~んて感じで、クリフォードの大ファンの僕はいい所ばかり書いてきましたが、他のアルバム収録曲の別テイクが多いので、あくまでこれはクリフォード・ブラウンのアルバムをみんな聴いたけどまだ足りない人向けのアルバムと思いました。僕は手放しませんけどね(^^)。


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『Clifford Brown and Max Roach ‎/ Study In Brown』

Clifford Brown and Max Roach_‎Study In Brown 1955年録音、泣く子も黙るブラウン=ローチ・クインテットの名盤です!ブラウニーとローチ以外のメンバーは、ハロルド・ランド(ts)、リッチー・パウエル(p)、ジョージ・モロウ(b)。ブラウニーとローチが凄いのはもちろんですが、ハロルド・ランドのサックスがまた良かったです!

 アップテンポの1曲目「チェロキー」で心が持っていかれちゃいました。トランペットのアドリブ、素晴らしすぎでしょ…。と思ったら、続くハロルド・ランドのサックス・ソロも素晴らしかった!いやー次々とアドリブソロを回す典型的なハードバップなんですが、ただ構成の上に音を乗っけているだけじゃなくて、すべての音符が歌っていて心が入ってるというか、音楽が躍動していました。これは構成では説明できない、即興演奏の素晴らしさ(^^)。。アップテンポ曲で言えば、3曲目の「ランズ・エンド」はテーマの演奏がキレッキレで素晴らしかったです(^^)。風変わりで難しそうなテーマで言えば、ブラウニーのオリジナル「ガーキン・フォー・パーキン」も良かったです。ソロに入っちゃえば12小節ブルースでしたけど。。
 「A列車で行こう」は、イントロの汽車が走り出す音の擬音アレンジが面白い(^^)。ピアノが徐々にアッチェルして「デーン、ドーン」と車輪が徐々に回転する音を模して、ペットとサックスが汽笛の音を真似て、そしてテーマに。エンターテイメントでいいなあ(^^)。しかも曲中はハロルド・ランドもブラウニーも素晴らしいソロ。こんな曲で締めくくられたら、楽しい気持ちしか残りません(^^)。

 良かったのですが、実は昔聴いた時ほどの衝撃を感じなかった…それって、スタジオ録音だからかも。ドラムがものすごい圧力をかけてペットがずばずば切り込んでくる印象だったのですが、記憶よりミドルテンポのナンバーが多く、音がすごくスッキリしていて、演奏もタイト。音符に収まりきらない部分がジャズの迫力に繋がると思っている僕にしたら、すこし整理されすぎて感じるのかも知れません。とはいえ悪い音楽なんて事は全然なくて、さすが名盤でした。ブラウン=ローチのレコードは、どういうわけかフロアタムやバスドラの音がやたら大きいレコードがいくつかあったんですが、このレコードは楽器のバランスが良くて、すごく聴きやすかったです。


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『Clifford Brown and Max Roach』

Clifford Brown and Max Roach チャーリー・パーカーディジー・ガレスピーが驚異の即興演奏を聴かせたビバップの大ブームの後、ジャズは知的でエレガントなウエスト・コースト・ジャズの時代へ。爆発的な演奏を聴かせるジャズの時代は短命に終わったかと思いきや、今度はアメリカ東海岸からハードバップの波が!このレコードは、ハードバップの名コンボ、ブラウン/ローチ・コンボの(たぶん)いちばん古い録音で、1954~55年録音。レーベルはEmArcy…そういえば、エマーシーのジャズヴォーカルものでもブラウニーはペット吹いてたなあ。エマーシーの看板プレイヤーだったんでしょうね。ブラウニーが演奏しているというだけでレコードが売れる、みたいな。

 ジャズを聴き始めてしばらくした頃(17歳ぐらい?)、50年代のアメリカ東海岸でブームになったハード・バップやファンキー・ジャズは退屈な音楽だと思ってました。名盤といわれるものを聴いても、どれもいまいち。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ『モーニン』、ソニー・ロリンズ『サキソフォン・コロッサス』、キャノンボール・アダレイ『枯葉』、マイルス『バグズ・グルーヴ』…どれもこれもテーマ吹いたらあとはアドリブのワンパターンで、曲として面白くなかった…。そして、ハードバップの売りとなっているアドリブも、そこまで有難がるほど凄いものとは思わなかったんです。もう少し後のコルトレーン『至上の愛』とか、マイルス・デイヴィス『プラグド・ニッケル』あたりの方が全然すごいと思ったんです。だから70年代生まれでモダンジャズ後追いの僕にとって、ハードバップは温故知新の音楽…そう思っていたんです。ところがクリフォード・ブラウン&マックス・ローチの演奏を聴いてぶっ飛んだ!!なんだこれ、演奏が凄すぎる…マイルスやブレッカーが子供に思えてしまうほどのキレ味、興奮しまくりました!

 音楽自体は普通のハード・バップで、退屈なほどシンプルな構造です。ところが演奏のキレが凄い…。まだロックを普通に聴いていた頃だったもんで、ライドでリズムをキープして、後はみんなおかずのマックス・ローチのドラムにビビった!今となってはジャズ・ドラムの基本中の基本のようなドラミングですが、ロックと比べれば曲の最初から最後までドラムソロみたいなもので、感激したのです。難しいコンビネーションがどうとかいう事じゃなくて、右手以外のすべてがアドリブな所が凄い。これを知ってしまったもんだから、フュージョン時代の手数がやたら多いドラマーを聴いても、それが決められたコンビネーションだとぜんぜん面白くないと感じるようになったほど。ついでにドカーンと来た時の押し潰すような圧力がすごくて、本当に持っていかれてしまいました。
 そして、ブラウニーの演奏。クリフォード・ブラウンの演奏は他のアルバムでさらにぶっ飛ばされる事になったんですが、このアルバムの演奏も素晴らしかった。このアルバムではそこまで高速プレイや火の出るようなソロは聴かせてないんですが、キレが凄い!なんなんでしょうね、タンギングなのかな、アクセントがパンパン入るリズム感のキレの良さなのかな…僕はペットを吹かないのでうまく説明できないんですが、とにかく切れ味が凄い。ローチがこん棒でぶん殴ってくる感じなら、ブラウニーは日本刀でスパッと切ってくる感じ。

 な~んて感じで誉める言葉しか出てこないハード・バップの切り札コンボのデビュー・アルバム。でもブラウン=ローチ・クインテットの凄さはこんなもんじゃない、まだまだ強烈なアルバムがあったりして(^^)。とはいえ、モダン・ジャズを聴くならブラウン/ローチのアルバムは全部買っても損しない名演揃い、この第1作も間違いなく名作と思います。まだ聴いてない人はぜひ!!


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『Clifford Brown ‎/ Memorial Album』

Clifford Brown_Memorial Album 「クリフォード・ブラウンが生きていたら、その後のジャズの歴史は変わっていた」なんて言われるほど、ブラウニーは突出した存在だったそうです。たしかにこのトランペットを聴いたらそう言われるのもうなづけます、すごいもんなあ。。ところが彼は56年に交通事故で死んでしまい、みじかい活動期間でその生涯を閉じる事になってしまいました(・_・、)。これは、ブラウンの死の直後にブルーノートからリリースされた追悼アルバムです。僕が持ってるのはCDで、ボーナストラックの入った『Complete Clifford Brown Memorial Album』全18曲入りというものでした。クリフォード・ブラウンの参加したブルーノートのレコーディング・セッションは3回あったそうですが、これはそのうち2回がコンプリートされたもの。どちらも1953年録音なので、あの有名なアート・ブレイキーとのバードランド・セッションや、ブラウン=ローチ・クインテットよりも先の録音です。

 ひとつ目のセッションは、アルト・サックスのルー・ドナルドソンがリーダーのクインテットへの参加セッション、53年6月9日録音。ハード・バップはブレイキーのバードランド・セッションやマイルスのDIGセッションの行われた54年からスタートしたなんていうけど、53年の時点でいきなり最上級のハード・バップが存在してたじゃありませんか、これは素晴らしい。。明るくノリノリ、それでいて超絶。すばらしいのはブラウニーばかりでなく、ルー・ドナルドソンのアルトも、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムも、エルモ・ホープのピアノも素晴らしいです。ハード・バップって、演奏が良いセッションだと楽曲様式の単純さは気にならなくなってしまうのが不思議。

 ふたつめのセッションは、ブラウニーがリーダーを務めたセクステットで、53年8月28日録音。おお、60年代(?)にモンク・カルテットに参加していぶし銀の演奏をしていたチャーリー・ラウズが参加してる!この時から活躍してたのか、ちょっと感動。他には、ジジ・クライス(as)、そしてジョン・ルイス(p)とパーシー・ヒース(b)のMJQチーム、そしてアート・ブレイキーが参加してました。なるほど、このセッションが翌年のブレイキーのバードランド・セッションに繋がったのかも知れません。
 こちらがブラウニー中心のセッションなのに、なんとこっちの方がエレガント。クインシー・ジョーンズの曲や、「Easy Living」「Minor Mood」というスローからミッドな選曲が多い事もあるのかも知れませんが、ジジ・クライスのフルートやアルトサックス、それにMJQ組のデリケートな演奏でそう感じさせるるのかも。でもこれが前半のハード・バプ・セッションと対比になっていて、アルバムとしてはなかなかいいな、と思いました(^^)。

 ハードバップって、楽曲様式は歌謡形式を何度も循環してアドリブを取っているだけなので、演奏が熱いものじゃないと途端につまらなくなったり、「またこれか」となったりしちゃうんですが、熱い演奏になると突然すばらしく刺激的な音楽になる所がいいです。アドリブを聴くって、一種の自己鍛錬の成果を聴くようなものですからね、すごいものになったら感動しないはずがない、みたいな。僕がハードバップの録音で良いと思うものって、世間一般で良いと言われているものとちょっと違って、ケニー・ドリューの『アンダーカレント』とかこのアルバムとか、ぐつぐつと熱いものが好きみたいです。まあ、クリフォードの演奏を聴いてつまらないと思う人なんてそうそういないというだけの事かも知れませんが(^^;)。。


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『ドビュッシー、ラヴェル:弦楽四重奏曲 アルバン・ベルク四重奏団』

Debussy Ravel_StringQ_AlbanBergQ ドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲のカップリングCD、最後はアルバン・ベルク・カルテットの演奏です。今までの印象ではこれが一番いいと思っていたもんで、聴くのを最後にとっておいたんですが、本当にそうでした。しかもダントツの素晴らしさ。

 ラサールQカルミナQは素晴らしいんだけどなんとなく上品すぎるというかおとなしい、エベーヌQは元気があって勢いが凄いけどアンサンブルが美しくない気がしたんです。ところがアルバン・ベルクQはアンサンブルは美しいし演奏は勢いがある!!圧倒的じゃないか。というわけで、久々に聴いたんですが、最初の3分を聴いた時点で、ドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲はこの録音だけでいいと思ってしまいました(^^)。このCDの弦4本の縦線の揃い方、全員そろってのクレッシェンドのカーブの合い方、くんずほぐれつのバランス、本当に非の打ち所がないほどに素晴らしかったです。たぶん、解釈も統一して、納得いくまで入念にリハーサルして、録音でももっとよく出来るところはテイクを何回も録って、編集もミックスもスコアを見ながら徹底的にやったんじゃないかと。

 思う事は、制作に対する本気度というか入念さ。それはプレイヤーやアンサンブルだけでなく、録音スタッフなんかも含めてのことです。クラシックのCDってロックやポップスほど売れないじゃないですか。さらに大戦後は資本主義国家の愚民政策が功を奏して、そもそも文学やクラシックを理解できない人も理解しようとすらしない人も増えたし、教養ある人ですら普通にスターウォーズやアニメを見て哲学書もクラシックもまるで読まなくなったエコノミック・アニマルと化してしまったもんだから、絶滅危惧種となったように思うのです。それに合わせるように、クラシックのレーベルも出版社も、ついでに政治家も市民も金を優先して考えるようになっちゃったんですね、きっと。自分たちの国や自分たちの所属する集団の得だけしか考えない人が多いのでなかったら、なんで日本の総理大臣やアメリカの大統領にああいう人が選ばれるのか、理解できません。今の資本主義社会の影のボスは経済界なんですよね。

 例えば、エベーヌQみたいな世界で一位を取るような弦カルが「ファーストヴァイオリンばっかり大きいな」という事に気づかないはずがないです。ところが、セカンドのピチカートが完全にマスキングされちゃうぐらいバランスが悪くてもそれでオーケーにしてリリースしちゃっているわけです。音楽を優先して考えたらそんな選択はあり得ないけど、そうする理由は、予算とかスケジュールとか、音楽以外の理由じゃないでしょうか。こういう所がプロじゃないと思うんですよね。戦後に生まれた色んな有名弦カルで、ディレクターや録音スタッフを含めてどこまで実力差があるのか分かりませんが、やればこのCDに近づく演奏も録音もできると思うんですよ。録音なんだから失敗したらテイク2を録音して挿せばいいし、バランスも納得いくまでとればいいと思うんですよ。それをやったのがアルバン・ベルクQとEMIの録音チームで(このCDはもともとEMIリリースでした)、やらなかったのが例えばエベーヌQとERATOの録音チームだったと思います。この差って、演奏技術や解釈の差ではなくて、入念な準備や、良いものを作るという執念の違いじゃないでしょうか。

 今回、ドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲を聴いて、アルバン・ベルク四重奏団とEMIのチームのプロ意識の高さに感銘を受けました。考えてみれば、ベルクの2曲の弦楽四重奏曲でも、バルトークの6曲の弦楽四重奏曲でも、僕はまったく同じように、アルバン・ベルクQとEMIのチームに感動させられてきた気がします。アルバン・ベルクQとEMIのチームの録音は、音が太くてカッコいい反面ちょっとくらいところが難かも…と思わなくもないんですが、でも徹底的に完成までもっていくそのプロフェッショナリズムの前では、その程度の趣味嗜好なんてあまりに小さな問題。プロというのは専門分野で飯を食っている人の事や、技術力が高い人の事だけじゃなくて、自分の専門分野で妥協なしに事に当たるメンタリティの事でもあるのではないかと思わされました。これは素晴らしい、推薦です!


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『ドビュッシー、ラヴェル、フォーレ:弦楽四重奏曲 エベーヌ四重奏団』

Debussy Ravel Faure_StringQ_EbeneQ これもドビュッシー&ラヴェルの弦楽四重奏曲のカップリングCDですが、さらにフォーレの四重奏曲も演奏してました。ジャケットがモダンでカッコいいですが、それもそのはず演奏はエベーヌ四重奏団。エベーヌ四重奏団はフランスの弦カルで、クラシック以外にもジャズや他の音楽にも取り組んだりしています。このCDは2008年録音。ドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲に関してはカルミナQのところで感想を書いたので割愛。フォーレの四重奏曲は…実は、エラートからリリースされたフォーレのピアノ三重奏曲と弦楽四重奏曲のカップリングCDで、僕はエベーヌQのフォーレ弦楽四重奏曲を聴いてるんです。そちらも2008年録音で、レーベルも同じエラートというわけで、多分同じ録音なのでこれも割愛。

 おおーすげえ、演奏が躍動してる!持っていってほしい所でグワーッと来ます!ドビュッシーの4楽章なんて、他のQでここまで激しく演奏したものは聴いたことがないです、すげえ。ラヴェルの1楽章もとにかく一音一音にこれでもかと表情をつけていて、ペタッと演奏している所がないです。過剰と感じる人もいるかもしれないけど、大量にあるこの曲の演奏を、今までと同じ方向でより奇麗に演奏したところで、新たに録音する意義なんてほとんどないですもんね。90年代以降のクラシックって、こういう意識をもって大きく動かそうとするアンサンブルやオケが増えて、すごく好きです。

 ただ、4人のバランスが悪い…。とくに、ファースト・ヴァイオリンの音量が大きすぎて、対メロが対メロとして聴こえなかったり、和弦になったところの響きが美しく聴こえなかったりしてました。弦カルCDあるあるですが、フォーレの4楽章なんて、ファーストとチェロが7に対してセカンドとヴィオラは3ぐらいの音量なんじゃないでしょうか。ファーストが種戦のところはそれでもいいかもしれませんが、常にこんな感じなんですよ。これはアンサンブルさせる意識が弱い事と、録音がヘタクソなことのふたつなんでしょうね。。そんなわけで、4人がバトンタッチして弾くところとかはバランスの悪さが仇となってスコアの良さがかなり見えにくかったりして。こういうのを聴くと、地味に感じていたラサールQの演奏は、アンサンブルとして実に考え抜かれた演奏だったんだな、と思ったりして。。

 まあでも21世紀のクラシック録音だしプレイヤーもまだ若いので、「既成概念をぶっ壊してやる」ぐらいの気概を感じて気持ち良かったです。やっぱり90年代以降のクラシックのプレイヤーはマジでうまい、個人技に関してはレベルが実に他界と感じます。エベーヌ四重奏団は1999年の結成ですが、クロノス・カルテット以降、こういうアンサンブルって増えましたが、それが「売れたい」という軟弱なポップ嗜好やライト・クラシック方面に行くととんでもなくカッコ悪いけど、こういう実力があるグループが冴えた事をやると凄くカッコよく感じます。金持ちが聴く教養主義としてのクラシックなんてどんどんぶっ壊して、躍動するクラシックを奏でていって欲しいです。もしクラシックの人がそこを目指したら、ロックやジャズなんて足元にも及ばない事が出来るんですから(^^)。


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『ドビュッシー、ラヴェル:弦楽四重奏曲 ラサール弦楽四重奏団』

Debussy Ravel_StringQ_LaSalleQ これもドビュッシー&ラヴェルの弦楽四重奏曲のカップリングCDで、演奏はラサール弦楽四重奏団。リーダーはファーストのヴァルター・レヴィン、4人がジュリアード音楽院在学中に結成。弦カルはいちど結成すると家族以上の付き合いになるだろうから、仲がいいんでしょうね。ちなみに、チェリストだけは途中でジャック・カースティンからリー・ファイザーに交代。このCDは71年録音なので、交代前です。そうそう、全員アマティ(チェコの楽器メーカー)を使っているそうですが、スポンサーなのかな?ラサールQは現代の弦カルの規範となったグループで、アルバン・ベルクQもアルテミスQも彼らに師事したそうです。

 曲については、カルミナQのところで色々書いたので割愛。演奏は、カルミナQに続いて素晴らしい演奏と思いました。マジでうまいな、そもそも戦後の名だたる現代楽器使用の弦カルは単純にピッチが素晴らしすます。
 でもちょっとおとなしいかも。演奏もそうですけど、録音もね。そのへんはエスプレッシーヴォに出来なくてそうなったんじゃなくて、そもそもそういう演奏をしようと思っている気がします…そういう時代のカルテットなのでね(^^)。ラサールQは1946年結成なので現代といっていいんでしょうが、古風さが残っていると感じます。50~70年代というロックもジャズも厚かった時代の音楽を浴びるほど聴いた僕の世代はみんなそうだと思いますが、表現はちょっと過剰なぐらいの方が心に響くもんで、こういう上品さは物足りなく感じてしまう(^^;)。線的な対位法が凄まじいベルクやバルトークの四重奏曲と違って、ドビュッシーの四重奏曲もラヴェルの四重奏曲も和弦の色彩感覚をどれぐらい感動的に鳴らせるかが重要だと思うので、そこをもっと恐ろしく美しく鳴らして「おおっ!すげえ」と僕は感じたいのかも。
 というわけで、僕のドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲の名演&名録音の旅は続いてしまったのでした…こんな事をしていたから、いつまでも貧乏だったんだな(^^;)>。。


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『ドビュッシー、ラヴェル:弦楽四重奏曲 カルミナ弦楽四重奏団』

Debussy Ravel_StringQ_CarminaQ ドビュッシーラヴェルも、弦楽四重奏曲を1曲しか書いてません。言っても作曲の最難関と言われる編成ですし…と思ったら、ふたりとも若い頃に四重奏曲を書きあげてるし(^^;)。という事は、逆に「こんなのもうこりごりだ」と思ったのかな?この印象派ふたりの弦楽四重奏曲はよくカップリングされてCD化されてたもので、どちらも好きな僕は若い頃に色々と買いあさったものでした(^^;)。これは、カルミナ弦楽四重奏団の演奏です。

 ドビュッシーの弦楽四重奏曲が書かれたのは1893年で、『牧神の午後への前奏曲』が書かれた前年。というわけで、いよいよドビュッシーが印象派的な音楽になる雰囲気が曲に出ているな、みたいな。この曲は4楽章制ですが、曲ごとにキャラクターが明確。1楽章はソナタ構造に聴こえますが、テーマはフリジアンで印象派っぽい色彩感覚。2楽章はダッタン人の踊りみたいなリズムですし(^^)。3楽章や4楽章のトレモロは交響詩「海」っぽくも感じました。けっこう絵画的という意味でなるほど印象派の先駆的な作品に聴こえました…小学生並みの感想ですみません(^^;)>。

 ラヴェルの弦楽四重奏曲はフォーレに献呈されています。27歳の若書きだというのに、完成度が半端ない…。ラヴェルは印象派的な曲ばかり書いているわけじゃないんですが、僕が好きなのは『ダフニスとクロエ』あたりの、やっぱり印象派的なサウンドを持った曲なんですよね。でもって、弦カルみたいな編成だったら和弦の色彩感が必要になりそうな印象派的な曲より、もうちょっとカノン状な新古典的な作曲に挑戦するかと思いきや、その両方を満たしたアンサンブルを書いてしまったのが凄いと思いました。特に1楽章と2楽章が印象派的な色が強くて好きです。2楽章のピチカートの使い方なんて、ゲーム音楽で参考にしているのを何度か聴いたことがあります(PS2『アルゴスの戦士』の水っぽいステージとか?)。

 カルミナ弦楽四重奏団の演奏は素晴らしかったです!例えば、ハーゲンQとかだと「音が細い気がする」「和弦が美しくないのかも」「アーティキュレーションが合ってない気がする」とか、何となくしっくりこながったりするんですが、この演奏はビタッと来てました(^^)。すごい。ただ、音が味気ない気がして、音で感動できなかったのが少し残念。それって演奏じゃなく録音な気がするんですが、クラシックは録音ってすごく大事だと思うんですよね。みんな同じ曲を録音するわけだし、どこかで差をつけないと、みたいな。演奏だけでなくサウンドで「お、これは?!」と思わせてほしい、な~んて思っちゃったりして。こういう事を考えちゃうから他のアンサンブルでの演奏を聴きたくなって、クラシックのレコードレーベルの思うつぼにはまっていってしまったのでした(^^;)。


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『Jimi Hendrix / Hendrix in the West』

Jimi Hendrix Hendrix in the West ある時まで、ジミヘンのライブ盤の極めつけとまで言われた名盤です!ただこのレコード、色んなライブから曲を集めているからか、のちにジミヘンのライブがコンサートごとに編集して出されるようになってから見かけなくなってしまった。。でも、僕にとってのジミヘンのライブは、ワイタ島モンタレー・ポップも好きだったけどこっちの方がさらに上、愛聴していました(^^)。

 どのライブからの音源なのかは最後にまとめて書くとして、このアルバムの編集方針の抜群に優れている所をいくつか。
 まず、ジミヘンのギターの素晴らしいところを堪能できるよう、アプローチの違う曲を収録していること。アルバム冒頭「Johnny B.Goode」は、伝説のモンタレー・ポップでの「Killing Floor」と同系統のアプローチで、あのキレッキレの津軽三味線みたいなメロディ&バスの同時演奏を聴く事が来ます。これが熱い、メッチャすげえ!!僕的には、ジョニー・B・グッドの名演は、1位がキャロルのラスト・ライブ、2位がこのジミヘン、3位がチャック・ベリーのマーキュリー再録、4位がバック・トゥ・ザ・フューチャーです(^^)。
 「Blue Suede Shoes」はアレンジが冴えてましたが、これはジミヘンコードなんて呼ばれる♭9thの演奏の見本例。60年代のロックでテンションに踏み込んだのはフランク・ザッパキング・クリムゾンなど少数だったと思いますが、ここでビートルズストーンズの時代が終わった、という事だったんじゃないかと。
 「Little Wing」は、戦前ブルースというか19世紀のクラシック・ギターというか、ああいうギターのコンビネーション作曲が聴けます。
 「Voodoo Chile」と「Lover Man」は、もう言うまでもないですね(^^)。というわけで、色んなギターアプローチの曲が散らしてあるのがすごくよかったです!

 ふたつめに、音がムチャクチャいい!!ジミヘンのライブ録音って、モービルが入ったものはたぶん10公演ぐらいしかないと思うんですが、それらの公演から選ばれてるのでさすがに録音がいいです。スタジオ録音より音がいいと言っても過言ではないほど。そしてミックスも素晴らしいです。のちに大量にリリースされることになったジミヘンのライブ発掘音源って、音が悪いものがけっこうあったんです。比較しやすいのは、このアルバムと同じ音源が入っている70年8月31日のワイタ島のライブなんですが、このレコードは音がめっちゃくちゃいいし迫力もあります。でも、『Live Isle of Wight 70』は…これ以上はちょっと書けないな(^^;)。というわけで、『イン・ザ・ウエスト』は録音とミックスが素晴らしいです!

 最後に、「曲」としてまとまりのいいパフォーマンスに絞っているようで、これでジミヘンのライブを聴いていると僕がどうしても陥ってしまう「飽き」が来なかった事!ジミヘンのライブって、後年になればなるほど長いインプロヴィゼーションが挟まる事が多くて、これが苦手だったんですよね。それでも「Machine Gun」みたいに、どんどん盛り上がっていくとか、構成がしっかりしてれば燃えるんですが、ただペンタトニックを弾きまくってるだけだとマジで飽きる…。ジミヘンの音楽が退屈に感じるとしたら、大きな転調をしない事と、ペンタトニック一辺倒になりがちなところだと思うんですよね。でも、このライブ盤は曲をコンパクトにまとめた演奏だけを拾ってるようで、だれずに良かったです(^^)。

 色んなライブから拾った音源なので、いつもこのアルバムは整理して各ライブのCDを買い直そうと思ったりするんですが、いつも聴くと「これはジミヘンのライブの最高峰じゃなかろうか?!なんでこれを手放す必要があるんだ?」みたいに思えて、ずっと持っているのでした。とか言って、同じことをウインターランドを聴いてもフィルモアのジプシーズを聴いても思うんですけどね(^^)。思えば、このレコードを買ったのは中学生の時。もう35年以上も聴いてきていまだに好きなんですから、素晴らしいレコードに違いないと思います。

 そうそう、ダブりを避けたい人のために、このレコードのレコーディング日を記載しておきます。僕がこのアルバムを手放すためには、70.5.30のバークレーの「Johnny B.Goode」と「Blue Suede Shoes」、69.2.24のロイヤル・アルバート・ホールの「Little Wing」をゲットしない事には手放せないぞ…。

1969年2月24日Royal Albert Hall
 ・Little Wing
 ・Voodoo Child (Slight Return)

1969年5月24日San Diego Sports Arena
 ・Red House *『Stages』disc3とダブり

1970年5月30日Berkeley Community Theatre
 ・Johnny B.Goode (1st show)
 ・Lover Man (2nd show)
 ・Blue Suede Shoes (Afternoon Reharsal)

1970年8月31日the Isle of Wight Festival
 ・The Queen *『Live Isle of Wight 70』とダブり
 ・Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band


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『Jimi Hendrix / Live Isle of Wight '70』

Jimi Hendrix Live Isle of Wight 70 ジミ・ヘンドリックスが死の直前に行ったワイタ島でのライブ、僕が中高生の頃にはひとつ前の日記で紹介した『Isle of Wight』だけが出ていましたが、のちにこんなCDも出ました。曲は「Loverman」と「In from the Storm」がダブり…かと思いきや、『Isle of Wight』はコンサート2日目8/31の録音で、こちらは初日8/30の録音なので、同一演奏のダブりはなし。ついでに、僕のジミヘン熱に拍車をかけた「Machine Gun」が収録されてる!という事で、けっきょく買ってしまった20歳の頃の僕でした(^^)。20歳というとロックはほぼ卒業していた頃だと思うんですが、ジミヘンは別だったんだなあ(^^)。メンバーは、ジミヘン(vo, g)、ビリー・コックス(b)、ミッチ・ミッチェル(dr)。

 演奏は、ギターもドラムもベースも2日目と同じぐらい良いと感じました。「Voodoo Chile」と「Machine Gun」なんて名演じゃないでしょうか。
 でもこのアルバム、音が変なのです。エッジが立ってないというか音が汚いというか、ミックスが色々と雑…。色々あるんですが、ふたつあげると、特定の音だけ「ブワーン」を膨らむ事。もうひとつはリヴァーブにものすごく癖のあるマルチディレイをかけてること。
例えば1曲目「Message to Love」はキーがD♭なんですが、ベースがD♭を弾くとブワーンと膨らむんですよ。これはヘッドフォンで聴いても他のスピーカーで聴いてもそうなので、僕の家のオーディオのせいじゃなくてミックスそのものが原因だと思うんですよ。しかも、ジミヘンとビリー・コックスは楽器を半音下げでチューニングしているように聴こえるので、D♭はライヴを通してよく登場するんです、そのたびに「ブワーン」。ついでに、その辺の中低域に明らかな音溜まりがあって、音が団子になって聴きにくくなってます。こんなのライブではよくある事なんだから、ミキシング・エンジニアが共振周波数をカットしろよ、と思ってしまいます。そんな事すら出来ないエンジニアって、2流じゃなかろうか。

 一方の変なディレイは全曲にかかっていて、これもアルバム全体の音がすっきりしない原因になってるんじゃないかと。どういうマルチディレイがかかっているかは、「Machine Gun」の冒頭や「Red House」など、音が少ないところを聴くと分かりやすいです。こんな雑なディレイの使い方するなんてアマチュアかよと思ってしまいました。このせいで、ジミヘンがものすごい演奏をしている所でもギターの音が前に来ないうえ、要所でベースが「ボワーン」と鳴るので、とにかく聴きづらい…。要するに、ミックスがクソである事で演奏が台無しになっているCDなのでした。。

 ワイタ島の音源は、『Isle of Wight』にしてもこのアルバムにしても、ミックス次第では名盤になっていたかも知れないと思ってます。ジミヘンやバンドじゃなくて、スタッフのせいで質が落ちているというのが何とも残念…。ところで、ワイタ島のライブって、今回感想文を書いた2枚のアルバムの後にも出ましたよね?そっちはどういう音源でどういうミックスなんでしょう、気になる…。

(from 1970.8.31 the Isle of Wight Festival)
・Intro/God Save the Queen
・Message to Love
・Voodoo Child
・Lover Man
・Machine Gun
・Dolly Dagger
・Red House
・In from the Storm
・New Rising Sun


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『Jimi Hendrix / Isle of Wight』

Jimi Hendrix Isle of Wight ロック・ギターの神様ジミ・ヘンドリックスのライブ、伝説の始まりがモンタレーなら、伝説の終わりがこのワイタ島ライブです。ワイタ島でのライブは1970年の8/30と8/31の2回行われていて、このレコードは8/31のパフォーマンスの中から選ばれています。ジミヘンが死んだのは70年9月18日なので、これは死ぬ約2~3週前の演奏。最後のライブ・パフォーマンスじゃないかと。このレコード、死んだ翌71年にリリースされたので、リリース時は追悼盤みたいな意味合いもあったのかも知れません。メンバーは、ジミヘン(vo, g)、ビリー・コックス(b), ミッチ・ミッチェル(dr)。

 このレコード、中学生の頃にはじめて聴いた時はあんまり面白く感じませんでした。でもジミヘン狂だった友人のギタリスト(中学生にしてジミヘン最大の難曲「Killing Floor」を弾きこなしちゃうほどのジミヘン狂!)が「このレコードでジミヘンのライブに狂った」と言っていたので、僕に良さが分かってないんだな、と思ってました。
 で、久々に聴いて思ったのは、ギターが素晴らしいこと!これ、慎重に聴こえなくもないけど、見事な演奏じゃないか!あと、よく聴くとドラムも見事、ベースもズドンとボトムを支えていてかっこいい。というわけで、個人個人は素晴らしいのに、バンド全体の印象はなんだか迫力がないんです。もしかすると、ジミヘン狂の友人が絶賛したのはこのギターで、僕が退屈に思ったのは全体の印象なのかも。

 地味に感じた印象の原因はたぶん2つで、ひとつミックス、ひとつは選曲です。まずミックスですが、以降に出されたワイタ島ライブの音源より明らかにプロっぽいミックスで音はすごくいいんですが、問題はバランス。演奏中はオーディエンスマイクを全部オフ、それぞれの楽器はかなりオン、ドラムは小さめ。だから、それぞれの楽器の音は良い気がするし、演奏も個々で聴くと素晴らしいんだけど、バンド全体がグワッと鳴ってこないんです。「ステージが広くてモニター返しが悪くて、慎重に演奏してるのかな?」な~んて思ってしまうほど。これは楽器同士のバランスを間違えたミックスが悪いんじゃないだろうか。もっとドラムを出そうぜ、みたいな。
 もうひとつは、選曲が地味なこと。6曲しか入ってない短さもマイナスに感じたのかも知れません。でもこれは、死んだ翌年に出されたアルバムという所を考えると、意味が分かった気がしました。だって、6曲のうち3曲がスタジオ盤未収録曲ですから、リリース時にまだ知られていなかった曲をなるべく出そうという計らいだったんじゃないかと(のちに『The Cry of Love』なんかに収録されてリリースされた)。もし自分の好きなアーティストが死んで、その追悼ライブ盤が出て、その半分が未発表曲だったら、素晴らしい選曲と感じると思うんですよね。だから、このレコードの価値はリリースされた当時と今ではちょっと違うんだと思います。

 というわけで、ジミヘン最後のライブは、いつも売ろうと思って「最後に一回」みたいに聴くんですが、決して悪くないもんだから、ずっと売るのを踏みとどまっている状態(^^;)。でも、ジミヘンのライブ盤だと他にもっといいものがあるから、やっぱり手放そうかな…いや、このアルバムじゃないと「All Along the Watchtower」や「In From the storm」や「Midnight Lightning」や「Freedom」のトリオ演奏ライブは聴けないし、ジャケットがLPだとメッチャかっこいいんだよな…な~んて思って、またしても手放せそうにないのでした(^^;)。いいや、死ぬまで持ってよう。

(from 1970.8.31 the Isle of Wight Festival)
・Midnight Lightning
・Foxy Lady
・Lover Man
・Freedom
・All Along the Watchtower
・In from the Storm


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ドキュメンタリーフィルム『ジミ・ヘンドリックス / ライヴ・アット・モンタレー』

JimiHendrix_LiveAtMonterey_film.jpg 映像で見る1967年6月18日モンタレー・ポップでのジミヘンのパフォーマンス、僕はジミヘンのモンタレーはレコードより映像が先の体験でした。音盤と違って良い点はふたつ。ひとつはドキュメンタリーなのでこのコンサートの歴史的な位置づけとか、当時の様子とか、そういうところが細かく描かれていること。きっと、監督がいいんですね(^^)。そしてもうひとつは…動くジミヘンの脅威の演奏を見ることが出来る事です!

 ビートルズストーンズジャニス・ジョプリンも、ジミヘンのステージを楽しみに待っているのが映し出されていました。とくにジャニスはニコニコ楽しみにして、普通に観客席に座っているのがいい(^^)。ロック・ミュージシャンのうちでも「ジミヘンっていうとんでもないギタリストがいるらしいぞ」と評判になってたんでしょうね(^^)。
 また、ヘアスタイルやファッションといった、60年代当時の文化を感じられたのも良かったです。ミュージシャン以上に客のファッションがいいんですよ、みんな同じ格好をしている今より個性がある。ミュージシャンだけでなく、一般の人もサイケな服を着てたりするし。例のジミヘンがギターを燃やしてしまうシーンで、あぜんとした顔をしてそれを見つめてるお姉ちゃんがいるけど、服もヘアスタイルもマジでおしゃれ。建築や洋服のデザインって、昔の方が優れていて、どんどんショボくなってきてる気がしますね。それは音楽も一緒か。

 そして、動くジミヘン。モンタレーの1曲目は、あの超絶のカッティングが炸裂する「Killing Floor」ですが、中学生の時に初めて見たときは、もうこの曲だけでぶっ飛びました!これは津軽三味線だわ、みたいな(^^)。最後の「Wild Thing」の暴れっぷりも良かったなあ。あ、あと、ドラムのミッチ・ミッチェルがすげえと思った…次から次へと、はじめてみた中学の頃を思いだします…なつかしい、俺もついこの間まで中学生だったんだよなあ…。ジミヘンって右利き用のギターを左に構えて演奏するじゃないですか。だから、弾く手を下から入れて演奏するんですが、あれがカッコよくて真似したっけ。そうそう、友達と「ギターに火をつけた伝説のステージとかいうけど、なかなか火がつかないし、燃え始めても火がショボいよな」な~んて話して大笑いしたっけ。そういう会話が昨日の事のようです。

 思い出話ばかりになっちゃいましたが、ロック史上に残る伝説のライブ。ジミヘンのライブはウインターランドやフィルモアイーストなど素晴らしいものが色々ありますが、ここから伝説が始まったと思うと、やっぱりモンタレーも外せないですね(^^)。


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『Jimi Hendrix / Jimi Plays Monterey original motionpicture soundtrack』

JimiHendrix_Jimi Plays Monterey ロック伝説の公演!1967年6月18日、モンタレー・ポップ・フェスティバルでのジミヘンのライブ演奏です。ジミヘンがギターを燃やしたことで有名なステージがこれで、このライブがジミヘン伝説の始まり!これはLPですが、音源はフィルムと同じなんでしょうね(^^)。ドキュメンタリーフィルムとの違いは、このLPには「Can You See Me」が入ってること。そしてこの「Can You See Me」が、あのちょっとショボめのスタジオ録音とは大違いでものすごい勢い!いやーこれはカッコいい。。

 ジミヘンのライブって、モンタレーから始まった感があるじゃないですか。つまり、最初の時点で、死ぬ直前まで弾き続けた「Foxy Lady」「Purple Haze」「Rock Me Baby」というナンバーを演奏していて、しかもどれも完成形。演奏が完全にモノになっていて、ぶっ飛んでます!まあでも、プロのセッション・ミュージシャンとして活躍していた頃からとんでもない評判のプレイヤーだったそうなので、デビューと言ったってその時点で8年選手ぐらいのベテラン状態、このぐらいは朝飯前だったんでしょう。ソロ・デビュー前のバックバンド時代の録音を聴くと、これ以上にキレッキレだったりしますしね。それにしても、オープニングの「Killing Floor」のキレッキレのカッティングは人生で何度聴いてもものすごいっす。やっぱりブレイクする人は、ここ一番の大舞台でバシッと決めてるもんなんですね。。

 とはいえ、若い頃に聴いた印象だと、最初の「Killing Floor」はカッコいいけど、その後はそこまで持ち上げるほどのものと思わなかったんです。聴く前の前評判が高すぎた事もあったのかも知れませんが、途中でだれるんですよね。久々に聴いて、その理由が何となくわかりました。「Like a Rolling Stone」と「The Wind Cries Mary」が勢いを削いでる事と、ジミヘンの才能が勢い方面に全振りな事です。
 まず、ライブの流れをもたつかせている2曲カットして聴いたら…うわあ、すごい勢い、爆走じゃねえか、メッチャかっこいい!
 で、勢い方面に全振りの演奏ですが、いま聴くとこれはこれでいいと感じました。一本調子になってるし、デビューアルバムみたいな作曲センスや『Electric Ladyland』みたいなアーティストとしての才能は聴けないけど、これはレコードで聴く前提じゃなくて、フェスティバルの大トリでのパフォーマンスなんだから、細かい音楽のニュアンスや曲じゃなくて、男気を伝えてぶっ飛ばす、という以上の正解はないのかも。「Wile Thing」なんて、ほとんどノイズ・ミュージックですし(*´∀`*)。
 ロックの中で伝説に残っているステージのひとつ。好き嫌いはともかく、これを一度も聴かずに人生を終えちゃいけません!


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書籍『ブレイク詩集』 ウィリアム・ブレイク著、土居光和訳 平凡社

Blake Sishuu_Heibonsha ひとつ前の日記でブレイクの絵画の本の感想を書きましたが、ブレイクは詩人としての方が有名かも。この本は、ブレイクの詩集のうち、「無心の歌」「経験の歌」「天国と地獄との結婚」が収録されていました。どれもキリスト教的世界観が強い詩なので、ブレイクさん初体験の方は、絵画から入った方が受け入れやすいかも…って、僕がそうだったというだけですね(^^;)>。

 言葉そのものは、ランボーやマラルメのように難解なわけではなく、むしろ分かりやすいです。そして、その分かりやすい言葉で語られている事の真意は、ど直球で核心に迫ってるんじゃないかと感じました。人間にとって一番重要なものってなんなの、というものを真正面から問うて、かつブレイクさん自身の答えを書いてるのが、ブレイクさんの詩なんじゃないかと。全部で50篇ほどの詩からなる「無心の歌」と「経験の歌」は、たぶん別の詩集として読んではいけなくて、対になっているのだと思います。「無心の歌」は感じたものを言っていて、「経験の歌」は考えた結果にたどり着くものを言っているのでしょう。

そして、理解にはキリスト教への理解が必要と思いました。いや、キリスト教どころか、カバラなんかの霊的体験を扱った一神教世界全体への理解がないと、本当には理解できないのかも。分かりやすい例でいえば、「仔羊よ、誰がお前を創ったの」みたいな一節があるんですが、言葉通りの意味は分かりますが、実際に言おうとしている事はぜんぜん違う意味ですよね。で、もし仮にキリスト教での「仔羊」が象徴しているものを知らなかった場合、これはもう理解不能、みたいな。まあ、これは単純な例なのですが。
で、解題のヒントはヴィジョンなんじゃないかと。モーゼにしてもイエスにしてもムハンマドにしても、神や天使と出会って会話する霊的体験があるじゃないですか。今の日本だと、そんな事いったら「心療内科へ行け!」ってなもんでしょうが(゚∀゚*)、一神教世界ではそこってものすごく重要ですよね。ましてグノーシスやカバラなんかの密教系になったら、そこは重要どころか核心なのかも。この「ヴィジョン」というものを理解できてないと、ブレイクの詩は理解不能と思いました。対になっている「無心の歌」と「経験の歌」は、恐らく前者がその手の宗教体験を指摘していて、後者が科学時代に突入していた19世紀的な世界観から曲がってしまった宗教観を示したものと思います。で、両者が同時に理解出来た瞬間に体験できるのがヴィジョン。それを詩というよりも、散文か寓話のような形で指摘した詩集が「天国と地獄との結婚」なんじゃないかと。その終盤の一節を抜き出してみます。

悪魔は答えていった。「(中略)イエスは完全な徳をそなえた人であった。そして戒律によってではなく、衝動によって行為したのだ」と。悪魔がかく言った時、私は見た、天使が両手をさしのべて火焔を抱いたのを、そして、燃えつくされ、エライヂャーとして復活したのを。

ブレイクって、もしかすると本当にヴィジョン体験があった人かも知れなくて、それが何であるかを表現しようとした人だったのかも。そこを指摘しているという意味で、とても宗教的/哲学的な詩集と思いました。あ、そうそう、ちなみに、エライヂャーというのは、火の車に乗って昇天したと言われる預言者だそうです。

営業マンは営業だけ、建設業の人は建設だけみたいに、ひとつの専門だけに従事することの多い今の世界と違って、昔の西洋のアーティストは色々な事をやるのが珍しくありませんでした。ダ・ヴィンチもヴィヴァルディも、中世以降の西洋の文化人はみんな専門家ではなくリベラルアーツを目指していたように思います。ブレイクもそうで、銅版画家や詩人というだけの専門家ではなく、人間とか世界を全部ひっくるめて扱っていた人なんじゃないかと。19世紀の西ヨーロッパの思潮の上にある詩なので、今の日本に生きている僕には分かりにくい所もありましたが、それでもブレイクさんが伝えようとしている事は、読んで楽しかったとかつまらなかったとか、そういうレベルのものではなく、人間にとって普遍のテーマに切り込んだものなんじゃないか。若い頃に読んだ時はファンタジーかと思いましたが、宗教学やなんかをちょっと通過した後に読むと見え方が全然変わって、なんとも深い詩集でした(^^)。


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書籍『ウィリアム・ブレイクの芸術』 アンソニー・ブラント著、岡崎康一訳

WilliamBrake no Geijyutu 以前に映画「レッド・ドラゴン」の感想を書いた事がありましたが、あの絵を描いたのがイギリスの詩人/画家/銅版画家のウィリアム・ブレイクです。ブレイクはエキセントリックとも取れそうな絵をかく人で、宗教的な内容の絵が多いです。

 ブレイクの絵画って、「レッド・ドラゴン」に限らず、ニュートンの絵にしても、ダンテの神曲の挿絵にしても、すごく意味ありげ。この本は、筆者なりにその意味ありげな絵の解題をしているのですが、「なるほど」と思わされるものがあって、ブレイクの絵の意味を考える大きなヒントになりました。ただしその解題はなかなか高度で、宗教とか哲学とか象徴という説明をされると眉唾に感じてしまう人には、この解題は辛いかも。でも宗教とか神秘とかいう所に変な嫌悪感を持たずに読めば、本当に素晴らしいと思います。

WillamBlake_Newton.jpg で、その解題の核心部分をまとめておくと…この本では、ブレイクの絵画の背景にあるものを「聖なるもの」とし、その説明に結構なページを費やしてました。ここはちょっと僕では説明しきれないんですが、絵画と照らし合わせてみながらだと分かりやすかったです。簡単にいうと、一撃ですべてを伝えてしまうもの、みたいな。何言っているか分からないかも知れませんが、ヴィジョンの体験ってそういうものらしいじゃないですか。この世界の事も、自分の事も、命についても、一瞬ですべてわかってしまうような体験、みたいな。で、ブレイクの絵を見て「ああ、これだ…」みたいな体験があるという事もあれば、その体験自体を表現したものもある、みたいな。レッド・ドラゴンでいえば、覚醒する瞬間の筋骨隆々とした半神半獣のドラゴンを見て、たとえば生命にまつわる聖なるものをすべて理解できてしまったような体験をする…やっぱり僕では上手く説明できなかった(^^;)。。まあでも、素晴らしい絵画や音楽の背景にあるものって、常に同じだよな、芸術ってこうありたいよな…と思わされました。

実際の図版も60点を超えていて、ちょっとしたブレイクの画集としても楽しめます…残念ながらモノクロですが(^^;)。ブレイクの絵画に関する本は何冊か読みましたが、これは分かりやすい上に的を射ていると思えた素晴らしい本でした。ブレイクの絵に魅せられた事のある方は、ぜひ一読を!


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『Central Asia | The master of the Dotar』

Central Asia master of the Dotar ジュネーヴ民族博物館のシリーズの中の1枚、中央アジアのドタールの演奏集です。日本盤は「〈中央アジア〉ドタールの名手たち」。国で言えば、ウズベキスタンタジキスタンイラントルクメニスタンあたりだそうです。このCDは素晴らしかったです!

 ドタールは、中央アジアから東アジアにかけてたくさんある細い竿の撥弦楽器のひとつで、2弦のもの。「ド(2つ)タール」という意味なんだそうです。これらの楽器はタンブールとかセタール(3弦)、チャハルタール(4弦)なんて言われるみたいで、2弦のものはドタールまたはドンブラというそうです。ドタールはガットまたは絹の弦を使うのに対して、タンブールやセタールは金属弦を使うそうです。また、ドタールとドンブラは指で演奏して、タンブールやセタールはプレクトラム(ピック)を使って演奏するそうです。ああ、この説明だけでも、ガット弦で指奏のドタールは僕の好きなタイプ(^^)。。あ、あと、ドタールはリズミックな演奏となるので、ほとんどの場合で打楽器と一緒には演奏されないんだそうです。

 このCDに入っていた演奏は、インストが6割、弾き語りが4割ぐらい。地域別に4つに分かれていて、地域でけっこう違うのが面白かったです。地域別に見ると…

 ウズベキスタンのブハラのドタール(2曲)。これは都会の古典音楽らしくて、たしかにちょっと古風な感じ。といっても、普通にフラメンコギターレベルの演奏ですげえ…というか、かなりフラメンコっぽかったです。。ラスゲアードみたいな奏法がすでにあったんですね。。

 タジキスタンのパミールのドタール(4曲)。僕にはウズベキスタンのものとどこが違うのか分からなかった(^^;)。インスト曲はほとんどフラメンコ。この中の1曲はフレットつきドタールなんてのを弾いていて、これは完全にフラメンコ(^^)。でもこの地域の音楽で最高峰と言われている音楽形式はハーフェズと言われる吟遊詩人の弾き語りだそうで、なるほどこれだけ演奏も曲の形式も変わるんですね。
 
 イランのホラーサン東部からアフガニスタンにかけてのペルシアのドタール(4曲)。お、これは楽器の音がぜんぜん違う、復弦じゃないかい?これはメッチャかっこいい!!やっぱり中央~西アジアの音楽最強はイランだな。それにしても、これは馬鹿テクじゃないかい?4曲中3曲がアブドッラー・サルワル・アハマディという人の演奏でしたが、これはすげえ。。残る1曲の演奏も凄かった。

 イランのホラーサン西部のトルコのドタール(2曲)。これもやっぱり復弦。いやあ、トルコのドタールはどれを聴いても「すげえ、メチャクチャいい」という言葉しか出ないっす(^^;)。なんというんでしょうか、どれもこれも楽器と演奏者が一体となってるというか、もう考えるより前に音が出るぐらいのレベルなんでしょうね。ちなみに、これはヴォーカルも素晴らしかった。。

 イランのホラーサン西部からトルクメニスタンにかけてのトルクメンのドタール(6曲)。この地域の音楽で有名なのは、バフシと呼ばれる吟遊詩人の演奏だそうで、このCDにはそれが入ってました。これも素晴らしいんですが、楽器よりも歌に力が入ってる感じかな?

 いやあ、中央アジアから西アジアにかけての音楽はとにかくすごいです。つまらないと思ったものを聴いたためしがないです。撥弦楽器の演奏にかけては世界最強クラス、これは一生手放さない殿堂入りCDに決定です…って、なんでこんなすごいCDを20年ぐらい聴いてなかったんだろう、僕は(^^;)>。。


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『トルクメニスタン:バフシの音楽 Turkmenistan: La musique des bakhshy』

Turkmenistan Bafusi no Ongaku ウズベキスタンの南西にしてアフガニスタンの北東、カスピ海の東端に面した国・トルクメニスタンの音楽のCDです。ニワトリマークでおなじみ、ジュネーブ民族音楽博物館のレーベルVDEのCDで、1988~90年の録音でした。音楽専従者の演奏する音楽があるトルコやイランの音楽のレベルの高さは尋常じゃないですが、トルクメニスタンの音楽はトルコイランの音楽の中間のようで、レベルもやっぱり段違いに高かった!!いやあ、これはすげえわ。。
 
 まず、タイトルになってる「バフシ Bakhshy」とは何かというと、歌手という意味が一番強くて、音楽家、語り部、な~んて意味になる事もあるんだそうです。昔はこれにシャーマン的な意味も入っていたとの事で、つまり音楽自体がシャーマニズム的な意味合いを持っていた時代もあったという事なのかな?

 トルクメンで構成されたトルクメニスタンの音楽は、ほとんどがヴォーカル・ミュージックなんだそうです。しかもアラビア色が強い音楽なのに打楽器がいないのも特徴。こう聴くと、地域的にも遠くないモンゴルのオルティン・ドーみたいな声優位の音楽を想像しちゃうじゃないですか。ところがどっこい、イランやトルコなみに楽器の演奏が超絶にうまいんですよ。それは伴奏なんていうレベルじゃなくて、器楽独奏として聴いても超絶レベル。最低10年の修行と100曲をマスターしないとバフシとして認められないそうで、それだけのものあありました。クラシックやモダン・ジャズを聴きなれた人ですら「うおお、これはすげえっ!」て思っちゃうレベルじゃないかと。だいたい1曲目からしてインストでしたし。

Turkmenistan_photo Jigoku no Mon そして、その器楽部分。メインに聴こえるのは2弦の細竿の撥弦楽器ドゥタール(CDのジャケットに写ってる楽器)。これにギジャク(膝の上に立てて演奏するフィドル族の楽器)が加わるものが多く、曲によってはガルギー・チュイデュク(長い縦笛)、ディッリ・チュイデュク(小型のリード笛)、コプズ(口琴)が加わるものもありました。1曲目のドゥタールの演奏なんて、どう聴いたってダストガーかマカームを使った音楽にしか聴こえないもので、これはマジで高度な器楽。すげえ。
 収録曲。トルクメニンに伝わる伝統曲のオンパレードみたいで、作者不詳とか、トルクメンで有名な詩人マフトゥムクリ・フラギ作の愛の歌などなど。このCDには19曲が収録されていましたが、このCDを聴けば本当にトククメンの伝統曲をけっこう知る事が出来るんじゃないかと思いました。

 いやあ、南アジア~中央アジア~西アジアにかけての音楽専従者が演奏する音楽はどれも本当にすごいです。西洋音楽がどうしてもスコア重視になりがちなのに対して、もっと身体性が強いというか、楽器と体が一体になってる感じ。素晴らしい達人技の数々でした!


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『遊牧の詩 中央アジア・ウズベクの音楽』

Yuuboku no SI_ChuuouAsia Uzubeku no Ongaku カスピ海の西側のコーカサス山脈のあたりもゴチャゴチャして分かりにくいですが、カスピ海東側の中央アジアもなかなかゴチャゴチャで、地理に弱い僕は大混乱(^^;)。イラン~カスピ海を縦ラインと考えると、その東端に隣接した国が、南からパキスタン、アフガニスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタンという順です。ウズベキスタンと中国の関係を見ると、間にキルギス(ウズベク北東)とタジキスタン(ウズベク南東)が挟まってる感じ。というわけで、四方をすべて別の国に囲まれたウズベクの音楽は、色んな音楽のチャンポンでした。

 ウズベキスタンは、ウズベク人が8割で、ほとんどがイスラム教徒、頭にターバンを巻いていて、顔つきは中国系ではなくトルコイランみたいな西アジア系。こうなると、カザフスタンやトルクメニスタンみたいな西アジアの色が強い音楽家と思いきや、最初に入っていた5曲は、なんと中国の雑技団みたい!中国と接してないのに、なんでキルギスを飛び越して中国なんだろう、解せぬ。遊牧民だから、モンゴルやカザフを爆走して、そういう音楽を持ち帰るのかなあ。。6曲目のタール伴奏の弾き語りになって、ようやくマカームみたいな西アジアの音楽が登場…かと思いきや、歌はやっぱり中国っぽかったです。7曲目のないの演奏になって、ようやく西アジアの音楽っぽくなってきました。あとは安定した西アジアのマカーム。しかも、カザフやキルギスみたいな東アジアの音楽とのフュージョンじゃなくて、本格的なマカームでした。メッチャうまいし。
Uzubekisutan_photo.jpeg 個人的には、10曲目のルバッブ(長棹の撥弦楽器)と11曲目のスルナイ(ダブルリード楽器)の独奏が好き。クレジットには独奏と書いてありしたが、どちらもタブラの伴奏がついてました。でも、どちらも本当はもっと長い演奏が普通なのに、短く演奏してるような気もしました。だって、こういう曲が2~3分で終わるとは思えないし(^^;)。

 ウズベクは基本的にアラビア文化圏の音楽、でも一部になぜか中国音楽が入り込んでるのかも、な~んて思いました。このCDは、中国影響の音楽をやる舞踊団の演奏、後半がウズベクにある色んな楽器を、タブラ伴奏でひと通り聴かせるみたいな内容だったので、これがそのままウズベクの音楽ではない気がします。でも、どの楽器もみんな演奏がうまい!やっぱり、アラビア系の文化なんですね、きっと。


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『タジクの音楽』

Tajik no Ongaku 中央アジアはアフガニスタンとかカザフスタンとか「○○スタン」という国名が多いですが、あれは「○○人の国」という意味だそうです。ウズベクの人たちの国がウズベキスタン、みたいな感じ。このCDはウズベキスタン、キルギス、アフガニスタン、中国などに囲まれた国、タジキスタンの音楽です。正確に言うと、タジク人の音楽という事なのかな?タジキスタンにはタジク人、ロシア人、ウズベク人などが住んでいて、タジク人はイラン人に比較的近い民族なんだそうです。標高が高い内陸国で国土の大半がパミール高原、、ソ連から独立した国で、麻薬の押収量は世界3位…ヤバそうな国ですね(^^;)。。

 おおっ!むっちゃエキゾチックでカッコよすぎる!この音楽は何だ…イラン音楽とアフガンルバーブと南アジア音楽とロシア方面のカンテレ系の音楽と少しだけ中国音楽と…なんかいろんな音楽がチャンポンになってました。ややアラブ音楽優勢、でも音楽のノリがちょっと中国っぽかったりカラコルムの音楽っぽかったりして、シンクレティズムが進んでる感じ。素朴な音楽が多かったですが、みんな演奏がべらぼうにうまいもんで、洗練されて聴こえました。

ChuuouAsia_map.jpeg 前半は器楽、後半は歌。都市部の音楽はイランのダストガー音楽がすこしシンプルになっていました。田舎の音楽(山間部?)はいろんな音楽がちゃんぽんした民謡、みたいな状態なのかな?
 器楽やフォーマルな音楽はそれぞれベースになっている音楽があるように聴こえて、あるものはアフガン・ルバーブがベース、あるものはルーミーの音楽がベース、あるものはダストガー、次は南アジア…みたいな。でも、それがそこにいろんな要素が溶け込んで、独自の音楽になっているように感じました。
 一方、歌ものはもしかしたらプロ演奏家が人に聴かせる大衆歌謡なのかも。西洋の軽音楽にまったく影響されていない大衆歌謡のなんと素晴らしい事よ。。

 色々な音楽が混ざって独自の音楽が生まれていて、あまりの素晴らしさに聞き惚れてしまいました(^^)。今日はこのCDを一日中何度もリピートして聴いていました。これだから民族音楽はやめられない、似たような音楽を大量に聴くより、体験したことのない素晴らしい音楽に出会った時の圧倒される感覚は音楽を聴いていて最大の喜びと感じます。録音は日本のテイクワン・スタジオ、とんでもなく高音質。これは病みつきになる、超おすすめ!!


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『Cristina y Hugo / Padre Inca』

Cristina y Hugo Padre Inca クリスティーナとウーゴ、1974年のアルバムです。これが何枚目のアルバムか分からないんですが、仮に1年1枚ペースでリリースしてたとしたら5枚目ぐらいかな?僕的なクリスティーナとウーゴのベストはこれ!

 音楽もそうですが、ジャケット写真を見ても相当にフォルクローレを意識しているように見えます。しかもアルゼンチンの洗練されたモダン・フォルクローレではなく、かなりアンデスやインディオ系のプリミティブなフォルクローレ。どうも、クリスティーナとウーゴ共通のフォルクローレのお師匠さんが、音楽だけでなく生き方としてのネイティブ・アメリカンのあり方を指導していたらしいです。そういえば昔、『野生の実践』や『森の生活』や、それこそネイティブ・アメリカンの言い伝えを残した『ネイティブ・アメリカン 聖なる言葉』なんて本を読んだ事がありますが、「文明を持ちこんで自然を破壊して回る白人文化ではなく、自然と共存し自然の中のひとりとして生きるのだ」的なことが書いてありました。まさにその通りと思うんですが、いざそれを実践するとなるとなかなか大変。でも、クリスティーナとウーゴのおしどり夫婦は、音楽やって得たお金で田舎に家と畑と牛を買って、自給自足みたいな生活を目指したんだそうです。偉い、すばらしい…これはもう音楽だけの問題じゃないですね、生き方として反文明主義というかナチュラリストというか。曲タイトルも「EL CONDOR PASA」だけでなく「PADRE INCA」など、インカとかその思想とかを伝えるものがけっこう多かったです。

 ヴォーカル・デュオなのにプリミティブなインスト曲まで入れてあったりして、思想的なものまで音にあらわれているよう。レコード会社の作った企画ものっぽかったデビュー作とは違ってふたりの主張がビリビリと伝わってくるようなアルバムでした。ボブ・マーリーもメルセデス・ソーサもクリスティーナとウーゴもそうですが、中南米の主張のはっきりした歌って、侵略者だった白人に反抗する事をきっかけに、何が正しいかというしっかりとした見解に辿りついているものが多いと感じます。これは大推薦、素晴らしい音楽と、音を通して表現されて思想と感じました!!でもこのレコードも高かったなあ(^^;)。

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『Cristina y Hugo / Cosquin Incaico』

Cristina y Hugo_Cosquin Incaico 食わず嫌いはいけないと思いつつ、まったく期待せずにサラッと聞いて終わらせるつもりだったアルゼンチン・フォルクローレのクリスティーナとウーゴのベスト盤が素晴らしかったもんだから、きちんとアルバムも聴いてみたいな、と思って買った1枚でした。けっこう高かったよ(^^;)。これはデビューアルバム、1970年発表です…って、勝手に60年代初頭ぐらいのグループだと思ってたんですが、70年デビューなのか?!まあでもサルサやマンボボッサタンゴみたいなメジャーな音楽以外の中南米音楽が日本に伝わったのって、それぐらいの時代だったみたいだし、そう考えるとつじつまは合います。僕が幼児だった頃はたしかにフォルクローレがブームで、アンデス文化を扱ったアニメとかやってたしね。主題歌が「コンドルは飛んでいく」にそっくりだったアニメ、なんてタイトルだったかなあ。けっこう面白くて毎週見てたんですよね。

 お?おお?!曲タイトルのうしろに曲種が書いてあるぞ?!カンシオン、カルナヴァリート、バーラータ…これって、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの曲にこんな表記がしてあったけど、クリスティーナとウーゴって、フォルクローレのグループじゃないのか?曲によってはストリングス伴奏だったりするし。。マカロニ・ウエスタンの主題歌みたいな曲まであるぞ。いや、チャランゴやギター伴奏のアンデス系フォルクローレみたいな曲もやってるな。もしかすると美空ひばりみたいなもんで、演歌でもポップスでも民謡でもなんでもやっちゃうプロのユニットだったのかな?

 どうもこのデュオ、アルゼンチン・フォルクローレの母と言われているマルガリータ・パラシオスという人のグループで知り合ってデュオを結成して、フォルクローレ・コンテストで優勝してデビューしたみたいです。クリスティーナは音大に行ってたらしい…なるほどうまいわけだ、アマチュアとは思えないもんな。というわけで、本人たちはフォルクローレを愛してるしそれをやりたいと思ってるんだけど、レコードデビューはレコード産業界からの売り出しで、それでこういう色んな曲や編成やアレンジでやる事になったんじゃないかと。地元の民謡の達人で、テレビ局主催の民謡大会で優勝してプロ演歌歌手になった人みたいなルートですね。最初に聴いたベスト盤に比べると、新人歌手がレコード会社主導の企画にはめ込まれて歌わされた、みたいな印象が強かったかな?でも、フォルクローレさえ期待しなければ、バラエティに富んでいた頃の60年代の日本の歌謡音楽を聴いているようでもあって、楽しいアルバムでした(^^)。
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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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