新内節の大家・
岡本文弥さんのオリジナル作品集第3巻です!
口語体に節をつけて怪談を語るものなど、変わり種作品集でした。いやー本当のクリエイターというのは道なき道を切り開いていくもんですね。なるほど、保守派が嫌いな僕が岡本さんの新内にビビッと来たのは、ちゃんと理由があったのかも。
「
耳なし芳一」と「
むじな」。どちらも有名な怪談なので、話の筋は聞く前から知っていました。「むじな」は小泉八雲が民間伝承を書き残したのっぺらぼうの話で、
「むじな」の意味は穴熊の事。地域によってはタヌキやハクビシンもそう呼ぶそうです。面白かったのは、口語体である事、それに節をつけて歌っている事、そして三味線と浄瑠璃の絡みの楽曲構成です。新内は軽くサラッと弾く印象があるのですが、これはガッツリと構成が考えられてました。「耳なし芳一」、途中までは浄瑠璃的なルバートや語りを挟み込んで進むんですが、終盤で三味線がリズムを出して同じパターンを繰り返して、最後に三味線ソロ。そしてエンディングへ。これは琵琶を参考にしたのかもしれません。でもこれを聴くなら三味線より本家の琵琶の方が迫力があるかも。
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河童の道行」。浅草の裏小路で、河童の河太郎が道行きにミス河童だったおかわと出会します。しかしミス河童はB29による東京大空襲で見るも無残な姿に。今ではアメリカへの反抗心をさらりと捨てて、今ではみんなアメリカさまと…。
新内節の軽さを逆用して冗談のようにお茶を濁していますが、作品として残す事で、実際にアメリカが日本にしたことを後世に伝えようとしているのかも。どう感じるかは人それぞれでしょうが、当時に生きた人のひとりがこのような感想を持っている事は、伝えられてよいのではないかと思いました。
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たぬき」。原作は舞踏家の松賀藤雄さん。妻と子を亡くした老人が山寺に住んでいます。ここに、寒さから家に入ってきた老狸が入ってきて、ふたりで酒を飲んで、狸は老人の死んだせがれに化けてあげて、ふたりしてほろ酔い気分。平和の里は夢の中で、月が輝いて…。
幻想的で痺れました。、しかも幸せな感じですごくよかったです!余韻が素晴らしいです。
人生の終盤というもの悲しさの中に、死んだ息子と再会して酒を飲み、外は平和に月が照り…この対比が、「もうすぐ死ぬけど、じゅうぶん幸せな人生だったよな」と思わせてくれる感じでした。
「耳なし芳一」の楽曲構成と、「たぬき」の幻想的な世界がすごく良かったです。いずれ新内節としても浄瑠璃としてもかなりの変わり種と思いますが、実に練られた見事な作品と思いました。なんで岡本文弥さんが大家といわれたのか分かるような気がします。今回、久々に聴いたらハマってしまって2度聴きましたが、1度目より2度目の方がより素晴らしく感じたのは、繰り返しの視聴に耐える完成度の作品なんでしょうね。すばらしかったです!
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