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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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書籍『ビバップから学ぶジャズ・ギター』 堀川大介

Bibop kara manabu JazzGuitar_HorikawaDaisuke ジャズギターのメソッド本です。僕の趣味のひとつはギターの練習、これが楽しいんですよ(^^)。でも、アドリブがなかなか難しいっす。ギターのメソッド本は、クラシックでもジャズでもフラメンコでも古本で見かけるたびに何でもかんでも買ってきて弾きまくってるんですが、この本はなかなか良かったのでご紹介!

 この本は3章に分かれていて、1章が簡単な楽理の解説、2章がコード進行別のフレージング例、3章が曲の演奏でした。
 1章で簡単に楽理を解説…といっても、これはおさらいみたいなもの。第1章の最後はアプローチ・ノートという考え方と、ビバップ・スケールまでの説明でした。
 2章が素晴らしい!1章まではジャズ理論を学んでいればだいたい行けると思うんですが、実際にそれをギターで演奏するとなるとなかなか大変。2章は、Ⅱm7、Ⅴ7、ツーファイブ、マイナーツーファイブ、ターンアラウンド、それぞれのフレージング例が書いてありました。こういうのって、何冊やっても為になるので、あるだけやった方が良いと思います。弾いていて楽しいですしね(^^)。
 3章は実際のビバップの名曲を使っての演奏練習。ただし、すべて単旋律なので、そのまま弾くだけだと、僕の場合はギターを弾いてる気がしないです。でも、バンドでギターを弾くのが前提になってる人はこれでもいいのかな。パット・マルティーノとかフレディ・グリーンみたいな人が好きな人はいいのか…。

 この本、説明がとってもうまくて分かりやすかったです。それでも、この本が分からない、むずかしい、弾けないという人もそれなりにいるんじゃないかと。僕的に思ったのは、第1章はダイアトニック・スケール・コードぐらいは頭に入ってるのが大前提。第2章は、意味は分かるけど弾けないという人の場合、指板上での実音が全部頭に入ってる事、6・5・4・3・2・1弦それぞれをルートとしてメジャーコード、マイナーコード、ハーフディミニッシュ、そしてそれぞれのコードフォーム上での1~7度すべての音程の位置が頭に入ってるぐらいまでは大前提じゃないかと。あ、あと、いちおうTAB譜もついてましたが、この程度の楽譜ぐらいは読めるようになっておかないと、音楽やるにはつらいかも知れないです。楽譜を読む練習が先という事ですね。第3章は、バンドでやるならいいけど、一人でギターをやるなり本当のギター音楽を演奏したいなら単旋律では話にならないので、コードトーンと組み合わせて演奏した方が良いかも知れません。僕の場合はそうしたら、なかなか楽しかったです。

 著者の堀川さんという方、僕は知らない方でしたが、教えるのがとてもうまいと思いました。著名ギタリストの書いたジャズギター入門書よりぜんぜん分かりやすくて実践的。ギタリストとしての知名度と、教えるのがうまいかどうかは別問題なんですね。いい本でした!


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『Biréli Lagrène / Gipsy Project』

Bireli Lagrene_Gipsy Project ビレリ・ラグレーンさんが2001年に発表したアルバムです。ついこの間デビューしたと思っていた14歳の天才少年が、このアルバムの頃にはもう35歳。フランスでジプシースイングを演奏していた少年は世界進出し、アメリカのコンテンポラリージャズに色目を使ったりセッションミュージシャンとしての仕事をしたりしながら、ついに原点回帰!アルバムの1/3がジャンゴ・ラインハルトの曲で、他もコール・ポーターやガーシュウィンなどの古い曲が並んでいました。

 音楽って、聴いているだけでも、それまでにあった音楽を前提にして意識が進んでいくものだと思っています。色んなものを聴いて、その体験を踏み台にして先に進んでいく、みたいな。もしそうやって自分の音楽意識が進んでいった場合、音楽はどこかに同時代性を持っていないとダメなのかも知れません。仮に昔の曲を演奏するにしても、どこかに「いま」を感じられなかったら、もう自分の中で音楽として鳴ってくれない、みたいな。
 この音楽は、どうやって聴いても40~50年代あたりのジプシースイングそのままに聴こえます。古いスタイルそのままでやってるから、現在リアルにサウンドしている音楽とは感じられず、昔の音楽を紹介するショーのよう。不思議な事に、100年ちかく前のドビュッシーやバルトークの音楽を聴いてもそう感じなかったりするのですが、それは何故だろう…100年前かどうかじゃなくて、その音楽が今の思潮と同じパラダイムにあるか、という事かも。あとは演奏自体が「いま・ここ」のものとしてなってくれているかどうか、とか?そういう意味で言うと、古楽だって「いま・ここ」のものとして聴けるものがいっぱいあるしなあ。

 このアルバム、若い頃のラグレーンさんよりもプレイが洗練されていて、聴きやすいし完璧な演奏だと思いました。ジャンゴ・ラインハルトの曲も、ジャンゴ・ラインハルト本人より明らかにうまいし。でも、ジャンゴとこのアルバムでのラグレーンさんのどっちを取るかと言ったら、僕ならジャンゴです。演奏されていた時点で、何らかの現代性を持っていたものを聴きたいんでしょうね、きっと。このアルバム、ジプシースイングってどういうものかを勉強したいなら素晴らしい資料かも知れませんが、音楽としてはあまり楽しめませんでした。クソうまいですけどね。。


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『Biréli Lagrène / Standards』

Bireli Lagrene Standards 僕がビレリ・ラグレーンにハマったきっかけは、アコーディオンのリシャール・ガリアーノのCDでした。ガットギターでものすごいアドリブを取っていて、マジでぶっ飛んだ!!だから、エレキギターを持ってコンテンポラリージャズを演奏していそうなこのCDは避けてたんです。でも僕はギターは伴奏もメロディもひとりで演奏して欲しい人なので、ピアノもセカンドギターもいないこのアルバムのギタートリオ編成に心が動いて、とうとう手にしてしまったのでした。

 普通に聴いたら、見事すぎるぐらいのコンテンポラリー・ジャズの演奏です。でも僕にしてみれば、あの超絶的なアドリブソロを取っていたビレリ・ラグレーンさん目当てで買ったCD。何の工夫もない普通のコンテンポラリー・ジャズをやられても…それが予想できてたから避けてきたのに、悪い予感が当たってしまいました。。うまいか下手かで言えばめちゃくちゃにうまいのですが、コンテンポラリー・ジャズって型があって、それをいかに上手に演奏するかを競ってるみたいな所に行ってしまうと、創造的なものや表現じゃなくて、プレイヤーがどこまでテクニックを身に着けたかの報告会みたいに聴こえてしまって、面白くないと感じちゃうんですよね。ジャズだけでなくクラシックのプレイヤーもこういうパターンにハマる人が多いですが、どんなに指が器用に動いても、アレンジもしてない、アドリブも型通り、表現も特にしに行っているわけでもない、みたいなことをやられても、「もう1万回ぐらい聴いてきた音楽をまた聞かされてもなあ」みたいな。こういう内容かも知れない可能性を予想できていただけに、買った後の自分の判断ミスが痛かった(^^;)。。

 ジプシースイングでのガットギター演奏からキャリアを始めたなら、それをどう伸ばしていくか、というところにアーティスト性を発揮してほしかったですが、これじゃ大道芸だな、みたいな。でも、ラグレーンさんはフランスのロマなので、もともと音楽を大道芸的な商売道具と考えてるのかも知れないし、ある意味それは仕方ないのかも。こういう人は優れた音楽を創造するバンドマスターの下で、ソロ演奏のエースとして活躍する方が向いてるのかも。あ、でも、コンテンポラリージャズのギタリストのスタンダード集としては素晴らしい演奏だと思います。


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『Biréli Lagrène / Live at Carnegie Hall』

Bireli Lagrene Live at Carnegie Hal これは大推薦、ジャンゴスタイルでのガットギター(だけじゃないけど)でのビレリ・ラグレーンの超絶プレイを堪能できるライブアルバムです!1984年、カーネギーホールでの録音です。
 ビレリ・ラグレーン14歳の時の演奏『Routes to Django』は、演奏はいいけど音楽が保守すぎて、ジプシースイングは楽しめたけど、こういうのは実際に古い時代に演奏するからいいのであって現代いやるもんじゃない…みたいに思えてしまって、パラダイムの違う古いものを物珍しく眺めてる気分でした。あくまでガットギターを釈迦力に弾くスタイルは変えず、もう少しモダン化したものはないかな…な~んて思って思っている時に出会ったのがこのアルバムでした。

 この時、ラグレーンさんは18歳。うまかったけど型に嵌めたように四角四面だった演奏はいい意味で崩れ、むっちゃくちゃカッコよかった!こういうラフな演奏ってクラシック・ギターではなかなかなないので、在野の音楽の強みなんじゃないかと。本当に熱くていい演奏で、3曲目の「Toulouse Blues」なんて12小節ブルースを回してるだけなのに、オラオラ系で弾きまくり、やさぐれていて良かったです(^^)。
 ちょっとだけどモダン化もしていて、ジプシースイング7対モダンジャズ3ぐらいのブレンド具合の音楽になってました。このアルバム、ジャンゴ・ラインハルトの曲が3曲、ビレリさんのオリジナル4曲、クルト・ワイルとチャーリー・パーカーの曲がそれぞれ1曲ずつでしたが、ビレリさんのオリジナルにモダンさがちょっとあらわれていて、例えば「Paris」のイントロはマイナーの9thコードの平行進行のイントロで、「おっ?!」と感じたり…ソロが始まったらいつも通りのスリーコードな音楽に戻っちゃうんですけどね(^^;)。これが理由だと思うんですが、あるスタイルをなぞってるんじゃなくて、自分の言葉で話してるみたいに感じられて、そこが良かったです。

 ラグレーンさんのギター演奏の背景が色々と見えるのも面白かったです。オリジナル「Mirage」はバロックのクラシック・ギターみたい。ラインハルトの名曲「ジャンゴロジー」ではフラメンコ的なスケールや奏法が出てきました。在野の音楽でのガットギターの演奏って、クラシックから色んなものを取り込んだり、ブラジルもフラメンコもジャンルを越えて相互に影響しているように聴こえたりして、ギター音楽というジャンルになっているように感じます。バーデン・パウエルやジスモンティやパコ・デ・ルシアもそうですが、ガットギターで在野の音楽を演奏している一流プレイヤーって、あるスタイルだけ勉強するんじゃなくて、モノトニックベースはブルースを、スコアリーディングや基礎練習はクラシック、アポヤンドはフラメンコ、モダン和声はブラジル、アドリブはジャズ…みたいに、あるレベル以上に行ったギタリストってギター音楽をボーダーレスに勉強してるのかも…まあこれは他の楽器も同じか(^^;)。

 僕が今まで聴いてきたラグレーンさんのアルバムでは、これがいちばん好きです。でも、やっぱりセカンドギターのコード伴奏の上でソロをバリバリ弾くスタイルなので、ギターはひとりでバスも和音もメロディも奏でてオーケストレーションして欲しいと思ってしまう僕には「すごいけど、まだ出来ることがある」と思いもしました。ジャズのウェス・モンゴメリーあたりもそうなんですよね。。サイドギターやピアノの伴奏をつけての演奏って、どんなに凄くてもテニスや卓球でダブルスで勝っているような印象で、本当に凄いならシングルスで勝ってくれ、みたいな。でも和音まで抑えに行かずにシングルラインのソロ演奏に特化した一点豪華主義で練習してきたからこそ、あのぶっとんだアドリブが出来るという面もあるのかも。ギター音楽好きの方で、ラグレーンをまだ体験していない方は、軟弱にジャズをやっているアルバムじゃなくて、このアルバムから聴く事をオススメしたいです。あんまり良いもんだから、4回もリピート再生してしまいました(^^)。


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『Biréli Lagrène Ensemble / Routes to Django』

Bireli Lagrene _Routes to Django 1980年、フランス在住のロマ系のギタリストであるビレリ・ラグレーン14歳の時の演奏、ライブ音源です。バカテクの14歳という事で神童扱いされてのデビューでしたが、デビューから数年までのビレリ・ラグレーンが一番よかったなんて本人ですら思わなかったかも。ギター界の清原ですね(^^;)。

 ガットギター3本にコントラバスという編成でした。ビレリ・ラグレーンがギターの旋律を演奏、他のギターは2拍子で「ンッ、チャッ、ンッ、チャッ」と伴奏。ゲストにピアノやヴァイオリンやヴィブラフォンやトランペットが入る曲もありました。音楽は、アルバムタイトル通りジャンゴ・ラインハルト系のジプシー・スイング。進化していると感じる部分も特になく、40年代のジプシー・スイングそのまま、みたいな。フランスという地域性や、ヨーロッパ都市部でのロマ音楽という事もあってか、ミュゼットみたいに明るいエンターテイメントな軽音楽、オープンテラスで流しの演奏を聴いているような気分で気持ち良かったです。

 ほとんどすべて2ビートで、シンプルなコード進行の上で単旋律でアドリブをバリバリ取るだけなんですが、そのアドリブがものすごくグルーヴしていて良かったです。合衆国のカントリー&ウエスタンなんかもそうですが、ひとつのスタイルをひたすらに極めて馬鹿テクに演奏する音楽って、ローカルヒーロって感じでいいですね(^^)。僕はギターはフラメンコやクラシックみたいに一人で伴奏も旋律も弾いて欲しいと思ってしまうので、どうしても大フェイバリットまではいかなかったけど、プレーンなジプシー・スイング・バンドを楽しめる良いアルバムとは感じました。


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書籍『夢と数 音楽の語法』 武満徹

Yumetokazu ongakunogohou_TakemitsuToru 日本の現代音楽作曲家・武満徹さん自身が書いた、武満作品の語法解説書です。武満徹さんは若い頃の僕が音楽家を目指そうと決断した原因のひとりでして、高校生の時に「ノーヴェンバー・ステップス」「サクリファイス」「オリオンとプレアデス」という作品を聴いて受けた衝撃は計り知れないものがありました。でも、ロックやポップスみたいなシンプルな機能和声を使ってるわけじゃなし、まだメシアンの作曲技法にも触れていなかった段階の僕には「いったいこのすごい和声はどうやって作ってるんだ?!」とまるで魔術を見せられている気分。武満さんの作曲技法について書かれていそうな本は、音楽之友社から出ている『名曲解説全集』でもなんでも買いあさって読んでいたのですが、ついに武満さん本人によるアナリーゼ本が出たとあって、飛びついて買いました。それがこの本です。

 作曲に用いた和声(あるいは音の選択)の技法が紹介されている曲は、以下の通りでした。
 ・鳥は星形の庭に降りる (p.14-)
 ・遠い呼び声の彼方へ! (p.22-)

 「鳥は星形の庭に降りる」が5音音階を用いている事は有名ですが、もちろんあの響きが5音だけでは出来ているとはとうてい聴こえなかったもので、どういうシステムを作ったのだろうか…と思ってました。でもこういう事みたいでした。
 まず、C#, E♭, F#, A♭, B♭,C# という5音音階を構想。この隣接音のインターヴァルは2,♭3,2, 2、♭3。このインターヴァルの並び順を、5音音階のセンター音であるF# を起点に(つまり、このF#が曲中で常にドローンとしてサウンドする事になる)ずらして作る。すると5種類の和音を生み出すことができる…みたいな。あーなるほど、本にはこうしたシステムの構築の手順だけが書いてありましたが、その意味が大まかに理解できました。
 基音からだけでなく、すべての音同志のインターヴァルを考慮して基礎になるインターヴァルを固定することで、どこに転調しても基本的なインターヴァルのハーモニゼーションは維持できる。しかし基音からのフォーミュラは変化するので、基礎和音自体は変化する(5音音階の5つのヴァリエーションなので、5つの限定された転調が生まれる)。しかしルールとしてすべての調の構成音にF#が含まれるため、これが曲を通しての調性感を出す、みたいな。

 「遠い呼び声の彼方へ!」。基礎音階は、[Eb / E / A / C# / F / Ab](上行)と、その逆行形[Ab / G / D / Bb / F# / Eb](下行)。インターヴァルは「短2/完全4/長3/長3/短3」。いやあ、基礎音階を2オクターブ単位で作っている事、そして6音音階に音列技法を適用している点など、この時点でシステム作曲の見事さがにじみています。すげえ。

 形式については、「時間を一本の線と見ず、円環的なものと捉える」「持続は変化してやまないものと捉える」「色んな音色を持つオーケストラ曲が好きだが、西洋のように全員で一致団結するのではなく、色んな中心があってそれをゆっくり徘徊する感じが好き」という考えが印象的でした。こういう所にも西洋と日本の違いを見出していたのかも。

 僕は、20世紀以降の芸術音楽の作曲は、既存の作曲システムを用いて作るバリエーションの作曲ではなく、システムから構築してこそ時代に即した作曲だと思っています。僕にとっての武満さんの音楽の魅力は、あの響きと楽曲様式の全体。それって実は和声システムの構築ですでに作曲の半分な気がするんですよね。その考え方を武満さん本人の言葉で聴く事の出来るこの本は、僕にとって自分の作曲に大きな差介となる一冊でした!


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『武満徹 映画音楽③ 大島渚・羽仁進監督作品篇』

Takemitsu_EigaOngaku3.jpg オリジナル・サウンドトラックによる武満徹さんの映画音楽作品集、1集2集がどちらも素晴らしかったもので、あとは中古盤屋で見つけるたびに片っ端から買っていきました。5集だけは『乱』のサントラで大外ししてしまった黒澤&武満入りだったので迷ったんですけどね。。こういう買い方をすると、1枚ぐらい買えずじまいのものが出るもんですが、このシリーズはめでたくコンプリート!でもこのシリーズをぜんぶ買ったからと言って、武満さんの書いた映画音楽をぜんぶ聴けるわけじゃない所が痛い(^^;)。この第3集は、大島渚監督と羽仁進監督の作品集でした。

 大島渚監督の映画、僕はほとんど観てません。「愛のコリーダ」ですら観てないし、観た記憶があるのは「戦場のメリークリスマス」ぐらいかな?でもあれは僕にはピンとこなかったなあ。というわけで、完全に武満さんの音楽目当てで購入したCDですが…
 うおお、「愛の亡霊」がいきなりカッコいい!!こういう音楽になったのは、映画が、愛のために夫を殺して自分も破滅していく女の物語だからなんでしょうね。そして、「儀式」のサントラもすごい。これは武満さんの「悲歌」のヴァイオリンコンチェルト・アレンジ。いや~カッコいい…。ところでこの映画、桜田家の満州男の物語って…大島さんはやっぱり社会派映画の監督だったんだなあ。

 でも、すべてが武満ワールドというわけではなくて、あとはドラマの内容に合わせた劇伴的な音楽でした。「夏の妹」みたいな青春映画(?)の劇伴にはそれっぽいほのぼのとしたテレビドラマのBGM風だったりします。でもそれが時代を感じる内容で、「ああ、子どもの頃、親が見ていたテレビドラマの音楽ってこんな感じだったなあ」とほっこりしたりもするんですけどね(^^)。
 そんな中で、ちょっとした発見をした気持ちになったのは、羽仁監督の「不良少年」のクラシック・ギターを使ったBGM。クラシック・ギター曲の作曲って、ディアンスにしてもブローウェルにしても自分がギタリストである人が多いですが、武満さんってギタリストじゃないのにギター曲を結構かいてるんですよね。その作編曲のルーツを聴く思いがしました。

 武満さんの素晴らしい音楽を聴くというだけでなく、戦後から60年代後半あたりまでの日本のテレビ/映画音楽の歴史を聴いているようで、すごく楽しかったです。このCDは映画のあらすじも書いてるんですが、みんな見てみたくなってしまった。。50~60年代の日本文化って、映画も音楽も「自分たちは何者か」というのを強く意識しているようで、美学として素晴らしいものが多いと感じました。


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『武満徹 映画音楽① 小林正樹監督作品篇』

Takemitsu_EigaOngaku1.jpg 武満徹さんの映画音楽集、第1集は小林正樹監督作品集。音楽の前に、「怪談」も「切腹」も、小林正樹監督の映画自体がまず素晴らしいので、観たことのない方は視聴をお薦めします!というか、戦争直後の48年あたりから60年代までの日本のモノクロ映画のクオリティの高さは半端じゃない、エンターテイメントなハリウッド映画とはやってる事のレベルが違います。そして、それらの映画が持っている独創性にひと役買っているのが、明らかに音楽。音響の構造化には無頓着、でも和声では世界有数の色彩感を誇る作曲家である武満さんの本領が発揮できるのって、実は映画音楽なのかも。

 僕的なこのCDのツボは、「怪談」と「切腹」の音楽でした。特に、最初に入っている27分におよぶ「怪談」のサントラがいきなり強烈!吹雪の音と音楽が見事に溶け合っています。そして、琵琶音楽や篠笛などの邦楽器の演奏がカッコいい。この琵琶の音楽は武満さん作曲というより、薩摩琵琶の手そのままなのかな?エフェクトされた読経もカッコいい。ちなみにこの音楽、まだ音楽賞のなかったカンヌ映画祭で絶賛されて、審査員たちが「この音楽に何か賞を与えないと」と、あわてて特別賞を作ったんだとか。そうされて当然の音楽じゃないかと。

 「切腹」、これも凄く良かったです。武満サウンドをした緊張感ある弦楽の和弦から琵琶になだれ込んでいくところがいい!

 「燃ゆる秋」「からみ合い」「日本の青春」「化石」は、けっこう普通の映画音楽。なんというんでしょうか、60年代の日本のテレビドラマで流れてそうな、メランコリックなヤツです。でも時代が時代なので、今ではちょっと聞く事の出来ない感じの音で、いい意味で時代を感じて良かったです。でもこういう音楽だけだったら、僕はこのCDを取っておかなかったかも(^^;)。

 映画には絵にあった音をつける、そこに日本的な色彩を持つ独創的で前衛的ですらある鋭い音を用意する。同じもののバリエーション違いの大量生産となっている今の映画とはまったく違う独創力があった戦後から60年代までの日本映画の凄さって、ひとつには音楽にあったと思います。僕はリアルタイム世代ではないですが、モノクロ時代の日本映画という強烈な文化を知る事が出来で幸せでした。一生手放さないCDシリーズに余裕で入選です(^^)。。


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『武満徹 映画音楽② 篠田正浩監督作品篇』

Takemitsu_EigaOngaku-2.jpg 黒澤映画「」での武満さんの音楽にガックリきた僕でしたが、武満さんの映画音楽がどれも商売モードの手抜き仕事になるかというととんでもない、すばらしすぎる映画音楽を大量に残しています。武満さんが映画音楽でオリジナリティあふれる音楽を作り続けたから、ある時代の邦画がやたらに芸術性の高いものになったとすら思うほど。これはオリジナル・サウンドトラックから作った武満さんの映画音楽シリーズの第2集で、篠田正浩監督の映画サントラをコレクションしたものです。

 僕はこのシリーズを6枚全部持ってるんですが、この第2集はどの映画音楽も外れなし、6枚のうちひとつだけ買うならこれがいちばんオススメです(^^)。そういう所から判断しても、やっぱり武満さんを作家として認めて信頼した上で、音楽の発注をした一番の人って、篠田監督だと思うんですよね。だって、音楽がぜんぜん妥協してないですから。「化石の森」「沈黙」「美しさと悲しみも」「暗殺」…映画タイトルからしてすでに面白そうな予感しかしませんが、観た映画に関しては実際にどの映画も素晴らしかったです!ジャズや純邦楽など、武満さん本人が知らない音楽の勉強と、独創性の塊のような実験性が融合したようなところに、武満さんの映画音楽があるように感じます。お仕事で作曲するという意識は低く、絵と音と本を合わせて映画を作るという、自分自身がクリエイターであるという意識が強かったんじゃないかなあ。

 60年代から70年代の日本映画の一部って(特にモノクロ映画)、とんでもなくハイクオリティなものの宝庫だと感じています。その辺のハリウッド映画なんかじゃ足元にも及ばない傑作ぞろい。その理由のひとつに、音楽があるんじゃないかと思うんですよね。楽天主義で資本主義で大量生産システムのアメリカ映画では絶対に作れないような、作家主義で文芸的でかつ芸術志向の強い映画の宝庫。音楽を武満徹さんレベルの作曲家が書いてるんだから、そりゃレベルも高くなりますよね。武満さんの映画音楽サントラの中で特に好きな1枚、僕の青春はこういう音と一緒にあった気がします(^^)。ただし…篠田正浩監督作品集にするなら、なんで「心中天網島」のサントラを入れてくれなかったんだろう、あれこそ武満映画音楽の最高峰だろうに…。素晴らしいCDですが、そこだけが唯一心残りでした。


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『乱 オリジナル・サウンドトラック 武満徹傑作選』

Ran_SoundTrack.jpg 映画音楽だろうが何だろうが、武満徹さんのCDとあらば目に入るものから買っていた時期があります。これは黒澤明監督の映画「乱」のサウンドトラックで、勢いで手にした1枚でした。

 買った当時、「武満さんの作品ではじめて外した」と思いました。理由は、武満徹さんである必要がまったくない音楽だったから。武満さんと言えば、初期の50年代ヨーロッパ前衛を取り込んだ作風とか、日本音楽の間や5音音階を取り込んだ前衛と日本音楽のアウフヘーベンみたいな音楽、と思っていました。こういう創造的な創作態度を映画音楽にも感じたことがあって、「心中天の網島」のサントラなんて鳥肌もので絶品。ところがこのサントラ、なんと普通の機能和声…お仕事モードなのかなあ…。尊敬する武満さんにこういう真似をして欲しくなかった…というのが、若い頃にきいた時の感想でした。

 久々に聴いて思った事は、音楽に関しては同じ。ただ、他の事も感じました。武満さんは学歴のない人なので(音大の受験に行って、試験を受けずに帰ってきた話は有名)、クラシック界から援助を受けて活動する事が難しい人だったんですよね。若い頃は演奏会も自主公演、そんな武満さんが硬派な作曲活動を続けられた経済的支えとなったのが、映画音楽の作曲。というわけで、ある程度は監督のオーダーをきかないと、そもそも武満さんの硬派な音楽の創作自体が無理だったのかもしれません。

 そう考えると、黒澤監督の気風に思いが行きました。「台本を読んで、あなたのイメージでベストの音楽を作ってくれ」という人ではなく、「○○みたいな音楽にしてくれ」というオーダーをする人だったらしいんですよね。「世界のクロサワ」なんて言いますが、文芸作を撮る事があるにせよ、あくまで東宝勤務の撮影所監督です。こういう権力を持った人って、政治家でも部活の監督でも、お山の大将で上から目線な人になりがちじゃないですか。実際のところ、黒澤さんは作曲家に「ベートーヴェンの第9みたいに」とか「ワイルのあの曲みたいに」みたいな形でオーダーしたそうです。ハイドンがオラトリオ「四季」を書いた時に、台本作家から音楽の注文をあれこれつけられて憤慨した話は有名ですが、まあそれと似た事をやっていたわけですよね。もしかして武満さん、黒澤監督のオーダーに対し、慇懃無礼にそのまま音にして返したのかも(・ω・)。

 とまあ、色々思うところはありましたが、でもこれは武満作品より先に黒澤作品ですから、こうなっても仕方ないのかも。このCD、12ページフルカラーマット厚紙ブックレットだったりして、作りがすごくしっかりしてます。さすが世界のクロサワ&武満のCD、作る前から売れる事が予想できたんでしょうね。


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ゲーム『The Walking Dead: 400 days』『同: Michonne』

WalkingDead Michonne ゲーム版ウォーキング・デッドの番外編です。どちらも本編にくっついてくるおまけみたいなゲームで、「ミショーン」の方は、僕が遊んだときは早期購入特典だったかな?どちらも本編に比べるとボリュームは少なくて、また登場人物も本編とはほぼ繋がりがありません。

 「400 days」は、ゾンビだらけになった世界の最初の400日を追ったゲーム。何人もの登場人物をそれぞれ主人公にした短編ゲームをクリアし、最後にそれらのプレイヤーが合流してパーティーを作って生き延びるというもの。女の人が見おぼえある気がしましたが、あれって本編第2作の女性兵士だったかな?これはゲームも話も正直言ってつまらなかったです(^^;)。

 「ミショーン」、こっちはなかなか面白かったです!ゾンビが溢れた世界で子供と生き別れになったミショーンという女性軍人が主人公。最初の方こそ退屈に感じましたが、でも海上都市を築いている人たちから追われるようになってから緊迫感が増してきました。崩れかけた鉄塔を登って逃げる展開とか、籠城したりとか、分かっていてもはらはらしました。やっぱりサバイバルもののゲームや映画って、スリルがあってこそですね。

 ゾンビって、映画やゲームに向いてるとつくづく思いました。ゾンビ登場となると必然的に文明崩壊後の世界が舞台になるし、そうなるとサバイバルにがぜん緊張感が生まれるんですね、きっと。さすがに本編4作の素晴らしすぎる完成度には及びませんでしたが、これもなかなか。本編でまだ物足りない方はぜひ!


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ゲーム『ウォーキング・デッド シーズン4 The Walking Dead: The Final Season』

WalkingDead4.jpeg ゲーム版ウォーキング・デッドの第4作、完結編です!今回はシリーズを通して唯一フル出場の少女クレメンタインが主人公!はじめて見た時は8歳のあどけない少女だったクレメンタインも16歳になり、頭の切れる精悍な女性に育っていました。なんだか自分の子供のようにうれしいです(^^)。

 以前に行動を共にしていた女性の子供AJとふたりで車上生活をして暮らしていた少女クレメンタインだが、食料を求めて立ち寄った駅舎で大人の盗賊とウォーカーに囲まれて絶体絶命。それを助けたのは子供達の共同体だった。彼らと仲間になり、はじめて自分の居場所を見つけたと感じたクレメンタインとAJ。しかしこの子供たちのコミューンを兵士として使おうと狙っている集団が迫る。彼らにさらわれた仲間を救う計画を立てたクレメンタインだが、クレメンタインはゾンビに足を噛まれてしまい…

 いやーこれもドラマが素晴らしいです!序盤はサスペンスなドラマとして秀逸。序盤はホラーやパニック映画というよりもサスペンス調の展開で、なんで子供たちのリーダーが食糧不足になりかかってもあまり遠くまで出ていかないのか、なんでリーダーと仲の良い女の子がああも取り乱したのか、などの謎があり、その理由が徐々に分かってくる、みたいな。
 中盤は、全4作のクライマックスとしての劇的な展開が秀逸。シーズン1で人間不信をこじらせて仲間を殺して逃げた女が敵組織のリーダー格として登場。大河ドラマはシーズン通してのライバルキャラがいてくれると筋が通ってやっぱりいいです。

WalkingDead4_pic2.jpg そして何よりも良かったのは終盤、とりわけ感動のラストが見事で、本当に涙が出ちゃいました。ゾンビに噛まれたクレメンタインは、我が子のように育ててきたAJに、自分がゾンビ化する前に殺してくれと頼みます。そこから先のドラマ展開は演出を含めて息を呑む展開、ここ数年の間に見たどんな映画よりも感動してしまいました…逆に言うと、ここ数年ろくな映画を観てなかったんだな、みたいな(^^;)>。ちなみに、何とかゾンビにかまれない選択肢はないかと色々とやり直してみたんですが、どうもこれは逃れられないみたいでした。

 いや~シリーズ4作すべて面白かったです!映画だってスーパーマンが面白かったのは最初の3作までだったし、ランボーマッドマックスもサスペリアも最初の2作、オーメンやゴジラに至っては第1作だけだったことを考えると、4作まで外れなしというのも、シリーズすべてが面白いというのも凄い事じゃないかと。これだけ長い話だと、途中で中だるみしても良さそうなものですが、面白すぎるわ先は気になるわで、始めたが最後ずっと妻と遊んでしましました(^^;)。ゲームですが、映画好きの人にこそプレイして欲しい作品です!
 

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ゲーム『ウォーキング・デッド シーズン3 The Walking Dead: A New Frontier』

WalkingDead3.jpg ゲーム版ウォーキング・デッドの第3弾です!今度の主人公は前作までとは全く無関係の元メジャーリーグ選手。でも途中でクレメンタインと合流して、クレメンタインのその後も知ることができる内容でした。クレメンタインがんばれ!

 父の危篤で実家に帰ってきた元プロ野球選手のハビエルだが、兄とはソリが合わない。死んだ父がゾンビ化して母に噛みつき、兄が母を病院に連れて行ったことで、兄と生き別れになってしまう。ゾンビだらけの世界でハビエルは兄嫁とその二人の子供を助け、車中泊を繰り返して生き延びるも、途中で好戦的な集団とトラブルを起こす。様々ないざこざがあったのち、人を助けるために敵対集団の本拠に助けを求めざるを得なくなるが、的集団の指導者として兄の姿が…。

 う~~~ん面白い、面白すぎです。ゾンビや好戦的な人々から逃れながら生きなくてはならず、おちおち夜も寝られないサバイバルが、なんでこんなに面白く感じるんでしょうか。少しでも気を抜くと死が待っているので、意識が活性化するんですかね?ヒッチコックが「映画の核心は意識の追跡だ」なんて言っていましたが、そういう事なのかも知れません。
 このシリーズは登場人物ひとりふとりの物語が細かく描かれていて、そこが面白く感じるのですが、特にこの3作目は人間ドラマが秀逸に感じました。日本の民放が作る底の浅いテレビドラマなんかよりよほど面白かったです。
 もうひとつ本作で印象に残っているのは、終盤に出てくるゾンビの大群です。10体20体ではなく、1000体ぐらいいるんじゃないかという凄い数なんですよ!この視覚的なインパクトが強烈で、思わず「もうこれ以上生き延びるのは無理だわ」と思ってしまいました…ゾンビをバットでシバきまくって生き延びたんですけどね(^^)。

 今はどうか知りませんが、このゲーム、発表当時の2016年は日本版はリリースされなかったんです。でも1~2作目にハマってしまった妻と僕は日本版登場を待ちきれず、「英語でチャレンジだ!」というわけで、なんと一生懸命英語を訳しながら頑張ったのでした。知らない英単語は覚えるし、ディクテーションは上達するし、人間やればできるもんです(^^)。それぐらいハマったゲームでした!


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ゲーム『ウォーキング・デッド シーズン2 The Walking Dead Season Two』

WalkingDead2.jpg 北米では2013年にリリースされていましたが、日本でのリリースは2016年。ゾンビだらけの世界でサバイバルを目指すアドベンチャーゲーム第2弾です!1作目が面白すぎたもんで、ずいぶん経ってから2作目が出た時には妻と一緒に狂喜乱舞、すぐに手を出してしまいました(^^;)>。今度の主人公は1作目で何とかサバイバルした少女クレメンタイン。以降、ゲーム版ウォーキング・デッドはクレメンタインを中心に展開する物語になります。がんばれクレメンタイン!

 前作で生き残った男女カップルの大人ふたりと一緒にサバイバルしていたクレメインタインだが、男は死に、女は盗賊に拉致され、ひとりになってしまう。山小屋に立てこもって生き残っていた大人の集団に助けられて何とか生き延びるも、そのコミューンは圧政を敷くポリスから逃れてきた集団で、追手が迫っていた。追手から逃れるために山小屋を捨て、スキー場のロッジに辿り着いた一行、クレメンタインはそこで前作で行動を共にしていたケニーと再会。ふたつの集団は圧政ポリスにつかまり、強制労働をさせられる羽目になり…

 ゾンビはもちろん、残された食料の奪い合いとなる他の人間集団との争いまで生死を分ける事になってしまいます。この世界でのサバイバルは辛い、でも目が離せない(^^;)。このゲーム、自分の選択でストーリーが変わっていくんですが、自分の発言が会話相手だけでなくそれを聴いている人にもどう思われるかを考えなくてはならず、かなり実社会に近いと感じました。
 そして、ラスト。エンディングは大きくふたつに分かれますが(細かくは5~6個ある?)、前作で死んでしまったリーに変わり、少女クレメンタインを守ってくれようとしたケニーと迎えるエンディングは落涙もの。ケニーは怒りっぽくて弱点だらけの大人ですが、子どもたちのために自己犠牲をいとわない行動には泣きそうになってしまいました。でも僕は、どうしてもケニーが生き残れない選択をしてしまうんですけどね…ケニー人の話を聞かないしな。

 1作目と主人公が違うので感情移入できないかと思ったんですがとんでもない!面白すぎて「あ~先が見たい!」と、奥さんと眠くなるまで連日連夜ずっと一緒に遊んでしまいました。話がクソ面白いので、ゲームではなくドラマとしても一度は見てみて欲しいです!


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ゲーム『ウォーキング・デッド The Walking Dead』

WalkingDead1  2012年制作のPC用ゲームで(日本リリースは2013年)、ゾンビだらけになった世界で生き抜くことが目的のサバイバル・アドベンチャーです。「ウォーキング・デッド」というアメリカ製テレビドラマがあって、そのゲーム化らしいですが、内容はドラマとは別物…僕はTVドラマの方を見てないんですけどね。

 妻を殺害して護送中の大学講師のアフリカン・アメリカンのリー。しかし護送中のパトカーがゾンビをはねて崖下の林に転落。リーが意識を取り戻すと警官は死んでおり、パトカーから出るとゾンビに囲まれる。なんとか近所の家に辿り着いて助けを求めるも人はおらず、またしてもゾンビに襲われる。そこで避難していた少女クレメンタインに救われ、ふたりは安全な場所を探すものの…

 話が面白い!もうこれは映画、それどころか生半可な映画より面白かったです!最初は「昔からこういう選択して進めるアドベンチャー・ゲームってあったなあ。それにしてもさすがに映像が奇麗、今のゲームってすごいな」という程度でしたが、15分も経つと物語の展開に引き込まれていました。
 主人公のリーはなんとか実家まで逃れるもゾンビ化した弟と会う羽目になる。モーテルにバリケードを築いて立てこもるも食料が尽きてくる。近所の農場とガソリンと食料の交換をするが、招かれた農場の人々の様子がおかしい…スリス満点、まるで自分がゲームの中で生きているみたい(^^)。サバイバルが題材で、選択ひとつ間違えれば死という過酷な状況、一度始めたら先が観たくてやめられなくなってしまいました。

 なぜ「映画以上じゃないか?」と思うほどのめり込んだのでしょうか。のめり込むに値する高グラフィックだったことや、脚本が映画レベルの優れたものであった事はもちろんですが、自分の選択によって物語が動くところも大きかったんじゃないかと。「あの時にああしたからこうなったんだな。もしあの時に違う行動をしていたらどうなったんだろう」という事が少なからず起きるので、物語に広がりが出るというか、映画のようにひとつのルートだけがあるのではなく、現実世界のように「if」の分岐が無数にある中で生きている感覚が凄かったのかも。
 僕の奥さんがゲーマーで、面白いゲームがあるとたまに「一緒にやろう」と誘ってくれるのですが、仕事が忙しくてたいがい断ってしまう僕が、なんとなく「いいよ」と言ったらやめられなくなってしまったゲーム。このゲームをやって、はじめて「映画やテレビドラマがゲームに置き去りにされる日が間近に来てるのかも知れない」と思ってしまいました。これは超名作!


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『Caravan / For Girls Who Grow Plump in the Night』

Caravan_For Girls Who Grow Plump 1973年発表、カンタベリーロックを代表するバンド・キャラバンの5枚目のアルバムです。「夜ごとに太る女のために」というタイトルが衒学的で皮肉まじりなカンタベリー・ロックらしくて好きです(^^)。重要なプレイヤーがゴソっと抜けて潰れかかったキャラバンでしたが、このアルバムでは看板選手のデイヴ・シンクレアが復活していました!

 キャラバンがギターでリフを刻んでる!ホーンセクションやカウンターラインといったアレンジを施して曲をアンサンブルさせてる!コーラスが奇麗!いやー大幅にモデルチェンジしていました。しかもクオリティアップ。そのぐらい演奏やアレンジはうまいし気合いが入っていたんですが、音楽はほとんど産業ポップス。「ああ、僕の好きなキャラヴァンは終わったんだな」、と思ったレコードでした。それを言ったらサード・アルバムの時点でバンドは明らかに方針転換をしてましたが、本気でジャズロックに挑んだアルバムがあったりと、まだ期待するものがあったんですよね。それがここではっきり終わった感じ。

 初期プログレみたいな挑戦的なものを期待すると肩透かしを食うかもしれません。でも考えてみれば、日本のポップロックバンドでここまで演奏と作曲のレベルが高いバンドなんて見た事がないので、やっぱりロック先進国のイギリスはすごいな、な~んて思ったりもして。もうちょっとあとになるとスティーリー・ダンみたいなレベルの高いポップロック・バンドが色々と生まれるようになりましたが、73年でこれはすごいんじゃないでしょうか。プログレじゃなくてポップロックと考えれば、これは名作じゃないかと。でもキャラヴァンにはあの幻想的で文学的な、ちょっとスノッヴな感じを求めちゃうんですよね。。


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『Caravan / Waterloo Lily』

Caravan_Waterloo Lily 1972年にキャラバンが発表した4枚目のアルバムです。オルガンをメインにしたジャズロックなバンドなのに、オルガニストのデイヴ・シンクレアがマッチング・モールに移籍のため脱退。これでバンドも終わりかと思いきや、代わって入ったスティーヴ・ミラーというキーボーディストがすばらしいテクニシャン。人生万事塞翁が馬ですね(^^)。

 ヴォーカルはいるもののインスト率が高く、バンドはジャズロックに大きく傾いていました。アドリブが起承転結をつけるものではなく、コード進行の上でひたすら演奏している感じなもんで、音楽の大きな構造は演奏ではなく楽式で作っていました。イギリスのジャズロックって、こういう手法をとるものが多いですが、こういう文化なんでしょうね。これだとアドリブそのものはスケールなりコードなりに合わせて指を動かしてるだけになっちゃうから、僕個人としては聴いていてもうひとつ面白く感じませんでした。もっとマイルス・デイヴィスビル・エヴァンスみたいにアドリブの中で起承転結を作って欲しいなあ。また、作曲じゃなくてアドリブだからカウンターラインとかアレンジとかも消えがちで、音楽がコード進行しかなくなっちゃうんですよね。。

 良いと感じたのは、ストリングスの入った「The Love in Your Eye」からの5曲のメドレーでした。僕はインプロヴィゼーションは演奏が躍動するものが多いから好きですが、それ一辺倒だときつくて、やっぱり作編曲部分もあると何倍もいい音楽になると思っちゃいます。

 キャラバンの中では一番硬派なアルバムかも。でも、ジャズロックに寄ったのが原因か、メンバーに意見の食い違いが生まれたそうで、今度は加入したばかりのスティーヴ・ミラーとヴォーカル&ベースというバンドのかなめのリチャード・シンクレアが脱退してハットフィールド・アンド・ザ・ノースを結成。僕的に言うと、このへんのカンタベリー・ロックの音楽がかなり似ているので、何も脱退して再結成しなくても良いと思うんですが、要するに人間関係の難しさなんでしょうね(^^;)。。


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『Caravan / In the Land of Grey and Pink』

Caravan_In the Land of Grey and Pink 1971年発表、カンタベリー・ロックの代表的バンドのキャラヴァンのサード・アルバムです。邦題は「グレイとピンクの地」。ジャズ調のドラムとデイヴ・シンクレアのオルガンを軸にしたポップなジャズ・ロックといった趣でした。

 冒頭はオルガン入りのほのぼのとしたポップロックで、よく聴くとフルートやメロトロンが入ったり、細かいところで通好みな事をやっていましたが、基本はのほほん(^^)。2曲目もケルトっぽいフォーク調の曲で美しいポップロック…かと思いきや、間奏になったら途端にジャズロックに展開!ジャズロックといってもソフトマシーンのサード以降やインプロ期のキング・クリムゾンやアレアのようなハードなものではなく、マッタリとインストでアドリブしている感じでした。その最たる曲が、いくつかの曲を20分以上かけてメドレーしていく「Nine Feet Underground 」で、歌を挟みながらオルガン軸にジャズロック調にアドリブしてました。しかも劇的にではなく、どこに向かうでもなくあくまでマッタリと(^^)。

 このアルバム、僕が若い頃は名盤と紹介されることが多かったですが、ジャズっぽくアドリブしようがしまいが基本はマッタリとポップな音楽をやっているので、ハードなものを求めていた僕にはもうひとつ趣味に合いませんでした。まあそれはカンタベリー・ロック全般に言えるんですけどね。でも完成度が高いのはたしかだし、「ポップ」「ジャズロック」「まったりほのぼの」という軸がまったくぶれないので、そういうものが好きな人にはたまらないアルバムかもしれません。


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『Caravan / If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You』

Caravan_If I Could Do It All Over Again カンタベリー・ロックの代表バンドのひとつであるキャラヴァンのセカンド・アルバム、1970年発表です。ファーストアルバムの楽曲と演奏の完成度に感激した僕が、セカンドアルバムに飛びついたのは必然だったと言えましょう。そして微妙に外したところも実に自然な流れでした(^^;)。

 アルバム序盤はやけに牧歌的で退屈なポップスで、「これは外したか」と思ってしまいました。しかし、しかしですよ、途中からブライアン・オーガーみたいなカッコいい英ジャズロックが出てきたり(「As I Feel I Die」」、独特な曲想の民謡みたいな曲が出てきたり(「Hello Hello」)して、徐々に「お、これは」と感じるようになり、繰り返し聞いていると「知的でよく出来たアルバムだなあ」と、いつの間にやら虜になっていました(^^)。
 B面のメドレー曲を聴いて思ったのは、「あ、ガンダムでセイラが自分の素性を告白するシーンで流れていた曲の元ネタはこれか」と思った…だけじゃなくて、ジャズロックな演奏もなかなかでした。というわけで、ブリティッシュ・トラッドとジャズとカンタベリーロック的なクリエイティブな楽曲のバランスが素晴らしかったです。60年代中盤から70年代初頭あたりのロックって、創造性や知性を感じるんですよね。演奏や作曲の技術は後年の方が高かったりもするけど、創造力が段違い、みたいな。

 未来の自分には「3曲目から聴け!」と言い残しておきたいです(^^)。初期ソフトマシーンとジャズ期ソフトマシーンの中間ぐらいの音楽、そういえばマクドナルド&ジャイルズもこういうイギリスのトラッドとジャズが混じったような音楽を作り出してたので、イギリスのネイティブな大衆音楽のモダン化って、意外と演奏技術のあるこのへんのプログレバンドが果たしていたのかも。詩情あふれる曲を作っていたキャラバンを聴けるのはここまで、以降はうまいけど産業音楽なポップロックへと変貌してしまったのでした(^^;)。。というわけで、僕にとってのキャラバンは最初の2枚が抜群に好き…ソフト・マシーンと真逆ですね(^^;)>。


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『Caravan』

Caravan.jpg カンタベリー・ミュージックの2大グループと言えばソフトマシーンキャラバンですが、なんとどちらもワイルド・フラワーズというバンドにいたメンバーが作ったグループだそうで(ソフトマシーンがロバート・ワイアットとケヴィン・エアーズ、キャラヴァンがパイ・ヘイスティングvo,/g、デイヴ・シンクレアkey)。これは1968年発表にキャラヴァンが発表したデビュー・アルバムです。

 あまり熱くなることなく淡々と演奏される音楽で、土台にあるのはロックやポップスや英トラッド・フォークあたりなんだろうけど曲がけっこう凝った構成。ドラムはジャズっぽく、オルガンはジャズというよりサイケなムードを醸し出していました。なるほど初期ソフトマシーンとそっくり、だったら何も分裂することなかったのに…人間関係とか色々あったのかな(^^;)。。

 というわけで、ポップスやロックにしては演奏がうまく、ジャズにしては楽曲が凝っていて、ロックにしては内省的な深みがあって、元ネタは分かるけどどの元ネタにも還元できないという独特な音楽でした。だからカンタベリー・ロックなんていう言葉をあてたのかも知れませんが、なるほどジャンルを細分化するだけの価値がある独特の美感を獲得した音楽の一派だと思いました。いやーこれは独特の魅力です。

 これ系の音楽で近いところを思い浮かべるのは、初期ソフトマシーンとシド・バレット在籍時のピンク・フロイドですが、いずれ優れたその3つのバンドの中で音楽的に一番優れているのはキャラヴァンじゃないかと。英ジャズロックやサイケのファンなら間違いなく通る道な気がしますが、プログレファンだとキャラヴァンを聴く前にプログレを卒業する事もあるかも。これは一聴の価値あり、なんでこんなに素晴らしいバンドがもうひとつ売れなかったのかなあ。イギリスはデッカ、アメリカ販売をヴァーブが担当したのか…ヴェルヴェッツフランク・ザッパと同じようなもので、流通が弱かったのかも知れません。。


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映画『砂の器』 松本清張原作、丹波哲郎、緒形拳、加藤剛出演

SunanoUtsuwa_TanbaTetsuro.jpg テレビドラマ「疑惑」が面白かったもんだから、松本清張さん原作の映画のひとつでも観てみたいと思い、アマゾンプライムを利用して観た映画がこれ、1974年制作の映画『砂の器』です!僕の調べによると、松本清張原作の映画ではこれがいちばん評判が良かったのでね。いざ観てみると予想以上の素晴らしさで、涙が出るほどグッと来てしまいました。

 ある男の殺害死体が発見される。白いシャツの男、バーへの聞き取りで分かった「かめだ」という言葉、電車から撒かれた紙風吹…これらわずかな手がかりを頼りに刑事(丹波哲郎)が捜査を始める。電車から撒かれたの紙ではなく布で、これを撒いたのが女で、ある音楽家の愛人である事が分かる。また、殺された男が筋の通った元警官である事も分かる。捜査の過程で、殺害された元警官と音楽家の関係が分かる。そして音楽家の過去を調べると…

 観終わったばかりですが、色んなところが僕の心の琴線に触れまくり、余韻が凄いです。日本映画って白黒の時代から70年代中ほどまでが黄金期、80年代以降の映画じゃちょっと太刀打ちできないな、みたいな。まとめ切れる自信がないので、とにかく感動したところを書いていこうかと。

 まず、映像美がすごかったです。冒頭、夕暮れ時の海と砂浜をバックに、砂で器をいくつも作る人が映し出されますが、これが逆光で撮影されたシルエット。古い日本映画ってこういう構図や光の使い方のセンス抜群です。そして、このショットで「砂の器」というタイトルを印象づけ、そして映画を観た後に「砂の器って何を意味したかったんだろうか」と考えさせるところに繋がって、そしてあの砂の器を作っていたのが少年時代の彼だったことに思い当たり…いやあ、映像表現と物語の絡め方も半端じゃない、ぜったいに今より昔の映画人の方がインテリだわ。絵がらみで言うと、昭和40年代の日本の風景を見る事が出来て、もう懐かしくてゾクゾクでした。

 ドラマ。物語の中心は犯人捜しでも犯罪トリックでもなく、その不幸な事件に至らざるを得なかった人間の生い立ちにまでさかのぼるドラマ。らい病を患って迫害を受けた父子が遍路に出て、行く先々で迫害にあい、子どもはそれをずっと覚えている。その窮地を救ってくれたのが人として立派な警官で、彼がらい病の男を病院に入れて救い、残された少年を自分の子として育てる。そして何十年が過ぎ、ふたりが再会し、そこで悲劇が…いやあ、これを人間ドラマと言わずして何というのでしょう。

SunanoUtsuwa_pic1.jpg 音楽。この映画、不幸な半生を背負った犯人の心情を代弁するものとして音楽が使われています。ピアノ協奏曲なんですが、弾き振りなんですよね。弾き振りって作曲家の自作自演でもないとなかなか見る事が出来ませんが、この映画では(演技とはいえ)弾き振りを見る事が出来ます。オーケストラの配置やピアノの向きなど、音楽ファンなら見逃せないんじゃないかと。
 そしてこの音楽が映画で大変な役割を果たします。映画のラスト1/3 は、犯人の生い立ちの回想と、それに重ねられたコンサートシーンなのです。長大な管弦楽曲に感動した経験が僕には人生で何度もありますが、感動した時に思う事はいつも似ていて、ひとつはそれが時間や人生の縮図に感じる事、もうひとつは音楽以外ではちょっと体験した経験のない陶酔の感覚です。1日にしても1年にしても一生にしても、始まって終わるじゃないですか。西洋音楽のロマン派系管弦楽曲って、これを実にドラマチックに表現しているように感じるんですよね。同時に、その音楽の中に自分が溶けているような陶酔感。これは経験したことがない人にはわからないかも知れませんが、その瞬間だけは死の不安とか生きている色んな苦しみとか、そういうものから完全に開放されたような感じになるのです。この感覚を陶酔と呼んで良いか分かりませんが、そういう曲を書いた以上、たぶんワーグナーシェーンベルクもこの感覚を知ってるんですよね。で、犯人が人生の色々を超越したところにわが身を置こうとして、ある種の陶酔の境地に管弦楽曲を持ってきた演出センスに脱帽です。この映画のために作られた協奏曲や演奏が素晴らしい出来とは思わないんですが、ロマン派の大曲がこういうものを伝えようとしてあるものというのをうまく表現しているという意味で、監督の野村芳太郎さんは、ロマン派音楽のこういう側面を身をもって理解していたんじゃないかなあ。。

 見終わった後に、なぜこのドラマのタイトルが「砂の器」なのだろうかと考えてしまいました。これは僕の勝手な解釈ですが、砂の器は簡単に壊れるもの。こういった簡単に壊れるもの(たとえば名声)に自らを託したところに悲劇の原因があったという事ではないかと。裏を返すと、対置された簡単には壊せない絶対的なもの(たとえば犯人と実父の息子の愛とか、義父の清廉さとか)の美しさ素晴らしさ、ここに僕の感動があったのかも。これは素晴らしい映画でした。『悪魔の手毬唄』『野獣死すべし』みたいに、原作より映画の方が優れているパターンかも知れません。いやあ、涙が出てしまったよ、素晴らしい映画でした!


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TVドラマ『断線』 松本清張原作、松田優作主演

Dansen_MatsudaYusaku.jpg 田村正和さんと沢口靖子さん主演のTVドラマ『疑惑』を見て、「昔に見た松田優作のドラマみたいだな」と思ったんですが、なんとビックリどちらも松本清張さん原作でした。松本清張さんの本は何となくしめっぽくてメンドクサい気がして食わず嫌いだったんですが、超有名作家だけあって、知らず知らず見ているんですね。というわけで、松田優作さんに狂っていた若い頃にレンタルビデオ屋で借りてきたこのビデオを見かえしてみよう、そうしよう。

 エリートサラリーマンの光男(松田優作)は、新婚ながらある日突然蒸発、会社も辞めていた。クラブの女・乃里子(風吹ジュン)のアパートに転がり込んで同棲を始めるが、家に一銭も入れようとしない。最初はエリートの男と一緒になれたと喜んでいた乃里子も不満を口にし始め、光男は乃里子を殺してしまう。光男はまた別の女と住み始めるも、蒸発を繰り返し…

 このドラマが作られたのは1983年。その頃って、たしかに蒸発事件が社会問題として扱われていました。テレビで行方不明者の公開捜査番組なんてのもよくやってましたしね。家も家庭もある幸せそうな会社員が突如蒸発して行方不明、ひとりでアパートを借りて工場で働いていた、みたいな。何の不満もなさそうな生活を捨て、なんで敢えて身を落とすような生き方に走るのか…このドラマはそういう人間の心理を描こうと作られたのがきっかけだったんじゃないかと思うんですが、そこは松本清張さん、良くも悪くも壮大なヒューマンドラマにしていました。だって、犯人は最初から分かってるんだから、「なんで蒸発するのか」「なんで捨てるのか」という心理の解明がどうしたってすべての焦点でしたた。安アパートで二人暮らしするホステスと男の描写が異様にリアルで、なんか若い頃の自分を思い出して心が痛かったりして。。

 何十年も前に一度見たきりのテレビラマなのに、いまだに何となく余韻が残っている現代人の空しさを描いた良い人間ドラマでした。そういえば昔、『人間交差点』という深いヒューマンドラマを描いた短編コミックがあったなあ。そこでも家を捨てて蒸発したエリート・サラリーマンの話があったような…あれ、『ハロー張りネズミ』の方だったかな?こんど探して読み直してみよう。


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TVドラマ『疑惑』 松本清張原作、沢口靖子・田村正和主演

Giwaku_MatsumotoSeichou_TamuraMasakazu_1.jpg コロナにゆれる今年(2021年)の5月、俳優の田村正和さんが他界しました。その追悼番組としてテレビ朝日で放送したのが松本清張原作の「疑惑」でした。大名作らしく映画化1度、テレビドラマ化5度が行われているそうで、これは2009年のテレビドラマ化のもの。田村正和さんにも松本清張さんにもあまり興味がなかった僕でしたが、何となく見ていたはずが、始まって10分もたたないうちに夢中になってしまいました(^^)。。

 車が海に突っ込み夫が死亡、若い嫁の球磨子(沢口靖子)が助かる事件が起こる。結婚直後に夫に巨額の保険金が掛けられていることから、捜査は保険金殺人として進み、女性記者も悪意的な記事を書きたて、球磨子は危機に陥る。多くの弁護士が弁護を降りる中、国選弁護人の佐原(田村正和)が弁護を引き受ける。警察や世論が保険金殺人に傾く中、佐原が球磨子の過去を調べるうちに、レイプされた過去などが浮かび…

 いわゆる法廷ものでしたが、中心にあるのは犯罪トリックを中心とした推理ではなく、人間の心理に深く踏み込んだ社会派ヒューマンドラマでした。球磨子のエキセントリックな性格が作られた原因は何か、死んだ夫が埠頭にドライブに出た理由は何か、そして球磨子ですら理解できていなかった事件の真相は…。こんなに深い人間ドラマを見たのはいつぶりだろう。「太陽にほえろ!」などの昔の刑事ドラマや、「悪魔の手毬唄」などの金田一ものもそうですが、推理部分も面白いけどそれ以上に人間のドラマとして深く作られていて、そこに心を動かされるんですよね。

 ドラマの完成度にも舌を巻きました。ほら、テレビのサスペンスドラマってチープなものが多いじゃないですか。事件も滑稽だし、主婦が推理したり、役者も駄目BGMも駄目で、本当に安かろう悪かろうだな、みたいな。ところがこのドラマはまるで映画のようでした。いちいちナレーションで説明を入れるのはうるさかったですが、これは映画じゃなくてテレビドラマなので、ライトな視聴者に配慮しての事だったのかも。音楽を極力抑えた演出も、沢口靖子さんと田村正和の見事な演技も見とれるほど。いやあ、田村さんって古畑任三郎みたいなオーバーでクサい役者だと思っていたんですが、名優じゃないかと思ってしまいました。それは沢口さんも同じ。

 テレビのドラマスペシャルって、稀に素晴らしいものが作られる事があります。覚えているのは松田優作さんと風吹ジュンさんが出演した『断線』というドラマで、あれも素晴らしかったなあ…と思ったら、なんとあれも松本清張さん原作なんですね。松本清張さん、ちょっとハマってしまうかも。そして田村正和さん、ご冥福をお祈りいたします。


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『The Corries / A little of what you fancy』

Corries_A little of what you fancy エジンバラのレコード屋のおっちゃんに推薦されて買ったコリーズのアルバム『Strings and Things』に感動して、数日後のオフにまた同じ店に行って買ったのがこのCD。1973年発表のスタジオ録音アルバムです。

 これは『Scottish Love Songs』や『Strings and Things』よりも、アメリカの50~60年代のフォークミュージックみたいな、ギターをストロークしたりアルペジオしたりしてリュート形式の歌を歌う曲の比率が多めでした。「The news from Moidart」なんて、まるでカウボーイソングでしたし。それが悪いというわけじゃないけど、スコットランド的なものを求めていた当時の僕には、そういう曲はちょっと物足りなかったです。とはいえ、12曲中8曲がトラディショナルなので、その「スコットランド的」というやつだって僕が勝手に思ってるだけのものなんでしょうけどね(^^;)。

 そんな中で面白かったのは、酒場の楽しいダンス音楽みたいな曲が入っていたり(#5, #9)、弦楽器2本の巧みなインスト曲が入っていたり(#8)、これがケルト系というやつかな、な~んて曲が入っていた事でした。長調の曲でサビだけ7度を短7に落とす曲があって(#3「The collierladdie」)、こういうのって理屈じゃなくて感覚でやるんでしょうが、こういう所にケルト文化の残滓を感じたりして。

 ケルトと言えば…ヨーロッパはもともとケルト文化優勢だったそうですが、そこにゲルマンがどんどん入ってきてケルト人はどんどん北に追いやられてグレートブリテン島に移住。その後もゲルマン系国家の人たちがどんどん入ってきてさらに北に追われて、最終的にケルトはスコットランドやアイルランドの一部にわずかに残っただけになってしまったんだそうで。今、ヨーロッパから消滅したケルトといって何を示すかは難しいところですが、言語系統としてケルト語系統のものとしてはアイルランド語やスコットランド語やコーンウォール語がそうで、グレートブリテン島のマイノリティ文化の一部にその名残があるのかも。まあ僕の勝手な思い込みかも知れませんが、コリーズが演奏するトラッド・フォークにはちょくちょく「お?これはケルト文化の残り香か?」なんて思うものが出てきたりして。

 いま考えたら、エジンバラではもっと色んなスコットランドの音楽を紹介してもらえばよかったな。民間の音楽じゃなくて、古楽の方を深く漁っちゃったんですよね。でも、ギャラがをみんなCDや本を買うのに使っちゃったあの頃が、いちばん楽しかった気がするなあ。このアルバムは古き良き美しいトラッドじゃなくて、今も歌われている楽しいフォークミュージックという感じでした。


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『The Corries / Strings and Things』

Corries_Strings and Things 1970年発表、スコットランドのトラディショナル音楽を演奏するコリーズのスタジオ録音アルバムです。このアルバムには思い出がありまして、昔、エジンバラで開催された音楽祭に出た時に、オフ時間に行ったレコード屋で買ったんです。エジンバラ城に向かって続く坂の途中にあった狭いけどものすごい数のCDやレコードが積まれた中古レコード店のおっちゃんに、「スコットランドの音楽を聴きたい」と言ったら、真っ先にこのCDを持ってきたのです。ジャケットを見たらリュートのような多弦ギターを構えているし、これは惜しい音楽が聴けそうだと思って、買いました。スコットランドに行ってなかったら、コリーズを知ることすらできなかったかも。

 うおお、なんだこれは、イギリスというより、アルプス周辺の羊飼いの音楽みたいじゃないか!これは美しすぎるだろ…。アルバムジャケットを見るとなかなか技巧的な器楽を聞かせてくれそうですが、実際には本当にシンプルな伴奏だけを伴った歌音楽でした。伴奏に使う楽器は曲によって様々で、なかでも7曲目「Kiss the children for me, Mary」のバグパイプは美しすぎました。ちなみにこの曲、イワン・マッコールの歌でした。やっぱり重要人物なんだな…イワン・マッコールについては、またいつか書きたいと思います(^^)。
 また、響き線がつけてあるのか、まるでインドのシタールかタンブーラみたいにビヨ~ンというドローンを鳴らしながら歌う大陸的な雰囲気を持つスコティッシュ・フォークも入っていて(#1「Garten mother's lullaby」#10「The dowie dens o'yarrow」、どちらもトラッド)、これがまたゾクゾクきました。

 こういう音楽を聴いてしまうと、転調だのアレンジだの分厚いオーケストラだのは、フォークな歌音楽には不要なんじゃないかと思ってしまいます。日本的な考え方かもしれませんが、どんどん分厚くするんじゃなくて、限界まで無駄を削ぎ落したものの方が美しいというか。僕的にはこれがコリーズ最高傑作…って、最初に出会った一枚だったから思い入れがあるだけかも知れませんが(^^;)>。。


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『The Corries / In Concert』

Corries_In Concert 『Scottish Love Songs』と同じ1969年に録音されたライブアルバムです。ライブの雰囲気がいい感じで、古いスコットランドの歌をたくさん歌ってるからか、お客さんが一緒になって大合唱したり、手拍子が客席でいきなりビタッと合ったり、歌をきいてみんなで大笑いしたり。これぞ本当のフォークといった感じでした、いいなあ(^^)。

 このアルバムで注目したいのは、「Flower Of Scotland」が入ってる事。この曲、聴けば「あ、どこかで聴いた事あるな」という人も結構いるかも。僕がコリーズをはじめて知ったのはこの曲を通してでして、昔、スコットランド代表のラグビーの試合を見ていたら、客席でこの曲の大合唱になったんです。へえ、これがスコットランドの国歌なのかな、なーんて思ったんですが、なんと国歌じゃありませんでした。この曲、サッカーの国際試合でも聴いたことがありまして、今ではほとんどスコットランドの非公式国歌みたいになってるみたい。コリーズらが始めたスコットランド民謡リバイバル運動は、そのまま民族感情の象徴になってるんですね。

 というわけで、日本ではあまり知られていない音楽グループですが、牧歌的で素朴で楽しげで美しい音楽で、100年200年前のヨーロッパのフォーク音楽を聴いてる気分になれて、すごく良かったです。今の日本は市民同士が右だ左だ、若造だ老害だとやたらいがみ合っていや~な感じですが、市民同士はこういう美しいフォークソングでも一緒に歌って仲良くした方がいいんだぜ。


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『The Corries / Scottish Love Songs』

Corries_Scottish Love Songs これは素晴らしいスコットランドのフォーク音楽!スコティッシュ・トラッド・フォークを演奏するグループ、コリーズが1970年に発表したアルバムです(録音は69年)。この素朴で美しいフォークロアを聴いて感動。今のデジタルで大量生産なポップスが商材ににしか思えなくなってくる素晴らしい歌でした!

 コリーズは60年代のスコットランドのフォークリバイバルの原動力になったグループのひとつで、2声のヴォーカルとアコースティックギターを基本に、スコットランドの色々な伝統楽器を使ってスコティッシュ・フォークを演奏したグループ。タイトルから想像するに、このアルバムはスコットランドに残っているラブソング集なんでしょうね。

 時代背景にイギリスの各連合諸国のパワーバランスがあったんじゃないかと。これは平等な力関係に無くってイングランドが支配的、スコットランドやウェールズや北アイルランドは政治的な風下に立たされてました(今もかな?)。これに対してアイルランドのみならずスコットランドでも民族復興運動が起き、文化面ではスコットランドの古い民謡が掘り起こされて、「スコットランド万歳」的なムードになったそうな。似たような運動は20世紀初頭から中ごろにかけて世界各地で起きましたが、スコットランドの場合は2次大戦後のごう慢なイングランドの政治的態度に対して爆発した、みたいな。

 さて、コリーズです。遺伝子に言葉や音楽の記憶が記録されることはないと思います。だから、今でいうケルト的なものもスコットランド的なものも、今を生きている人たちが生まれた後に作った概念なのだと思います。でもそれだって重要で、スコットランド固有の文化として、こういう美しさ、素朴さ、清廉さを求めたところに価値があると思いました。スコットランドを表象するものに、戦いの勇ましさを求めたって賢さを求めたっていいわけじゃないですか。だから、対比させたものはイングランドやその他の国との差だけでなく、そういう「国」的なものに対するもっと素朴なもの、力ではなく美しいものだったんじゃないかと。

 イギリス周辺のフォルクローレとして、僕が最初にイメージする音楽って、コリーズみたいな音楽だったりします。ビートルズ以降のイギリス音楽ではなかなか聴けないものがいっぱい詰まってるし、また後の人が「古い自分たちの文化を!」といって、やっぱりこういう音楽を想起するのは、やっぱりコリーズがいい仕事したからじゃないかと。素朴、清々しさ、美しさ、そしてそんな文化の中にあるラブ・ソングはグッとくるものがありました。いや~70年にこの音楽が生きていたというのも素晴らしい(^^)。


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書籍『ブルーノート・レコード 妥協なき表現の軌跡』 リチャード・ヘイヴァーズ

Blue Nort Record_Richard Hewards ブルーノートに関する本の極めつけと言ったらこれ!フルカラー400ページ、画集のような大判サイズで、アーティストのポジフィルムやジャケット画像なども多数収録されていました。これはモダン・ジャズやブルーノートが好きな人にはたまらない1冊じゃないかと。ブルーノート本でいちばん詳しいものを買うなら、間違いなくこれでしょう!

 とにかく、内容がマニアックで深かったです。そのアルバムが制作された経緯やセッションの模様などがビッシリ。筆致は、関係者やアーティスト本人のインタビューという形ではなく、あるいは評論家の主観による評でもなく、ストーリー風に書かれていました。「1947年10月15日、セロニアス・モンクの最初のレコーディングがWORスタジオで行われた。この年ライオンは7セッションをプロデュースしたが、4番目がモンクだった。」みたいな感じです。だから、小説家映画を観ているようで、面白くてどんどん読めちゃいました…興味がある所は、ですが(^^;)。
 ただ…このマニアックにぶ厚い量と、この「興味がある所は」というところが、この本を有難いと思うか、不要の長物と思うかの分水嶺となるのではないかと。つまり、書かれている当のレコードを聴いてないと、読んでもあまり価値がないと思えたからです。

 ブルーノートって、何百枚もアルバムを出したレーベルじゃないですか。僕はモダン・ジャズ以降のジャズが好きで、しかもフュージョン以降にはほとんど興味がない人間なので、ブルーノートがレコードを出していた時代のジャズが好きなリスナーだと思うんです。実際、ブルーノートのレコードもけっこう聴いてきましたし。それでも全カタログの1/5も聴いてない…それでも聴いてる方だと思うんです。「これはもうポップスだろ」というほど軟弱な音楽の宝庫になった新生ブルーノートなんて興味を持つはずもないので、終盤はまるで読みませんでした…50~60年代のブルーノートの音楽が好きだった人なら、新生ブルーノートを良いと思えという方が無理があるわけで、そういう人の方が圧倒的に多いと思うんですよ(^^)。だから、新生ブルーノートまで触れるなら、本を分けた方が良かったんじゃないかなあ。

 というわけで、これはこの本を資料として持っていたい音楽関係者と、本当にブルーノートのレコードが好きなマニアックなジャズ・ファン向けの本ではないかと。興味あるアルバムに関する読み物としては最高なので、ブルーノートのアルバムを最低でも50枚ぐらいは聴いた人向けかも。


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書籍『決定版ブルーノート・ブック 史上最強のジャズ・レーベルのすべて』

KetteibanBluNote Book こちらはジャズ雑誌「ジャズ批評」の編集部がまとめたブルーノート本です。最初に簡単にブルーノートの歴史をまとめ、次にSP時代、10インチLP時代、12インチLP時代、新生ブルーノート時代と、時代を区切って全レコードのレビューが載っていました。こういう事を出来るのは音楽誌編集部ならではですね、個人ではとてもできない芸当です(^^)。

 この本で良かったのは、ブルーノートのカタログの全体像が分かった事でした。僕はブルーノートのレコードはモダンジャズ以降の12インチLP時代しか聴いてこなかったもので、SP盤時代にこんなにたくさんのクラシック・ジャズのレコードを出していたとは知りませんでした。しかも、アルフレッド・ライオンは元々モダンジャズじゃなくてディキシーランド・ジャズが好きだったなんて。

 で、この本で得られた僕にとっての有益な情報は以下でした。特に「○○番シリーズ」というのにどういうものがあるのか、知りたかったんです(^^)。

・SP盤時代は、200枚弱のレコードを出している。どれもクラシック・ジャズ。

・10インチLP時代は7000シリーズ(主にディキシーランド・ジャズ)と5000シリーズ(スイング、中間派、終盤にはマイルスやクリフォードやバド・パウエルなどのモダンジャズ)があった

・12インチLP時代は、モダンジャズの1500シリーズ(98枚、欠番ひとつ、未発表ひとつ)と4000シリーズがモダン・ジャズのシリーズ。ほかに、クラシック・ジャズの1200シリーズ、ヴォーカルものの9000シリーズ(2枚のみ)。


・アルフレッド・ライオンは1966年にリバティ(のちにキャピトル/EMIに吸収)にレーベルを売却した。のち1年間はヘッドを務めたが引退。以降、ライオンと共同でブルーノートを運営してきたフランシス・ウルフは71年に死去。以降もレーベルは続くが、以降のブルーノートは別物という感じ。

 本の大半がブルーノートの全CDのレビューなので、読んでいるだけでも面白かったです。とくに、ギル・メレみたいに、あまり売れなかったし名前も知らなかったけど、実はモダン・ジャズの中では相当にすごい事をやっていそうなミュージシャンやアルバムを見つけると、メモっちゃったりして。こうやってまた散在させられるという(^^;)。


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書籍『ブルーノート読本 アルフレッド・ライオン語録』 小川隆夫

BlueNoteDokuhon_OgawaTakao.jpg モダン・ジャズの名門レーベルであるブルーノートについて書かれた本です。ブルーノートの創業者であるアルフレッド・ライオンへのインタビューをもとに編纂されていて、書いたのは小川隆夫さんというジャズ好きのお医者さん。

 経営者でプロデューサーのアルフレッド・ライオン視点なので、レーベルから見た会社運営やミュージシャンとの関係、そしてプロデュースという所が見えたのがすごく面白かったです。音楽ってどうしてもミュージシャン視点で見てしまいますが、録音された音楽を聴く方が多い時代になった20世紀からは、レコードレーベルとか、その音楽を伝える役割を担う人の働きも大きいんだな、と思いました。

 アルフレッド・ライオンさんってアメリカ人じゃなくドイツ人なんですね。ドイツにいた頃にジャズに熱狂してレコードを皆で聴くサークル作り、色々あって最後にニューヨークにたどり着いて、港湾労働をしながら趣味で録音した事からレーベルが始まって…資本家でも実業家でもなく、ファンが高じて私財をジャズに全部投入していたのが、いつのまにかレーベルになった、みたいな。今でこそ「モダン・ジャズといえばブルーノート」みたいになっていますが、きちんとレーベルとして活動した期間が53年から66年、13年しかありません。で、「常に自転車操業だった」とか、最後は体調不良が絡んだとはいえ身売りしておしまいですから、本当にビジネスではなくジャズ狂いの道楽の延長だったのかも。それだけにジャズ・ミュージシャンに対する愛が凄くて、仕事のないマイルス・デイヴィスセロニアス・モンクに録音の機会を無理やり作ってお金を与えたり、儲かってもいないないのに私財を投げうって無名ミュージシャンのリーダー作を作ったり。こういうビジネス抜きでの音楽への奉仕というピュアな部分が、モダン・ジャズ黄金時代を作ったひとつとなったんですね。この人柄に、ミュージシャンもついてきたのかも。

 単なるジャズの好事家というアマチュアから始まったエピソードとしては、プレス枚数にビックリ。最初の頃は「100枚プレスすれば1枚当たりの単価は下がるけど、売れないかも知れないし在庫を抱えたくないので50枚プレスだった」なーんて言っています。ええージャズ最大のレーベルのイニシャルが50枚だったのか?!やっぱり、そういう地道なところから始まるんですね。僕は、昔あるレコードの制作にかかわった時に、ろくに自分で身銭も切らない、汗もかかないでふんぞり返っているメジャーレコード会社のディレクターに「イニシャル1000とか、嘘でしょ」と鼻で笑われたことがあります。あのクズ野郎はもう業界にいないみたいですが、音楽に愛情を持ってないそういう奴はどんどん豆腐の角に頭をぶつけて消えて欲しい(^^)。

 そして、作品制作に積極的に関わっていたのが意外でした。ライオンさんは音楽をよく分かっていないディレクターですが、でもジャズ大好き人間なので、そういう視点でのディレクションがあったみたいです。「クリフォードは放っておくといくらでもアドリブ演奏してしまうからグダグダになるかも、だからセクステットにして楽曲のしばりを作っておいた方がいい」とか、「彼は器用貧乏だから個性が出ない。だから作曲をしてもらって、曲が完成したら録音しようと提案した」みたいな。メッセンジャーズの『モーニン』のバンド編成も、ブルース調の楽曲の要請も、ライオンさんの提案がきっかけだったそうで、こうなると50年代モダン・ジャズのかじ取りに影響していた事になります。なるほどなあ、ジャズみたいなポピュラー音楽の場合、ファン視点から音楽を眺めるのも重要なんですね。
 でも、音楽よりもミュージシャンを愛しすぎるとか、音楽を知らないでディレクションに口を出すのは、もちろんマイナス面も生まれてしまうんだな、とも思いました。それはブルーノートの多くのハードバップ録音が語る通り…なんてね(^^;)。でもこういうのも含めて、ジャズはあくまでアメリカ音楽であり大衆音楽だったという事なんでしょうね。

 アルフレッド・ライオンだけでなく、ライオンさんに直接インタビューしてこの本を書いた小川さんというジャズマニアのお医者さんも情熱あるな、と思いました。費用対効果とかビジネスがとか、そこも大事ですが、それ以前に音楽を愛している事、これがあってこそなんでしょうね。ミュージシャンだけでなく、そういうファンの情熱ががジャズを支えてきたんだなあ、と感じました。どこかに転がっている情報を集めて書かれたものでなく、ちゃんと本人へのインタビューをもとにして書いている所が素晴らしかったです。300ページぐらいある本ですが文字数は少なく数時間でサクッと読める本でした。面白かった!


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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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