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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『Billie Holiday / The Complete Original American Decca Recordings』

Billie Holiday Complete Original American Decca Recordings 生前に発表されたアルバムから見たビリー・ホリデイは、1947年発表の『Billie Holiday』(日本だと『奇妙な果実』に1集と2集をまとめて収録)から死ぬ59年までの間に、色んなレーベルに録音を残しました。あっち行ったり戻ったりを繰り返してるので、専属契約はしてなくてすべてショット契約だったんじゃないかと。発表枚数から見て特にビリー・ホリデイに力を入れたレーベルは、コモドア、ノーマン・グランツのレーベル(Clef やVerve)、デッカの3つがあります。コモドアは『奇妙な果実』、クレフ(ヴァーヴ)は『ビリー・ホリデイの魂』という決定作があったのに、デッカには僕が若い頃に観た名盤ガイドに載っているアルバムがなかったもんで、僕はデッカ録音のビリー・ホリデイを聴いていませんでした。そして、今ごろようやくデッカ録音を聴いたのですが、それがこれ、ビリー・ホリデイのデッカ録音全集でした。CD2枚組です。

 僕が聴いてきたビリー・ホリデイの録音で歌のコンディションが一番いいのはこれだ…とすぐに思いました。ビリー・ホリデイって、叫ぶこともなければ派手な技巧で魅せる事もなくて、どちらかというと控え目に淡々と丁寧に歌うタイプじゃないですか。でも表現がないわけじゃなくて、少しだけ喋るように歌ったり、ポルタメントを多用したフェイクをしたり、細かいヴィブラートをかけたり、これらひとつひとつを丁寧に積み上げていきますが、その精度がこのデッカ録音がいちばん良かったです。

 歌だけでなく、音楽のコンセプトが良かったです。伴奏はビッグ・バンド、ウィズ・ストリングス、スモール・コンボなど多様でしたが、みんなスタジオ録音で良い演奏、そしてどれも「気軽に聴けてほっとする音楽」を目指しているように感じました。コモドア録音は悲壮感あふれる曲やブルースが耳に残って、コロンビアの『Lady in Satin』はストリングス・アレンジが聴きもの。でもデッカ録音はどの編成でもリラックスしてラジオから流れてくる音楽、みたいな。そしてビリー・ホリデイの控え目な表現とあったかい声には、こういうほっとする音楽が合ってると感じました。
 たとえば、「ラヴァー・マン」。この曲がビリー・ホリデイに送られた詩で、それを気に入った彼女が作曲家に曲を頼んだ事を、このCDのライナーではじめて知りましたが、劇的なしびれる曲に仕上げる事だってできるラヴァーマンですらサラッとした演奏と歌唱。ああ、ビリー・ホリデイって、日本だと悲劇の人みたいなイメージが先行しちゃったけど、本当はもっとあったかく歌っていた歌手だったんじゃなかと思いました。

 これを最初に聴いていたら、僕hsもっと若い頃から彼女の音楽を楽しめていたかも。このCDではバーンスタイン作曲の「Big Stuff」が、アレンジも演奏も歌も最高。他の曲もおおむね同じ傾向で、大昔のアンティークな喫茶店で古いツイードのラジオから流れてくるような音楽で気持ちよかったです。もしかしてビリー・ホリデイのキャリア・ハイって、デッカ時代じゃないかと思ったほどに良いCDでした(^^)。


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『Billie Holiday / Lady in Satin』

Billie Holiday Lady in Satin 1958年録音、晩年のビリー・ホリデイが作ったアルバムです。内容はウィズ・ストリングスで、アレンジャーはまだ無名に近い若手だったレイ・エリス。ビリー・ホリデイの指名だったそうです。ジャズ・バンドの方には、マル・ウォルドロン(p)、バリー・ガルブレイス(g) なんて名前が見えました。おお、マル・ウォルドロンがレディ・デイの歌伴やった録音って残ってたんですね、知らなかった。。

 ああ、オケが素晴らしいわ…。匂いは50~60年代のボッサについてるストリングスとか、映画『いそしぎ』とかの古いアメリカ映画みたいな感じ。演奏もアレンジも、そして空間を広く取った録音も絶品でした。そうか、ビリー・ホリデイがサテンのように滑らかな音の中にいるから「レディ・イン・サテン」なんですね。すでに大物シンガーだったレディ・デイも、レイ・エリスの音楽をどこかで聞いて感動して、彼と仕事をしたいと思ったのかも。
 ただ、ビリー・ホリデイのヴォーカルが…声は酒焼け、ピッチも声量も安定させることが出来ず、味なんて言って受け入れられないほどのバッド・コンディション。痛々しくて聞いていられないほどでした。ビリー・ホリデイって、若い頃はレスター・ヤングと朝まで飲み歩き、晩年は男に教えられた麻薬に苦しんだそうです。それが拙かったのかも。のどは替えがきかないので、ヴォーカリストは酒たばこは厳禁と言われますが、それを痛感させられるレコードでした。これ、ビリー・ホリデイ全盛期の声だったら大名盤だったかも。。

 僕が持っているのはボーナストラック入りのCDですが、リハ風景も入っていて面白かったです。生弦もバンドもヴォーカルも同時録音なんですね。失敗してビリー・ホリデイが止まるとオケも止まって弾きなおし、みたいな。弦録音って86442ぐらいでも時間100万円以上はかるかかるから、今だったら仮歌だけ入れて弦の録音をとっとと終わらせ、あとで本歌をダビングするので、いい社会科見学をさせてもらった気分でした。ウィズ・ストリングスって大物にしか許されない録音なんですよね。

 もしこのオケでフロントが奇麗な声で歌うだけの人だったら、単なるイージーリスニングになっていたかも。何らかの深みを感じさせる人がフロントに立ったのは正解だったのかも知れません。僕は翌年にビリー・ホリデイが死ぬ事を知ったうえでこのアルバムを聴いてしまったもので、メル・デイヴィスのトランペット・ソロが葬送のファンファーレに聴こえてしまいました。うう、泣ける…。


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久々にビリー・ホリデイ『奇妙な果実』を聴いたら感動した

BillieHoliday.jpg ジャズ・ヴォーカリストの代名詞ともいえるビリー・ホリデイの名盤『奇妙な果実』ですが、昔はちょっと暗いし古臭いし…みたいな感じであまり良い感想を持てませんでした。でも好きなところはあって、取っておいたんです。

 つい先日、インターネットラジオから流れてきた古いジャズ・ヴォーカルを聴いて「なにこれ、メッチャいいんだけど」と思ったら、なんとビリー・ホリデイで、しかもアルバム『奇妙な果実』に入っていた曲。というわけで、久々に聴き直したら、ちょっと感動してしまいました。

 というわけで、昔書いたビリー・ホリデイ『奇妙な果実』の感想文に追記を加える事にしました。良かったら、読んでみてくださいね(^^)。

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『柴田南雄:ゆく河の流れは絶えずして 柴田南雄作品集』

SibataMinao_Yukukawano nagareha 柴田南雄(みなお)先生、色んな音大で教えていた人で、20世紀音楽研究所を設立した人でもあります。さらに、作品よりも著作を先に読んでいた事もあって、僕の場合は作曲家というよりも音楽教師や研究家というイメージが強いのですが、ちょっとだけCDを持ってます。そのひとつがこれ、数少ない交響曲の中のひとつ「ゆく河の流れは絶えずして」を収めたものです。他に「北園克衛による三つの詩」が入っていて、僕のお目当てはこっちでした。なんといっても、日本でかなり早い時期に12音列技法を使った作品ということだったので(^^)。指揮は若杉弘、演奏はソプラノ伊藤叔、東京都交響楽団、東京混声合唱団。

 交響曲「ゆく河の流れは絶えずして」は、2部に分かれていました。前半1部は…う~んなんだこれは、多様式…というんでもないですね、しいて言えばコラージュでしょうか。5楽章に分かれてますが、古典派みたいな作曲様式の楽章もあれば、ロマン派みたいな楽章も現代調もあって、なんだかツィンマーマンみたいだな…な~んて思ってると、5楽章は思いっきり音列技法…と思ったら、急に無伴奏合唱で方丈記を読み始めた(^^;)。。う~んこういうコラージュ作品って、音楽とは違うと思ってしまうんですよね、だって、すでにある音楽を切り貼りするだけなら、別に音楽家じゃなくたって出来るじゃないですか。単に音符を構造化するだけでなく、色んな技法があるなかでどういう技法を使うか、あるいはそこから進んだ技法を作りだすのか、そういうものを含めて作曲だと思うんですよね…。ただ、それぞれはよく出来ていて、なるほどさすがに先生だなと思いました。個人的な趣味は、1楽章に戻る8楽章の構造と、そのサウンドでした(^^)。

 「北園克衛による三つの詩」。これはソプラノと管弦による曲で、12音列技法を使ってます。この詩人について何も知らなかったんですが、詩はすごくシュール。「白い食器、花、春の午後3時、白い、白い、赤い」みたいな感じです。もしかして、音節が切りやすくて音列技法を使いやすいからこういう詞を選んだのでは(^^;)。音列技法の作品としてはシェーンベルクの音列技法初期作品みたいで、ちょっとぶっきらぼうに聴こえました。

 柴田南雄さん、作曲家としてはいちはやく音列技法に着手したり、管理された偶然性を取り入れたり、図形譜や電子音楽に取り組んだりと、時代の先端の技法を自分に取り組んだ人です。前衛なのかと思って聴いてみたのですが、それ以上に研究家としての資質が高い人なのかも知れません。なにせ新しい作曲技法が次々に誕生した時代だったので、柴田さんみたいな人が音大の先生でいてくれたことは、日本の作曲界には大きなプラスだったんじゃないかと思います。


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『石井眞木作品集Ⅲ 西の響き・東の響き』

IsiiMakiSakuhinshuu3_NisinoHibikiHigasinoHibiki.jpg CD「石井眞木作品集Ⅱ」での、西洋の色んな作曲技法をあれこれつまみ食いして音は真似てあるものの、肝心の構造部分はテキトーに感じた作品を聴いて、「サウンドが良くても構造が弱いと音楽ってきついんだな」と感じた僕は、それからしばらく石井さんの音楽を聴かなくなってしまいました。しかしその印象が変わったのがこのCD。作品集Ⅱが西洋音楽のポストモダンだったのに対し、作品集Ⅲは西洋の楽器と日本の楽器の混成による作品集、これが良かったです!

1. 遭遇1番
2. 残照の時
3. 笙とチェロのための音楽
4. 解説
5. 熊野補陀落

 作曲より先に、邦楽器のプレイヤーがめっちゃうまい!2曲目「残照の時」はヴァイオリンと箏のデュオですが、箏の沢井忠夫さんがべらぼうなうまさ、これはすごい。尺八とピアノのデュオの1曲目「遭遇1番」の尺八の三橋貴風さんも素晴らしいです。曲の前に、こうした邦楽器演奏者の演奏のすばらしさだけで、とんでもなく素晴らしい音楽になってます。プレイヤーの力って大きいなあ。。
 曲も素晴らしかったです。シンプルではあるけど大きな構造があって、これが音楽が時間的に続いていく促進力になっているように感じました。前衛から離れて古典的ですが、それが効果的だったんじゃないかと。「遭遇1番」なんて単純な3部形式+コーダですが、序破急がはっきりしていて良かったです。どの曲も一度は盛り上がる所を作り、変化するところを作るので、大きな構造が見えやすいのかも。

 現代音楽を西洋音楽の歴史の上で眺めると、新しい音色を得た面があると思います。それは無調の時代で和声的な意味での新しい音という事もあるし、単に新しい楽器や奏法を使うという直接的な方法もありました。その新しい響きを使って、瞬間的には非常に緊迫感も色彩も豊かで、一方の構造は古典的な分かりやすくまた効果的な方法を使っているので、このバランスがいいのかも。緊張感のある良い音楽を作り上げた感じでした。
 そしてその新しい音の素材が邦楽器となっている事で、楽器自体に付きまとっている日本音楽の特徴も音楽に巻き込まれて民族主義的にも響いて、うまいこと西洋音楽の模倣から逃れて、独特の音楽を作りだしているように感じました。プレイヤーの演奏が素晴らしいものぞろいで、とても素晴らしい音楽でした。個人的に好きな曲は…4曲目のオーケストラの響きと横笛の協奏曲調の曲や、5曲目の義太夫節と楽器と電子音響の作品が特に印象に残っていますが、5曲とも全部好き。というわけで僕にとっての石井さんは、邦楽器を使った現代音楽を書くととつぜん素晴らしくなる人なのでした(^^)。


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『石井眞木作品集 響きの現在Ⅱ』

IsiiMaki_Hibiki no Genzai2 日本の現代音楽作曲家の石井眞木さんの作品集です。この作品集は独奏や2台マリンバなど、室内楽のなかでも小さ目の編成のものを集めてありました。収録は以下の通り。

 1.ブラック・インテンションⅢ op.31
 2. 夜の響き op.82
 3. 飛天生動Ⅱ op.55
 4. ア・グリーム・オブ・タイム(時の閃き) op.53
 5. 失われた響きⅠ-ヴァージョンB op.32

 石井さんは1936年生まれなので、作曲家として活躍を始めたのは戦後、思いっきり前衛の時代を通過しています。でも1曲目のピアノソロ「ブラック・インテンションⅢ」を聴いてビックリ。思いっきり調音楽、しかもミニマルっぽいです。そこからクラスターがドカンと入ってきたり、別のテンポを持つフレーズが重なってきたり…みたいな感じで、ポストモダン的。それにしてもこのピアノを演奏するのは右手と左手がまったく違うテンポで演奏しないといけないところがあるから死ぬほど難しそう。というか、これを弾ける人ってどれだけいるんだろう。高橋アキさんすげえ。

 以降も色んな技法が出てきて、どれもさすがプロ作曲家という丁寧な響き。荒っぽい所がありません。ただ、ちょっと感じてしまった点がふたつ。ひとつは、あの技法この技法とつまみ食い的なので、何がしたいのか分かりませんでした。そういう意味でいうと、現代音楽の技法やアイデアであれこれと作る職業作曲家と感じてしまいました。
 もうひとつは、全体の構造を作るのがうまい人じゃないんだな、と思ってしまいました。部分部分はさすがプロ、パーフェクトな響きで聴き入ってしまうのですが、全体が直線的か、変化してもそれが唐突でうまくない(^^;)。さっきの「ブラック・インテンションⅢ」も、変化するところはいきなりクラスターとか、構造は別のものが別のリズムで折り重なるとか、ちょっと幼稚に思っちゃうんですよね。2曲目の諏訪内晶子さんのヴァイオリン独奏曲「夜の響き」も、サウンドや技法への配慮はプロフェッショナルなのに、全体を感じる事が出来ませんでした。

 この傾向ってなんなんだろうかと考えたんですが、要するにこの人は音楽を「何かの絵を描く道具」と考えてるのかも。僕は石井さんのCDを他にも聴いてきたんですが、自分でライナーを書くことが多くて、その曲説明がちょっと恥ずかしいんですよ。曲タイトルも「飛天生動」とか「ブラック・インテンション」とか、ちょっと中2病っぽいじゃないですか。音楽の説明もそういうところがあって、「敦煌石窟に感動して曲を書いた」とか、「左手と右手のリズムを分離して演奏する曲を書いた」とか、作曲のアイデアが場当たり的で、「俺は音楽をこういうものだと思っている!」みたいに突き詰めた作曲とは思えないんですよね。それも悪い事じゃないと思いますが、戦後前衛の時代を通過した日本人作曲家の中にはいると、軽い作曲に感じました。そんな石井さんのイメージが変わったのは…また次回(*゚∀`)ノ!


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『The Allman Brothers Band』

Allman Brothers Band まだ売れなかった頃のオールマン・ブラザーズ・バンドのセカンドアルバムを聴いたら、あまりの素晴らしさにのけぞってしまい、さらに売れなかった69年発表のこのファーストアルバムにも手を出した若い頃の僕でした。今ではプレミア必至のこのLPも、僕が買った頃はCDへの移行期だったからかLPが馬鹿みたいに安く手に入ったんですよね(^^;)。これがまたとんでもない素晴らしさでした!

 いかにも南部アメリカらしい荒くれた感じで、後年の『At Fillmore East』やカントリーロック色が強く出た『Eat a Peach』や『Brothers and Sisters』からは想像できないほどハード。それでいて時としてインストのフュージョンというかラテンロックというかファンクというか、スタジオミュージシャン級の演奏技術がないと成立しないような音楽まであってビックリ。1曲目からいきなりインストだし、メドレーでつながる2曲目もブルース調ながら単純なスリーコードではなく、しかもきちんとトゥッティを作ってあって見事。ブルース曲は軒並みそうで、ただジャムするのではなく書くところはきちんと書いて個性化してありました。こういう音楽がリフを重要視するハードロックを生み出す土壌になっていったのかも。ZZトップやレーナード・スキナードがそうでしたが、サザンロックって、のちにハードロック化したものも多かったですしね。

 プログレッシブ・ハード・ブルースロックとでも呼びたくなるような音楽。こんなかっこいい音楽がなんで売れなかったんだろう…プロモーション的なことはよく分からないので音楽だけでいえば、クソかっこいいけど、69年だともうブルースロック系は出尽くした感があって飽きられてたのかも。たしかに、このジャケットじゃ「なんだ、またブルースロックか」と思われても仕方なし。でもメッチャカッコよかった、ハードなブルースロックが好きな人はぜひ!


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『The Allman Brothers Band / Idlewild South』

Allman Brothers Band Idlewild South デュアン・オールマン亡き後のスタジオ録音アルバムが思いのほか素晴らしかったもので、実はオールマン・ブラザーズ・バンドってライブよりスタジオの方がだらだらとアドリブ演奏していなくて良いんじゃないか…と思って手を出したのが、このセカンド・アルバムです。あの伝説の『At Fillmore East』よりも前に録音された1970年録音という事で、まだデュアン・オールマン存命中ですね(^^)。

 はじめてこのアルバムを聴いた時の感動は、何十年かぶりに聴き直した今でも同じでした。インスト率も高く、サザン・ロック版のクロスオーバーというか、サンタナフュージョン期ジェフ・ベックを野太くしたみたいで、マジでかっこいいんですよ!曲はよくできてるし、演奏はクソうまいし、文句なしです。売れてからよりも、むしろデビュー当時の方が高度な事をやってたんですね。曲はブルース一辺倒ではなく、モノによってはテンションをバシバシ突っ込んだほとんどクロスオーバーみたいなものまでありました。いやあ、これはすごいぞ。
 演奏で特に素晴らしく感じたのがドラムとヴォーカル。ドラムはロック系スタジオミュージシャンの中でも上位に来るんじゃないかなあ、スネアのヴァリエーションとか半端じゃなかったです。そしてグレッグ・オールマンのヴォーカルが、以降にないほど見事な表現力。そうそう、このバンドとレイナード・スキナードのヴォーカルって声質も歌い方も似ていますが、サザンロックのヴォーカルの規範になった人とか、いるのかな?あ、でもベースもボトムを支えるだけじゃなくてカウンター取ってくるし、ツインギターはバトルでスライド決めてくるし、やっぱり全員うまいや。。

 シン・リジィにせよファンカデリックにせよ、60~70年代の欧米にはデビューしたばかりの頃の方が高度な音楽をやっているバンドが多いのは、セールスが芳しくないとレコードメーカーから方針転換を迫られて売れ選に行くなり分かりやすい音楽にするナリが求められるのかも知れません。これに感動したもんで、のちにデビューアルバムを中古で見つけた時も買ってしまったんですが、これまた…その話はまた次回!


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『The Allman Brothers Band / Brothers and Sisters』

Allman Brothers Band_Brothers and Sisters 1973年発表(録音は72年)のオールマン・ブラザーズ・バンドのスタジオ録音アルバムです。デュアン・オールマンがいないはじめてのアルバムですが、僕の家のターンテーブルに一番多く乗ったオールマン・ブラザーズ・バンドのレコードはこれ。「ジェシカ」という曲が大好きなんです!この曲、イントロさえ聞けば「あ、この曲か」とみんな思うんじゃないかなあ。そういう贔屓目があるからかも知れませんが、オールマン・ブラザーズ・バンドの音楽が完成したのってこのアルバムじゃないかと思ってます(^^)。

 今までと同じで、やっぱり簡単なソングフォームとリードシートを作ったらあとはジャムという作りですが、それまでのライブ盤には感じられない良い点を3つ感じました。ひとつは、アドリブをいつまでもだらだらと続けないので曲のまとまりが良い事。ひとつは、それぞれの曲が個性をもって書き分けられていて、バラエティ富かに感じられること。「Come and Go Blues」なんて、間奏部分で転調してDパートを作り上げてるし、これは今までのだらだとジャムしていたバンドから大きな飛躍じゃないかと。やったらやったで凄くうまいんだからとっととやればよかったのにね(^^;)。
 最後に、曲の個性化にあたって、南部アメリカ的な明るく前向きな雰囲気を持たせるディレクションをした事。ここまでのアルバムを聴くにつけ、このバンドはもっとプログレっぽい方向に行く事も、後期ドゥービーブラザーズみたいにAORやフュージョンっぽい方向に行く事も出来たと思うんですが、南部っぽさを音楽の中心に持ってきたところが、オールマン・ブラザーズ・バンドの美感だったんでしょう。だから僕は「あーこのへんからサザン・ロックっぽさが思いっきり前に出たんだな」と感じるのかも。このアルバムと、レイナード・スキナードのファースト~セカンド・アルバムあたりが、僕的なサザン・ロックのステレオ・イメージになっています。

 この泥臭くもあったかい感じ、大好きです。ブルースをやってもミシシッピデルタの戦前ブルースみたいに憂いを帯びず、開放的なんですよね。僕はゲートフォールド仕様のLPを持ってるんですが、見開きジャケット部分はメンバー全員の家族が写っていて、みんな笑顔。この大ファミリーの中にディッキー・ベッツの娘さんのジェシカちゃんは写ってるんでしょうね。。


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『The Allman Brothers Band / Eat a Peach』

Allman Brothers Band Eat a Peach 71年発表のアルバム『At Fillmore East』の大ブレイクで一躍スターダムにのしあがったオールマン・ブラザーズ・バンドですが、同年10月にリーダーのデュアン・オールマンがバイク事故で死亡。うわあ、アメリカン・ドリームをつかんだ直後に死んだのか、ついてないですね…。これでバンドも解散かと思いきや、残されたメンバーが一致団結してバンドは存続。翌72年にリリースされたアルバムが『イート・ア・ピーチ』です。これも『At Fillmore East』と同じ2枚組、アルバムの半分がフィルモアのライブ、他はデュアン・オールマン存命時と亡き後それぞれのスタジオ録音でした。

 71~72年のオールマン・ブラザース・バンドの印象は、スワンプ・ロックとサンタナ的なテクニカルなブルースロックの真ん中のジャム・セッションです。このアルバムはその典型で、仮に曲を作ってもシンプルなリードシートだけ作ってあとはアドリブ、みたいな。これがすべてで、良さも悪さもすべてここに還元できるんじゃないかと。

 良さは、さすがにスタジオ・ミュージシャン級のプレイヤーが多いのでうまい!デュアン・オールマンがいない分だけ前作には劣りますが、それでも全員うまいので美技を安心して楽しめました。デュアン不在でもディッキー・ベッツさんのスライド・ギターだって相当なレベルと感じました。グレッグ・オールマンさんはピアノよりオルガンを弾いた時の方が好きでした。音楽が泥臭いので、少しでもモダンなムードになる楽器の方が心地よく感じるのかも。

 良くないのは、なんでもアドリブで対応しようとするもんで、転調とかアンサンブルとか、そういう凝った事は一切出来ない、みたいな。すべて個人技頼りで大味なんですよね。B面とD面に入っていた「マウンテン・ジャム」なんてその典型で、シンプルなコードの上でアドリブソロを回すだけでした。いま聴くと「同じビートとワンスケールで20分も30分も続けるミュージシャン同士のお遊びを人に聴かせるのか」みたいに感じてしまった僕の感性は、いたって普通じゃないかと(^^;)。

 聞いた話では、アメリカ南部ってブルースでもカントリーでもジャズでもロックでも、スタジオ級の人でも楽譜を読めない人がざらにいるんだそうです。アメリカ南部の音楽の大味さの根底にあるものって、意外とこれなんじゃないかと。僕がこのアルバムで一番好きなのは、デュアンさんとディッキー・ベッツのアコースティック・ギターだけのインスト・デュオで、手の込んだことをやろうと思えば素晴らしい事が出来ちゃうのでした。でもやらない…それがアメリカ南部の伝統というやつなんでしょう(^^)。


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『The Allman Brothers Band / At Fillmore East』

Allman Brothers Band At Fillmore East 1971年発表、サザン・ロックを代表するオールマン・ブラザーズ・バンドの出世作にして代表作、2枚組ライブ盤です。バンドの実質的なリーダーはギタリストのデュアン・オールマンで、僕かこのバンドに興味を持ったのは、デレク&ザ・ドミノスのアルバム『いとしのレイラ』に参加していたデュアン・オールマンのギタープレイを聴いたからでした。ボトルネックを使った野太い演奏は、正直に言ってクラプトンよりカッコよく感じたんですよ!フォガットのロッド・プライスもそうですが、エレキギターのスライドプレイってブルースハープ的というか、ルーズにドライブする感じで好きなんですよね(^^)。

 音楽はブルースロックがベースにあるものの、グレッグ・オールマンが演奏するオルガン、見事にウォーキングするベース、そしてシャッフルやエイトと言って定型リズムやスリーコードに収まりきらないいくつかの曲の存在が、モダンさを漂わせていました。デュアン・オールマンのギターソロだけがフロント、あとはうまいけど全員サイドマン的で、リズムセクションもヴォーカルも派手さはなく渋いですが、凡百のスワンプ・ロックとは似て非なる達人の演奏、バンド自体がとんでもないうまさでした。
 ドラムはソウルやブルースなどのブラック・ミュージック系のセッションマンのような演奏が基本でしたが、レギュラーグリップでスティックをスパンと落としたり、「Stormy monday」の展開部ではライドでキープしておいておかずを入れるなど、かなりジャズに近い演奏もしてました。ベースも時としてバンドのカウンターラインを作るし、それでいてボトムをしっかり支えるし、なかなか見事。キーボードのグレッグ・オールマンは…もう、いい所をあげ始めたらきりがないです。でも音楽が地味なんだな…つまりはスタジオミュージシャンのブルース・ジャム・セッションなんじゃないかと。

 特にしびれた曲は…と書こうと思ったんですが、嵌ってしまってさっきから何回も聴いてるんですが、聴けば聴くほどすべての曲が素晴らしいです。いやあ、この音楽の良さが分かってきたら、聴き専でもロック中級を誇っていいかも(^^)。。
 「Statesboro Blues」「Done Somebody Wrong」は、バンド全体がオモテでスライドギターがカウンターのような演奏、つまりバンド全体を受けてしまうスライドギターがすごかったです。すごいと言ってもいぶし銀、ジャズでいえばコルトレーンじゃなくてハンク・モブレーみたいな。そうそう、後者はハーモニカもメッチャかっこいい!しかしみんなうまいな…。
 「Stormy Monday」は例の6度と9度を使うTボーン系のモダンブルースで、オルガンを使ったバンドのレイドバック感がメッチャかっこいい!これ、20代のミュージシャンが演奏した音楽じゃないだろ、酸いも甘いも知り尽くしたオッサンな演奏でしびれました(^^)。
 「Hot ‘Lanta」「In Memory of Elizabeth Reed」は、和声もリズムもちょっと面白いプログレッションをするインスト・ジャム。スリーコードとペンタトニックだけでやったら面白く出来ないこういうジャムに乗れたらアマチュア卒業って感じでしょうか、さすがにこのメンツだとうまいなあ、カッコいい。

 若い頃はブルースっぽくて単純にも感じるしアドリブも飽きるほど長く感じたんですが、いま聴くととんでもない。演奏技術だけで強引にいい音楽にしちゃっているきらいもあるけど、とても素晴らしかったです。冒頭3曲がブルースナンバーだからブルースのイメージがあったのかも知れませんが、曲順を逆にしたらサンタナやカーティス・メイフィールドあたりに近い、かなり高度でモダンなロックに聴こえるんじゃないかと。スタジオミュージシャン級(つまり、メッチャうまいけど華がない、みたいな^^;)のジャム・セッションという意味では、トラフィックのライブ盤あたりもこれに近かったですが、このクラスのミュージシャンのジャムって、派手さはないけど細かいところまで技が行き届いているから、聴いていて耳が離せなくなってしまうんですよね。若い頃はそういう所を全然聴きとれてなかったんでしょうね、僕(^^;)>。


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書籍『フィンガースタイル・ジャズ・ギター ウォーキング・ベース・テクニック』 Paul Musso著

FingerStyle Jazz Guitar Walking Bass Technique_PaulMusso ジョー・パスのギターの特徴のひとつは、ウォーキング・ベースを使えるところじゃないでしょうか。ギターでのウォーキンベースというのは、ベース音をボンボンと動かして弾きながら弾きながらコードやメロディも弾く演奏スタイルで、CD『Ella Fitzgerald & Joe Pass / Hamburg Duets 1976』での「The one I love」も「Perdido」も、ウォーキンベースの見事な演奏なしではギター一本であそこまで見事なアンサンブルは出来なかったのではないかと。ギターの一人ウォーキンベースって、クラシック・ギターや戦前ブルースやフラメンコだとよく耳にしますが、ジャズだとそこまでマストなテクニックじゃない気がします。ぜんぜんやらないギタリストも多いですしね。でも、これが出来ないとクラシックもフラメンコも弾けないわけで、ウォーキンベースが出来ないのにまともなギター音楽を演奏できますなんて言えない、言ったらそもそもギター音楽をまともに知らないと疑われても仕方がないほどの超重要テクニック。僕はギターを趣味で弾く程度とはいえ、出来たらカッコいいので何とかものにしたいと思っていました。そんな時に見つけたのがこの本、ウォーキンベース双方のやり方に特化した本でした。模範演奏のCDつきです(^^)。

 おお~これはいい、ものすごく簡単なマイナーブルースとメジャーブルースから始めて、ボッサ、ジャズ的な長調と短調両方でのツーファイブ時のウォーキンベース、スイングジャズ、そして最後にジャズブルースまで辿りついていました (^^)。そうそう、この本に出ていたバード・ブルースというものの和声進行は、「Blues for Alice」というチャーリー・パーカーの曲のもので、これは弾けないとプロのステージに立てないのでプロになりたい方はぜひ(^^)。

 ただ、ジャズやポピュラー音楽の理論が分かってない人にはけっこう大変かも。ブルース曲、長調、短調の3つの和声とダイアトニックスケール、ガイド・トーン、一時転調を自分で見つけられるレベルまでポピュラー和声の勉強が終わってれば大丈夫だと思いますが、それが出来てない人は先に理論の勉強を終わらせた方がいいかも。例えば、クラシックやジャズだけやってる人だと、マイナーブルースのサブドミナントマイナーとか、ブルーススケールの減5度とか、混乱すると思うんですよね。

 マイナーコードをメジャーコードとして書くといった誤記もあったりして、やらかしている所がそれなりにありましたが、まあ普通に音楽をやってきた人なら気づくミスなので大きな問題はないと思います。僕は、ギターのウォーキンベースの教本では、戦前ブルースのものを読んだ事がありましたが、この本はもっと射程が広いし難しくないのでオススメ。すべて基礎的なレッスンまででしたが、ここまで出来ればあとは自分でいくらでも発展させられそうです。僕みたいなギターのひとりアンサンブル演奏初心者にはもってこいの本でした。僕にとっては文句のつけどころがない本、おすすめです!



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『Ella Fitzgerald & Joe Pass / Hamburg Duets 1976』

Ella Fitzgerald Joe Pass Hamburg Duets 1976 エラ・フィッツジェラルドとジョー・パスのデュオ、これは1976年のドイツ公演時のライブ録音です。正確な録音日時は76年5月19日、ハンブルグ。ある特定の日のある場所って、二度と同じ瞬間は来ないというのが伝わってくるようで、スペシャルな感じで好きです。

 録音がいい!歌ってない所でもヴォーカリストの息使いがカットされないまま残っていたり、ギターのバランスが小さ目ではあるけど、歌やギターの音自体がすごくいいです。ジョー・パスはスタジオ録音よりライブ録音の方が良い音のものが多いのが面白いです(^^)。
 そしてエラおばさんの歌がマジでうまい!何か特別なテクニックを使ってるわけでも、表現たっぷりに歌ってるわけでもないのに、こんなにうまく感じるとは。。ピッチやリズムが良いとか、ディクションが綺麗とか、ヴィブラートが見事とか、基礎だけでもここまで素晴らしい歌に出来るという教科書のようなヴォーカルでした。エラおばさんは、ジャズヴォーカルをやるなら最初に教科書にするべき人なんて言われますが、なんとなく理解できたような気がしました。
 ジョー・パスの歌伴も素晴らしかったです。ジョー・パスって、新しい和声とかそういうのには全然興味がなくって、機能和声のアメリカン・ソングをギターというシステムの中で、ギターをオーケストラ楽器として使う事に全振りしてるんでしょうね。例えば、最後にエリントン・ナンバーの「Perdido」を演奏していますが、これはウォーキン・ベースの上にコードを挟み込む形で演奏しています。「Perdido」は逆循環(2516という例のアレです)だけで出来ている曲で、それをウォーキング・ベースで演奏となると、もうこれは循環コード専用の演奏スタイルという事になりますが、そういう意味でアメリカン・ソング専用のスタイルのギターと感じるという意味です。それにしても、ピアノレスでのジョー・パスの歌伴は本当に素晴らしいなあ。。

 このCDはいわゆる放送局音源ですが、このクラスのジャズのプレイヤーって、確実にある程度以上のクオリティの演奏を決めてくるので、会場の響きで良い音になってくれるライブ録音の方が良い事がけっこうあります。個人的には、有名な『Take Love Easy』より、こっちのCDの方が好き。インディーズ系のレーベルのCDなので入手が困難かもしれませんが、これは中古で見つけたらゲットして損はない名盤じゃないかと!


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『Ella Fitzgerald, Joe Pass / Take Love Easy』

Ella Fitzgerald Joe Pass Take Love Easy ジャズ・ギタリストのジョー・パスによる歌伴もの、続いては1973年のエラ・フィッツジェラルドとのデュオです。ジャズ・ギタリストがギター1本で歌伴を務めたアルバムってあんまり聴いた事がないんですが、さすがはバスとコードとメロディを同時に演奏できるジョー・パスは素晴らしかった!また、そういうテクニック部分じゃなくて、演奏がすごく音楽的で素晴らしいのです(^^)。

 大物ジャズ・ミュージシャンの共演に白黒のジャケットと言えばパブロですが、コルトレーンドルフィーからジャズにハマっていった若い頃の僕は、どうもこのレーベルのレコードがひと昔前の古いものをやっている気がして避けていました。ところが、カウント・ベイシー『The Basie Big Band』を聴いたらとんでもない素晴らしさで、あれで食わず嫌いが解消されました。そしてこのアルバム。いやあ、エラの歌は素晴らしいし、ジョー・パスの伴奏はあったかいし、70年代にこんなにレイドバックした古き良きジャズの良さが全部入ったような演奏を聴かせてくれるなんて、保守系のレーベルもあっていいですね。ちなみにこのアルバムでのジョー・パスの演奏は、ジャズというより上手いフォークみたいでした。

 いつか、ジョー・パスが歌伴をしたカーメン・マクレエ『Great American Songbook』というアルバムの感想を書いた事がありますが、ジョー・パスさんってリーダー作となると、面白くもなんともない普通のポピュラー曲を普通のアプローチで馬鹿テクで演奏する事が多くて、テクはすごいけど音楽としては面白くないと思ってしまう事があります。でも、歌伴になると途端に表現豊かに音楽を鳴らしに行って素晴らしいミュージシャンだなと思ったりして。ため息の出るようなリラックスしてあったかいアルバムでした。でも、このデュオにはもっと感激したプレイを聴いた事がありまして、その話はまた次回!


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『Sarah Vaughan / Crazy Mixed Up』

Sarah Vaughan Crazy Mixed Up ジャズ・ギタリストのジョー・パスの歌伴もののレコードが聞きたくなってきた、もう我慢できません。というわけで、サラ・ヴォーンの歌伴です。レーベルはパブロで、ジョー・パスはパブロに愛されてますね。古き良きジャズを愛する音楽性がレーベルとマッチしていたのかも。録音は1982年、メンバーはサラ・ヴォーン(vo)、ローランド・ハナ(p)、ジョー・パス(g)、アンディ・シンプキンス(b)、ハロルド・ジョーンズ(dr)。

 あ~ベースがアンプとラインを混ぜたような音だわ、これは音楽の前に音が苦手でした。コントラバスのピチカートをこういう音にしてしまう80年代以降のジャズ録音は辛いです、せっかく音色に表情があるアコースティック楽器なのに、こんな無表情の音にしてしまうのは理解できない。音像も楽器の位置とかを無視したメチャクチャなものだったので、まるでポップスの録音のようでした。そのせいもあってか、音がぜんぜんアンサンブルしない、耳がぜんぜん音楽や演奏を聴きに行ってくれない…なんかボワーンとした音がスピーカーから鳴っているだけ、みたいな。
 そんな中で、「枯葉」でのジョー・パスのギターとサラ・ヴォーンのヴォーカリゼーションは馬鹿テクで凄かったです。この曲以外は、1曲3~4分でサラッとやってるだけなので、もうこの曲を聴くためだけのアルバムという気が。なるほど、だから邦題が『枯葉』なんですね。。

 ジョー・パスの歌伴を聴くならやっぱりピアノレスにしておけば堅実ですが、カーメン・マクレエのライブにしても、ピアノと一緒にいるとそれはそれでギターの居場所を見事に作りだすんですよね。さすがはジャズ・ギターの神様、いい仕事をするなあ。ああ、これで録音がもっと音楽を理解したものだったらよかったのに。。


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書籍『AV女優』 永沢光雄

AV Joyuu_NagasawaMituo 若いころ、いい関係になるかもしれない女の子の腕に傷がいっぱいあった事がありまして…なんの傷なのかなんて聞けないですよねえ(^^;)。でも関係がもうちょっと深くなったところで、「私、実は前にAVに出ていて」と言われ、うしろにひっくり返った事があります。まあ健全とは言えない場所で出会った人でしたし、『探偵物語』が大好きだった僕はそういう職業蔑視はしない事にしていますが(や〇ざや人をだます職業は別)、彼女があまりにそれを気にするもんで、参考に読んでみたのがこの本でした。実際のAV女優何十人かにインタビューして、女優さんたちがなぜAVに出演するようになったのかを追ったドキュメンタリーです。出版は96~97年ごろ。

 侠客じみたカッコいいや〇ざさんにほれ込んだ女性、不幸な生い立ちの女性、本当のセックス依存症、アタマがちょっと弱い人、好きな人が忘れられない女性…色々でした。ただ、たしかにAV女優になる人には共通するものがあるな、みたいには思いました。実際のところは分かりませんが、70年代の股座稼業の世界と違って、90年代にもなると夜の世界で働く女性自身がそっち系の人と関わるわけではなく、あくまで商売道具として扱われるんだな、みたいに読んでいて感じました。うしろから怖い人が出てきたら嫌だけど、そうじゃないなら別にオッケーじゃないかな…というのが、当時の僕の判断(^^)。

 日本の暗部を描くノンフィクションといえば、沢木耕太郎さんの本を若いころによく読んだものですが、なぜそうなるかの社会的見解にまで達していないという意味で、ルポとしては沢木さんまでは届いてないかも。でも面白さは沢木さんクラスで、よく出来ていました。だって600ページぐらいあるのに、あっという間に読んでしまいましたから!
 こういう本を書く人って、自分でインタビューを申し込んで、怖い目にあうかもしれないリスクを負いながら完成させるわけで、根性座ってるなと思います。本だけの知識で知ったような口きいてる薄っぺらいメンタリストや評論家らとは根性が違います。ノンフィクションのドキュメント本って最近でもいいものが多いですが、年々取材の量や緻密さが増していると感じます。これはそういうしっかりした日本のルポの伝統にある1冊じゃないかと。


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書籍『プラトニック・セックス』 飯島愛

Platonic Sex_IijimaAi ギルガメッシュといえば、僕の世代ではシュメールの叙事詩ではなくエロい深夜番組「ギルガメッシュ・ナイト」(^^)。そこにレギュラー出演していたAV女優が飯島愛さんでした。あの番組をきっかけにバラエティタレントへと転身、でも芸能界から足を洗って、直後の36歳で自宅で孤独死しました。この本は飯島さんの半生を綴った自伝で、2000年の発売当時、本の帯に書いてあった「あなたのお尻の穴に私の舌を入れさせて」に魅了されて買ったのでした(^^)。キャッチコピーって大事だなあ。

 この本は、飯島さんが若い頃からつけていたという「感情の日記」をもとに、飯島さん本人が自分の半生を振り返る構成でした。厳しい親の教育で自分の居場所がなくなり、中学から家出を繰り返し高校でドロップアウト。歌舞伎町のディスコに入り浸り、水商売の世界に入って、ニューヨークに留学したいという夢の前で1000万という契約金に目がくらんでアダルトビデオに出演して…こんな感じでした。

 読んでいて胸が締め付けられたのが、夜の商売をしていた頃の男女関係の話。金を稼がないといけない&男相手の商売をしてる、これで彼と嫉妬と焦りが入り乱れる関係になってしまって、互いに好きなのにうまくいかず、ある日家に帰ると彼の荷物が全部なくなっていて…。こういうのって、けっこう多くの人が体験する事だろうし、だからありふれていると言えばそうなんだろうけど、これを自分で体験すると自殺したくなるほどつらいんですよね。。僕はキャバレーやらシャンソンやらのお店でラウンジピアニストをして食いつないでいた時があるもんで、こういう話は他人事とは思えませんでした。胸が痛いよお。
 なぜこういう事になるかというと、若すぎて互いを生かす倫理観を確立できていないから…互いがエゴになりすぎず、色々とうまく立ち回ればここまで精神的なダメージを追わずに済むんだろうけど、若いからまだそういう手管を身につけていなくて…みたいな。2021年末にある芸能人の人がホテルから落下して死にましたが、あれも考えが若いから起きてしまった悲劇と思えてしまうんですよね。こういう悲劇を防ぐ知恵として昔は社会倫理とか宗教とかがあったんだろうけど、現代はそういうものが力を失っちゃって、その代わりになるものも確立してないから、どうしてもこういう悲劇が防げないんだろうな、みたいな。
 そういう弱肉強食で切ない世界で確立されるモラルが悲しくも感じました。性善説を前提にしても性悪説を前提にしてもモラルって築けると思うんです。でも後者をもとに築かれるモラルって「だまされるから人を信じるな」「油断している自分が悪い」みたいな感じになっていくわけで、それはそうなんだけど寂しいですよね。そういうモラルを築かざるを得なかった飯島さんが哀しい。

 売るためだと思うんですが、帯のコピー、序文、エピローグと、目立つところはエロい言葉で埋め尽くしていましたが、実際の内容は2000年版の『ヤヌスの鏡』か『積み木くずし』に感じました。タレント本あるあるですが、やたらに文字が大きく行間も広いので、1~2時間もあれば全部読めてしまうと思います。こういう経験をしたことのある人は胸が痛すぎ、知らない人は社会勉強になる、いい本だと思いました。飯島さん出演のAVって全然エロくなくて好きじゃなかったけど、バラエティタレントになってからの忖度なしの歯に衣着せぬトーク力は素晴らしくて好きでした。杉本彩さんが自分はエロの女王みたいに言っていたのを、「そんな大したもんでもねえだろ」みたいに突っ込んでたのは痛快でした(^^)。長生きしてほしかったなあ。


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短編映画『ギルガメッシュ/小さなほうき Little Song of the Chief Officer of Human Louse, or This Unnameable Little Broom』ブラザーズ・クエイ

Gilgamesh_BrothersQuay_pic1.jpg 僕が初体験したギルガメッシュ叙事詩関連作品がこれ。1987年にブラザーズ・クエイというパペット・アニメ作家兄弟の作った10分ほどの短編パペット・アニメーションです。パペット・アニメとは絵を動かすのではなく、人形をコマ撮りして動かすアニメーションです。この作品の題材は、タイトルからしてギルガメッシュ叙事詩なのでしょうが、あまり原型を残してませんでした。
 森の中に奇妙な小屋があり、ここにキュビズム時代のピカソの絵画のような異様な顔をした人間が三輪車に乗って登場、奇妙な罠を施します。この小屋に大きな鳥型の化け物が来て罠にかかり…たぶん、これがエンキドゥなのかな?みたいな。

 僕はブラザーズ・クエイの作品が大好きで、若い頃は彼らの作品を観るためだけにレーザーディスク・プレーヤーを買ったほどです。レーザーディスクって、知らないですよね…当時、クエイ兄弟の作品を観たかったら短観上映していた東京まで行くか、レーザーディスクを買うかしかなかったんです。そのぐらいのめり込んだ作家だけど、この作品は第一感としてはあまりいいとは感じられず、いいところ、悪いところ、良し悪しの判断以前に分からない所がありました。この分からない所に引き込まれて叙事詩を読むことになったわけですが(^^;)。

 良いと思ったのは、設定。薄暗い森の中にある意味でそれ自体が美術作品のような小屋が浮かんでいて、そこに抽象絵画の中から飛び出してきたような主人公が三輪車に乗って…もう、アイデアや象徴の使い方は天才じゃないかというほどでした。
 もうひとつ素晴らしかったのは音楽。ブラザーズ・クエイ作品の音楽って、近現代的なクラシック室内楽を使った素晴らしいものが多いんですが、作曲家がぜんぜんわからない。。この映画はDick Walter という人が作曲してますが、こういう音楽を聴いたらロックやポップスみたいな音楽が子供だましにしか思えなくなってくるから危険です(^^;)。このディック・ウォルターという人は映画やテレビの音楽を作っている職業作曲家らしいですが、残念ながらギルガメッシュの劇音楽の録音を僕はいまだに見つけられてないです。こういう本当に優れた音楽家って、大衆迎合な産業音楽に行ったら才能を使えないし、芸術音楽方面は権威に牛耳られてはみ出し者になるし、結局音楽をやめるか、細々と作品を発表し続けるか、自分の音楽を妥協しないで発表できるアート作品に音楽を提供するぐらいしかない気がします。この人の劇伴ではない純音楽作品があったら聴いてみたいなあ。

 良くないと思った筆頭は、人形の造形。キュビズムのような抽象って絵画用のカンバスという平面状に立体を生み出すためのトライだったわけで、なにも立体である人形をわざわざ平面にすることはないんじゃないかと思ってしまいました。こうしてしまったら、単なる現代アートのフェチですよね。。でもこれは本人たちもそう思ったのかも知れず、以降の作品では立体を生かした見事に抽象化されたパペットを作り上げていました。

 クエイ兄弟のパペット・アニメでは『失われた解剖模型のリハーサル』『ストリート・オブ・クロコダイル』という2つの作品がとてつもない素晴らしさで、『ギルガメッシュ』はそれ絵和を生み出すために踏み台となった習作期の作品といったところ。それでも、この作品を観ていた頃の僕のレベルでは善悪すら判断で着ない所が色々あって、そこを理解したいと思って色々調べたのが、人類最古の叙事詩を読む事にも、今のデザインの仕事に繋がった部分もあると思うので、本当に良い出会いだったと思います。彼らの最高傑作ではないけれど、映像作品でアートを体験してみたいと思う方がいらっしゃいましたら、クエイ兄弟の作品は絶対に見るべきです!


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書籍『ギルガメシュ叙事詩』 月本昭男訳

Gilagamesh Jojisi_Tsukimoto Akio 人類最古の物語にしてシュメール文化の最大遺物、ギルガメシュ叙事詩です!最初にこの物語の存在を知ったのはブラザーズ・クエイのパペットアニメ、以降は文学全集などで何度か目にしてきましたが、ここまで本格的な本は初めて。読む前からワクワクでした(^^)。

 荒ぶる王ギルガメシュの横暴に苦しむ民衆が、天に何とかしてくれと折る。天は泥から人造人間エンキドゥを創り、ギルガメシュと戦わせようとする。しかし名勝負を繰り広げた両者に友情が芽生える。ふたりは香柏の森で怪物フンババを倒すまでになり、英雄となる。しかしギルガメシュが女神イシュタルの誘惑を退け、怒った女神が遣わした天牛をも倒したことで、神々は親友エンキドゥの死を決定する。親友エンキドゥの死を目の当たりにしたギルガメシュは死を恐怖する。そこでギルガメシュは不死の生命を求める旅に出、若返りの草を手に入れるものの蛇にその草を食われてしまう。そしてギルガメシュは都市にに帰る。

 僕が今までに読んだギルガメシュ叙事詩は読みやすいように口語訳されたものでしたが(『世界最古の物語" target="_blank" title="世界最古の物語">世界最古の物語』Th.H.ガスター著、矢島文雄訳など)、この本は原文ママ。石碑が判別できない所は、予測できる文章はカッコに入れて捕捉、予測不可能な所は空白のまま。
 ギルガメッシュ叙事詩はいくつものバージョンが知られてるそうなのですが、もっとも話がよく分かるアッカド語で書かれたもの(AC1000ごろ?)を標準版として全文掲載、それよりも成立年代が古い古バビロニア版(AC1950-1530)などの他のものは、標準版と違う部分だけ抜粋して紹介。いや~これは専門家の研究書レベルだわ、すごい。
 そうそう、ギルガメシュ叙事詩って、旧約聖書以前に洪水神話が語られた本とか、冥府下りが出てくる本とか、そういわれる事がありますが、後者は生命の草を求める旅の際の島渡りをそういうのならわかりますが、前者はチラっと触れられるだけで、そういう物語が実際にあるわけではありませんでした(^^;)。こういうのってちゃんと自分で文献にあたらないといけませんね。。

 僕的に凄くためになったのは、100ページにおよぶ解説で、この解題がすごかったです!なにせ人類最古の書を原文ママなので、えらく神話めいているというか、それが実話なのか象徴的な表現なのかすら分からないことが多く、この解説がなかったら僕は混乱したままだったかも。勝手に「何か深い意味があるんだろうなあ」と勝手に思っていた象徴的な部分(例えば、王の親友が神が作った獣である事の意味とかね^^;)への妄信を、いい意味で崩してくれたすばらしい解説でした.。

 というわけで、学術書レベルにすごい本なので、ギルガメシュ叙事詩を深く知りたい人ならこの本一択な気がします。でも原文ママなので、物語自体ははっきり言って実に分かりにくいので、ちょっと知りたい人はライトに書かれたほかの本を選ぶのもありかな?


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『Harry Belafonte / Calypso』

Harry Belafonte Calypso カリプソを世界に広めたのが、50年代にハリー・べラフォンテが歌った「バナナ・ボート」だそうです。バナナボートと言えばこのアルバム「カリプソ」、1956年に世界的に大ヒットした1枚です!ビートルズ登場前のアメリカのチャートって、ジャズが入ったりブラジル音楽が入ったりラテン音楽が入ったりと、音楽が子供じみてないし多種多様だし、すごく楽しかったんだろうなと思います。というわけで、僕はトリニダードのカリプソよりハリー・ベラフォンテを先に体験していました。カリプソをよく知らなかったのに、このアルバムを聴いて悩みなんてゼロのリラックスしたカリブ音楽…って思ってたんです。

 ムードだけでいえば、楽園気分な南国ムード満載のハワイアンに通じるところあり。でもベラフォンテってトリニダード・トバゴの人じゃなくてアメリカ人なんですよね。お父さんが西インド諸島出身、お母さんがジャマイカ出身らしいのですが、本人はニューヨークで生まれたみたい。野球も音楽も、中米の人って一攫千金を夢見ると合衆国で稼ごうとするもんですが、進出先はなぜか西海岸ではなく東海岸が多いです。
 そして「バナナボート」ですが、実際のトリニダード・トバゴのバナナ輸出船の労働者が歌っていたワークソングを元に作られたそうです。な~るほど、独特のムードがあるのはそういう理由なんですね。

 思うに、これはカリプソの曲のムードだけを使って合衆国向けにアレンジしたムード・ミュージック。何とも資本主義的なレコードですが、それが悪いものにならないのは欧米から見た南国楽園のイメージが強く前に出ているからかも。ハリー・ベラフォンテのこのレコードは西洋視点の産業型ワールドミュージックの名盤として永久に不滅なんじゃないかと。いや~南国ムードで気持ちよかったです。僕の母が、ハリー・べラフォンテの「バナナボート」が好きだったんですよね、思い出したら泣けてきた。。


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『Calypso Awakening』

Calypso Awakening カリプソのオムニバスでは、『Calypso - The Best Of Trinidad 1912-1952』という決定作を聴いて、これが政治風刺やら何やらを含んだ攻撃的な詩とは思えないほどにあったかくてのほほんとした楽園音楽で、思いっきりハマってしまいました。これはそのちょうど後になる1956~62年の音源を集めたコンピレーション、これも良かったです!半分ぐらいは有名なカリプソニアンの録音で、マイティ・スパロウやロード・メロディも入ってました。僕は有名だというこの2人ですら音を聴いた事がなかったのでそれ目的で買った所もあって、すごく楽しみでした(^^)。

 戦後のカリプソは、カリプソ・テントというステージを作って、カリプソニアンが次々に歌を披露することがあったそうです。内容は今のラップやレゲエに近い所があって、どれだけ自分が偉大かを自慢しまくる歌かとか、一緒にステージにあがった相手を即興でこき下ろす歌とか、なんともくだらない事に情熱を注ぎこんだ人が多かったそうな(^^;)。10曲目なんて、マイティ・スパロウとロード・メロディのののしり合いが、ご陽気な音楽に乗ってひたすら続きます('∀`*)コイツラアホダ。
 あ、そうそう、ミュージシャンの名前もけれん味たっぷりのものが多くて、Mighty Sparrow(強大な無頼漢)、Lord Melody(メロディの君主)、King Fighter にCommander…ブルースマンもビックリのビッグマウス揃いですねえ。あと、さすがはトリニダード・トバゴ、8曲目にはお家芸のスティール・パンの合奏も入ってました。これを聴きながらトランス状態で絶叫する客の歓声も凄い!

 他にも、キューバ音楽そっくりな音楽や、レゲエのルーツのような音楽、ホーンセクションのムードはサルサにも繋がっていそうなものも入ってました。カリブ海の音楽って、クンビアもキューバ音楽もレゲエもサルサも、みんな繋がってる感じ。成立年代的にいうと、カリプソはけっこう早いので、他の音楽に影響を与えた側面も強かったりするのかな?いや~カリブ世界の明るさとヤバさ、いいっすねえ。これもおすすめ!!


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『Calypso - The Best Of Trinidad 1912-1952』

Calypso The Best Of Trinidad 1912-1952 トリニダード・トバゴ発祥の音楽カリプソって、元々は支配者イギリスにこの地に連れてこられた奴隷黒人が、お互いの言葉が分からないために音楽でコミュニケーションを取ったのが始まりだそうです。それが時事ネタを歌うニュース的なものとなっていき、その中から自分たちを働かせて搾取しまくる支配者を攻撃する政治風刺の歌が出てきて大人気に。カリプソの黄金時代は最初の録音が行われた1910年代らしいですが、これはそんなカリプソ黄金時代から50年代あたりまでの3枚組オムニバスCDです。こんなの音楽ファンなら絶対買っちゃいますよね。。

 ディスク1は1912~29年までの録音。歌もの3にインスト音楽2ぐらいの割合。楽器編成はヴォーカル、ギター(たまにバンジョー?)、ヴァイオリン、ピアノあたりのバンド編成が定番のようで(もしかするとベースもいるかもだけど録音が悪くてよく分からない^^;)、インストになるとこういったバンドのフロントに弦が数本に合いの手を入れるクラリネットなどの管楽器が入るバンドが多かったです。詞は英語部分多し…なるほど、トリニダードは支配国がスペインじゃなくてイギリスだったからそうなんですね。コーラス部分に英語じゃないものがたまに出てくるんですが、これって元のアフリカの言語なのかな、それともスペイン語なのかな。。
 音楽は長調のハートウォーミングでリラックスした音楽と、短調の切なげな音楽が半々ぐらい。長調系の曲の心地良さは饒舌に尽くしがたいほど!古いキューバ音楽もそうですが、中米の島々の音楽の心地よさと言ったらなかったです。短調系はブルースに通じるものがあるものの、違うのはビート・ミュージックである事で、そういう意味ではむしろタンゴに近いかも。あと、打楽器だけでみんなで合唱するアフリカの土着宗教音楽的なものも入ってました。
 馬鹿に出来ないのが作曲法や演奏のレベルで、曲中で同主調転調する曲までありました。これ、イギリス側の音楽教師がいたバンドもあるんじゃないかなあ。ゴスペルやブルースみたいなリアル・ブラックだけが西洋音楽を参考に作り出した音楽って、演奏技術は凄いけど、作曲法はシンプルだったりするじゃないですか。でもカリブ海の音楽はこういう所が高度だと思います。そうそう、ピアノ演奏もレベルが高くて驚きました。左手でこんな強いバスフレーズを弾きながらメロディを弾くなんて、僕には無理です。

 ディスク2は1930~39年、3は40~52年の録音。音楽は以前のものと同じ感じでしたが、ここからAttillaTigerLord Invader といった僕でも知ってるカリプソニアンの名前が出てきました。マイナー調の割合が増し、マイナー調になるとキューバ音楽に近く聞こえてくる不思議。曲タイトルも「Treasury Scandal」とか「Money Is King」なんて感じになってきたので、このへんから白人支配者批判が増してきたのかも。「Roosvelt In Trinidad」なんて曲もあって、なるほどたしかにニュース的な役割を追っていたんだなあ、みたいな。カリプソは検閲を逃れるために暗喩を用いたりしたなんて言われますが、けっこう直球のものもありました(^^)。

 こんな古い録音が残ってるって凄いです。カリプソは1910年代から50年代まであまり変わってなくて、最初から完成形だったんだなあと感じました。社会が大きく動いた1910-50の日本の歌音楽がすごく変化したことを考えると、トリニダードのこの頃は良くも悪くも社会が固定化されてたのかも知れません。とにかくホッコリして心地よくて、魅力的な音楽でした。カリプソを聴いてみたいと思うなら、僕的おすすめナンバーワンはこのボックスです!

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『早川義夫 / かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』

HayakawaYosio_Kakkoiikotoha.jpg ジャックス解散と同じ1969年に、リーダーの早川義夫さんが発表した初ソロ・アルバムです。これが素晴らしい出来栄えで、一般的にはジャックスを含めてこれを早川さんの最高傑作に推す人も多いんじゃないでしょうか。

 このアルバムとの出会いはジャックス絡みではなく、何かでふと耳にした「サルビアの花」。アップライトピアノみたいなゴツンとした音のするピアノの弾き語りで、あの有名な「いつもいつも思ってた、サルビアの花を」の一節が。魂を持っていかれるとはこのこと、朗読のようにとつとつと語られる詞に魅せられて聴き入ってしまいました。そして歌っている人は…うおお、ジャックスじゃねえか!というわけで、次の日から中古番屋で日本のロックのコーナーもチェックするようになったのは言うまでもありません。けっこうすぐゲットできたんですよね。ジャケットが不気味だからかな?

 素晴らしいのは「サルビアの花」だけじゃありませんでした。基本的にピアノかギターの弾き語りで(他の楽器が入るものもあるけど、せいぜいおかず程度)、それも無骨に最低限の音だけを弾くので本当に伴奏程度で、これが逆に詩に意識が集中する原因になった気がします。1曲目「わらべ唄」は青春に苦悩する男の数え歌、ラストナンバーは「埋葬」…これが中二病のかまってちゃんじゃなく、青年の自殺が流行して社会問題化した時代の、暗くまじめに考え抜いた文学青年の苦悩のように感じられるのは、実際にそういう人がつづった言葉だからなのではないかと。

 早川義夫さんはこのアルバムである程度注目を集めたと思うんですが、これを最後に音楽業界から消え、本屋さんになりました。のちに復帰するんですが、復帰後は芝居がかった大げさなパフォーマンスになってしまい、梅津さん擁するバックバンドもいたずらに演奏しまくるばかりでハートが全然なくってクソつまらなかったので、僕にとってあまりに素晴らしかったジャックス~早川義夫はここで終わり。以降はなかったことにしています。


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『ジャックス / Echoes In The Radio』

Jacks_Echoes In The Radio  今でこそ伝説のカルトバンド扱いのジャックスですが、リアルタイムではあっという間に消えたGSのバンドのひとつだったんじゃないでしょうか。ジャックスが今ほどの高い評価を受けたのは80年代なかばに発表された『Legend』というオムニバス盤がきっかけで、これが予想に反し飛ぶように売れ、GSではなく黎明期の日本ロックとか、日本の伝説のアンダーグラウンド・ロックとか、そういう見方をされるようになった、みたいな。そんな80年代のジャックス再評価の波に乗って発表されたのがこれ、ラジオ局に残っていたジャックスの録音集です。

 うわあ、あのおどろおどろしく歌う早川さんが、まるでフォークサークルみたいにきれいにハモってる!「地獄の季節」なんていうランボーの詩集みたいなタイトルの知らない曲が入ってる(ランボーとは関係ありませんでした^^;)!マリアンヌの別バージョンも、あのファン限定のレコードとは違ってアレンジが違う(多少ですけど)!公式録音よりこっちの方が良いんじゃないかと思うほど。まあでもそう思うのは、ファーストアルバムを聴きまくったからそう思うのかも知れません。聴きすぎて飽きてしまった、みたいな。

 発掘録音ってろくでもない寄せ集めが多いですが、これはファーストアルバム以前のジャックスがどういうバンドだったのかを知ることが出来、しかも音楽自体が素晴らしいという、実に価値あるアルバムでした。収録曲は少ないですが、クソ高いあのライブ盤より、こっちを聴くことが先じゃないかと。発掘録音でよく聴くのって、キャプテン・ビーフハートとこのレコードぐらいかも。それぐらい好きなアルバムです。


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『ジャックス / Live ‘68’7’24』

Jacks_68724.jpg ファーストアルバムの時期のジャックスのライブ録音、ファンクラブ限定で、200枚とも400枚とも言われる数のプレスだったそうです。

 ファーストが最高、セカンドは玉石混合、オリジナルアルバムはこれだけのジャックスなので、あのファーストにあてられた僕はその幻影を追って、このアルバムに行きつきました。もちろんレア中のレア、高いどころか目にする事すらできませんでした。はじめて聴いたのは、音楽の仕事で東京に行ったときに行った明大前の中古レコード屋。とにかく有名なレコード店だったから、行ってみたかったんです。で、珍しいサイケやフリージャズやプログレのレコードがあるわあるわ、興奮して品定めをしているとBGMで「あ、ジャックスのマリアンヌだ」みたいな。
 はじめ僕はそれをファーストアルバムだと思ってたんです。イントロのドラムやギターソロといったアドリブ部分がまったく同じに聴こえたし、歌詞で「白い」と歌っているところをオリジナルは「しりょい」と歌ってしまってるんですが、それも同じだったもので。ところがマリアンヌが終わるとなんとMCが。うおお、ライブだったのか?!そのあと僕は、そのレコードが流れている間じゅう店にいたのですが、途中でターンテーブルから外されてしまい、全部聴く事はできず。あとで「さっき流れていたジャックスって、どのレコードですか?」と聴くと、ファンクラブ限定で発売された幻のこれだった、というわけです。でも高くて買えませんでした。

 というわけで、僕はこのレコードをA面しか聴いたことがありません。しかも1回きり。スタジオ盤と同じアレンジに演奏だったもので、今でも欲しいとは思わないんですが、でもB面を聴いていない事だけが心残り。ちなみにネットで捜してみたら…うおお、ヨーロッパで14万円で売ってるぞ、レコードって骨とう品みたいになってきましたよね。また、このレコード、なんと来月(2022年2月)に限定で復刻されるそうです。こういう限定品商売もどうなんでしょうね…。


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『ジャックス / ジャックスの奇蹟』

Jacks Jacks no kiseki ジャックスが発表したオリジナル・アルバムは2枚しかなく、これは69年発表のセカンドアルバム。なんでも、アルバム録音中にバンドが解散してしまったそうで、録音し終えた曲に、過去のリハーサル音源なんかをかき集めて強引にひとつのアルバムにしたんだそうです。

 若い頃はそんな事情なんて知らないもんで、「なんだこれ、これがジャックスか?」と思ったものでした。友達から借りて聴いたんですが、マジで買わなくてよかった、みたいな(^^;)。
 でも、「おお、これぞジャックスだ!」というものも入ってるんですよね。「花が咲いて」「君をさらって」「敵は遠くに」は、ファーストの「遠い海へ旅に出た私の恋人」や早川義夫さん(ジャックスのリーダー)の代表曲「サルビアの花」に通じる厭世観を感じる素晴らしい曲。僕にとってはこの3曲のためだけにあるアルバムです。

 まあそんなわけで、伝説のバンドながらアルバム2枚で消え、しかもファーストは最高セカンドは最低だったため、僕はファーストアルバムの幻影を追う事になったのでした。ドアーズと同じパターンですね(^^;)。。


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『ジャックス / ジャックスの世界』

jACKS_jACKS NO SEKAI 日本の産業音楽シーンが洋楽の丸写しに染まっていった80年代が青春ど真ん中だった事もあり、「ニューミュージック以前の日本のポップスやロックは古臭くて聴いてられないぜ」と思っていた時代が僕にもありました(^^;)>。ところが僕の音楽観をガラッと変えてくれた中学の頃の同級生にいろんな音楽を教えてもらって、そんな安っぽい先入観は木端微塵、「日本のロックって昔の方がすごいんじゃないの?」とすら思わされるようになったのです。ブルース・クリエーション乱魔堂DEW、ストロベリーバス…衝撃を受けた黎明期の日本人ロックは色々あるんですが、僕にとっての最初の衝撃は68年にジャックスが発表したデビューアルバムでした。今でこそ「日本ロックの走りになったバンドのひとつ」「日本のヴェルヴェット・アンダーグラウンド」ぐらいのアングラ・ロック的な位置づけで語られるようになったバンドですが、現役時代はグループサウンズというくくりだったそうです。きっと、当時の日本では収まり場所がなかったんでしょうね。

 最初に驚いたのは演奏。アルバム冒頭がいきなりドラムソロ、そしてフォービートに入ってシンバルレガート、ベースはコントラバスのピチカート…リズムセクションがジャズ、しかもフリージャズ色が強い表現欲に満ちた演奏だったのです。歌が終わってギターが始まれば、まるでアニマルズ「孤独の叫び」のギターかと思わんばかりのアウトしまくりのヒステリックでサイケデリックなギター。もう、演奏にやられました。テンションや代理がどうとかコード進行がどうとかそういうんじゃなくて、爆発する感情を音にたたきつけて表現とする音楽、みたいなこの姿勢にやられたんですよね。以降、こんなフリージャズばりの表現を持った日本のロックがひとつでも生まれたでしょうか(いや、ない)。
 次に、詞。僕の考えが間違いでなければ、このアルバムは詩がアルバムひとつでゆるくつながっています。一曲目「マリアンヌ」で狂わしいばかりに嵐に撃たれながら相手を抱きしめる激しい恋、「時計を止めて」は成就した恋の幸福感。しかしアルバムが進むごとに、海の底に沈んで「あれ?俺死んだのかな?それにしてもきれいだな」とか、「遠い海に旅に出た私の恋人」とか(「遠い海に旅に」って絶対に比喩ですよね)、最後は「つめたい空から500マイル」へと召されています。いやあなんというんでしょう、自分が何にいら立っているのかすらよく分からないままはちきれそうになっていた学生時代、その名付けられない不安や怒りを同じように感じている人がここにもいた…そんな感慨を覚えました。

 なにせ68年の日本の音楽ですから、いま聴けば色々と下手だったり古臭かったり感じるところは当然あります。でも詩や音楽の中心にあるイデアはまさに20世紀文学や音楽の核心をついたものじゃないかと。ジャックスのこのアルバムを聴いて、そこを聞き取ることが出来るかどうかは、詞や音楽を聴く才能があるかどうかの分水嶺なのではないかと僕は思ってます。これが理解できないとしたら音楽や詩を聴きとる才能がないというだけの事だろ、みたいな(^^)。というわけで、間違いなく日本のロックの大名盤です!


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『Jimmy Giuffre / Free Fall』

Jimmy Giuffre Free Fall 1963年発表(録音は62年)のジミー・ジュフリーのアルバムです。メンバーはジミー・ジュフリー(cl)、ポール・ブレイ(p)、スティーヴ・スワロウ(b)というわけで、完全に新生ジミー・ジュフリー・トリオ。でもトリオ名義でないのは、半分がジミー・ジュフリーの独奏だからじゃないかと。アルバム構成は、1.3.5.7.9曲目がクラリネット独奏、2.4.6.8.10曲目がトリオ演奏でした。僕はこのアルバムをCDで持ってるんですが、クラリネット・ソロになるとテープが転写してるのが分かりました(^^;)。まあ、阿部薫の『彗星パルティータ』ほどひどいものじゃなく、そこまで気にならなかったからセーフ(^^)。

 クラリネット独奏は、メッチャ速くて攻撃的(Propulson)とか、特殊奏法を軸に(Ornothoids)といった、曲ごとの大まかな意向はあったにせよ、純然たる即興演奏ではないかと思いました。これがとんでもない上手さで、もうクラシックのプレーヤーでもやって行けたんじゃないかと思うほど。ジャズのリード楽器奏者でこのレベルの達人というと、僕が知っている人だと他にはミシェル・ポルタルぐらい?なんでこれだけ吹けるのに、50年代はレイドバックしたエンターテイメントも入ったジャズをやってたんでしょうね。不思議。
 一方のトリオ演奏は、即興性の強い演奏ではありましたが、モチーフや構成譜など、申し合わせた大まかのデザインはあったのだろうと思います。10曲目「The Five Ways」なんてあからさまに全員でバシッとテンポチェンジしますしね。で、その即興性とデザインの融合具合が見事でした。音楽って基本的に再現芸術ですが、それでも音が生まれているのは演奏している瞬間であって、聴く方は演奏している瞬間を聴いているので、あんまり「ここは作ったところ、ここは即興でいま生まれているもの」とあからさまに見えないほどいいと思うんですよね。しかもこれは構成も演奏もシンプルながら構造が堅牢で、即興というとだらだらと演奏しているだけで全体構想をなさなくなってしまうものが少なくないですが、そういう所がしっかりしているのは、プレイヤー全員がアメリカン・ソングフォームだけを演奏してきた人じゃなくて、色んな楽式をその場で構成するだけの能力があるからなんでそうね。

 ポール・ブレイとスティーヴ・スワロウの参加した新生ジミー・ジュフリー・トリオのアルバムは、ライブを含め外れを聴いたことがありません。その中でもこれは一番前衛的で即興色の強いアルバムでした。即興性が強いだけにジミー・ジュフリーの音楽のあの見事な楽式やアンサンブルは薄かったですが、代わりに演奏が強烈。素晴らしい音楽だと思いました。


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『Jimmy Giuffre ‎/ The Jimmy Giuffre Clarinet』

Jimmy Giuffre Clarinet 1956年録音、レーベルをアトランティックに変えたジミー・ジュフリーのサード・アルバムです!編成はビッグ・バンドとクラリネット三重奏。ビッグバンドの木管隊はバスクラやイングリッシュホルンへの持ち替えあり、ピアノやチェレスタの入る曲もあり…いや~もうこれは半分クラシック室内楽、見事でした!

 54年のデビューからこの頃までのジミー・ジュフリーの音楽は、完全にアンサンブル音楽。室内楽志向で、ウエストコースト・ジャズのレイドバックしたエンターテイメント音楽という側面も、50年代モダン・ジャズのメインストリームになったバップ系の音楽のダイナミックさとも無縁。ビッグバンドも木管三重奏も、見事なアンサンブルの連続でした。うーんさすがはウエストコースト・ジャズきってのアレンジャー、知性の塊だなあ。
 アンサンブルだけじゃなくてアドリブも見事。ジャズ訛りなドミナントでのオルタレーションがきつくないので、ジャズっぽくないというか、クラシックっぽさを感じました。アドリブは演奏がリー・コニッツのようにクールで、もう少し吹くところはドカンと吹いて持って行ってもいいんじゃないか…と思ったりもしましたが、いやいやそうしたらこのクールな質感は出ないだろうから、これはこれで良いんでしょうね。

 モダン・ジャズ黄金時代となった50年代、東海岸のハードバップではなく、リー・コニッツやジミー・ジュフリーのようなアドリブも見事なら現代曲のスコアだって普通に読んで見事に演奏してしまうプレーヤーがジャズの主流になっていたら、ジャズってまったく違う音楽になってたかも。初期のシャンソンもそうですが、まだヨーロッパ音楽の色が残っていた頃の西洋音楽って、作曲家だけじゃなくて演奏家も本物というか、すごく知的なんですよね。これが戦後にエンターテイメント性が強くなって、派手で分かりやすいものに消されていって、今では知る人ぞ知る音楽になってしまった感があります。というわけで、知っている人だけが知っている至高の音楽、ジャズのもうひとつの可能性、それが初期ジミー・ジュフリーの音楽じゃないかと。


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『The Jimmy Giuffre Four‎ / Tangents In Jazz』

Jimmy Giuffre Four‎ Tangents In Jazz 1955年録音(発表は56年)、ウエストコースト・ジャズの管楽器奏者ジミー・ジュフリーのセカンド・アルバムです。これもデビュー・アルバムと同じようにトランペットのジャック・シェルドンと組んだアンサンブルで、2管ピアノレスのカルテットでした。これがなんとも味わいのあるいぶし銀の素晴らしさ!デビュー・アルバム『Jimmy Giuffre』が、チェット・ベイカー参加の『Gerry Mulligan Quartet』みたいに、2コース以上の管のアレンジが見事ながらもリラックスしたムードの気持ちいジャズだったのに対して、こっちはクラシック室内楽をジャズ・バンド編成で実現したような音楽でした。

 ベースもドラムもリズムセクションとしてバックをつけるなんてもんじゃなくて、メロディ楽器に対してバスをつけたりカウンターを入れたりしてくるんですよ。ドラムなんて、ソロを取っている管楽器奏者がいても叩かず、メロディの切れ目だけで置かず挟んでくる、みたいな。またそれで見事なアンサンブルを成立させてしまう管楽器奏者ふたりも凄い、なんちゅうリズム感しとんねん。。2管が掛け合いになっている所でベースがカノンになってるところとか、本当に音が鵜の奥が深くて、音楽から耳を離せなくなってしまいました。こういうベースやドラムの使い方をしたジャズって、50年代ウエスト・コースト・ジャズの一部だけじゃないかなあ。

 僕が一番好きなジミー・ジュフリーは、20世紀初頭のロマン派を脱した頃のクラシックと見事なインプロヴィゼーションをミックスした60年代以降なんですが、まるでクラシック・アンサンブルをジャズのフォーマットで実現しようとしたかのようなこの時代の音楽も、渋いながら実に深くて味わい深いと思いました。下手なジャズ・ファンよりむしろクラシック室内楽のファンの人の方が楽しめるアルバムかも。ジミー・ジュフリーって、本当に凄いミュージシャンだったと思います。


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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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