
即興性の高いジャズに大ハマりした若い頃の僕が、ザ・即興演奏みたいなインドや西アジアの音楽をと相性が悪いわけがなく、インドのシタール奏者
ラヴィ・シャンカルの
『India's Master Musician』を聞いてハマり、さらに手伸ばしたのがこのレコードでした。1966年リリースで、シャンカールのレコードの中でも有名なもののひとつです。昔は『India's Master Musician』の方が好きだったんですが、いま聴くと、
僕がきいたシャンカルのレコードではこれがいちばんリアルなヒンドゥスターニ音楽に近いのかな、なんて思ったりして。その理由は…
このレコード、ヒンドゥスターニ音楽の様式がコンパクトながらそのまま収められています。インド芸術音楽って、基本的にはレコードに収まるようなものじゃなくって、すごく長時間演奏するものらしいです。でも
基本的な様式はある程度決まっていて、アーラープというルバートの序章部分、ジョールというインテンポの即興部分、タブラが入ってテンポをあげて一気に盛り上がる部分、最後の部分、みたいな構成が通常だそうな(by 書籍
『音楽の原理』)。シャンカルのレコードって、この形式を踏襲せずにおいしいところ取りのものや、即興演奏だけを抜き出したものがあったりで、なかなかヒンドゥスターニ音楽そのものを聴くことが出来ないんですよね(^^;)。これが良し悪しで、ジャズやロックといった西洋ポピュラー音楽に馴染んでいた若い頃の僕は、ヒンドゥスターニ音楽のエッセンシャル部分を引っこ抜いたレコードの方が分かりやすく、フル収録のこういうレコードはちょっと冗長に感じたのです。ところがいま聴くと正反対で、全体を聴く事の出来るこういうレコードのドラマチックな展開に感激。短いながらもこの形式通りに進行してくれると、「ああ、これがヒンドゥスターニ音楽なんだな」と思えたりもして、すごくよかったです。
音楽は基本的にすごく心地よい響きでした。そういうラーガなんでしょう。構成が起承転結型で、アルバム1枚で1本勝負タイプなので、これをクラシックもポップスも含めた西洋音楽的なタイム感で聴いてしまうと、ちょっと退屈かも。でもイランやインドの音楽のあの長大なタイム感に慣れてしまえば、ゆったりと始まって30分ぐらいで暗いクライマックスが来て、最後に落ちが来て…と、最高に気持ち良かったです。あー最高だ。
インド音楽はなかなか広いので、最初は何から聴いてよいか迷ってしまうと思うんですが、僕的にはこのアルバムを最初の1枚にするのはいい線じゃないかと思っています。レコードを100枚も200枚も聴いているのにラヴィ・シャンカルすら聴いてないなんていうのは西洋や産業音楽に毒されている証拠みたいなもの。聴いたことがない方は、この日記を最後まで読んでしまったのを運の尽きと思ってぜひこの機会に!
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