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書籍『仏教の大意』 鈴木大拙

Bukkyou no Taii_SuzukiDaisetu オノ・ヨーコさんの本の紹介で仏教にちょこっと触れたついでに、仏教関連の本を一冊取り上げてみようかと。ものすごいタイトルの本だと思いませんか?仏教って、三大宗教の中では相当に哲学的ですよね。「雨の滴の中にすべての宇宙を見る」とか、「世界は世界にあらず、ゆえに世界である」とか。それでいて、哲学みたいに論理で突っ走るかというと、すごい修業が待っていたりとえらく実践的で、哲学ともちょっと違います。子ども向けや初心者向けの仏教書はともかく、本格的な本は分厚いし内容は難しいし、いちばん身近にある宗教のくせに、僕はまったく手がかりさえ掴めてませんでした(^^;)。そんなときに出会ったこの本は素晴らしかったです!文字は大きいしページも多くない。一冊で仏教の大意が分かるならこれほど有り難いものもない、なんといっても著者は著名な鈴木大拙さん!自分の事を「大きく拙い」とへりくだる謙虚さに素晴らしい宗教人である予感が(^^)。チベット密教の音楽やら何やら、仏教音楽はすごく面白いと思ってるのに仏教自体を何にも知らないし(やっぱり音楽かよ^^;)、これはサクッと読んでみよう、そうしよう。

 む、むずかしかった○| ̄|_。仏教と言っても広いですが、大拙さんは禅宗よりの人。この本を読んでると、華厳宗とかの言葉も出てくるので(華厳は南都六宗という奈良仏教のひとつで、日本で哲学化した仏教の一派。いちばん哲学的に発展した仏教の一派と言われてます)、日本化した仏教思想のうち奈良仏教→禅宗あたりに通底したものを解説したものと思われます。大拙さん、仏教は大智(または般若)と大悲(または慈)の2本柱に支えられていると言います。この本は2章に分かれていて、それぞれで大智と大悲について書かれています。最初の1ページ目から、自分なりに意訳しないとまったく理解できませんでした。そして、その意訳もあっている自信がまったくなし。それでもがんばって意訳すると…

 第1章の大智について。私たちはこの世界をふたつの世界と捉えがちで、ひとつは感性と知性の世界、もうひとつは霊性の世界。一般には後者は観念的で非実在で空想の世界と見られがちだけど、宗教的立場からすると霊性の世界ほど実在性を持った世界はない。そして、この両者は2つがそのまま1つ。我々はこのふたつを別々に観てしまいますが、これをひとつに捉える時のあり方は、霊性的に直覚されるもので、般若自体になりきる事。そうするには真っ裸になる必要がある。つまり、仏教的には一旦は知性の領域を逸脱しないといけない。でも両者は一で、知性を離れてはいけない。
 後半は因果について。仏教では因果が熟すると事態が発生すると捉えています。この時、知性は事態の推移を見て法則付けをするけれど、太陽は善人の上にも悪人の上にも降り注ぐもので、自然の因果は人間的価値観には囚われない。

 第2章「大悲」。大拙さんの説明では、知性と霊性は、華厳思想では理と事、般若経典では色と空、西洋哲学では形体(フォーム)と質量(マター)、キリスト教では少し保留条件を付ける必要があるけど個己(エゴ)と神(ゴッド)、ドイツ哲学では一般と特殊、となるそうです。ああ、二元の世界観は木田元さんの「反哲学史」で読んだ事があるから分かる気がするぞ(^^)。こちらは知性的分別が尽くされると、真金が本体をあらわにする。その本体は万象を離れたものではなく、万象そのまま。理と事の対立も滅びる地点なので、意識は寄る辺なくなり、言語も念慮も及ばぬ時節が来る。華厳の事事無碍法界を動かしているのは大悲心で、人間の個我はその根源を打破して他の個我と摂入する事が出来る

 私の解釈と感想です。「霊性」とかそういう言葉が出てくるからウサン臭く感じてしまうかも知れませんが、それを科学が通過した後の現代語訳すると、そのウサン臭さは取り払えるんではないかと。まず、第1章で語られている「大智」の部分の禅宗仏教が何を言いたいのかというと、人を救いたいとか、社会正義を確立したいとか、そんな事は全然考えていなくて(結果としてそういう側面も出てくるかもしれませんが)、何が事実か、何が真相かを探求したものなのだと思います。修行も、自己鍛錬する意味ではなくて、正しくものを見るために必要なもの、という事なんじゃないかと。「般若は般若にあらず、ゆえに般若」みたいな難しい言葉の表現は、要するに最初に説明された「知性と霊性は2にして1」という前提のもと、「因果的に起きている事は人間として見れば意味を持ってるかもしれないけど、太陽からしてみればそんなの人間の理屈でしかない。その人間だって自然と同じもの」みたいな論に発展して、結果として「人間が般若と呼んでいるものは人間から見れば般若的なものを捉えているのであって、実際の般若はそんな色付けされたものではなく、人間が言うところの般若とは違う。それが般若である」みたいな事を言ってるんじゃないかと。これも、要約すると、「まずは正しく事実を見ろ。正しく見るには知性と霊性の両方が必要だよん。そして、知性と霊性が別という勘違いはしないようにね」と言ってるんじゃないかと。
 第2部の「大悲」。これは知性と霊性のふたつを、今度は霊性から述べた章…じゃないかと(^^;)>ジシンナシ。ただ、こちらの章は「事実は何か」から一歩踏み込んで、人間にとってそれをどう役立てるかという、ある種の思想が入り込んでいる印象でした。「みんながそこに至れば溶け合って平和だよ」みたいな。

 おもしろいなと思うのは、宗教も哲学も、だいたい2元論を最初に問題視しますよね。宗教も哲学も、自然科学登場前なので、自然科学的な知識抜きでこれに迫っているので、現代から見るとオカルト的に見えてしまう所がありますが、もしこれを現代語訳出来たら、なかなか重要な事を言ってるんだろうなと思います。ただ、「2にして1」とか「霊性」とか「人は人じゃないから人だ」とか、そういう論理が出てくるので、字義通りに受け取ろうとしたらそれこそ禅問答をされてる気分になるんじゃないかと。大拙さんが言わんとしてる事を咀嚼して読む事が出来れば、1冊で禅宗思想が理解できる超良書じゃないかと思いました…僕がちゃんと理解できてるとはとても思えないのが大問題なんですけどね(^^;)。


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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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