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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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2021年に聴いたアルバム 独断と偏見のベスト43 +α!(後編)

 2021年のベスト・レコード後半です!昔に比べて民音やクラシックが多く入っているのは、生活に民音やクラシックを聴くだけの時間が出来たから。民音とクラシックは楽式が一定じゃないので、ながら聴きできないんですよね(^^;)。逆に言うと、仕事が減って暇になってきたんだな、みたいな。コロナもあったけど収入がヤバいです、誰か音楽レビューの仕事でもいただけませんか(懇願)。
 というわけで、後半戦です!

第20位~11位
Barbara Chante Barbara第20位:『エチオピアの音楽
地鳴りするような大人数での儀式音楽には圧倒された

第18-19位:『Barbara / Chante Barbara』『Barbara
シャンソン最高峰といえばピアフでもダミアでもなくバルバラだ

NiimiTokuhide_KazewoKiku.jpg第17位:『新実徳英:風を聴く
西洋の最先端と日本音楽の美感をアウフヘーベンしていた頃の日本現音はすごかったな

第16位:『ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 メニューイン(vn)、フルトヴェングラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団
「今のミュージシャンの方が昔よりレベル高い」と言う人はぜひこれを聴いてほしい

Afghanistan The rubab of Herat第15位:『アフガニスタン:ヘーラートのルバーブの音楽 Afghanistan: The rubab of Herat
南アジアから西アジアにかけての音楽はレベルが段違いなので、音楽のレベルだけで語るとこの地域の音楽が全部上位独占になる

第14位:『Paul Bley / Footloose
20世紀前半のクラシック和声に届いた数少ないジャズのひとつ

Debussy_TsukinoHikari_MoniqueHaas.jpg第13位:『端唄 古典芸能ベストセレクション
鶯芸者の歌う小唄は艶っぽい、市丸なんて絶品だ

第12位:『ドビュッシー:月の光 ピアノ名曲集 モニク・アース(p)
僕にとっての西洋音楽の和声の根本は間違いなくここ

Yuri to Kohituji ChuseiEngland_Anonimas4第11位:『百合と小羊~中世イングランドの聖歌と多声楽曲~ アノニマス4
イギリス音楽はサッカーに似てる、ヨーロッパ強豪ではないけどたまにすごい

ゲーム
 実際には昔遊んだ記憶だけで書いたものがほとんど。それでも、映画や音楽は新作に手を出す気になれないけど、ゲームは遊んでみたい新作があるからすごいです。時間がないので実際には手を出せないんですけどね。。

EchoNight.jpgエコーナイト
よもやゲームに死生観を学ぶとは思わなかった、ゲーム中は完全にその世界に入りこんでた

ゲイングランド
僕にとってのアーケード・ゲーム最高傑作ってもしかしたらこれだったかも

WalkingDead4.jpegウォーキング・デッド The Walking Dead
シリーズ4作すべて傑作。ホラー映画はいずれゲームにとって代わられると思わされた

第10位~4位
第10位:『プーランク:歌曲集 デュポス(s)、カシュマイユ(br)、ロジェ(pf)
これほどの歌曲が20世紀初頭に作られていたという事実。これを聴いたら今のポップスなんて幼すぎて…たぶん現代が幼稚化してるんだな

Bartok_StringQ_3-4_AlbanBergQ.jpg第9位:『バルトーク:弦楽四重奏曲 第3番、第4番 アルバン・ベルク・カルテット
近代音楽屈指の完成度を誇る曲。こういう音楽があるのに「クラシックは聴かない」とか言っちゃう人を僕は音楽ファンとは認めない

第8位:『スペイン古楽集成Ⅵ エルチェの神秘劇 El Misterio de Elche
無伴奏独奏の古風でエキゾチックな雰囲気から西洋ポリフォニーになだれ込むその瞬間は鳥肌もの、構成力も見事。これが13世紀の音楽とは!

Mercedes Sosa Homenaje a Violeta Parra第7位:『Mercedes Sosa / Homenaje a Violeta Parra
アルゼンチン・フォルクローレもヌエバ・カンシオンも聴かない人はぜひ!はじめて聴いた時には「こういうのを歌と言うのか」と衝撃を受けた

第6位:『ギニアの音楽 Guinée: Les Peuls du Wassolon (La Danse des chasseur)
集団演奏の凄まじさ、土着音楽のパワー!日本にも西洋にもない形容しがたい音楽に打ちのめされた

Ives_NewIngrand_Ozawa_Boston.jpg第5位:『アイヴズ:《ニューイングランドの3つの場所》 《交響曲第4番》 《宵闇のセントラルパーク》 小澤征爾&T・トーマス指揮ボストン響
まったく違う音楽が交錯していく様をはじめて聴いた時の衝撃ったらなかった。アイヴズと武満徹は自分の狭い音楽観を吹っ飛ばしてくれた恩人

第4位:『Chick Corea / "Is"
フュージョン時代をチック・コリアと思っていたら彼に失礼、これかサークル時代が間違いなくキャリアハイ

書籍
 僕は意外と読書家で、自然科学から哲学や詩まで何でも読みます。そのへんは音楽や映画と同じですが、映画や音楽と違うのは、本は読み返そうとすると時間がかかるんです(^^;)。だからレビュー数は少なくなっちゃうんですが、実際には歳をとってからは音楽より本に触れている時間の方が長いかも。今まで読んだ本のレビューは、間違いなく死ぬまでに終わらせることが不可能、だって哲学や自然科学系の本を10冊ほど読み返すだけだって何年もかかっちゃいそうですから。

Malarume_Si to Sanbun天才の思考 高畑勲と宮崎駿』鈴木敏夫
プロフェッショナルとは何かを教えてもらった1冊

詩と散文』ステファヌ・マラルメ著、松室三郎訳
マラルメはアヴァンギャルドになり過ぎる前の象徴主義的な詩を書いていた頃が至高

1976年のアントニオ猪木』柳澤健
戦後日本が復興した時に、男が「このぐらいで負けてたまるか」と頑張れた力の源は力道山、長嶋茂雄、アントニオ猪木、矢沢永吉、松田優作だと割とマジで思ってる。現代は男が憧れる事の出来る英雄がいないのが悲劇だ

19786nen no AntonioInoki新版 ウイルスと人間』山内一也
政治家のみならず医者やニュース・コメンテーターの多くもコロナ対策を誤っていると僕は思ってますが、そう思う理由はウイルスとはどういうものかを把握できていないと感じるから。みんなまずは正しいウイルスの知識を持とう!

巴里の憂鬱』ボードレール著、三好達治訳
ボードレールは『悪の華』より『巴里の憂鬱』の方が現代人が持つアウトサイダー的な課題を言い当ててると思う

第3位~1位
Burundi_Musiques Traditionnelles さて、今年聴いたレコードのベスト3です!でもこれは「久々に聴いたらその新鮮さに驚いた」というのもランクに反映されたかも。たとえばメルセデス・ソーサのモダン・フォルクローレやバルトークの弦カルが音楽的に劣っているわけがないんですが、あまりに好きで聴き続けて来たもんだから自分の中に新鮮さがなくて、ついついランクがやや落ちた、みたいな。いずれにしてもこの3枚のアルバムに収められた音楽が素晴らしかったのは間違いなし!

AokiReibo_NingenKokuhou Shakuhachi kinkoryuu第3位:『ブルンジの伝統音楽 Burundi: Musiques Traditionnelles
さんざん音楽に嵌ってきたというのに、これに似た音楽を他に聴いたことがないという衝撃

第2位:『青木鈴慕 / 人間国宝 尺八(琴古流) 青木鈴慕
伝統より革新、右派より左派好きな僕が、尺八だけは都山流より琴古流なのはこの人がいたからかも。1音だけでもかすれ、響き、震え、消えるというドラマがある音の凄さ

SpainKogakuShuusei2.jpg第1位:『スペイン古楽集成Ⅱ 中世宮廷の単旋律歌曲(12・13世紀)/アンダルシアにおけるアラブ系音楽(13世紀)
レコンキスタまっただ中のスペイン音楽はキリスト教圏のものもアラビア圏のものも現代の音楽にはない美しさ!

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 今年もお世話になりました。日本は何とかコロナが沈静化している状態ですが、世界は医療崩壊してるところも膨大な死者を出している国もあるので、どうか皆さん気をつけてくださいね。年末年始はやりたい事があるんですが、家族サービスも考えるとどこまで出来るか…それでは皆さん、よいお年を!!

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2021年に聴いたアルバム 独断と偏見のベスト43 +α!(前編)

 2021年は去年に続くコロナ禍。大事な人を亡くされた方や、大変な思いをなさった方も多かったと思います。医療従事者の方にも頭の下がる思い。このブログが少しでもそういう方々の気晴らしになってくれたら…。

 利権ピックと衆議院議員選挙が行われた年でもありました。権力者の横紙破りがこれだけ続いて、それでも選挙でその人を選んだりそもそも選挙にすらいかない日本人を見ていると、ちょっとうんざり。みんなニュース見よう、本読もう。

2021NPB_central_MVP.gif そんな暗いニュースが多かった1年でとても楽しかったのはプロ野球。シーズン序盤は阪神にとんでもなく凄い新人が現れて、毎日が一大イベントのような楽しさ(^^)。後半はクライマックス・シリーズと日本シリーズが本当に面白くて、前に面白いと思った日本シリーズが2008年だから、本当に久々の熱狂(^^)。僕は土地柄もあってバファローズ寄りでおかしくないのに、親会社が金貸しなのでどうしても好きになれず、タイガース、マリーンズ、スワローズを応援。特にスワローズの戦いが戦略面で考え抜かれた素晴らしさで、さすがノムさんの申し子たちだと舌を巻きました。スワローズは昔から仲良く明るいムードなのもいいですね。MVP発表の時に、当然選出されると思った塩見選手が選ばれず、みんなずっこけていたのは爆笑。

 というわけで、今年聴いたレコードの中で良かったものを全部紹介!例によっていっぱいあるので、今回は43位から21位までと、音楽以外で良かったものを!

第43位~31位
43位:『Caravan / If I Could Do It All Over Again, I'd Do It All Over You』
イギリスのフォークロアにジャズやロックを混ぜて現代化したその構成力が素晴らしい

Booker Little42位:『Booker Little
トランペットの音抜けがヤバい!モダン・ジャズのいいところギッチリの大名盤

41位:『モップス / 雷舞
Jロックで一番すごかったのは黎明期だと改めて確信させられたレコードのひとつ

Faure_Kakyokushuu_Gerard Souzay40位:『フォーレ:歌曲集 ジェラール・スゼー(bari)/ダルトン・ボールドウィ(p)
音楽はこれが完成形とは思わないけどアイデアが素晴らしすぎる、天才か

39位:『シマノフスキ:《スタ-バト・マーテル》 《聖母マリアへの連祷》 交響曲第3番《夜の歌》 ラトル指揮、バーミンガム市交響楽団&合唱団
僕的には宗教曲でも国民楽派でもなくロマン派音楽の傑作のひとつ、演奏も素晴らしかった

Cheko to Surovakia no Minzokuongaku38位:『チェコとスロヴァキアの民俗音楽 Music from Czechoslovakia
ボヘミアの民謡的なエキゾチックさは民音でしか聴く事は叶うまい

37位:『シャブリエ:ピアノ作品全集 ピエール・バルビゼ(p)
クラシックというより、農業大国フランスの自然観を聴いたかのよう

36位:『プッチーニ:歌劇《蝶々夫人》全曲 パヴァロッティ(tenor)、フレーニ(sop)、カラヤン指揮ウィーンフィル
楽曲だけで言えばイタリオのオペラ最高傑作だと僕は思うんだ

YamashitaYosuke_DancingKojiki.jpg35位:『山下洋輔トリオ / DANCING古事記
日本がアメリカの属国となることを拒んだ学生運動全盛期の時代の息吹を聴いた気がした

34位:『Gerry Mulligan / Night Lights
アーリータイム音楽のレイドバック感を洗練させたような音楽。ウエストコースト・ジャズの心地よさときたらもう

OkamotoBunya_SinnaiShuhoushuu3.jpg33位:『岡本文弥 / 新内珠玉集三 《耳なし芳一》 《むじな》 《河童の道行》 《たぬき》
現代化された浄瑠璃は面白すぎ、昔の人が夢中になったのも当然だ

32位:『クープラン:3つのルソン・ド・テネーブル ジュディス・ネルソン(sop)、クリストファー・ホグウッド(org) 他
バロックはドイツだけじゃない。教会で夜通し行われる聖務日課で使われる曲、死ぬまでに一度は聴いて欲しい

NisiAfrica no ongaku2_Ghana31位:『西アフリカの音楽2 ガーナの歌と踊り Africa- Ancient Ceremonies Dance Music & Songs of Ghana
子どもの歌も打楽器合奏のド迫力も素晴らしい、音楽の根本を聴く思い

映画、TV etc.
 とにかく新作の映画やテレビを観なくなりました。観るのは昔見て感動した映画か見逃した名作のどちらか。新しいものは消費者側ではなく作り手として、みたいな心境もあったのかも知れません(^^)。というわけで、今年観た映画&TVは今さら僕が言うまでもない名作ばかりでした。ぜんぶで7作品、順位関係なしに紹介!

MoeyoDragon.jpg燃えよドラゴン
ブルース・リー最高傑作、元気がない時に映画を観るならこれか『ロッキー』だ

『サスペリア』
ストーリーを介さず感覚に直接訴えるという意味で、映画史に残る傑作と割とマジで思ってる

がんばれ!ベアーズ
小学生時代のあの間隔を思い出させてくれる『スタンド・バイ・ミー』と双璧の映画

仮面ライダー
僕にとっての仮面ライダーは1話から7話までがすべて。幼少時に受けた影響はすさまじく、いまだに飛ぶときに「トォ!」と言ってしまうほど

Casablanca_Movie.jpgカサブランカ
昔のいい男・いい女とは知性や品性を含めてのもの。イングリッド・バーグマンに惚れるための映画でもある

銀河鉄道999
この作品を観るなら絶対に劇場版1作目。映画史上最も美しいキスシーンはこの映画と信じて疑わない

スティング
この映画のポール・ニューマンから、男はどうやって歳をとればいいかを教わった

第30位~21位
Elvis Presley_King of Rockn Roll第30位:『Elvis Presley / The King of Rock'n Roll –The Complete 50's Masters-
プレスリーは20世紀の合衆国の色んなものを象徴しているように思えてならないぜ

第29位:『Boz Scaggs / Silk Degrees
心を動かされた現代の流行歌は、現代人の孤独を言い当てていた

第28位:『ポルトガルの歌 16~17世紀のポリフォニー秘曲集 ウエルガス・アンサンブル
大航海時代のポルトガル音楽を聴けるだけでもすごいが、それがまた高度で美しくて

Bob Dylan The Times They Are a-Changin第27位:『Bob Dylan / The Times They Are a-Changin'
あれだけ権力者に好き勝手やられながら選挙にすら行かない人が過半数だった今年の衆議院議員選挙を見るに、日本人はせめてボブ・ディランぐらいには自分の意見を持たないといずれまた戦争を起こすぞ

第26位:『ケージ:四季 レン・タン(prepaired piano) 他
「音楽とは何か」を根本から覆す視点。アメリカ実験音楽の代表格ジョン・ケージの作品中これが一番好き

第25位:『ハイドン:ピアノ三重奏曲 第12, 26, 28, 30番 シフ(p)、塩川悠子(vn)、ペルガメンシコフ(vcl)
僕的にはハイドンは交響曲作家にあらず。だってこんなに精巧な室内楽アンサンブルを聴かされたらそりゃね

TomTomFantasy_CoteDivoire.jpg第24位:『タムタム・ファンタジー コートジボワール仮面祭の一夜
ポリリズムとは何かと思ったら、このCDを聴くがよい

第23位:『Goblin / Suspiria –musiche dalla Colonna Sonora originale del film-』
音楽にとってハッタリや演出がまったく馬鹿に出来ないものと思い知らされた思い出の音楽

第22位:『Lockrop & Vallåtar | Ancient Swedish Pastoral Music
スウェーデンの伝統音楽の幻想的なことったらなかった、驚きだよ

Jyuujigun no ongaku_Munrow第21位:『十字軍の音楽 マンロウ指揮、ロンドン古楽コンソート
ヨーロッパ中世の音楽、ましてアルス・ノヴァ以前の十字軍の音が聴けるCDなんて放っておいて良いはずがない

 ベスト43って多い気もしますが、今年はざっと470作品ほどを紹介したので、それでも10作に1作しか入らない計算。しかもほとんどが自分が厳選して買ったレコードからのチョイスなので、その470作だってすでに競争を生き抜いてきたエリート勢。というわけで、40位台といったってすべて僕の中ではメッチャいい作品、どれも聴かずとも脳内再生できるほどの愛聴盤、名作揃いです。
 というわけで、20位から1位は、また明日!

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『ショパン:スケルツォ全曲、子守歌、舟唄 ポリーニ (piano)』

Chopin_Scherzi_pollini.jpg ショパンの曲の中ではスケルツォが特に好きでして、この曲を取りあげた演奏の紹介は6枚目…クラシック限定ファンなら普通の事ですが、色んな音楽を聴きたい僕にしてはこの曲に固執し過ぎました。。ルービンシュタインの演奏は59年でしたが、このポリーニの演奏は90年、かなり新しいです。

 さて、ポリー二の演奏ですが…あら?こんなに正確でいいのかな?正確なのはいいですが、徹底的に分析した後に機械が演奏したみたい。とくに音価が楽譜に忠実すぎて、スケルツォ3番の冒頭のイントロなんて音符が流れるように繋がらないでカクカクしちゃってます。たしかに楽譜上の音価はそうなんだろうけど、なにも忠実に弾く必要はないんじゃないかなあ。プレストのフォルテって書いてあるけど、その意味はアタマでドカンといけばいいという事であって、流れるようにドカンと弾いて、一気にソナタになだれ込めばいいと思うんだけどなあ…。激しい感情表現が特徴の諧謔曲なので、もっと狂ってほしかったです。おかしいなあ、ポリーニさん、似たような爆発力を要求するシューマンのピアノ協奏曲では炸裂してたのに。。

 昔、テレビでポリーニのインタビューを観たことがありまして、ポピュラー音楽に対して「創造力がない。クラシックの方がぜんぜん創造的なのに、なんで若い人はクラシック聴かないんでしょう」みたいにバッサリ切り捨ててました。まあその通りだとは思うんですが、逆に90年代以降のポリーニに足りないのはサイケデリック・ロックやフリージャズや一部の民族音楽が持ってるあの爆発力や狂いなんじゃないかと。すべてがポリーニの手の内にあるような演奏で、まだ余裕がありそうなところがちょっと残念。こういう感情大爆発みたいな曲は、ホロヴィッツみたいにコンサートが終わったらピアノがぶっ壊れてたぐらいまで弾き倒してほしいなあ。。

 僕がショパンのスケルツォはなぜ追いかけてしまうかというと、アルゲリッチのデビューリサイタルでの演奏にとてつもなく感動したのに、そこではスケルツォ3番しか演奏されなかったから。アルゲリッチって3番は演奏するけど他はあんまり演奏しないんですよね。というわけで、4番まですべてを演奏した完璧なものに出会いたくて色んな演奏家の録音を追いかけ、さまよい続けている次第。このままいくと、アルゲリッチの演奏以降、何十枚とショパンのスケルツォの演奏を買い続けて、最後に「もう3番だけでいいや、アルゲリッチとホロヴィッツだけで充分」みたいになりそう(^^;)。


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『ショパン:バラード&スケルツォ全集 ルービンシュタインpiano』

Chopin_Ballad Scherzo_Rubinstein 僕は戦後かなりたってから生まれた世代なので、自分がピアノを弾くようになった時にはアルゲリッチグールドもいました。だから精度の高い驚異の演奏には聴き慣れていて、またそういう演奏が好きでもありました。そういう感覚からすると、ルービンシュタインバックハウスは伝説の中の人で、悪くいえば「古い演奏」だったんです。演奏だけじゃなく、録音も古くてデュナーミクやタッチのニュアンスなんて録音で潰れて聴こえにくかったですしね。ただ、そういった古い世代のピアニストは、新世代のピアニストにないものがあると感じてもいました。1次大戦より前の生まれ…どころか19世紀生まれのルービンシュタインは、同じくポーランド出身のショパンの曲を演奏させたら随一と言われていたピアニスト。ショパンのピアノの名曲の中に4曲のバラードがありますが、ルービンシュタインのバラードの演奏には心を動かされました。

 素晴らしいのは、まるで生きているかのように歌う表現部分。表現だけでなく、全体に腰が据わってる感じもいいなあ、こういうのって真似しようと思ってもとてもじゃないけど出来ないんですよね…。以前に、このCDとまったく同じショパンのバラードとスケルツォ全曲を収めたアシュケナージの演奏を紹介した事があります。あれほど完璧な演奏なのに、まるで心が動かされませんでした。でもルービンシュタインのバラードはなんかゾクッと来る…ここに、戦前のピアニストが持っている何かがあるんじゃないかと。カンタービレな感じ、一瞬のタメ、タッチの差での多彩な音色操作、こういう音楽を躍動させるための呼吸やニュアンスが素晴らしくて、指先だけの問題になってないです。ショパンのバラードの名演のひとつではないかと。

 一方で、4曲のスケルツォは、歌ってないで強引に押し切って欲しいと思う所もあって、こういう所は戦後生まれのテクニシャンの方がさすがに有利と思いました。3番の最初の和音なんて、明らかに指を落とす速度が足りてないですが、これは59年の録音なので、ルービンシュタインは72歳。そりゃスピードプレイやパワープレイは無理ですね(^^;)。今の時代のショパンのスケルツォは跳ね飛ぶ感じが流行ですが、これはまったり歌うスケルツォ。もっと若いときはどういう演奏してたんだろう。

 ルービンシュタインの演奏、若いときは「古い、でも何かある」という感じだったのが、自分自身が齢をとってくると、それが何だったのか分かる気になってくるから面白いです(分かるとは言ってません^^;)。戦後生まれの新しいリスナーが最初に聴くプレイヤーじゃないかも知れませんが、どこかのタイミングで聴くと、表現って何なのかを考えさせてくれる演奏かも。


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『ヤナーチェク:ピアノソナタ、霧の中で、草かげの小径にて第1集 アンスネス(p)』

Janacek_piano sonatas_andsnes ヤナーチェクのピアノ作品の演奏で、僕が悶絶するほどに好きなのはこのCDです。こういうぜんぜん見向きされていないCDで、しかも大当たりのものは、人に教えたくなくなったりして(^^)。

 前に紹介したルドルフ・フィルクシュニーさんの録音したヤナーチェクピアノ作品集は、人気があるわけでない作曲家の、あまり有名でない作品を全集的に取りあげたというだけで拍手喝采で、僕はあっという間にとりこになってしまったのです。ただ、ヤナーチェクのピアノ曲は、メゾピアノとレガートが命のようなはかない美しさを持っている曲が多いので、フィルクシュニーさんのカツッとした演奏でなく、タッチの美しい人が、繊細に流れるように演奏したらもっと素晴らしくなるんじゃないか、と思ったのです。文句を言うなら自分で弾けよという感じですが(^^;)。そこで見つけたのが、このCDでした。ヤナーチェクのピアノ曲の録音自体は決して多くない状況の中、90年代にちょっと話題になったレイフ・オヴェ・アンスネスがこれに挑んだのでした。しかもレーベルは…Virginって、ロックのレーベルじゃないかい?クラシックにも手を出したのか…と、興味半分・不安半分でした(^^)。

 ヤナーチェクの代表的なピアノ曲は全部入っているので、他のCDには目もくれずにこれだけ聴くのでも充分。そして…いやあ、これはすごい。アンスネスはノルウェー出身で、87年にヒンデミット賞を受賞、「北欧御三家」のピアニストといわれた人です。このCDの最初の3分を聴いて、なるほどヒンデミット賞を取るのも当然、テクニックがすごい。しかしそれ以上にタッチの美しさがヤバい。メゾピアノ以下の音の美しさが鳥肌もの。「ピアノソナタ」も「霧の中で」も、まるで違う曲のような透明感です。
 僕が音大でピアノを習っていた時、とにかくピアニシモを美しく鳴らす事を訓練させられました。ピアニシモががさつだと音楽が奇麗にならないし、ダイナミック・レンジも狭くなっちゃうんですよね。僕は指を動かす練習だけでヒイヒイ言ってたレベルだったので、そんな悠長なことはやってられないと思っていたのですが、ここまで美しいピアニシモを聴かされると、先生の言っていた事もよく分かる気がしてきました。いや~この人がショパンあたりを演奏したらすごくエロい演奏になりそう。世界にはすごいプレイヤーがたくさん眠ってるんだなあ。

 これ、レーベルがヴァージンでなくグラモフォンかロンドンあたりだったら、思いっきり注目されたんじゃないでしょうか。でもこれだけすごいのに、アンスネスって聞かなくなりました…クラシックの道は厳しいですね。。「アンスネスって誰だよ」とか「Virgin って、クラシック分かってるのか?」といった心配はいっさい無用、隠れた大名盤だと思います!


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『ヤナーチェク:ピアノ作品集 フィルクシュニー(p)、クーベリック指揮バイエルン放送楽団員』

Janacek_piano works_Firkusny チェコ・モラヴィアの作曲家のヤナーチェクといえばオペラですが、僕がいちばん好きなのはピアノ独奏曲です。コダーイシベリウスもそうですが、彼らに「国民楽派」という形容はあんまり要らないと思うんですよね。たしかに民族的なリズムやスケールや題材を使う事もありますが、その音楽が本当に持っている魅力は後期ロマン派のあの匂いたつような官能。だとしたら、それは後期ロマン派じゃないですか!というわけで、後期ロマン派としてのヤナーチェクの素晴らしさがすごくあらわれているのが、ピアノ曲だと思うのです。

・主題と変奏(ズデンカ変奏曲)
・草かげの小径にて 第1集、第2集
・思い出
・ピアノ・ソナタ
・霧の中で
・コンチェルティーノ
・カプリッチョ

 まず、ピアノ独奏曲。「主題と変奏」は一聴して習作期の作品なので、ヤナーチェクらしさが出始めたのは「草かげの小径にて」から。これはピアノ小品をたくさん集めた曲集で、1~2集合わせて全15曲。シューベルトやショパンの後追いのような曲もありますが、「彼女らはツバメのようにしゃべりたてた」「涙ながらに」みたいに、一聴して「ああ、もろにヤナーチェクのピアノ曲だ」と分かるものもあります。「ピアノソナタ」とか「In The Mist」でも使われる一種の和声交換なんですが、これがなんとも耽溺したような独特の哀愁というか、霧がかっているけど光も差しているようなというか、独特のニュアンスなのです。こうなると、独特のスラブっぽいメロディがこれまた味わいを発揮して相乗効果。聴いていて、幻のような世界にひきずりこまれる感覚…。やっぱりヤナーチェクはピアノ作品がいいなあ、誰も賛同してくれないだろうけど(^^;)。そして、ピアノ・ソナタ」と「霧の中で」、この2曲は耽美ロマン派ピアノ曲の傑作ではないでしょうか?!
 一方のピアノ入りアンサンブル。「コンチェルティーノ」は、ピアノと他の独奏楽器の掛け合いのような構造をした、ちょっと面白い曲でした。ピアノの相手はヴァイオリンになったりクラリネットになったり入れ代わりですが、だいたい1対1。2人だけ登場する童話の紙芝居でも観ているような、楽しげな音楽でした。「シンフォニエッタ」は、コンチェルティーノのような協奏曲的ではなくてアンサンブルものという違いはありますが、音楽の方向性は似ています。でもまあこれらは普通の後期ロマン派音楽かな(^^;)。

 ピアノを弾いているルドルフ・フィルクシュニーさんは、ヤナーチェクに師事した人。ただ、このCDでのフィルクシュニーさんの演奏は、アルゲリッチみたいな超一流ピアニストの演奏という感じがしなくて、なんとなく「ピアノも演奏できる作曲家の演奏」みたいに聴こえます、どこがというわけではないんですが(^^;)。
 そして、この録音はまだあまり評価されていなかったヤナーチェクのピアノ作品を世に伝えるきっかけになった重要なものでした。そういうCDなので、ヤナーチェクのピアノ作品のCDといったら、何はともあれまずはこれという1枚です。


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『ニールセン:交響曲全集 ブロムシュテット指揮、サンフランシスコ交響楽団』

Nielsen_Complete Symphoneies_Blomstedt デンマークの作曲家カール・ニールセンの交響曲全6曲を収録したCDです!ニールセンは国民楽派に数えられる作曲家で、デンマークでは一番有名な作曲家らしいです。作風は、このCDを聴く限りでは思いっきりロマン派で、僕はあまり地域性を感じなかったです。でも僕の場合、ニールセンに限らずほとんどの国民楽派の音楽で「これはロマン派だよな」って感じるんですけどね。。ドイツやフランスというヨーロッパ中心にいないけど見事なロマン派音楽を作る作曲家というところは、フィンランドのシベリウスに似てるかも。

 1番~4番は典型的なドイツロマン派型の4楽章交響曲。2番は「四つの気質」なんてちょっと変わったタイトルがついていて、4楽章それぞれが胆汁質、粘液質、憂鬱質、多血質をあらわしてるらしいです。第1楽章につけられた副題が「アレグロ胆汁」(゚∀゚*)…人間の気質を音楽で表現しようという着眼点が面白かったです。4番は単一楽章ですが、実際にはシーンが分かれているので4楽章制に聴こえました。
 個人的にとくに興味を惹かれたのは、5番からでした。第5番は、音楽そのものというより、なぜこの交響曲を書くのかという所に興味を惹かれました。書かれたのが第1次大戦終了直後で、暗く始まり、軍の鼓笛隊のようなスネアドラムの音が。ドイツの作曲家なら、ここから悲惨をよりディープに描き出す方向に向かった気がしますが、ここからがニールセンらしく、暗さを表現して終わらさず、音楽を明るい所に持っていきました。デンマークは1次大戦も2次大戦も、枢軸国同士のエゴに巻き込まれて悲惨な目にあった地域なので、疲れ切った人を勇気づけようとしたのかも知れません。もしかすると、こういうデンマークの人を救おうという心があるから、デンマークの国民的作曲家といわれるようになったのかも知れません。音楽的には2楽章制とちょっと面白いですが、1楽章の中で色々と変化があって1本の構造ではないので、僕には後期ロマン派交響詩のように聴こえました。
 第6番は、色々な書法のオンパレード。最終楽章の変奏曲など、優雅なワルツのうしろでまったく違うリズムの音楽が交錯するなど、まるでアイヴズの音楽のような瞬間までありました。

 爽やかなシーンで、第1・第2ヴァイオンリンを和弦にして高音域で使い、低弦チームに印象的な対旋律を演奏させるという手をよく使うな、という印象でした。そういうシーンは青空を風が吹き抜けていくような爽快感!というわけで、重厚なドイツ音楽、情熱のイタリア音楽、色彩豊かなフランス音楽に対して、屈託のない爽やかな印象が強い作曲家さんでした。カナダとか北欧とかの寒い地方って、さわやかな感じの音楽を作る人が多い印象ですが、背景に何かあるんでしょうか。あ、寒くてもロシアはそうとは言えないか。こういう音楽を作る人って、きっと性格もいい人だったんじゃないかなあ(^^)。


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『Goblin / Il Fantastico Viaggio Del "Bagarozzo" Mark』

Goblin Il Fantastico Viaggio Del Bagarozzo Mark 邦題『マーク幻想の旅』、1978年にイタリアのプログレ・バンドのゴブリンが発表したアルバムです。映画『サスペリア』の音楽が大好きだったもので、ゴブリンの音楽に興味津々だった高校時代の僕でしたが、このアルバムはジャケットがダサく感じてずっと躊躇。それが、社会人になってから、ある音楽ディレクターさんとゴブリンの話になった時に大盛り上がりして、翌日のセッションにこのアルバムを持ってきてくれて聴かせてくれたのでした。レコード会社のディレクターさんって、レコードコレクターな人多いですよね(^^)。ウン千枚持ってるとか言う人がざらにいますし。

 うわあ、ゴブリンなのにヴォーカルが入ってる!ゴブリンなのにやばい感じの音楽じゃない!ゴブリンなのにジャズ・ロックじゃなくて抒情的だ!「Le Cascate di Viridiana」なんて、ファンタジー物のゲームのエンディングか何かで流れたら感動しちゃうんじゃないかと思ったほどでした。ある程度演奏力があるバンドって、時代によって音楽性を変えたりするからビックリする事がありますが、『サスペリア』『Roller』を引きずらず抒情系シンセ・ロックとして聴けば、相当に素晴らしい作品じゃないかと!

 ただ、僕にとっての不幸は、このアルバムを大人になってから聴いてしまった事でした。ドミソ和声で、シンセや打ち込みを使いながらダビングして作る音楽って、どこまで壮大にしてもゲーム音楽っぽいというか…。作曲でいえばもういい加減他の作曲技法も使えよとか、演奏でいえばこれはまだラフスケッチの段階の音楽で、これをどうやってリアルにサウンドさせていくのかがリアライズの重要なところじゃないのかと思っちゃうんですよね。だからもう卒業しちゃってたんです。まあそれはゴブリンに限らず、70年代後半以降のほとんどのロックやフュージョンに言える事なんですが…。
 もっと若い時に体験していたら、大ハマりしたアルバムだったかもしれません。大人になってからも自分の鑑賞に堪えるゴブリンのアルバムって『サスペリア』だけなんですが、映画絡みではないアルバムだとこれが最高傑作じゃないかと思います。


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『Goblin / Roller』

Goblin Roller 映画『サスペリア』を筆頭として、ダリオ・アルジェントのホラー映画の音楽にしびれた僕は、音楽を担当していたイタリアのバンドであるゴブリンのレコードにまで手を出してしまいました。探していたわけじゃないんですけど、中古レコード屋でこのアルバムを見つけ、「え、ゴブリンってアルバムだしてるの?!」みたいな。しかも悪魔がヴァイオリンを弾くその姿が秀逸、これは完全にアルジェントのホラー映画仕様なんじゃ…学生時代に自分ルールとして決めていたレコード1枚の予算よりちょいと高かったんですが、買ってしまいました(^^)。1976年発表です。

 完全なインストという所は良かったですが、ジャケットのヤバい感じは音のどこからも感じる事が出来ず、ぜんぜんサスペリアな音楽じゃありませんでした(^^;)。これはキース・エマーソンイエスみたいなプログレ。チロチロと細かく指を動かして、合わせるのが大変そうな細かいトゥッティや変拍子も入れて、エフェクターや電子楽器で目新しい音を入れるタイプです。サスペリアのサントラ盤で予感がないわけではありませんでしたが、ゴブリンがプログレバンドな事を確信したのはこのアルバムでした。ニュー・トロルスといい、イタリアのプログレって、こういうタイプのプログレバンドが多い印象です。

 細部まで描きこまれたスコアは大好きです。変拍子もテクニカルな演奏も好きだし、即興も好きだし、電子音やエフェクターだって使い方さえ間違えなければ好きな方じゃないかと思います。問題はそこじゃなくて、演奏から表現がなくなる事なのです。細かい事やったりテクニカルな事やってもいいけど、それをやって表現がなくなるんじゃ本末転倒に感じちゃうんですよね。「アアアア」という平たい演奏より、「ァアァ」という演奏の方が意識も感情も引っ張られやすくなるじゃないですか。変化しないものに意識ってついていかないですし。だから、紙の上や頭の中で出来てしまう変化しかない音楽を聴いてしまうと、これは頭の中だけで作った音楽で身体がない、と感じてしまうんです。キング・クリムゾンアシュ・ラ・テンペルを聴いてプログレに大ハマりした僕がプログレから卒業してしまったのって、フィジカルがない頭でっかちな音楽があまりに多かったからなんですよね。

 というわけで、『サスペリア』『サスペリア2』といったホラー映画のサントラで注目していたゴブリンというバンドでしたが、いざアルバムを買った途端に「これは駄目だ」となってしまったのでした。人の感情を動かすという面で言うと、映画監督のダリオ・アルジェントの方が音楽のツボを知っていたのかも知れません。


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『Goblin / Profondo Rosso -Colonna Sonora Originale Del Film-(サスペリア2)』

Goblin_Suspiria2.jpg 1975年発表映画『サスペリア2』のサントラ盤です。『サスペリア』と同じように、これも演奏はほとんどがプログレッシヴ・ロック・バンドのゴブリン。ゴブリンって、なんとこれがデビュー作なんですよね。ロックバンドのデビュー作がサントラてすごいな…と思ったら、どうやらチェリー・ファイヴというバンドが、本作のサントラを受け持った時に改名したみたいです(^^)。

 とか言って、作曲はゴブリンではなくジャズ・ピアニストで劇伴作曲家のジョルジオ・ガスリーニ。ガスリーニはバップ系のジャズを演奏したりもしますが、ヴェルディ音楽院で学んだだけあって作曲はきっちりしていて、機能和声しか書けないなんていう人とは大違い。12音列技法を使った作曲と即興演奏を組み合わせた作品なんていう超硬派な音楽も作ってます。
 このサントラのスコアも、音符に直して聴くとちょっとジャズ的。ある程度スコア・リーディングが出来て、かつ即興演奏の能力が必要な感じでした。これだったらガスリーニ自身が自分のバンドで演奏すれば早かったんでしょうが、アルジェント監督が「ロック・バンドで!」みたいな要望を出したんじゃないかと。でもって、いまいち売れていなかったバンドは、イタリアでは有名だったジャーロ映画監督のサントラ担当を機に、バンド名をジャーロに寄せてゴブリンに変更…我ながらなかなかの推理、ありそうな話な気がしませんか?もうこれは正解に違いないぞ(^^)。

 でも音楽自体は、イエスELPみたいなピコピコしたプログレで表現に欠ける凡庸さ…まあそれってゴブリンだけじゃなく、70年代後半のプログレ・バンド全体に言える弱点ですよね。楽器のエレクトリック化や大量生産されたシンセサイザーの流行、それにフュージョン時代とも重なっているから、演奏表現に目がいかなくなった時代だったのかも。サスペリアのサントラとは違って、恐怖や表現力に富むわけではなく、ジャズ・ロック系のプログレ・バンドな音楽と感じました。


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『Goblin / Suspiria –musiche dalla Colonna Sonora originale del film-』

Goblin_Suspiria.jpg 若いころに見てトラウマになりつつ大フェイヴァリットにもなった映画『サスペリア』、その怖さの1/3は間違いなく音楽でした。映画に魅了されて何度も何度も観ているうちに、「音楽を聴いているだけで恐怖を覚えるのって、サスペリアとアイヴズぐらいかも」な~んて思った事もあるほどです。これはそのサントラ盤で、演奏はイタリアのプログレッシヴ・ロックバンドのゴブリン。映画だと「Goblins」とクレジットされてるけど、サントラだと「Goblin」になってるんですよね。

 ああ~もうこれは怖い、怖すぎる。。テーマ曲「Suspiria」のチェレスタのメロディが聴こえてくるだけで背筋がゾクゾクします。映画だとテーマ曲の間に差し挟まれていたティンパニ演奏は別曲で、タイトルは「Witch」…これも怖くてちびりそうです。そして、臓器を何度も刺されるシーンの後に、首を吊られ、割れたステンドグラスが全身に刺さる戦慄の序盤シーンで流れるあのオルガンとメロトロンを合わせた壮大なオーケストレーション曲、もう心臓が止まってしまいそうです。。ここまでがSide1で、僕にとっては恐怖音楽であるSide1 がすべて。映画だと「ゴブリンとアルジェントのコラボレーション」なんてクレジットされているので、音楽のうち恐怖演出的な部分は映画監督アルジェントさんの指示だったんじゃないかと。この演出が凄すぎて、この音楽が4人編成のロックバンドの演奏にはとても聴こえないです。
 一方のSide2 は、実に4ピースなロックバンドの演奏で(^^)、恐怖音楽ではなくてセッション色の強いピコピコした音のいかにもなイタリアン・プログレでした。別の言い方をすると、ヤン・ハマーとやっていた頃のフュージョン期ジェフ・ベック・グループELPあたりのプログレのあいの子、みたいな。恐怖に魅了されたサスペリアのサウンドトラックを求めていたから違和感を感じたのか、映画音楽を離れて別物として聴いても、とりとめもないセッションでつまらなく感じてしまいました。他のアルバムを聴く限り、Side 2の ジャズ・プログレがゴブリンの音楽に近いのかも知れません。

 いま聴くと、僕にとっては演出の効果が高い事、これが素晴らしい音楽でした。Side1 の恐怖音楽のうしろでは、かすかに肉声の喘ぐような声が聞こえたり、ティンパニのヘッドをゆるく張って「ドゥワン…」みたいな不安定な音を出したり、スコア以外のところでかなり演出が入ってました。これが音楽にフィジカルを与えてると感じたんですが、つまりこれって表現の一種として機能しているように感じました。音が強くなったり弱くなったり変化したりして、それが音楽を躍動させていて、その躍動が紙の上や頭の中だけでは絶対に出来ない事、みたいな。ところがSide2 のプログレ・セッションとなると、このフィジカルがなくなって感じました。音のデュナーミクは一定、テンポも変わらず、エレキ楽器で画一化された音色の変化もエフェクター頼りだと、別に生演奏なんていらないというか、頭の中で鳴らせてしまう音なんです。それなら音なんていらない、スコアだけでいいよ、みたいな。

 というわけで、僕にとっては恐怖音楽のSide1 は一生ものの大名盤です!そうそう、このレコード、僕は日本盤LPを持ってるんですが、フルカラーの飛び出す絵本状態になっていて、LP自体もフィジカルが強いんですよ!日本でもプレミアがつき始めてますが、海外だと超高額…いやあ、やっぱり大好きなレコードです!


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映画『サスペリア・テルザ 最後の魔女 The Mother of Tears』 ダリオ・アルジェント監督

Suspiria Terza 2007年公開、アルジェント監督によるホラー映画サスペリア」シリーズの第3弾にして完結編です!前作『インフェルノ』が1980年公開なので、忘れた頃にいきなりの続編が来た感じでした。日本公開は2009年、当時僕は仕事で東京に行っていまして、その合間に渋谷のミニシアターに見に行きました!大好きなサスペリア・シリーズの完結編というわけで、見に行かない選択肢はない、みたいな(^^)。

 ある教会の墓地付近で、開けられないようにしたかのように厳重に鎖が巻き付けられた棺と遺物入れのセットが掘り起こされます。この遺物に悪い予感を感じた神父は、遺物入れを博物館の館長に送って調査を依頼。しかし送った先の博物館で調査員が惨殺されます。むごい惨殺現場を目撃した同じく博物館員のサラは、復活した魔女たちに狙われ…

 この映画、最初に劇場で観たときには、ちょっとショボい所もあるけど、怖いし面白いし、なかなか良かったと感じました。なんだかホラー映画専用のミニシアターみたいで、他のお客さんは女性でもホラー慣れしていて全然悲鳴をあげてなかったんですが、オトコの僕がひとりでギャーギャー騒いでました(^^)。
 良かったところはシリーズ第1作の『サスペリア』と同じで、視聴者に恐怖体験をさせる演出の素晴らしさです。特に、冒頭15分の演出は見事!悪魔を扱った西洋の古い絵画が映し出され、意味深な異様な遺物が掘り出され、遺物に収められていた人形と思しき姿の三体の怪物が暗闇で人をえぐり、見つかったら生き延びる術はない状況に主人公が追い込まれ…謎の提示と認知不安をあおる映画への引きずり込み方は、さすがアルジェントと思いました(^^)。
 一方でショボいと思ったのがCGです。この映画、70~80年代のアルジェント映画とは比較にならないほどロケーションもカメラも美術も素晴らしいんです。白黒時代の日本映画に匹敵するクオリティの高さでした。でも精霊を表現するCGがひどすぎてもう…これならCGを使わない方がよかったと思いました(^^;)。

 そんな感じで、問題もあるけど全体としては良かったと思った僕でしたが、ホラー映画好きな幼馴染Mくんの評価は「テルザは最悪」(^^;)。ええ、そうなのか?CGはひどかったけど、他はそうは思わなかったけどな…と思い、今回久々に観たところ、なるほど、M君のいう事がちょっと分かりました。大きく見ると、偶然に魔女が復活し、偶然に滅びてるんですね。せっかくの完結編なのにストーリーがたしかに雑かも。

 というわけで、前の2作にはかなわないかも知れないし、僕の友人Mのようなホラー映画マニアからすれば失敗作かも知れませんが、僕みたいなライトなホラー映画ファンにとっては、残念なところはあるにしても相当に楽しめた映画でした。魔女「涙の母」を務めたモラン・アティアスがとんでもない美人で、おっぱいを含めたスタイルまでとんでもなく素晴らしい事を、最後に申し添えておきます(^^)。そうそう、「サスペリア2」という映画もありますが、あれはサスペリアから続く魔女三部作とは無関係です…メチャクチャ面白いですが。


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映画『インフェルノ Inferno』 ダリオ・アルジェント監督

Inferno.jpg 1980年制作、大ヒットホラー映画『サスペリア』の続編です。僕的には大傑作サスペリアに並ぶほどの怖さと面白さで、学生の時に夢中になって何度も観ていました(^^)。

 ニューヨークのアパートに住んでいるローズが、近所の骨董屋で「スリー・マザーズ」という本を買う。著者は建築家で、本の内容が意味深。「この本を書いたことが知られたら私は殺されるだろう」「災いをもたらす3人の魔女に建築を依頼された。3人の名は嘆きの母(サスペリア)、涙の母(ラクリマ)、暗黒の母(テネブレ)。家はフライブルグ、ローマ、ニューヨークに建てた。その建築の特徴は…」。

 もうこの物語の導入からして最高に面白かったです!本に「魔女の家」と書かれていた建物の特徴が、自分が住んでいるアパートそっくり。魔女の建物を特定できるという特徴を探すと、もろにヤバいものが。もう、物語にグイグイ引きずり込まれました。超常現象を扱っているホラーではあるんですが、ストーリー展開は見事なサスペンスですね(^^)。実際のところ、恐ろしい幽霊や化け物やゾンビが出てくるシーンはほとんどなく、謎の追跡者にじわじわ追い詰められたり、死体を発見したりという現実にありえる恐怖がほとんどです。で、この精神的に追い込まれるサスペンスが怖いそして引き込まれる!
 特撮も、80年代の低予算ホラーにしては見事!鏡に映る女だけが動かず、さらに鏡の中の女がこちらに向かって歩いてきて、鏡が割れると…というクライマックス・シーンの特撮は「おおっ!」と思いました。構図やアイデアが素晴らしいんですね(^^)。。

inferno_screenshot1.jpg この映画、他のダリオ・アルジェント作品と同様に、不可解なシーンが色々とあるので、突っ込まれる事が多いです。例えば、なんで助けに来たホットドッグ屋がいきなり包丁で滅多切りにしてくるのかとか、大学の教室にいたこちらをにらんでいた女は誰なのかとか(そういうえばあのブロンド女、何かつぶやいてたけど、何て言ってたんだろう…)、たしかに突っ込みどころはあります。でもそれで映画がつまらなくなっているとは感じませんでした。この映画の見どころって、要するに聴衆に恐怖や不安そのものを体験させる事と、魔女の謎の追跡だと思います。このふたつの体験をさせるにあたって、不可解なシーンは映画の助けにはなっていても、障害とは感じませんでした。せいぜい、見終わった後で「そういえば、あれって何だったんだ」と思う程度。『サスペリア』や『シャドー』といったアルジェント映画を楽しめた人なら、これは当たりじゃないかと。個人的にもかなり好きな映画です!


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映画『サスペリア Suspiria』 ダリオ・アルジェント監督

Suspiria.jpg 「決してひとりでは見ないで下さい」、流行りましたねえ(^^)。小さかった僕は、CMを見るだけでちびりそうになるほどビビッてました。1977年公開の超傑作オカルト映画、超絶スプラッターなホラー映画が大ヒットするとんでもなく素敵な時代でした。それにしてもサスペリア、若かったこともあるのか初めて観た時はマジで怖かったです。
 僕はこの映画の虜になり、何十回も観る事になったのでした。今は再生する事すらできないですが、規制シーンをオリジナルカラーにしたレーザーディスクまで買ったなあ。というわけで、今回は思い入れをこめて書いてみよう、そうしよう。

■あらすじ
 アメリカ人バレリーナのスージー(ジェシカ・ハーパー)は、ドイツにあるバレエ名門校に入学する。嵐の夜に学校寮につくと、意味深な言葉を叫びながら学校から飛び出していった女生徒に遭遇。女生徒は逃げ延びたはずの同僚のアパートで惨殺される。入学後も校内で異様な事件が続き、仲良くなった女生徒のサラが突如行方をくらます。バレエ教師は「退学して出ていった」というが、サラから学校に関する不可思議な話を聞いていたスージーは、サラの友人である精神科医に連絡を取る。すると…

■恐怖が直接の対象であるすごさ
 僕にとってのこの映画の素晴らしさは、観る側に不安と恐怖を「直接」感じさせるところです。気持ち悪い内臓がべちゃっと出るとか、血しぶきが飛ぶとか、そういう「気持ち悪い」じゃないんですよ。不安と恐怖と混乱、これです!たとえば、バレエ学校の寄宿舎やレッスン室に抜ける廊下の壁の色が真っ赤なんですよね。これは何かの象徴ではなく、ダイレクトに異常さを感じさせられました。

 こういう認知不安をあおるシーンで一番怖かったのは、友人サラが、正体のわからない何かに追われ、真っ暗な学校の中を逃げるシーンでした。身を隠そうとするも、廊下の明かりがついて、居てはいけない筈の誰かが扉のすぐ外にいる事が分かります。何とか別の扉から逃げるも、そこはまったくの闇が続く廊下…わずかにうつるサラの顔は緑の光に照らされ…もう、異様な世界です。必死に逃げ隠れた狭い物置部屋で落とし錠をかけるも、扉の隙間からカミソリがすうっと入ってきて、その錠を外そうと動き…実際に殺されるシーンではなく、この「殺されるかもしれない」という不安と恐怖が延々と続くんですよ!実際の殺害シーンは痛いし生々しいけど、不安でも恐怖でもないんですよね。それをこの映画は分かっているんだと思います。
Suspiria_movie2.gif 人間の基本情動って、探索、怒り、恐怖、混乱、の4つなんだそうです。だから、映画で思考を介さずに直接感情に訴えるものを作ろうと思ったら、この4つのどれかに訴えるのがいちばん効果があるんでしょうね。これらの感情が何で起こるかというと、人間が出くわす問題の解決に感情が活用されるから。たとえば、自分に何かが襲ってきたら、まずそいつが自分にとってどういうものなのかを探索。次に、そいつを追い払えそうなら怒りモードになり、逆にそいつから逃げた方がよさそうなら恐怖モード。判断がつかなければ混乱。そして最後に問題が解決すると基本感情は去って安堵へとつながる、みたいな。
 この映画の感情の動きって、映画→(ストーリーや意味を)思考→感情の順じゃなくて、映画からいきなり感情なんです。しかも、4つある基本感情のうちの3つが入っていて、しかも最後に解決ですから、まさに感情にダイレクトなんですよね。かなり音楽に近い作りの映画だと思います。しかも、音楽ほど聴き手に能力を問いませんし。

■「意味不明」と言われるシーンの意味
 この映画(というか、アルジェント監督の映画の多くがそうですが^^;)、映画評論家やアンチな映画ファンから「意味が分からない」みたいに批判される箇所がけっこうあります。でも僕的に言うと、大体のシーンは理由がはっきりしていると感じるんですよね。もちろん、その理由が映画にとって良かったかどうかは人それぞれと思いますが、少なくとも無意味ではないです。その鍵は、上に書いた「ダイレクトな基本情動の発動」。というわけで、よく突っ込まれる謎シーンの解題をしておこうかと。

(序盤の自動ドアと水しぶきのカットの意味)
 映画序盤での、空港の自動扉が開くシーンでのシリンダーと、嵐の中での水路の水しぶき、このふたつのカットアップ。これは、物語を思考(その多くは言語)を挟まず感情面で進行させることにあるのではないかと。空港の中は安全ですが、その外は嵐で、この後に起きる凄惨な事件の予兆としてあります。自動扉の開閉に使われているシリンダーは、よく見ると手でも挟まれれば手がちぎれるのではないかというほどの物々しいルックス。水路の水しぶきも、ここに落ちたら死亡確実というほどの凄い勢い。これを不安を喚起するものとして用いてるんですよね。ただし、考えるいとまもないほど速くカットをつなぐことによって、考えるのではなく感じさせるわけです。空港の「安全」から、この後に続く凄惨な殺人へと感情のモードを「言葉ではなくダイレクトに感覚で」切り替えさせるために、このシーンがあるのではないでしょうか。

(大量の蛆虫発生のシーン)
 端的に言えば、不快感を与えるためだけのシーンに見えます。だから「ストーリーにまったく食い込まない無意味なシーン」みたいな反論を呼ぶのも分からなくはないです。でも、このシーン、女生徒たちがシーツ越しに影だけがマルコスに初遭遇するシーンを用意するという、ストーリー上の役割があります。それを大量の蛆虫発生にしたのは、説明(つまり記号)だけに終始せず、感情にも訴えるシーンとしたためではないでしょうか。

(なぜスージーは最後に「笑った」か)
 映画のラストで、魔女の巣窟から逃れたスージーが「笑って」館を去るシーンがあります。で、彼女は何で最後に笑ったか意味が分からない、みたいな。この指摘をきいた時、この映画を何回も観たはずの僕は「え?笑ってた?」と思ったんですよね。で、見直したんですが、あれを「笑った」という言葉に要約して表現すること自体が取り違えではないかと思いました。もっと、爆発した環状と涙と安堵がないまぜになったような表情に僕には見えました。それは顔だけではなく、仕草やコンテキストもひっくるめての事だと思いますが。
 だって、「アメリカ娘を殺せ」という魔女たちを覗き見て、恐怖のあまりあとずさりし、親友の惨殺死体を発見して全身がこわばり、フラフラになって館の外に出て、雨にずぶぬれになって我を忘れたような表情をして立ちすくんで、そのあとにフラフラと歩いていくシーンでの表情ですよ。そりゃ「涙や安堵がないまぜになった表情」と捉えるのが普通じゃないでしょうか。仕草や前後の状況も捉えずに、いきなりあのシーンの顔だけを捉えて「何で笑ったの?」とすること自体がおかしいんじゃないかと。

■思考を挟まずに感情を直接引き起こす、という映画手法を発明した映画!
 な~んて、あまりに好きなものだから擁護する文章ばかりになってしまいましたが、ダメなところも感じます。その最たるものはニセモノを使う事で、これがせっかく見事な色彩効果や言語を挟まずに直接感情を動かす表現に水を差して感じました。ぬいぐるみの犬が噛みついたり、いかにも作り物の目がのぞき込んだりというシーンがそれです(^^;)。子どもの頃、ウルトラマンが飛ぶシーンになるととつぜん人形になることに萎えたもんですが、あれと同じ。最近で言うとCGにも同じことを感じます。表現として成立するイリュージョンは素晴らしいですが、ニセモノを使っちゃダメという事でしょう。
 というわけで、音楽や照明、見事なカット割りや暗示される異常性など、単なるストーリーの映像化ではなく、あらゆる音楽/映像技法を用いて思考を介さずに感情を直接引き起こし、その感情の連鎖で映画が展開していくという、今までにない映画のあり方を指示した大傑作だと思います。本当は200点の大傑作といいたいところですが、ニセモノを使うシーンが足を引っ張って僕的には160点…とんでもない高得点ですね(^^)。


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『Raul Garcia Zarate / Guitarra Peruana』

Raul Garcia Zarate Guitarra Peruana ラウル・ガルシア・サラテもペルーのフォルクローレの超有名ミュージシャンです。アントニオ・パントーハがインディオのネイティブな色が残ったフォルクローレ、ハイメ・グァルディアが現地音楽と白人の流行歌のミックスみたいな歌ものフォルクローレを演奏したのに対して、ラウル・ガルシア・サラテさんはエドゥアルド・ファルーアタウアルパ・ユパンキみたいなスペインのクラシック・ギター直系っぽいギターインスト。75年発表のこのレコードもギター・ソロでした。なにせ、アルバムのタイトルが「ペルーのギター」ですからね(^^)。

 いやあ、メッチャうまいわ。。ファルーもユパンキもそうですが、ラウル・ガルシア・サラテさんもクラシックギター直系のひとりギター多重奏、クソ上手かったです。フォルクローレ系のギタリストって本当にギターの達人が多いですよね、ロックやポップスは言うに及ばず、ジャズ・ギタリストですら南米のフォルクローレの世界ではだれもプロとして通じないんじゃないかと思わされるほどです。僕的には、こういう南米フォルクローレのギターインストって、フォルクローレというよりもクラシック・ギター界の国民楽派だと思ってしまいます。それこそ、曲は「コンドルが飛んでいく」なんかも演奏してましたが、演奏技法は完全にクラシックですもんね。

Raul Garcia Zarate_photo これだけクラシック・ギターの奏法まんまなのに、クラシックのレパートリーを演奏せずに自分たちの文化の曲を演奏するところに、民族意識というものを感じました。これ、日本人だったら普通に外国の曲を演奏しちゃうんだと思うんですよね。日本人のクラシックギターの人もジャズの人も、みんなそうじゃないですか。でも南米の人は海外から技術は輸入しても音楽自体は絶対に自分たちの文化にあるものをやるじゃないですか。そこにプライドを感じます。ヨーロッパ人の侵略や混血の歴史といった複雑な歴史背景もあって、自分たちのものをやらない意味がない、自分でないと意味がないという意識があるのだと思いますが(この辺は北米インディアンの詩を読んでそう思うようになりました)、そういう態度は日本も見習いたいもんだと思います。しかしギターがクソうまいです、それでいて指先だけの音楽にならずに歌心があるのがフォルクローレ、聞き惚れてしまいました。。


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『Jaime Guardia , Pepita Garcia Miró / Encantos Andinos』

Jaime Guardia_Encantos Andinos ペルーのミュージシャンといえば、70年代生まれの僕の世代にとってはこの人も有名、チャランゴ奏者のハイメ・グァルディアです!このおじさんは禿で小太りでサングラスと、見た目のインパクトがなかなか。南米フォルクローレのミュージシャンって僕は名前と顔が一致しない人が多いですが、この人は一発です(^^)。
 チャランゴは中南米のフォルクローレでよく使われる楽器で、5コース10弦の復弦が普通、見た目は小さなギターみたいな感じ。この楽器の名奏者はエルネスト・カブールを筆頭にボリビアのミュージシャンが多い印象ですが、それってフォルクローレのプロ・ミュージシャンがボリビアに多いという事であって、楽器自体はフォルクローレが演奏されている南米一帯に広がってるんでしょうね。

 というわけで、2010年リリースのこのCDは、ハイメ・グァルディアが女性ヴォーカリストのペピータ・ガルシア・ミロと組んだ1枚でした。16曲中9曲がトラディショナル、楽器編成は基本的にチャランゴ伴奏で、曲によってはもう1台の撥弦楽器(これもチャランゴ?)、それにヴァイオリンが入る事もありました。歌はペピータ・ガルシア・ミロひとりで歌うのではなく、ペピータとハイメが2声で歌ってるみたいな。ポリフォニーではなくてホモフォニーでした。
Jaime Gardia_photo 曲想は、クリスティーナとウーゴみたいに、ああいうちょっとだけ白人的なフォルクローレといった感じでした。あ~これは詩がきっといいこと歌ってそう、勝手な想像ですが「うちのロバが太陽の下で風に吹かれてる」みたいな(^^)。でも輸入盤のうえにスペイン語だから僕は意味がまったく分からず。南米のフォルクローレが日本で流行らないのは、間違いなく言葉の壁がありますよね。。

 ハイメ・グァルディアって、たしかペルーの民俗学院みたいな所でチャランゴを教えていたはず。それぐらいにペルーのフォルクローレ界の大御所だったはずですが、アルバムはあまり出てません。音盤で音楽を聴くという文化圏でも、またそういう音楽でもないのかも。楽器演奏は技巧的なわけでも耳を惹きつけられたわけでもはありませんでしたが、ホッコリしたいい音楽でした。でも、本当に詩の内容が知りたいです(^^;)。


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『アントニオ・パントーハ / 永遠なるケーナの巨匠』

AntonioPantoja_Eien naru Kena no Kyoshou ペルーのフォルクローレのミュージシャンといえば、日本ではケーナ奏者のアントニオ・パントーハとかの方が有名かも。ケーナというのは「コンドルは飛んでいく」のメロディを吹いているあの笛の事です。日本だと、大きな駅の駅前で、インディアンの酋長みたいな格好して演奏しながらCD売ってたりしてましたよね(^^)。日本のビクターがパントーハさんを猛烈にプッシュした事もあって、日本で「コンドルは飛んでいく」を聴いた人は、パントーハさんの演奏で知っている人が多い気もします…って、僕がそうなんですが(^^)。

 これはパントーハさんのベスト盤で、原盤はアルゼンチンのTONODISCという所みたい。スタジオ録音で、民族楽器だけのシンプルなものもあれば、ドラムやピアノやエレキベースなんかが入ってのフォルクローレとポップスのフュージョンみたいなものも入っていました。フュージョンしてもいいですが、あんまり安直なのはやっぱりつまらないなあ、エレキベースで全部ぶち壊しに聞こえる…。というわけで、やっぱりアンデスのフォルクローレ的なものの方が個人的にはだんぜん良かったです。大体、今の西洋のポップスに毒されていない音楽を聴きたくてこういうのに手をだしているもんで、西洋ポピュラーとフュージョンしたら意味がないんですよね。。
 
 『母をたずねて三千里』をはじめ、僕が子どものころになんとなく耳にしていた南米のフォルクローレってまさにこんな感じでした。実際のアンデスのフォルクローレがどうなのかは分かりませんが、「日本人にとっての」フォルクローレのステレオタイプな音楽だと思いました。パントーハさんはペルー生まれとはいうものの、実際にはブエノスアイレス(アルゼンチン)に移住して一生を終えたという事なので、実際にもこういう観光客向けの音楽をやっていたのかも…あくまで僕の想像ですけどね(^^;)。。


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『Waykis / Inca Gold -Traditional Music of the Andes-』

Waykis Inca Gold ワイキスはペルー出身の兄弟デュオ、主にフォルクローレを演奏するユニットです。伝統的なフォルクローレだけでなく、オリジナルも作って演奏してるので、モダン・フォルクローレにも入るのかな?ひとりがギター担当、もうひとりがチャランゴ、サンポーニャ、ケーナなどを演奏していました。ヴォーカルは、入ったり入らなかったり。

 一聴して「ああ、これはプロ・ミュージシャンだわ」と分かるうまさでした。そして、伝統的なフォルクローレにちょっとだけモダンな感じが入ってるさじ加減が絶妙。あんまりテクニカルになっちゃって歌心がなくなってしまうとフォルクローレじゃなくてエンターテイメントになっちゃいそうですが、歌心やフォルクローレらしさは残してる感じ。それでいてギターはけっこうモダンな事をやってて、「これはカッコいい」みたいな。そして、ところどころでドラムなども使っていましたが、これもボっとして聴いてたら気づかないぐらいにわずかで、モダンにしつつもフォルクローレの良さを崩さない程度。この辺のセンスが本当にいいと思いました。

 ワイキスは日本公演もしてますし、フォルクローレのグループとしては日本では知られた方だと思うんですが、いかんせんフォルクローレ自体が日本ではどマイナーなジャンルですからね(^^;)。かくいう私もまったく知らないに等しい状態でして、フォルクローレというとボリビアかアルゼンチンという印象、ペルーやエクアドルやチリのフォルクローレはほとんど聴いてないに等しいのです(^^;)。。そんな中、ペルー出身のワイキスの素晴らしい演奏に触れられたのはもっけの幸いでした。それにしてもこんなにうまいとは驚きました。南米は山や森の中にギターの達人がいくらでも潜んでる感じですね、深い。。

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『太陽の帝国 Kingdom of the Sun ~インカ文明の音楽遺産 Peru's Inca Heritage』

Kingdom of the Sun_Peru’s Inca Heritage ノンサッチの民族音楽録音シリーズのひとつです。日本語タイトルからは分かりにくいですが、要するにペルーの民族音楽の現地録音盤で、録音は1969年

 使われている楽器はギター、チャランゴ、ケーナ、サンポーニャ、ティンヤ(平打ち太鼓)、アルパなど。おお~これは僕が想像するアンデス系フォルクローレそのものだ!しかもかなりプリミティブ。ペルーは国民の5割がインディオだそうですし(このCDのライナー情報)、なるほどアルゼンチンは白人優位、メキシコはスペイン優位に感じますが、ペルーはインディオ優位な音楽に感じます。
 このCDの何が素晴らしいって、中南米のフォルクローレって、アルゼンチンやボリビアのものは比較的聴きやすいんですが、ペルーやチリとなると突然なかなか聴けないのです。仮に聴けても、アントニオ・パントーハみたいなアルゼンチンに出てから活躍した人とか、プロ楽団の演奏が多くて(まあ、当たり前ですけどね^^)、ペルー現地のお客さん向けでない本当のフォルクローレがなかなか聴けないのです。そんな中、1969年のペルーの現地録音のこのCDは観光産業音楽ではなくリアルなフォルクローレ、秘境の音楽って感じでした。しかも、アマチュアにしては相当にうまいです。謝肉祭の音楽なんて、村の人たちがやってると思うんですが、北米インディアンの音楽よりぜんぜん凄かったです。

 でも…これってインカ文明の遺産ではないんじゃないかという気もしました。だって、アルパもチャランゴもインカ文明じゃなくてそこにスペイン人が入ってきてもたらされたものですよね?曲もヨーロッパの大衆音楽っぽい形式ですし。まあ、インカ文明にスペイン文化が入り込んで音楽的に融合したものをインカの遺産というならそうかも知れませんけどね(^^;)。


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『フォーレ:歌曲集 ジェラール・スゼー(バリトン)、ダルトン・ボールドウィン(ピアノ)』

Faure_Kakyokushuu_Gerard Souzay 僕にとってのフォーレは、第1に、あの素晴らしすぎるレクイエムの作曲家ですが、フォーレって若い頃は歌曲とピアノ曲で才能を発揮したらしいです。このCDは、フォーレの歌曲集という事で手を出した1枚。このCDは、フランスのバリトン歌手・ジェラール・スゼーが出したフォーレ作品集2枚の中からセレクトしたもの。「5つの歌曲集」、「幻影」op.113、そしてフォーレ最後の歌曲集「幻想の地平線」op.118 の全曲などが入ってました。

 僕の印象では、フォーレやフランクはロマン派から印象派へと移っていく時代のフランスの作曲家。特にフォーレは完全に印象派和声まで踏み込んだ曲は記憶にないのですが、でもロマン派はもう超えているよな…と感じる転調やら和声を使うのを何度も聴いたことがありました。このCDでいうと、連作歌曲集《幻影》op.113 あたりがそうで、とくに4曲あるうちに最初に2曲が本当に素晴らしかった!この歌曲集、ブリモン男爵夫人が書いた詩に曲をあてているのですが、詩の方は「私の思いはつつましい白鳥」みたいにちょっとシロウトくさいんですが(^^;)、音楽がとにかく素晴らしかったです。
 他に良いと感じたのは、ヴェルレーヌの詩に曲をあてた《ヴェネツィア歌曲集》op.58の第2曲「ひそやかに」、そしてベルギーの象徴派詩人レルベルグの詩に曲をあてた《イヴの唄》op.95 の中の#6「生命の木」と#10「おお死よ、星屑よ」の2曲。このあたりの歌曲は、もうシューベルトシューマンあたりの歌曲とは作曲の次元が違うと感じるもので、本当に素晴らしく感じました。

 ただ、クラシックの歌曲って、あくまで詩がメインで、その伴奏として音を添えているというぐらいのものが多いんですよね、現代のジャズやシャンソンやタンゴやポップスみたいに、音楽部分をガッチリと作ってなくて、イントロもなければ曲中での歌のカウンターを取る事もなく、本当にモノディ程度のものが少なくないです。フォーレも例外ではなくて、いいと思うものでも、ここからもう少し作り込んでもう少し現代化したら、音楽的な完成度はもっと増すんだろうな、と思ったりして。そんな事はあのレクイエムを書き上げたフォーレですから、やろうと思えば朝飯前なんでしょうけど、そこまで出しゃばらないのが当時のヨーロッパでの詩に対するリスペクトのあらわれというか、歌曲の位置づけというか、そんなところだったのかも。

 そうそう、このCDの元になっているレコードって、『Les Melodies de Gabriel Faure』や『Mandoline and other Songs』みたいなんですが、それだけだとこのCDに入ってる曲を網羅できません。僕はコンプリートする気がなく、なるべくたくさん聴けるものが1枚あればよいと思ったのでこの盤は需要にあってましたが、もしコンプリートしたいと思っていらっしゃる方は、この盤は避けた方が良いかも(^^)。バリトンはあんまり好きじゃないんですが、これは素晴らしかったです!


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『ラヴェル:《道化師の朝の歌》 《シェエラザード》 ほか アバド指揮、ロンドン交響楽団』

Ravel_Sheherazade_Abbado LondonSym ラヴェルのピアノ独奏曲全集の中に入っていた《鏡》5曲を聴いていたら、「あれ?この曲知ってるな」というものがありました。「道化師の朝の歌」と「海原の小舟」です。そして、うちにあるCDをゴソゴソ探すと…ああ~なるほど、この2曲の管弦楽曲版を聴いた事があったみたい。それがこのCDですが、僕がこのCDを買ったお目当ては、シェエラザードでした。しかも、自分のお目当てはリムスキー・コルサコフの書いた「シェエラザード」だったのに、間違えてラヴェル作のものを買ってしまったという(^^;)>。若さって罪ですよね。

・道化師の朝の歌
・海原の小舟
・ツィガーヌ
・シェエラザード(全3曲)
・序曲《シェエラザード》
・ラ・ヴァルス

 ピアノ独奏曲集《鏡》の中の2曲の管弦楽版は、ピアノ独奏の方が面白かった…というか、たいがい僕は、楽器編成は小さければ小さいほど良いと感じる傾向があるみたい。少人数であればあるほど、「合わせ」より「表現」に力を割く事が出来るからなのかなあ…な~んて思ってますが、実際はどうなんでしょうね。

 「ツィガーヌ」は、ジプシー・ヴァイオリンとオーケストラの協奏曲みたいな形でした。ヴァイオリンはサルヴァトーレ・アッカルドという人でしたが、これが東欧の民族音楽っぽい演奏ですごく良かった!管弦部分は蛇足と思ってしまったぐらいでしたが、実はピアノをツィター属の楽器みたいにして演奏する版がオリジナルみたい。それ、たぶん未聴ですが聴いてみたいです。

 「シェエラザード」と、その序曲。シェエラザードは千一夜物語の登場人物で、女を抱いては殺していた王様に毎晩話を聞かせた女の事です。そして、千一夜に渡って話を続けたんですが、話が終わっても王様はシェエラザードを殺さなかった、みたいな。というわけで、シンドバッドの世界なんですが、少しだけエキゾチックな隠し味を入れてある感じで良かったです。レイ・ハリーハウゼンというストップモーション・アニメーションの巨匠がシンドバッド系の映画を何本も作っていますが、あそこで見た大冒険を詩と音で体験している気分。ファンタジーですね(^^)。

 ただ…すばらしい音楽とは思うんですが、必要以上に娯楽っぽく感じました。これは演奏がどうとかいう事ではなくて、スコアや創作動機自体がそういうものと感じます。娯楽なので、娯楽と思って聴けば最高に楽しいんでしょうけど、素晴らしい音楽体験を…みたいなに思うと、「超一流の作曲家や演奏家が、超一流の技術を使って遊んでる」みたいに感じてしまいました(^^;)。。


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『ラヴェル:ピアノ独奏曲全集 ポール・クロスリー(p)』

Ravel_Piano works_PaulCrossly ラヴェルのピアノ独奏曲のコンプリート盤です!僕としては、74年にアルゲリッチが演奏/録音したラヴェル独奏曲に感動しまくったので、「夜のガスパール」や「ソナチネ」や「水の戯れ」は新しいものを聴く必要はないんです。そういうのを追いかけてるときりがないですからね(^^;)。ただ、「鏡」はいい演奏を聴きたかったんです。このCDの演奏はイギリス人のポール・クロスリー武満徹「夢の引用」の初演ピアニストで、他にもグレツキやベリオからも作品を献呈されている素晴らしい人。現代曲の演奏が有名ですが、ドビュッシーラヴェルの全曲録音もしてるんですね(^^)。

 録音がかなりライブでしたが、録音がアビーロード・スタジオという事はリヴァーブ?それとも、こんなに響くスタジオがアビーロードにあるの?シューマンの交響曲全集の時に録音とミックスに不信感を覚えたもんで、僕はアビーロードスタジオでのクラシック録音にちょっと懐疑的(^^;)。

 曲は…いやあ、「ソナチネ」「水の戯れ」「夜のガスパール」といった超有名曲はあらためて言うまでもない素晴らしさですが、「鏡」が素晴らしかった!こんなに良い曲だったっけ、目的を達成できて大満足でした、本当にすばらしい。。特に、鏡の最初の3曲「蛾」「哀しい鳥」「海原の小舟」に引き込まれました。「蛾」なんて倚音の連続で、これが形容しがたい響きを曲想をもたらしていて、すっごい創造力。「海原の小舟」は批判される事も多い曲ですが、こんなに素晴らしい響きのどこがダメなんでしょうね。構造が弱いという事なのかな…

 クロスリーさんのピアノは、「鏡」では感動して聴いていたんですが、「夜のガスパール」になると、僕の頭がどうしてもアルゲリッチと比較してしまい、アルゲリッチに比べるとぎこちなく聴こえます。いや、この難曲は自分でトライした事があるので、これがどれだけすごい演奏なのかはわかってるつもりですが、ラヴェルのピアノ曲を全部聴きたいのでもなければ、やっぱりアルゲリッチを先に聴くべきかな(^^;)。それでも、ラヴェルのピアノ独奏曲の全曲録音を手に出来た事は、またひとつ人生で思い残すことをなくすことが出来た気がして、大満足でした!


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『シャブリエ:ピアノ作品全集 ピエール・バルビゼ(p)』

Chabrier _pianoSakuhinZenshuu_Barbizet フランスの作曲家シャブリエのピアノ作品全集です。ピアノ独奏の他に4手ピアノや2台ピアノの曲も入っていました。シャブリエと言えば何はともあれ「狂詩曲スペイン」ですが、僕はピアノ曲の方が好きです(^^)。そうそう、シャブリエはドビュッシーラヴェルといった印象派誕生前に活躍した人で、フォーレとともにプレ印象派ともいえるかも。

 シャブリエは53才で死んでしまい、しかも前半生はサラリーマンをしていた人なのに、どの曲も聴いた瞬間に「あ、これはプロの作曲家が書いた作品だわ」という完成度。まったく隙がないです(^^)。19世紀末のヨーロッパ音楽なので後期ロマン派音楽的ではあるんですが、その中にフランスらしい優雅さが入っていました。ものによっては印象派的なものも
 完全に僕の趣味ですが、やっぱりドミソなロマン派な曲より、印象派の先駆となったよう和声を使った曲がグッときました。このCDに入っていた曲で言うと、「絵画風の小品集」の第2曲「ゆううつ」と、「3つのロマンティックなワルツ」第3番。
 「ゆううつ」は、1880年作曲でこの響きはメッチャ斬新だったんじゃないかなあ。この曲は9/8と6/8が交錯して出てきますが、響きが素晴らしすぎてその事にしばらく気づかないほどでした。これ、現代に聴いてもゾクゾクものです(^^)。
 3つのロマンティックなワルツ」第3番は、印象派っぽいどころか、完全に印象派です。素晴らしくて鳥肌もの。

 他によかった曲は…
 「絵画風の小品集」の第8曲の「即興曲」。和声にとらわれすぎずに思うがままに作った感じでしたが、そのためか面白い響きが所々にあって面白かったです。
 「5曲の遺作」の第1曲「バラビル」。部分転調の仕方が印書派を用意したような音楽。これ、ぜったいにドビュッシーは聴いてたんじゃないかな…。
 「ブリュノーの思い出」は田園風景のような優雅さ、「ハバネラ」は異国情緒を感じてよかった!

 フランスの音楽というと、僕はまず、シャンソンみたいにどこかウィットでウェットな感じか、印象派のようなフワッとしたものか、宮廷音楽か、そのあたりを思い浮かべます。それってもしかするとフランスではなくパリの文化なのかも。でも、シャブリエやセヴラックを聴くと、明るい太陽の下で葡萄畑が広がっているような清々しさを感じます。フランスってヨーロッパの農業大国ですから、実はパリよりもそういう田園風景の方が圧倒的に多いのかも。
 若い頃は印象派の先駆となったような曲ばかり拾って聴いていましたが、いま聴くと田園風景のような音楽のほうもすごく心地よく感じました。第1次大戦前のヨーロッパのつかの間の平和の時代の音楽、素晴らしかったです!
 

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『ネビュラ -エコーナイト-』 PlayStation2 ゲーム

Nebula_Echo Night プラットフォームをプレステ2に移したエコーナイトです。幽霊ものアドベンチャーゲームなのに、舞台は月!ええ~幽霊でSFもの?幽霊はやっぱり行方不明の豪華客船とか古い洋館とかじゃないと怖くないんじゃ…な~んて思って、やるのを躊躇してたんですが、ブックオフで安く見つけた時に買っちゃいました(^^)。。それだってもうずいぶん昔、時のたつのははやいなあ、大事に生きないと。。

 月面旅行をする観光宇宙船が事故。主人公のリチャードが目覚めると船内はムチャクチャ、そして奥さんがいない!生きていた人は宇宙船から月面の宇宙ポートへと逃げ込んだようで、主人公も宇宙ポートに入るものの、そこには死んだ人たちの亡霊が…

 このゲーム、最初のとっかかりが悪かったです。宇宙船や宇宙ポートの廃墟だと、あんまり怖くないし無機質で幽霊とソリが合わないもんで、のめり込むまでに時間がかかりました。というわけで、最初は「せっかく買ったんだからやろう」みたいな義務感に近くて、はじめてから2~3日は面白くなかったです。
 しかしさすがは名シリーズ、ストーリーが面白かった!!
話が進むにつれて、月面基地での人間関係が分かってきます。月面基地の事故の処理に当たったスタッフ、月に置き去りにされた人々…だんだん、「あれ、俺って一体誰なんだ?もしかして、映画『アザーズ』みたいに自分も死んだことに気づいてない幽霊のひとりなんじゃないか?」な~んて思えてきたり、「もしかして俺って○○なんじゃないか?でもそうすると、見つからない彼女は…」とか考えているうちに、見つけた死体の名前が…そして月で起きた事の真相が分かり…

 もの凄く良く出来たストーリーで、話自体はこの3作目がいちばん面白かったかも。ただ、ホラー的なスリルや謎解きゲームとしてはイマイチに感じました。前2作と違って、謎解きは「こんなのわかんねえよ」みたいに理不尽に感じるものもありましたし。エコーナイトの1作目は万人にオススメしたいですが、この3作目は、1と2をやって楽しかった人は楽しめそうですが、それ以外の人だとけっこう厳しいかも。ところで、フロムソフトウェアの作るゲームって3D酔いします、プレイ時間が1時間を超えると、マジで気持ち悪くなる…。


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『エコーナイト#2 眠りの支配者』 PlayStation ゲーム

EchoNight2.jpg 幽霊ものアドベンチャーゲーム「エコーナイト」の第2弾です!今度の舞台は古い洋館…もうこの時点で怖いっす(^^;)。これも怖オモシロかった!!そうそう、このソフトを作ったのはフロム・ソフトウェアという会社なんですが、この会社が作るゲームはとにかく面白くて大ファンなんですよね、僕(^^)。。

 主人公リチャードの恋人が消息を絶った。彼女を探して、彼女が消息を絶った図書館に、夜中に潜入。そして一冊の本の中に、彼女とそっくりの顔の人物を見つける。帰りの車で事故を起こしたリチャードが目覚めると、そこは洋館で…

Echonight2_screenshot1.jpg これも、幽霊は怖いし、謎解きは難解ながらも理不尽ではなくて面白い、話も良く出来ていて「ああ、なるほど~」みたいな展開で、じつに面白いゲームでした!図書館の本の中に、彼女とそっくりの女が写っていて、そして彼女は失踪していて…な~んていうメインのストーリー自体がもう面白いじゃないですか。そして真相の悲しさったらもう。。

 1作目を楽しめた人なら、間違いなく楽しめるゲームじゃないかと!ただ、2作目は屋敷がかなり広くて、あっち行ったりこっち行ったり大変なので、面白いだけじゃなくて「またあそこまで行かなきゃいけないのか、メンドクサイな…」みたいな所もちょっとあったかな?でも、やってる最中は食事も睡眠も忘れて没頭しまくり。アドベンチャー物のゲームってこの没頭感がたまらないですよね。。


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『エコーナイト』 PlayStation ゲーム

EchoNight.jpg いまとなっては懐かしいプレステで出たホラーゲームです。ホラーといってもバイオハザードみたいなゾンビじゃなくって亡霊が相手、怖えええ!僕、ゾンビやUFOは大丈夫なんですが、幽霊は超ビビるんです。そのくせ怖い話が大好き。このゲーム、単に怖いだけのゲームかというとそうではなく、ストーリーが良く出来ていて、すごく面白かったです!

家が燃えたと連絡を受けた主人公リチャードが父の家に行ってみると、消息不明になった豪華客船の絵がある。その絵に引き込まれたリチャードが目覚めると、なんと船の中。その船には、死んだ乗務員や客たちの霊がさまよっており…

 こんな感じで物語に巻き込まれるんですが、父はどうなったのか、この船と父の家の火災との関係は…などなど、ゲームを進めていくうちに物語の全貌が分かっていって、これが推理小説やサスペンス小説なみの面白さ!船の中にさまよっている霊たちは、この世に何かの未練が残っていて、それぞれの物語が悲しくて胸を打たれるんです。たとえば、この船に乗る前に恋人と悲しい別れ方をした乗組員とか、自分が死んだことにまだ気づいていない乗客とか。

EchoNight_pic1.jpg そして、幽霊が恐い!!このゲーム、電気をつければ幽霊は出ません。でも、部屋に入って電気のスイッチをうまく見つけられなかったりすると、「ウフフ…」と不気味な笑い声がして、それでも点けられないと…うわああああ!!!これ以上怖くて書けません(゚д゚ノ)ノ 。。

 死んだ人が生きていた頃を思い出すセリフが多いもので、この世に残している未練というのが、自分が死ぬ前に思い出すだろう走馬灯のように思えるんですよね。みんな、子どもの頃に隠れんぼしている時に考えていた事とか、その時の感触なんて、普段は思い出さないですよね。でも死ぬ瞬間にはそんな些細な事を思い出して、生きていた頃のいろんな日々を懐かしく感じるんじゃないか…そういう事を思わされたゲームでした。
 ゲームの謎解きは面白い、幽霊は怖くてスリリング、物語は面白く切ない。夢中になってやった最高に面白いゲーム、またやってみたいけど、もうやり直す時間なんてないんだろうなあ…。アドベンチャーゲーム好きの方には超おすすめです!


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『竹内まりや / UNIVERSITY STREET』

TakeuchiMariya_University Street 私大に通ってサークル入ってる音楽好きの女子大生が、オーディションに通っちゃって音楽産業界に入って苦しんだ…というイメージを僕は竹内まりやさんに抱いているんですが、それって素人っぽい曲や歌唱法だけでなくて、このセカンドアルバムの印象が強いからかもしれません。

 アルバムタイトルやジャケットにもあらわれてますが、このアルバム、歌詞が女子大生そのもの。むしろ、女子大生という事を売りにしようとしたとすら思えるほどに女子大生押し。例えば、1曲目「オン・ザ・ユニバーシティ・ストリート」の歌詞。「今日もいつも通り授業忘れて走り出た 彼とあのお店でおしゃべりをする約束」「毎日が幸せで満ちあふれている」。そして、最後にこんなSEが。「ねえ、まりや元気?試験どうだった?」
 といわけで、ちょっと引くぐらいの女子大生推しですが、恥ずかしながら若いころの僕はこのうわっついた日本の私大の雰囲気に憧れるものがありました(^^;)。社会人としての専門知識を身につけるドイツやロシアの大学で、こんなうわっついたキャンパスライフなんてありえないでしょうけど、当時の日本の私大はマジで「毎日が幸せで満ちあふれている」ように感じたんです。

 いつかコミック『翔んだカップル』の感想でも書きましたが、このアルバムが出た1979年当時は、日本の男女関係の転換期で、恋愛結婚が見合い結婚を上回った瞬間。恋愛面での女性の立場が上昇して、勉強してるとは思えない楽しい大学生活を満喫する女子大生という種族が登場してきた…みたいな。その世界観を表現したJポップが竹内まりやさんなんだと僕は思ってます。歌唱に無頓着なので、歌を聴いてるとやや残念なんですが、詞で語られる幸福感がいいです。竹内さんって、後にライブ活動を止めて作曲だけに専念するようになりましたが、やっぱりこのレベルで人前に立つのは本人もきつかったんだろうな…って、ベスト盤とアルバム1枚しか聴いてないのに、ちょっと決めつけすぎかな。。


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『竹内まりや / RE-COLLECTION』

TakeuchiMatiya_ReCollection.jpg EPO さんを聴くと思い出すのが、竹内まりやさんです。これは竹内まりやさんのベスト盤。竹内まりやさんの曲で好きなのは「SEPTEMBER」なんですが、本人じゃなくて松本隆&林哲司さんが書いた曲なんですね、知らなかった。

 大学で音楽サークルに所属して、ポプコンに出て…という経歴が、いかにも50~60年代生まれの日本のフォーク・ポップス系の人だなあ、と感じます。ポップス系の伴奏の仕事で地方のライブハウスに行くと、「昔ポプコンの地方予選でいい所まで行った」という事が人生唯一の自慢みたいな人とちょこちょこ出会うので、ポプコンって日本のポップスのオーディションとして重要な位置にあったんでしょうね。このCDを聴いて感じるのは、まさにこのプロフィール。初心者向けの音楽の教科書に載ってるような普通のコード進行を使って、歌はメロディを取るだけでヴォーカルと呼ぶには程遠く…つまり、趣味で軽音楽を楽しんでいた人なんだな、と。でもその「大学に行きながら、趣味でみんなで音楽を楽しんで」という雰囲気がものっすごくいい!勉強して、サークルでみんなと楽しんで、夏休みには友達と旅行行って、恋人作って、そのうち卒業する…みたいなモラトリアム期間特有の幸福ってあると思うんですよね。このふわっとした雰囲気に、まるでラブコメ漫画を見ているような愛おしさを感じました。

 でも、アマチュアっぽさはやっぱり辛くもあります。竹内さん、声が暗い…。これがきつくて、僕は長時間聴くのは無理 (^^;)。どういうわけか、昔の日本のシンガーソングライターさんって意地でもヴォイストレーニングしないで我流を通す人が多いですよね。荒井由実さんなんかもそうですが、当時のシンガーソングライターさんにとっての音楽とは、コードとメロディ作って歌っていればいいもので、歌唱もアレンジも音楽のうちに入っていないキャロル・キングみたいなものという認識だったのかも。
 というわけで、歌や曲やアレンジにプロフェッショナルなものを求めるとキツいかも知れませんが、青春の思い出のカレッジ・ポップスみたいなものと思って聴いたら、なかなか心地いい音楽でした(^^)。


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『EPO / THE BEST 1980-1990』

EPO The Best 1980-1990 EPO さんが歌った山下達郎さん作曲の「DOWN TOWN」に大ハマりした後も、エポさんの歌は「あ、いいな」と思うものが色々と街中で流れていたんですが、典型的な流行歌なのでアルバムを買う所まではなかなかいかないまま月日がたちました。そうこうしているうちに小室哲哉さんが出てきたあたりでJポップにまったく興味がなくなってしまい、いつしかEPOさんの事は忘却の彼方。そんな折、近くのレンタルビデオ店のワゴンセールで(レンタルビデオ店というのもなくなってきましたね^^;)馬鹿みたいな安さで売っていたのがこのCDでした。オッと思って収録曲を見ると…お~僕が聴きたいと思ってたEPO さんの曲が全部入ってる!というわけで、レンタルするよりも安い値段で購入。

 僕が聴きたかった曲は、「DOWN TOWN」以外では、これまた「オレたちひょうきん族」のエンディングに使われた「土曜の夜はパラダイス」、それから「う、ふ、ふ、ふ、」「くちびるヌード・咲かせます」…要するに、みんなテレビCMで使われた曲なのかも。そして、最初から聴くと…おお~、「レモンライムの青い風~」!これもCMに使われてましたが、これもEPO さんの曲だったのか。あと、「Harmony」「音楽のような風」という曲も、聴いた事がありました。意外に思ったのは、達郎さんの「DOWN TOWN」以外は、EPO さん自身が作曲してた事。スタジオ仕事のコーラス担当のお姉ちゃんかと思ってましたが、シンガーソングライターだったんだなあ。

 いいと感じたのは、サビのメロディのキャッチーさです。最近、クラシックをよく聴いていたのですが、古典派あたりの比較的シンプルなソナタでも、最初の第1主題ですら記憶できなかったりします。モーツァルトの三大交響曲でも、40番は歌えるけど、39番と41番は好きなくせに口ずさめない、みたいな(^^;)。それに比べると、EPO さんの曲はメロディが覚えやすく作られていて、1回聴くともう覚えちゃいます。サビから作ってるんじゃないかなあ。
 一方、ちょっとアレだと思うのは、リピートが多すぎて飽きてしまう(^^;)。リピートするにしても、プログレッションを少しいじるとか、徐々にオブリがついていくとか、なにか発展させていけばいいのに、ほぼそのまま繰り返すもんだから4分程度の曲なのに途中で飽きちゃう。でも、そんなの気にならないぐらい軽く聞き流すような音楽なんでしょうね。
 
 このCDは16曲入りで、発表順に並べてありました。僕的に面白かったのは10曲目あたりまでだったので、86年あたりまで?90年代に近づくほど、曲がつまらなくなっていきました。なるほど、日本の歌謡音楽がつまらなくなった時期とシンクロしているのか…そこには何か理由があるのかも知れません。というわけで、エポさんの声や曲は好きだけど、アルバムを揃えるというほどではない僕みたいな人にはもってこいのベスト盤でした。


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『EPO / DOWN TOWN』

EPO Downtown 小学生のころの週末ほど楽しかったものもありません。金曜の夜は「ワールド・プロレスリング」で猪木タイガーマスクに熱狂。土曜は午後から少年野球、夜は「8時だヨ!全員集合」か「オレたちひょうきん族」。とくに小学校高学年の頃は、モンスター番組「全員集合」の人気を奪った「ひょうきん族」の、タブーも下ネタも何でもありの面白さの虜になっていました。鶴太郎が熱すぎるおでんを食わされるのが好きでね(^^)。そんな娯楽番組のエンディングテーマに使われていたのが、EPOさんの歌った「DOWN TOWN」でした。

 金曜土曜と続いた楽しい時間の最後にかかる音楽は、僕にとって特別。ドリフを観ていた頃は、番組ラストの「ババンババンバンバン」のメロディが始まると、「ああ、メチャクチャ楽しかった金曜土曜ももうおしまいか」という、祭りのあとの静けさのような感慨をいつも覚えていました。で、姉と川の字になって寝るんですが、布団の中で「今日の志村のあれ、面白かったね」なんて話してクスクス笑って、親に「早く寝なさい」と怒られたり。それはひょうきん族でも同じで、ひょうきん族の場合は、エンディング曲の詞がもろにそれを表現していました。
 「七色の黄昏が下りてきて」「土曜の夜はにぎやか」「街角はいつでもひといきれ」「この街いつでもおめかししてるよ」…「ひといきれ(熱れ)」という言葉を覚えたのはこの歌でした。そして、EPO さんの抜ける声を聞くだけで、ものすごく気分が良くなり、聴いているだけでウキウキ。そしてこの曲が終わると、祭りのあとの静けさ。それだけに、楽しかった金曜土曜の楽しさがよけいにひきたって感じられたのでした。というわけで、EPO さんの歌う「DOWN TOWN」には、子供の頃の週末の感慨が詰まっているようで、聴くだけでジ~ンと来てしまいます。
 そしてこのアルバム、もう1曲大好きな曲が入ってます。3曲目「クラクション」、フィフティーズのバラード風ですが、これに80年代っぽいサウンドと歌詞がビタッと嵌まって泣けました。また、音楽抜きの詞だけなら、「アスファルト・ひとり…」も好きです。

 ただ、このアルバムに入っている「ダウンタウン」は、ひょうきん族のエンディングで使われていたものと違うんです。こちらのバージョン、レコーディングスタジオでドンカマに合わせて録音したようで、妙にかしこまった歌唱と演奏でまったくグルーブしないのです(T_T)。そこだけが残念でした。EPO さんの「Down Town」は、ひょうきんストリートバンド演奏のものの方がいいなあ。

 洋楽でも邦楽でも80年代のポップスのアルバムを聴くと、感想がだいたい似てきます。良さを感じるのは、詞や音の行間から感じる80年代特有のウキウキしたような空気感で、これが最高!悪く感じるのは大量生産が生み出す音楽的な安さ…でもこれは仕方ないのかな、もっといいものを聴きたいなら、もうポップスは卒業しろという事なんでしょうから。このアルバムで歌われている歌詞は、小さい頃の僕が憧れた世界と同時に、数年後に訪れた自分が本当に感じた本心でもありました。自分の少年期という、もう戻ってこない頃の懐かしさがギュッと詰まったスバラシイ1枚。当時の楽しさが全部よみがえるようです。


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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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