
中世・近世・ルネサンス音楽の違いがよく分からないまま、アーリー・ミュージックをさまよっていた頃にきいたCDです。本だと、柴田南雄さんの
『西洋音楽の歴史』とか、初心者に優しそうな『古楽への招待』や『聴く音楽史』なんてものも読んだんですが、音と知識が一致しなくて、モヤモヤしたままのところも数知れず。本で「イソリズムというのは…」と説明されても、実際の音を聴かないとピンとこない、また実際の音を聴いてもそれがイソリズムなのかどうか確信が持てない…みたいな状態だったんですよね (・ω・`)。そんなある時、「少ししか聴いてないのに分かろうとするのが間違ってる。たくさん聴いてるうちに繋がってくる事もあるだろう」と、開き直りました。すると気が楽になり、またしても本丸
ネーデルランド楽派を後回しにして面白そうなところから手を出し、このCDにたどり着いたのでした。だって、中世とかルネサンスといったら、ミケランジェロやダヴィンチがいたイタリアから手をつけたくなるのが人情ってもんじゃないですか(^^)。
このCD、14世紀イタリアの音楽が、僕みたいな初心者にも分かりやすく整理されている点がとっても良かったです。なんで分かりやすかったかというと、ふたつ理由がありまして…
分かりやすかった最初の理由は、色んな作曲家を均等に並べるのではなく、
14世紀のイタリア人作曲家ランディーニを中心にまとめてあったところです。19曲中7曲が、ランディーニの曲です。残りは作者不詳が7曲、他の作曲家が1曲ずつ計5曲。
ルネサンスは14世紀のイタリアに始まって、他の地域に波及していくのはもっと後。そんな
ルネサンスの口火を切った14世紀イタリアの最重要作曲家がランディーニですが、ここを中心に聴く事が出来たので、すごく分かりやすかった!たくさんの作曲家のオムニバスだったら、僕は掴み切れなかったかも。
分かりやすかったもうひとつの理由は、当時の音楽の代表的な形式3つを、分かりやすく何曲かずつ取り上げてくれたことです。
14~15世紀のイタリアの世俗音楽は、マドリガーレ、カッチァ、バラータ(バッラータ)の3つに分かれるそうですが、曲タイトルの下にこれを明記して、マドリガーレ4曲、カッチァ2曲、バラータ5曲が入ってます。
このCDに入ってるマドリガーレはいわゆる
中世マドリガーレ(他にルネサンス・マドリガーレがある)。3行の詩が2節、そして最後に2行の締め句がつくスタイルです。音楽的にはA-A-コーダ、みたいになるんですが、こういうのが、本を読んでるだけだとなかなか分からなかったんですが、本を読んだあとでこういう実際の音楽を何曲かまとめて聴いたら理解できました(^^)。ちなみにランディーニが書いた中世マドリガーレの一部は、これを3声カノンにしたりして、なかなか見事でした。
カッチァは、楽器のテノールの上で2人が同度のカノンを使って歌う、狩りや釣りの様子を歌った歌。きっと、何人かでカノンを歌って遊んだんでしょうね。
バラータ(バッラータ)は、後のイギリスのバラードとはぜんぜん違って、「AbbaA」という形式の曲。このCDに入ってるバラータは、器楽伴奏に単声の歌、器楽伴奏に多声の歌、器楽もありました。もしかしたら、「AbbaA」という形式以外はかなり自由なのかも。
詩がついた場合は愛の歌ばかりで、まさに世俗曲といった感じ。曲も短いし構成もシンプルなので、すごく聴きやすかったです。ランディーニはバラータを書くのが得意だったそうです。
このCDに入ってる曲は、厳格な宗教音楽は少なくて、世俗音楽が多いので楽しいです。当時の狩りの様子を歌った歌とか、恋の歌とか、14世紀のイタリアに生きている気分になれます(^^)。このCDで指揮をしている
マンロウは中世~ルネサンスあたりの古楽リバイバルの中心のひとりで、リコーダーを演奏するのですが、これがまた当時の雰囲気を醸し出してて、とってもいい(^^)。本当の木で作られた木管の音って、素朴でいいですねえ。4曲目バラータ「愛よ、この乙女を」は木管2重奏のインストですが、メッチャよかった。。
というわけで、14世紀イタリア音楽を聴くなら、古楽リバイバルの偉人マンロウが企画したこのCDはおすすめです!…って、僕も14世紀の音楽をたくさん聴いたわけじゃないんですが、僕個人はすごくいいCDだと思いました(^^;)>。。