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心に残った音楽♪

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『十字軍の音楽 マンロウ指揮、ロンドン古楽コンソート』

Jyuujigun no ongaku_Munrow ルネサンス以前12~14世紀あたりのヨーロッパ音楽のCDで、僕が1枚だけ選ぶとしたらこれかも知れません。21世紀に十字軍遠征時代のヨーロッパ音楽を聴く事が出来るって、すごくないですか?同じジャンルのCDを何十枚も買うより、自分の知らない世界にふれた方が絶対楽しいと思ってるもんで、「十字軍の音楽」と題されたこのこのCDを見つけた時は狂喜乱舞、速攻で購入しました (^^)。

 僕的なこのCDのいちばんの感動ポイントは、やっぱりトルバドール、トゥルヴェール、ミンネゼンガーという中世の吟遊詩人の音楽を聴く事が出来た事。中世の吟遊詩人の歌って、本にはやたら出てくるのに、実際の音をまったく聴く事が出来なかったんです。いずれも単旋律の短い歌で、トルバドールは3つの中では一番古く最盛期が1200年前後、南フランス発祥多くのトルバドールが騎士階級の詩人音楽家で、マルカブリュとか名前だけは知っている人がいますが…おお~このCDにはマルカブリュの曲が入ってる!「このスペインの地の異邦人の苦しみ」なんて詞が出てきますが、それってウマイヤ朝とかイスラムによるスペイン支配の事ですよね、たぶん。いや~それがリアルタイムの詩って、すごいです。吟遊詩人の歌が新聞代わりだったというのも、なんとなく分かりました。
 次に古いトルヴェールは、トルバドールの音楽を引き継いで北フランスで広まった音楽。トルバドールよりもかなり洗練されて、20世紀のイギリスあたりのフォークロアと言われても信じてしまいそうなほど美しいです。中世の有名な世俗曲にアーサー王物語の歌がありますが、あれがトルヴェール。このCDに入ってるギョ・ド・ディジョン「私は心のなぐさみに」は、愛人が十字軍遠征に赴くのを嘆いた歌で、詩が「あの野蛮な地から戻った人を私は知らないのです」…いつの時代も戦争は悲劇です。そして、十字軍がリアルタイムの歌って、すごい。
 これらフランスの吟遊詩人の歌がドイツに飛び火したのがミンネゼンガー。トルヴェールの歌が飛び火したのはイギリスやスペインやイタリアもそうだったらしいですが、圧倒的に繁栄したのはドイツで、残っている曲の量も圧倒的だそうです。このCDに入っているフォーゲルワイデ作「パレスチナの歌」はミンネゼンガーの名作として名高い曲で、これだけは僕も知ってました。フォーゲルワイデがフリードリヒ2世と十字軍遠征でパレスチナ入城した時に作られた曲で、フリードリヒ2世が十字軍遠征史上唯一の戦争なしでの交渉となった時の歌。フォーゲルワイデさんはそれにメッチャ感動。あまりの感動に、フリードリヒ2世を神扱いでした (^^;)。ドイツのマイスタージンガーはミンネゼンガー直系ですが、15~16世紀の音楽だし十字軍の音楽ではないというわけか、このCDには入ってませんでした。

 もうひとつ、僕がこのCDを有り難く思ったのは、ヨーロッパの初期の多声楽を聴く事が出来た事。中世の多声楽といえばアルス・ノヴァが有名ですが、それより前のオルガヌム、モテトゥス、コンドゥクトゥスはアルス・アンティクアなんて呼ばれます。オルガヌムは宗教音楽に使われる形式なので、古い声楽を聴いているとそれなりに聞く事が出来るんですが、コンドゥクトゥスがなかなか聞けません。そんなコンドゥクトゥスを僕がはじめて聴けたのも、このCDでした(^^)。あ、モテットも入ってます。
 モテットミサ曲以外の多声部宗教曲(モテトゥスは世俗の多声宗教曲)…という事は知っていたのですが、久々にこのCDを聴いていて気づいた事が。たとえば9曲目に入っていた2声モテット「自然の摂理では」ですが…あ、あら?声部ごとに違う詞を歌ってないかい?いやあ、外国語なので詩は全然聴いてなかったのですが、同時進行でこれが成立するってすごい。モテットってみんなこうなのかと思って他の曲を聴いてみたら…同じ歌詞のものもあるみたい。ものによるんですね。
 コンドゥクトゥスは多声だけど、どの声部もリズムが同じだから声部書法というより和声に聴こえる音楽…と昔本で読んだんですが、このCDに入ってるものは単声のものもあって混乱…このCDの解説によると、12~13世紀のラテン語の歌はコンドゥクトゥスというみたいです(^^;)。その上で多声だとリズムが同じで今の合唱みたいになるという事なのかな?

 このCD、「中世の音楽って素朴で味わい深いなあ」な~んて聴くだけでも楽しいですが、本気で聴くとめっちゃ深い、すごい情報量です。モテットやコンドゥクトゥスは音楽史を勉強したことがないとみんな一緒に聴こえてしまうかも知れませんが、分かってくるとメッチャ面白い。ルネッサンス以前の中世ヨーロッパ音楽を聴きたいなら、修道院ものの声楽とこのCDを持ってるだけでかなりの範囲をカバーできてしまう優れものです。それもこれも、マンロウさんの監修がとんでもなく優れているからなんでしょうね。14世紀のイタリア音楽もマンロウ指揮の古楽コンソートの演奏で体験した僕ですが、それより前の11~13世紀のヨーロッパ音楽も、マンロウさんのおかげで聴く事が出来ました。マンロウさんに大感謝、発掘の情熱に頭が下がります。なんでこんな素晴らしい仕事してる人が自殺しちゃったんだろうな(・_・、)。


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『Juliette Gréco / Recital』

Juliette Gréco Recital フランスのシャンソン歌手ジュリエット・グレコのライブ録音です。もしかしたら日本オリジナル盤かも知れなくて、僕が買った日本盤CDのタイトルは『枯葉~ジュリエット・グレコ・ライブ』。ジュリエット・グレコは来日の多かった歌手ですが、これは81年、東京草月ホールでのライブ録音。というわけで、日本盤なのかな?レーベルはフィリップス…フィリップスってシャンソンとかアルゼンチン・フォルクローレとか、渋いところのいい音楽をいっぱい紹介してましたよね。音楽ファンにとっては本当にありがたい素晴らしいレーベルでした。

 81年ということは、グレコさんは54歳ぐらい。もう高い音域が出ません。声量もありません。全盛期のグレコにはほど遠かったです。それでも、表現が素晴らしかったです、これはちょっと胸を打つものがありました。そして、「枯葉」「アコーディオン」「パリの空の下」「聞かせてよ愛の言葉を」「街角」などなど、代表曲のオンパレードで全19曲!これはもうベスト盤だと思って聴いてもいいぐらいでした。
 ただ、ライブ盤なのに音がやたらデッドで迫力がないし、バンドは傷一つないプロの演奏ながら無難に済ませてる良くも悪くもない伴奏という感じで、音楽自体がイマイチ面白くなかったです。というわけで、もし『メルシー』みたいな素晴らしいベスト盤を持っているなら、あえて聴く必要もないのかな?


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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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