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書籍『ワクチン いかに決断するか』 R.E.ニュースタット+H.V.ファインバーグ著

Wakuchin IkaniKetsudansuruka 1976年、アメリカ合衆国で豚由来の新型インフルエンザが発生したのだそうです。甚大な被害をもたらしたスペイン風邪の二の舞を恐れたフォード政権下の合衆国政府は、2億人を超す全国民へのワクチン接種を決断しました。しかしこのワクチンはギラン・バレー症候群をはじめとした副反応をはじめとした薬害を引き起こし、ワクチン接種は中止に追い込まれたそうです。
 この大規模な薬害事件を詳細にレポート・検討したのがこの本です。著者はどちらもハーバード大学の教授というわけで、そのへんのいい加減な本とはレベルが違いました。日本には何度か翻訳紹介されてきた名著らしいですが、僕が読んだのはコロナ禍になってから翻訳者による序文やあとがきが加えられ、藤原書店から発行された2021年版です。僕がこの本を読んだのは2021年の夏前で、法的な治験ですら十分に済んでない段階で投下されたコロナワクチンの接種の是非を自分で考えなくてはならない状況でした。とにかく憶測や希望を事実と混同してしまったような本は排除、正しい情婦を求めるべく、ネットなら国家レベルの衛生局にあるレポートとか、本ならこういう信頼できそうなきっちりした本とかをいっぱい読んでました。

 事実の調査も入念、原因究明も実に論理的でした。コロナ禍で日本で大量に出された書籍の内容の薄っぺらさが恥ずかしくなるレベル、合衆国って民間や政治はけっこうアレですけど、大学や公共機関はすごくしっかりしてるんですよね。単に時系列にレポートしているわけではなく、センサー(当時の米国疾病対策センターのトップ)がどう考え決断したか、大統領がどう決断したか、行われた臨床試験の問題点、メディアの問題点、製薬会社や保険会社の動き、法的な責任問題に絡んでいびつになっていく接種、何が教訓として残ったか…実に見事な記述で、まとめ方も分かりやすく(ただし、けっこうながい!)、本当にすばらしい本だと思いました。
 ただ、僕みたいな政治家でも医療従事者でも研究者ない人間からしたら、76年の合衆国の薬害事件そのものの詳細なレポートは詳しすぎて、必要以上に骨が折れる分量でした(^^;)>。もちろん、この本が内容の薄い本というわけではまったくなく、ここまでちゃんと調べないと、何が問題だったのかをきちんと特定できないんでしょうね。そういう意味で、じつにちゃんとした本で、公共事業や政治学なんかを学んでいる大学生や専門家向けの本なのかも知れません。

 でもって、以前にあった鳥インフルのワクチン、2021年のコロナワクチン、さらに今後も起きるだろうい未知あるいは変異ウイルスに対する新たなワクチン接種への教訓として参考になった事を。結果的に僕は、翻訳者の前書きに集中して書かれていて、本文はそれを裏付ける資料、のように僕は読んでいました。で、教訓を箇条書きにしていきます。

■新型または変異ウイルスの接種の問題点
 衛生局や大統領などの、決定を下す立場の人は、はっきり言って感染症に対して素人。だから本当の問題点は、「素人の決断者といわゆる専門家の人たちとの意思決定における関係はいかにあるべきか」(p.4)ということ。

■副反応に対する正しい知見
 まず、副反応には、真の副反応と、一見副反応に見える偶然の有害事象がある
 前者の問題は、第1に臨床試験で副反応が拾いきれているかどうかという問題、第2に「臨床試験の期間が短い場合、長期的に起きるかもしれない副反応については調べる術はない」(p.5)という問題がある。
 後者の問題は、それが副反応ではない事を即座に判定する事は不可能。情報発信者や情報の消費者がその判断を誤ればワクチンや行政に対する不信へとつながる。その不信を防ぐためには、「『副反応』に関する国民への事前説明は周到になされるべき」(p.5)ということ。

■76年米国の薬害事件の教訓で、耳に残ったもの
 これは本書12章にまとめられているのですが、その多くは疾病対策センターのトップの判断のあり方とか、政治的なんちゃらとかメディアのなんちゃらですので、一般市民の僕としてはそれを理解できてもどうしようもない、みたいな。そんな中で、市民としては参考になるものがあって…
 それは、「国民の比類のないほどの高い受け入れ」(p.221)。リスクのあるワクチンだったのに、疑いもせずに接種に応じた国民が多すぎた、という事です。

 というわけで、パンデミックを引き起こすレベルであったり、死に達するリスクが一定以上あるウイルス(特に新種や変異ウイルス)に対し、ワクチンのメリットとデメリットがどこにあって、自分でどうやってそれを見極めるのかを考えるために、とても参考になる本でした。とか言って、僕の場合はこの本を読む前に自分で判断していた事がこの本とほぼ一致していたので、読んで勉強になったというより、読んで自分の判断は間違ってなかったんだと確認できた感じでした。ウイルスやワクチンに対する機序もまともに知らないまま、ワクチン派だのの反ワクチン派だのと2分割してしかものを考えられないような人(特に政治家!)は、こういう本をぜひ読むべし。そんな問題じゃない事がよく分かるんじゃないかと。


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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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