
カンテレ奏者リトヴァ・コイスティネン(ジャケット裏に写ってる写真を見ると、ものすごく品のありそうな女性です^^)による、
カンテレの曲を伝承曲から現代の新作まで幅広く取り上げたCDです。レーベルは、
フィンランドの音楽ばかりを紹介している「FINLANDIA」。このレーベルってフィンランド政府の援助があるのか、日本盤がけっこう出てます。日本盤のタイトルは「白夜の響き~神秘の楽器カンテレ」。そして…
これは鳥肌もの、なんと美しい音楽か!! カンテレは、ツィター属(琴みたいなやつ)のフィンランドの民族楽器です。CDで聴く限りではスティール弦が張られていて、ギターみたいにフレットを押さえて演奏するのではなく、ハープみたいにすべてのノートに対応した弦が張ってあります。これを指で演奏するそうなのですが、
音がものすごい美しい!両の指を使えるので、ピアノ並みにたくさんの音を同時に使える!こんなすごい楽器がメジャーじゃないって、フィンランドが政治的に風下に立った国だとか、多弦楽器の宿命でプロレベルの演奏をできる人が極端に少ないとか、なんか事情があるのかも。音と音楽だけでいえば驚異の楽器でした。

肝心の音楽は、このCDに入ってる曲は、いかにも民族音楽的な特殊な音階が使われる事も少なく、ちょっともの悲しげなものが多かったです。フィンランドに限らず、北欧の民族音楽って、東欧のものよりも洗練されてる感じがするんですよね。西欧より遠いはずなのに不思議。これが…なんというんでしょうか、
シベリウスの音楽なんかもそうですが、何が違うかと言われるとよく分からないんだけど、独特の透明感を醸し出していて、湖だらけのフィンランドの音楽に妙にマッチして聴こえました。厳しい冬の世界ではなくて、ピリッと寒い湖や森の中に妖精が飛び交ってるような。不協和音どころか不完全協和音すら避けるのは、この民族音楽や民族楽器の背景にあるものが、美しさを念頭に置いてるからなのかも。
修道院や教会関係の音楽でも、近くのバルト3国やウクライナに残っている正教会系の重奏な感じはなくてどこか暖かさを感じます。また、舞曲ですら跳ね飛ぶ楽しさより独特の美しさが際立つ感じ。そして、フィンランド民謡の研究は、フィンランドの多くの作曲家や民謡研究家が発掘してコレクションして来たそうで、残されたそういう曲もいくつか演奏していたのですが、これもまた素晴らしい。
今って、プロのミュージシャンが一般の人のために書くプロ曲が多いじゃないですか。でも、民謡ってそういうものじゃなくって、普通に過ごしてる人が、生活の余暇の中で、自分たちの楽しみやお祭りやダンスのために作ったものが多くて、「こうすれば他の人が歓ぶんじゃないか」より「こうした方が自分は好きだ」と、あくまで自分の美感を優先させている感じで、音に嘘がないというか、音に変な妥協を感じません。そこが本当に素晴らしいと感じるんですよね。しかもフィンランドのカンテレの場合、これがプロ顔負けの超高度な楽器なので、そのへんの英米ポップスでは足元にも及ばないほど曲も演奏も高度でした。これはゾッとするほど美しく、演奏も見事な音楽でした。う~ん素晴らしい。。
スポンサーサイト